続 時空を超えて   作:ぴょんぴょん店長

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イマト大尉やスマル中尉の思惑通りになるのか?


第7章 10話

 イマト大尉はナーイ地方軍基地にできるだけ長く滞在する気でいた。しかし、基地司令のトーベ侵攻の催促が厳しくなり、出発せざるを得なかった。予想通りカマルが観戦武官と称してイマトの乗っているトラックに同乗してくる。

 イマトが荷台で隊員たちと談笑をしていると、カマルが話に割り込んできた。

 「イマト大尉、スマルの部隊が先頭を進んでいるが、どういうことでしょうか?臆病部隊はついてこないと思ったのですが。」

 「分かりません。スマル殿に聞いてください。」とイマトは笑いながら言った。

 

 イマトの部隊がナーイ地方軍基地にまで運んできた戦車を運転しているのはスマルの部隊である。その戦車隊が先頭を進んでいる。スマルが戦車で無人機を撃ち落とす訓練を部下にやらせたいとイマトに願い出た。イマトは交互に訓練をすればいいと最初をスマルの部隊に譲ったのだ。

 

 部隊は焼けたジャングル跡に到着すると停止し、隊員たちが陣地の設営に動き出した。

 「イマト大尉、どうしてこんなところに陣地を?」と不審に思ったカマルが尋ねる。

 「ジャングル跡を抜ければ、敵に気付かれ攻撃されます。攻撃は長期戦になるから、拠点の陣は安全な場所に必要です。ナーイ地方軍の基地に帰るには遠すぎるから、ここに陣地を造っているのです。ここなら敵に気付かれません。」とイマトは答えながら、明日にでも侵攻のボーズが必要だと感じていた。

 

 トーベではガーゴ都市国家からの連絡でナーイ地方軍基地から出発した部隊がジャングルの焼け跡の手前で停止し、陣地を設営しているのを察知していた。気付かれないと思っているのはカメリル側の独りよがりであった。日本の偵察衛星がとらえたカメリル軍の様子がガーゴ都市国家に送られ、ガーゴからトーベに伝えられていたのだ。ガーゴの港湾貿易ビルにあるモニターには日本からのカメリル軍の映像が映っていた。

 トーベ陸軍マカロ大佐はカメリル軍侵攻の情報を聞きつけると、すぐにタイト陸軍基地司令にロケット弾隊を出動させカメリル軍の陣地を攻撃することを提言した。

 「敵はこちらが気付いていることを知りません。陣地の設営だけで攻撃の準備をしていません。チャンスです。攻撃すれば敵は大混乱に陥ります。」とマカロ。

 「でも、マカロ大佐、敵はまだ我が領土の外だ。軍務省から領土に入るまでは攻撃するなと言われている。ジャングルの焼け跡を越えて侵入してくればロケット弾の射程距離、その配置と指示はすでに終えている。心配することはない。」とタイト。

 「心配はしていません。ロケット弾隊を敵の陣地が射程距離になるまで進行させて攻撃すれば、敵を壊滅できるチャンスだと言っているのです。是非ともそう指示してください。」とマカロが食い下がる。

 「くどいぞ、マカロ、我々の任務は防衛だけだ!」

 

 マカロ大佐はユカル海軍大将を慕ってカメリル陸軍からトーベ陸軍に入隊した軍人、一方タイト司令は元トーベ地方軍の司令でトーベ地方の災害救助が主な任務であった。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 三木はメイキ大尉に食料を積み込んだトラックで森へ帰るように指示して、コンガのテント村からボントの街に歩いていった。街に入るとまず目につくのはカメリル領事館、旧ガボリ王国の王城があったところだ。三木は以前にも通ったことのある領事館の前を通る。警備の兵が少ない。以前の半分どころか3分の1もない。ガボリ共和国を統治するための兵力は別の場所の軍事基地にあるわけだが、それにしても警備の兵が少なすぎる。

 (トーベに苦戦しているようだな。)三木はそう思った。このガボリ独立煽動作戦では、日本が得た情報を直接三木に伝えるわけにはいかないから、日本からリベルテへ、リベルテから三木へ伝わるようになっている。

 領事館の前を通ってしばらく歩くと街角のレストランが見えてくる。老婆メルンの経営するレストランである。三木の偵察の目的は治安の行き届かない犯罪者の住むスラムを探すことであった。特殊部隊の隊員が調査していない地域を探るつもりでいた。8人もの優秀な隊員たちが調査して見つからないのだから、存在する可能性は極めて小さい。しかし、リベルテでのスラム発見の成功体験は極めて大きく、三木はスラムがあると信じて疑わなかった。

 街角のレストランの前を通り過ぎようとすると、「ちょっと、ツールの旦那、水臭いですよ。」と客引きのような声で三木を呼び止める。老婆メルンである。

 「いえね、昼食には寄らせてもらうつもりでいたんだ。ちょっと行くところがあってね。」

 「もう昼前だよ。そんなの後にして店に入りな。」

 そこへ野菜を運んできたタクシーが三木を見つけると、「ちょっとあんた、話がある。」と三木のゆく手を遮る。

 結局三木はレストランに入り、タクシーの追及を受けることになる。

 

