続 時空を超えて   作:ぴょんぴょん店長

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セイルが事情聴取、どう答える?


第7章 9話

 セイルは軍務省の調査室に出向していた。出向といっても同じビル内、階が違うだけだが、省が異なるから出向というのだ。

 セイルが調査室に入ると軍服の男が敬礼をし、「ここでしばらくお待ちください。」と言って席を案内した。外務省と違う省庁であるが、このビル内の省庁に勤める人でセイルを知らない人はいなかった。セイルは15歳で外交官になった有名人であったのである。

 席を案内した男は電話で連絡をすると、部屋から出ていった。しばらくして、トロル軍務大臣が秘書官を連れてやってきた。

 

 楕円形のテーブルの短径にセイルとトロルが向かいあって座りトロルの隣に秘書官が座っていた。挨拶もなく敵対するかのように互いに黙っていたが、最初に口火を切ったのはセイルである。

 「呼びつけたりして、失礼ではないですか。聞きたいことがあるなら、そちらが出向くべきです。」

 「悪いな、担当者なら出向させるが、担当者の歯が立つお相手ではないからな。それにこれは執政官の指示だ。」とトロル。

 「そう、で、何が聞きたいの?」セイルはそう言って携帯録音機をテーブルの上に置き、スイッチを入れる。

 「な、何の真似だ。」とトロル。

 「そちらも秘書官が記録をとるのでしょう。こちらも記録をとる必要がありますから、一部始終を録音させていただきます。何か問題あります?」とセイル。

 (やはり一筋縄ではいかない娘だ。)とトロルは思った。

 

 「問題はないがいい気はしない。まあ、いいだろう。どうして二ホンの捕虜になったか説明してくれませんか。」とトロル。

 「分かりませんわ、こちらが聞きたいくらいです。ツイクの自宅に賊が忍び込んできて、さらわれましたの。」とセイル。

 「その賊が二ホン人だったわけかね。」

 「分かりませんわ、賊が出身地を名乗るはずがないですもの。」と言って(何を馬鹿なことを聞くの。)と言いかけて止めた。相手は軍務大臣である。

 「二ホン人でないとしたらどうして二ホンの捕虜になるのだ。」とトロル。セイルの皮肉を理解していない。

 「分かりませんわ、乗った船が二ホンの船で、その船にロマスク帝国の捕虜になっていた者たちがいたということです。」

 「分からん、サッパリ分からん。」とトロル。

 (そうでしょう、あなたに分かるはずがない。)そう思ったセイルは、トロルの納得のいくように説明をした。

 「ツイクで拉致されて、トラックだったと思いますわ、目隠しされていましたから、見たわけではないですけれども、ガーゴの街まで運ばれて、その街に監禁されていました。二ホンの捕虜ではなくガーゴの捕虜と言った方が適切です。ガーゴと二ホンは手を結んだのでしょう。そこから二ホンの船で戻ってきたというわけです。二ホンは私やロマスクの捕虜を交渉の材料にしたかったのでしょう。」とセイル。

 

 「どうしてあなたがさらわれたのだ?」とトロル。

 「分かりませんわ。女だから拉致しやすいと思ったのでしょうか。」と答えながら、セイルは

 (もういい加減にしてほしい。)と思った。

 

 セイルは二ホンに行ったことを言わなかった。言えば我が身が危うくなるからではなく、話がややこしくなる、くだらない取り調べのような聞き取りから早く解放されたかったからである。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 コンガのテント村でコンガの科学技術に衝撃を受けた三木は、メイキ大尉のいるトラックに戻っていた。特殊部隊の隊員たちも戻っていて、トラックの荷台で報告会議。隊員たちが調査した地域をマークしていく。三木の予想通り、スラムのような場所は見当たらず、注目するような情報も得られなかった。

 

 「また明日、手分けして調査してください。ボントの街で遊んでくる気持ちぐらいがいいですね。メイキ殿、このお金を隊員の皆さんに分けてください。」三木はそう言ってメイキにコンガのテント村で換金したカメリル貨幣を渡す。

 「それからメイキ殿、明日、食料調達です。私と一緒にトラックで出かけましょう。隊員の皆さんは今日と同じ時間帯で楽しみながら調査してください。今日はお疲れ様、解散! 」と三木が言うと、1人の若い隊員が「ちょっと、いいですか?」と手を挙げた。

 「いいですよ、何でしょう?」と三木が促すと、その隊員が申し訳なさそうに言った。

 「お金をくれるのはうれしいのだけど、昼間では。夜遊びに行ってはいけませんか?」

 「何を馬鹿な事、遊びではないのだぞ!」とメイキが一喝した。

 「勝手な時間で報告などがバラバラでは対応ができません。時間だけは統一したいのですが、皆さんどうですか?」とそう言いながら三木は、夜こそ情報が拾えるかも知れないと思った。

 

 8人の隊員たちは夜遊びがしたいらしく、全員夜の調査に賛同した。結局、三木とメイキは食料の調達に朝出発し、隊員たちは夕方から出かけ、深夜の0時までに戻ってくることになった。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 トーベ侵攻をスマル中尉に諦めるように説得されたイマト大尉は、ナーイ地方軍の基地に留まって様子をみる決心をした。イマトはスマルの軍務能力を高く評価していて提言を無視することができなかった。

