ガーゴ都市国家からトーベ共和国の首都トレツまで舗装された直線道路をガーゴ陸軍の車両が疾走している。路上機動性に優れた16式機動戦闘車も、上下が黄色、左右が青色でクロスに分割されたガーゴの国旗を車体に貼り付けて走っている。以前、カメリルのトーベ侵攻を阻止した16式機動戦闘車の雄姿をみたガーゴ陸軍が二ホンから購入したものである。カメリルの攻撃に使用した車体でもよいということで、ガーゴの港沖に停泊している輸送艦しもきたに積載していた16式機動戦闘車2台が納入されていた。
ガーゴ陸軍の車両がトレツの街に入る。しばらくトレツの生家(ハルル大統領の自宅)に滞在していたユカル海軍大将は、カメリルの海からの攻撃に備えてドレキの海軍基地に戻ろうとしていた。そこでトーベ陸軍基地に向かうカーゴ陸軍の車両を目撃した。かつて颯爽と帰っていったキャタピラではなく8個の車輪で走る戦車もあった。しかし、その車体には白地に赤丸の未知の国旗ではなく、上下が黄色、左右が青色でクロスに分割されたガーゴの国旗が貼り付けてあった。
ユカルはその車両が購入されたものだと察知した。そしてその車両の威力を見ていたいと思ったが、海を守る責任に押されて、ドレキの海軍基地へ向かった。
トーベ陸軍基地に入ったガーゴ陸軍はトラックから誘導弾発射装置を降ろし、二ホンの隊員の指示に従ってセットする。それを不思議そうに眺めるトーベの兵たち。誘導弾発射装置はトーベ軍もガーゴ軍も初めて見る装置、そもそも誘導弾というものを知らないから、命中ロケット弾と説明している。
16式機動戦闘車も注目の的、車輪で動く戦車はトーベにもカメリルにもない。その車輪で動く戦車が敵を目視できる場所、戦場へ向かうのではなく、基地内で砲を東に向けて停止しているのだから、トーベの兵には不思議でしょうがない。16式機動戦闘車の砲は中距離照準射撃、100キロ以上離れていても命中させることができる砲なのである。
ブオーン ブオーン
ドローンが基地の上空に舞い上がる。二ホンの隊員の指導で操作しているのはカーゴの兵、ドローンが撮影した情報が誘導弾発射装置と16式機動戦闘車のモニターに送られるようになっている。ドローンは東の空へ飛んでいく。
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カメリル軍のスマルの部隊は車両の残骸を利用して砦の様な陣地をつくり、食料と燃料の補給も終了した。さすがに敵も気が付いたのだろう。戦車や車両が並んで対峙していたが、こちらが攻撃するまで待機していて、おかげで食料と燃料の補給ができるまで時間を稼ぐことができた。
スマルは侵攻を指示して双眼鏡を覗く。そして、こちらに向かって飛んでくるドローンを見つけて、全てを察知した。カメリルにも無人偵察機がある。敵はトーベ軍だけではないことを知り、全滅した前の戦いを思い出した。撃ち落とさないと攻撃される。直ぐに攻撃命令を出した。
ドン ドン ダダダダダ
対空誘導弾でないから当たらない。
スマルは攻撃を諦め、次の命令を出す。
「全員車両を捨てて、車両から離れて伏せろ!」
命令は的確であった。
ドカーン ドカーン
戦車も自走砲も1発も砲撃しないまま爆発する。
ドカーン ドカーン
陣地の後方に停車してあったトラックまでが爆発する。
以前と同じである。違うのは以前は多くの兵が車両と共に爆破されたが、今回は無事だったということである。兵は無事でも戦闘車両が全滅、兵と銃だけで敵うはずもない。塹壕の中のスマルは退却の合図を送った。
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ガーゴの港の沖にリベルテの艦隊が到着した。リベルテのヘリが護衛艦いずもに着艦する。ゴザン軍務大臣の指令書とイータ大佐の添え書きを持参したリベルテの兵が降りて、メイキ大尉のところに向かった。
日本政府はカメリルが核兵器を放棄するとは微塵も思っていなかった。だから、その元になるウラン濃縮工場と豊富なウラン鉱床のあるガボリ共和国をカメリルの支配から引き離す必要があると考えた。ガポリ共和国からカメリル軍を追い出すには、ガボリ人の反カメリル感情に訴えて、真の独立運動を起こさせることが、日本の意図と介入を隠せる方法だと思ったのだ。カメリルと停戦中の日本はそれを隠す必要があった。当然、その独立運動をカメリルが武力で制圧してくるはずだから、人道支援の名目で再びカメリルと戦うことができる。
日本政府はウラン濃縮工場と豊富なウラン鉱床の存在をリベルテに知らせ、その利権をチラつかせて、ガポリ共和国の独立工作をリベルテに頼んだ。リベルテ政府は原子力発電所の建設中であり、二つ返事で了承した。
「何だったのですか?リベルテの兵がやってきて、慌ただしく帰って行ったようですが?」とメイキたちのいる船室にやってきた三木がメイキに尋ねた。
「特殊部隊でガボリの独立工作をしろだとよ。意味が分からねえ。とにかく、戦艦トスリン号に戻れってさ、三木さんと一緒に。」
トスリン号はリベルテ政府の省庁の多くが入っているトスリン宮殿の名をいただいた戦艦である。今度のリベルテの艦隊の旗艦でもある。
そこへ遠山艦長がやってきて「皆さん、用意ができました。荷物をまとめて、小艇に移ってください。」と告げた。
「えっ、どういうことです?」と三木が問う。
「皆さんリベルテの戦艦に移動するするように指示があったのでしょう。私の方には皆さんをお送りするように命令がありました。」
三木は護衛艦いずもに指示があったことで、日本政府の企てだと全てを察した。ダテに長い間内調に勤めていたわけではなかった。メイキは訳の分からないまま、特殊部隊を引き連れて、小艇に乗り込んだ。
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スマルの部隊はナクルの街へ辿り着くために2車線の舗装道路を歩いていた。人的被害は少なかったとはいえ、車両をすべて失い徒歩での退却に疲労困憊していた。通信機も車両に設置していたためにすべて破壊され、救援車両を呼ぶこともできない。運よく車でも通りかかればいいのだが、トーベと断絶してからはトレツとナクルを結ぶ道路を走る車などない。そして、ナクルの街に近づくまで集落もない。
スマル中尉は部隊を止め、部下に食料の調達を命じた。食料もないのである。兎などの野生動物を狩るか山菜を採るかしかない。野宿は覚悟の上だが空腹には耐えられない。
「野宿ですか?もう耐えられません。」とナーイ地方軍のカマル。基地司令官の側近で逆境には弱いようである。
「命があるだけでもありがたいと思わないと。死んでいてもおかしくない状況でしたから。」と薪を集めながらスマル。
「どこから攻撃してきたのでしょう?魔法のような攻撃でした。でも、スマル殿はあの攻撃がどうして分かったのですか?」とカマル。
スマルはナクルのナーイ地方軍基地に軟禁されていて、二ホンのカメリル攻撃を経験していないが、カーレンの陸軍基地でその攻撃の話を聞いており、直ぐに二ホンという国が頭に浮かんだ。
二ホンとは停戦中であり、トーベ軍に二ホン軍がいるとは思わないが、武器は二ホン製に違いないと考えていた。
「前にも同じように攻撃されましたからね。」とスマルは答えて、ため息をついて天を仰いだ。空は夕日に染まっている。
スマルの部隊、敗退。しかし、カメリルとトーベの戦い、終焉はいつ?