 昼前のレストランのフロアーには客がたくさんいた。老婆メルンは気を利かして三木とタクシーを2階の個室に案内した。

 楕円形の短径に三木とタクシーが向かい合って座り、コーヒーを運んできたメルンがタクシーの側に少し離れて座った。

 「あんたは空港で何をしたんだ。マイクロバスで送迎した婦人たちはどういう人なんだ。ともかく、あんたは何者なんだ。」とタクシーが三木を問い詰める。

 「ツールの旦那だよ。」とメルンが助け舟を出すが、

 「ツールの人なんかではあるものか。送って行った運転手の話では、7人の婦人たちをヘリで脱出させたようだったそうだ。それに武器も持っていたという。あんたは何者なんだ?どこの国の人なんだ?」

 

 ・・・・・・・・・・

 

 イマト大尉は基地の設営が終了すると、侵攻はいつかとうるさいナーイ地方軍のカマルに言った。

 「明日、スマル中尉がジャングルの焼け跡を抜けて進行するそうですよ。ついていきますか?」

 「スマル中尉?すぐに逃げ帰る部隊、止めておくよ。置き去りにされてはかなわない。イマト殿の部隊についていくよ。」とカマル。

 「私は、この部隊の責任者、進行を指示するだけでこの陣地から出ることはないですよ。」

 「でも、あなたの部隊は出かけるのでしょう?」

 「もちろん、部下の指揮で進行しますよ。」

 「それについていきます。」

 

 翌日、スマルの指揮する戦車隊がジャングルの焼け跡を通過し、戦いの残骸の車両が点在する草原に達した。ブオーンと大きな音を立てて黒と青の2機のドローンが飛んでくる。

 ドン ドン ドローンを狙って砲撃が続く。当たらない。

 

 スマルは隣の戦車に赤いマークが光っているのを察知すると、その戦車の運転手と砲撃手に飛び降りるよう指示する。誰も乗っていない戦車にロケット弾が命中して爆発する。

 ドン ドン 戦車の攻撃では簡単には当たらないが、その訓練に来ていることを部下に徹底しているスマル、慎重に状況を見る。青のドローンから赤い光線が出て戦車に当たる。その戦車の乗員に脱出の指示を送り、他の戦車に青のドローンを狙えと指示する。乗員が脱出した戦車が爆発する。

 

 スマルは赤い光線でロケット弾が誘導されているから、確実に命中するのだと気付く。ドローンは砲撃を避けるために右や左に動き回っていて赤い光線を照射するのに間隔が開いている。

 (黒のドローンからは何も照射されないで動き回っているだけだから、単なる偵察ドローンだろう。赤い光線が照射されれば、脱出させればいい。)スマルはそう思いながら、青のドローンへの砲撃を眺めていると、赤い光線がスマルの乗っている戦車に照射された。スマルも乗員も迷わず脱出。スマルの乗っていた戦車にロケット弾が命中、そして爆発。戦車から降りれば、この戦場は安全なのである。

 

 スマルが各戦車への通信手段を失っても部下の戦車がすぐにスマルに近づいて停車する。停車した戦車に乗り込もうとすると、ドカーン。ドローンが爆発する。砲弾が命中したのだ。しかも青のドローンだ。

 「やった!」思わずスマルは叫んだ。

 

 攻撃される心配もなくドローンを砲撃する訓練ができる。砲弾が尽きるまで、黒のドローンを砲撃したのだが、動き回っていて撃ち落とすことができなかった。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 三木はタクシーの追及の返答に困った。どこの国の人かと問われても二ホンと答えるわけにもいかず、そう答えてもボントの街の人たちは二ホンの国を認識していないと三木は思っていた。以前に二ホン人の探索をした時も7人のニホン人の老婦人たちの存在を誰一人知らなかった。老婦人たちはニホン人ではなくガボリ人として生きていたのだ。偶然、子供の持っていた二ホンのアクセサリーを見つけなければ、老婦人たちに辿り着けなかっただろう。

 当然、二ホンの航空機が不時着した時は多くの人の話題になり二ホン人の存在を知っただろう。しかし、その後カメリルとの戦争という大きな出来事があり、18年の歳月でその記憶は不時着の救出やニホン人の援助に参加した近隣の住民にしか残っていなかった。

 

 「旦那はツールの警察の方ですよ。武器を持っていてもおかしくない。囚われていたツールの婦人たちを救い出したのですわ。」と思い込んだ人物像にこだわる老婆メルン。

 「何を馬鹿なことを、ツールの人を捕まえるわけがない。ここはカメリル領なのだ。もしそうだとしても堂々と迎えに来るさ。ねえ、あんた、ガーゴ人?シェラリベ人?それともコンガ人?」とタクシー。

 ガーゴやシェラリベはカメリル兵から情報が入るのだろう。運送会社を経営しているタクシーも知っていた。

 三木は返答に悩んだが、答えないと今後の偵察活動に支障が出るし、とにかく、しばらく解放されそうにない。

 「正直に言うよ。私はリベルテ国で働いている軍人です。」と三木。嘘ではないが二ホン人だとは言わなかった。

 「リベルテ?聞いたことがあるわ」とメルン。

 「リベルテの軍人?何をしにボントの街へ?」とタクシー。

 三木は回答に躊躇したが、2人の反カメリル感情を知っていたので、

 「リベルテはカメリルと交戦中で、この街のカメリル軍を攻撃する工作が目的です。」と答えた。

 三木はその時タクシーの眼が輝いたのを見逃さなかった。




三木はタクシーたちに街のカメリル軍を攻撃する工作が目的だと明かした。さて、どうなる?
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