続 時空を超えて   作:ぴょんぴょん店長

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三木は抵抗組織を見つけることができるのか?


第7章 7話

 三木は老婆メルンのレストランに来ていた。自分が調査する場所だけを伝えて、調査するところは他の隊員たちに全て任せた。武力だけでなく、調査能力も企画力も三木よりも上になっている隊員たちであることを三木は知っていた。

 三木が情報を得るためにこの場所を選んだのは、老婆メルンを知っていたという事だけではない。メルンのレストランは地域の人たちだけでなくカメリルの兵も利用しているので、会話に聞き耳を立てることで情報が得られると思ったからである。

 

 三木がコーヒーを飲んでいると、メルンがやってきて横に座り、小さな声で囁いた。

 「珍しい、今日はどうしてここへ?ツールの旦那。」 

 

 メルンは勝手に三木をツールの人だと思い込んでいる。最初に会ったのがツール出身セイル外交官の紹介状を持参していて、顔つきもセイルにどことなく似ていたからである。ニホン人のことを尋ねられたのであるが、二ホンという国そのものを知らず、二ホン人とは思いもしなかった。

 メルンはカメリルには批判的であるがツール地方には好意的であった。ガボリ共和国がカメリルの属国になる前は公用語はガボリ語(フランス語)と言っていたが、カメリルと同じカメリル語(フランス語)であった。しかし、ボントの街のほとんどの人はファン語を使っていたし、今でもそうである。そしてツール地方のほとんどの人の言語もファン語である。ツールはガボリ共和国の隣の地方でカメリルと戦争をするまでは交流の深かった地方であった。

 

 (ツールの旦那?何か勘違いしているな。そう思っているのなら思わせておけばいい。)そう思った三木は、勘違いには触れずに答えた。

 

 「いえね。コンガのテント村の野菜が美味しいという評判なので、それを仕入れようかと。で、このレストランはそこから野菜を仕入れているそうだから、サラダを注文して食べてみたのさ。」

 「あなたはツールの行商人かね?二ホン人を探していたから、警察の方だと思っていましたわ。」

 「まあ、そんなところかな。ところで、コンガの人たちとは仲良くやっているようだね。」

 「とんでもない。サッサと国に帰ればいいのに、あの土地に居座ろうとしてるんだよ。気味が悪いといったらありゃあしない。」とメルンは顔をしかめた。

 「でも、そこから野菜を仕入れているのだろう?」

 「それは、野菜が美味しいからで、彼らに好意的なわけではないのよ。最初は国を追われていて同情していたけど、私たちとは違いすぎる。まだカメリルの方がましだわ。」

 

 メルンはカメリルを嫌っているが、それよりもコンガが嫌だという。それはメルンの口から発せられた言葉だが、ガボリ人の思いを代弁していた。

 カメリル語もコンガ語も公用語でガボリ語と同じであるが、ボントの街ではファン語が飛び交い、コンガのテント村ではスワヒリ語が話されている。言語も宗教も文化も全く違うのである。そして、コンガが嫌われる決定的な要因は、科学技術が理解不能なほど先進的であるということ、用心しないとガボリもカメリルもコンガに飲み込まれてしまうような気がしたのだ。

 彼らを受け入れて共存しようと思ったのはカメリル人のスマル中尉だけであった。

 

 「そうですか、コンガの人たちは定住したいと言ってましたよ。」と三木。

 「お断りだわ。あっ、いらっしゃいませ!」そう言ってメルンは席を外した。

 客が来たのだ。しかも団体で。カメリルの兵たちであった。

 

 三木はコーヒーのお代わりを注文して聞き耳をたてる。この場所に来た目的は、カメリルの兵たちからの情報であった。反カメリル勢力あるいは脱カメリル組織が潜んでいるなら、カメリル軍の武器が盗まれたり、軍舎の不審火があったりするはず、三木はそれを探ろうとしていた。そんなことがあれば、兵たちの会話の中にその話が出るはずと考えていた。

 

 兵たちの会話はカメリル語とファン語が入り混じっていたが、三木は言っていることが分かるようになっていた。兵たちの食事の間、ずっとテーブル席に座って聞いていたが、それらしき会話は全く聞くことができなかった。三木の聴覚外のところでの会話に 武器の盗難や不審火の会話があったかもしれないが、三木の調査の目的が空振りであったことは間違いない。

 

 (ダメだったな。他の隊員たちの調査に賭けるか。反抗組織がないとなると難しいが、それをつくることも考えないといけないかも。)

 そんなことを考えながら、三木はメルンの店を出た。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 ナクルの街のナーイ地方軍基地にスマル中尉たちが戻ってきた。それを知ったイマト大尉はすぐにスマルのところに駆けつけた。