 「トーベ成敗、いつ出発なさるのですか?」とナーイ地方軍のカマル。

 「スマル部隊の参加が得られれば、出発するつもりだが。」とイマト。

 「臆病部隊は参加しませんよ。攻撃せずにすべて捨てて逃げ帰ったのですから。おかげで大変な目にあいました。」とカマル。

 (だから、みんな無事だったのだ。)イマトはそう思ったが、

 「そうでしたか、大変でしたね。スマル部隊抜きの出発も考えておきましょう。」とお茶を濁した。

 イマトはスマル抜きのトーベ攻撃を考えてはいなかった。そして、この地が軍務大臣トロルのおひざ元であることも十分承知していた。命令違反をするわけにもいかない。

 

 スマルは部隊をカーレンに退却させ、軍務違反の処罰を受けるつもりでいた。トーベ侵攻を諦めるように説得するつもりもなかった。説明しても理解してもらえないと分かっていたのだ。

 スマルは隊員たちに明日カーレンに出発することを告げ、準備をするよう指示した。それを聞きつけたイマトがスマルに思いとどまるように説得にきた。

 

 「スマル殿、撤退は命令違反です。処罰は重いですよ。」とイマト。

 「分かっています。処罰を受けるつもりです。部下を死地に行かせたくはない。」とスマル。

 「トロル軍務大臣を甘く見てはいけません。撤退を引き留めなかった部下も同罪で処罰されますよ。長く上官として仕えていたからよく分かります。」

 「・・・・・」スマルは部下も処罰されることは思いもしなかった。部下は撤退の命令に従っただけで軍務違反をしていないと思っていたのだ。

 「スマル殿、考え直してください。トロルは自分勝手で情け容赦ない人ですよ。」

 「・・・・・」スマルはイマトの言う通りかも知れないと思い始めていた。でも、トーベ侵攻も無理だし、判断を迷っていた。

 「私はトーベのユカル大佐と西方遠征を経験していて、ユカル大佐を知っています。我が国のトロル大臣とは正反対、トーベ出身だけでなく多くのカメリル兵がユカル大佐について行った理由が分かります。私もトーベとは戦いたくない。だから、あなたの言う通り戦わないつもりです。」とイマト。

 「?? 戦わない? ここはトロル大臣とツーツーだよ。進行せずに滞在すればカーレンに通報される。」とスマル。

 「進行します。でも戦わない。」

 「どういうことです?」

 「ジャングルであった場所を越えれば、トーベに気付かれ攻撃される。焼き払われているとはいえ、その手前で陣を張ればトーベに気付かれない。このナーイ地方軍の基地にも分からない。滞在すればするほど兵の食料の補給は多くなる。そのうちたまりかねて撤退の命令がきます。武器や弾薬は消費しないと不自然だから、ときどき戦車でジャングルの焼け跡を越えて無人偵察機を撃ち落とす訓練でもすればいい。

撤退の命令があれば大手を振ってカーレンに帰れます。」とイマト。

 「・・・でも、ナーイ地方軍は観戦武官を送り込んでくるよ。」とスマル。

 「カマルですか、来ればそれでもいい。邪魔になれば死んでもらうだけ。」

 

 ・・・・・・・・・・

 

 三木とメイキ大尉はコンガのテント村で食料の調達をしていた。2食分とはいえ10人もいるのだから大変な量である。野菜や果物、そしてパンなどは袋に入れてトラックの荷台に運び、肉や魚などは氷を詰めたクーラーボックスに入れる。トラックはテント村に到着しているが、食料を保管しているテントの前に停まっているのではない。テントが密集していてトラックが通れないのである。手押し車で運ぶしかない。2人には重労働であった。三木は隊員を連れてくればよかったと思った。

 

 コンガの人たちに手伝ってもらえればと思うのだが、それができない。サービスで運んでくれたりはしない。食料品の料金と別料金なのだ。

 お金は有限、しかも工作は何日かかるか分からない。三木が日本の職員であった時は、連絡さえできれば調査費が送られてきた。リベルテ国では事前に与えられた金額だけである。メイキがいくら持っているかは不明だが。

 とにかく、食料を保管しているテントからトラックまで運ぶ人件費を支払う余裕はないのである。

 

 これがボントの街の人たちと決定的に違う点である。ボントの街のタクシーなら、運送屋なのにテント村まで運ぶ契約した運賃で、ついでに三木たちの拠点の森まで運んでくれるはずである。まして、ボントの街で購入すれば、サービスでトラックに運んでくれることは間違いない。ガボリ人はお人好しで親切、コンガ人は抜け目なく計算高い、それが三木の印象であった。

 だからこそ、テント村がボントの街外れにあることも理由だが、コンガ人に10人もの怪しい異邦人の存在が知れてもカメリルに知れる確率が小さく、ガボリ人が危険なのだ。コンガ人はすでに三木が二ホン人であることを知っており、二ホンがカメリルを攻撃したことも掴んでいて、カメリルを追い払ってくれる期待さえしている。




反カメリル組織はあるのか?三木はどうする?
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