 「スマル殿、お疲れ様。聞きましたよ、トーベに敗れたそうですね。」とイマト。

 「・・・・・・・」スマルは何も答えない。

 「援護に来ました。もう大丈夫です。コンガのロボットより簡単に攻撃できます。」とイマト。

 「簡単に攻撃できる?何言ってるのだ。見えない敵をどう攻撃するというのか、侵攻は諦めた方が賢明だ。」スマルが口を開いてそう言った。

 「見えない敵?どういうことです?」とイマト。

 「はるか遠くからロケット弾が飛んできて、しかも的確に攻撃してくる。そんな相手とどう戦うというのか。ロボットは攻撃できる位置にいたし、しかも攻撃しなければこちらが危なかった。でも、トーベは侵攻しなければ攻撃してこない。ここまでは来ないのだ。」

 「でも、トーベ侵攻は命令です。」

 「分かっているさ、あの馬鹿トロルの命令だろう。命令でも、部下を死なすことが分かっている戦場にはいかない。悪いことは言わない、イマト大尉殿の部隊も侵攻しない方がいい、下手をすれば全滅になることもあり得る。」とスマル。

 「忠告ありがとう、考えておくよ。ゆっくり休んでください。」

 イマトはそう言って、スマルたちの部屋から出ていった。

 

 イマトが自分の部隊がいる兵舎に向かっていると、司令室から出てきたカマルに会った。

 「どうでした?スマルさんはもう一度戦いに行くと言いました?」とカマルが声をかける。

 「いいえ、私も行くなと止められました。」とイマトが答えた。

 「そうでしょう。戦わずに逃げましたからね。」とカマル。

 「・・・・・」イマトは何も言わず、兵舎に向かった。 

 

 ・・・・・・・・・・

 

 日本では、ボントの街から帰国した老婦人たちの証言から、航空機がジャングルに不時着したのは18年前のことであったことが判明して、移転に関する議論が再燃していた。

 日本は転移してから9年しか経っていない。老婦人たちは日本に住んでいる人たちよりも9年も多く時を過ごしていたのだ。そして、それが事実であることを証明するように、日本の戸籍による年齢よりもはるかに老けていた。

 帰国した老婦人の中に1人女性パイロットがいて、その老婦人の証言も衝撃的だあった。彼女は転移直前の空を見ていたのだ。日本の航空機は燃料削減のため客席の窓はなく、乗客が外を見ることはモニターに映し出された映像でしか見ることができない。しかし、操縦室にいた彼女は違っていた。機長は操縦をしていて前方を注視していたが、彼女は周りを見ることができた。

 日本の空を出る直前、積乱雲の上にレッドスプライトが輝くのを見たと言うのだ。レッドスプライトというのは雲から宇宙に向かう巨大な放電のことである。

 

 不思議な事柄は直ぐにテレビの報道番組と称する娯楽番組が取り上げる。そしてそこには反地球論の高瀬教授がいた。彼は宇宙を研究するほとんどの人が認めている宇宙には特別な時間も場所も方向も存在しないというネーターの定理を真っ向から否定していた。

 過去も現在も未来も、どの時点でも物理法則は同じ、地球上でも宇宙でもどの場所でも同じ、東西南北どの方向に向かおうと方向によって物理法則が変わることはないという暗黙の常識、それを高瀬は否定していた。だから、高瀬の理論では異世界も存在するし、異世界への転移もありうるのだ。

 

 日本政府は古の民からのメッセージを極秘扱いにして公表していなかった。しかし、偵察衛星によってこの惑星の姿が分かってくるにつれて、何十メートルも海面上昇した地球であると識者もマスコミも主張し始めていた。

 しかし、高瀬は量子力学と特殊相対性理論を同紙に満たす方程式を考案したディラックを引きあいに出し、微視的な世界に反粒子が存在するように、巨視的な宇宙に反惑星が存在すると主張し、反地球に転移したのだと主張した。

 確かにディラックの方程式はその解に電子と同じ質量で電荷だけが反対の粒子の存在が見いだされたが、その陽電子は後の宇宙線の観測で実際に発見された歴史がある。しかし、高瀬の理論から導かれる異世界も反惑星も発見されていないのである。この世界が異世界であり反地球であると主張しても、それを証明する手立てはない。

 

 とにかく、高瀬は以前から、彼の反惑星理論で転移地域の境界にあるものは、境界現象により空間も時間もずれると主張していた。そして、老婦人たちの証言を得る以前から、発見された航空機は惑星歴486年頃に転移したはずだと予言していた。予言通りであった影響は大きく、高瀬は「宇宙の不思議」という冠番組まで担当するようになっていた。帰国老婦人たちが9年年老いている謎を解き明かすという触れ込みで始まった高瀬の教養番組は注目度も高く高視聴率であった。




また蘇る反地球論、9年のずれを予告したが、その謎を解き明かせるのか?
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