スパン南基地ではモニターに映っている偵察衛星からの映像を、日野三佐とネント中尉が眺めていた。
「ついに、海軍がやってきましたね。ロマスク、防衛できますかね。」とネント。
「さあ、どうだか。スパンはどうするのですか?」と三木。
「頻繁にロマスクから援軍要請があるようですが、未だ検討中。スパンの軍仲間でさえ、煮え切らない政府と怒ってます。日本が参戦すれば、即参戦でしょうが。」
「日本ははっきりしてます。戦いません。あの戦艦、スパンの領海を通るかも知れませんよ。」
「多分、通るでしょう。たまたまロマスクの港町が向こうの陸地にあっただけで、その町がなければ、最初に出あうのが我が国だったかも。」
「で、どうするのでしょうか。」
「分かりません。多分、今の政府、見て見ぬふりをすると思いますが、軍が突っ走るかも。この情報、伝えているのでしょうか。」
「在住大使を通じて、各国に連絡済みだと思いますよ。」
そこへ、三木とマイト大尉がやって来た。
挨拶もそこそこで、「三木さん、さすがですね。被害ゼロ、町もそのままで、あっという間に奪還してしまうなんて。」と日野。
(何で知ってるんだ。)と思った三木は、「偵察ドローンを飛ばしていたんですか?動かないと言ったのに。」
「いえ、三木さんに渡した偵察ドローンの映像、こちらでも観ることができるだけです。そうそう、町の奪還の映像に三木さんが写っていましたが、ロマスクの人が操作していたんですか?」
「鋭いですね。そうです。若い兵隊さんが興味を持って操作したいというものだから、操作の方法を教えてあげました。ついでに、ドローン一式、彼にあげました。あはは。」
「で、敵は何という国ですか?」
「カメリル国。捕虜にした指揮官はアビルとか、少尉らしい。捕虜の取り調べはロマスクがやるから、詳しいことは知りません。捕虜を煮て食おうと焼いて食おうと知ったことではない、あははは。」
そこでマイト大尉が口をはさんだ。
「降伏したのだろうとか、降伏せよとか言った奴、いなかったですね。女性の外交官も。」
「あの高飛車な奴、名前は名乗らなかったな。まあ、あのバカは問題ないです。でも、外交官を拘束できなかったのは痛かったなあ。」と三木。
「えらくお気に入りのようでしたね。可愛いとか、好きだとか。」と冷やかすようにマイト。
「何言ってんだ。そんなことを言った覚えはないよ。歳は14・5の少女、親子ほど離れている。」
「でも、そう言ってましたよ。」
「覚えていない、勘違いするな。あの少女は怖い、きっと、我々の脅威になる。あれで、14・5だよ。末恐ろしいよ。」
そう言えば、三木が珍しくうろたえていたのをマイトは思い出していた。
「何ですか、14・5の少女って?」と日野。
「敵の外交官ですよ。」とマイト。
「日野さんは見てないですね。白旗を掲げて交渉に行ったところは。その時の外交官です。少女の外交官、驚きですよ。」と三木。
「白旗を掲げて交渉に行ったのですか?降伏と思われても当然ですよ。降伏の合図ですから。」
「えっ、そうなんですか。白旗は、敵意はない、攻撃しないでねの合図だと思ってました。」と言って三木は笑った。
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リベルテのバーダン国家主席は、ゴザン軍務大臣をよんでいた。
「敵の戦艦がやってきてるそうではないか。すぐに艦隊を派遣して迎え撃て。」とバーダン。
「いえ、できません。戦艦は点検修理のためドッグ入りをしています。」
「残っている戦艦があるだろう?」
「いえ、ありません。一斉点検の方が効率がいいと現場の整備担当が言うものですから。現場の意見は尊重しろと。」
「全てはドッグに入りきらないだろう?」
「はい、で、順番待ちに。」
そう答えたゴザンをバーダンが睨む。
気を取り直したバーダンが命令する。
「空母があるな。それを出動させよ。」
「空母は別のドッグに。」
「では、何が出動できるのだ。」バーダンはだんだん腹が立ってきた。
「巡視艦と輸送艦、それから武装艇。」
(とても、戦艦には太刀打ちできない。ろくでもない奴を軍務大臣にしたものだ。レアルの奴は軍務大臣も大統領選も断りやがるし。)バーダンの頭は怒りで噴火寸前であった。
「もういい、レアルを呼べ。」
「レアル少将はトイヤの海軍基地に帰っております。」
「・・・・・・」
バーダンがレアル少将に軍務大臣を打診したとき任にあらずと拒否、今度の大統領選に出馬を要請すると器ではないと渋っていた。
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カメリル国の戦艦2隻と輸送艦はスパン王国の沖まで航行していた。
航路を南にして、左手前方を眺めると基地のようなものが見える。
旗艦に乗艦しているササド艦長は、それをトロル中尉の言ったロマスク帝国の基地だと勘違いをした。停泊している船は1隻、軍艦のようだが砲も小さくて少ない。カメリルの巡視艦のような装備で、沈めるにはミサイル1つで十分だと思われた。
スパン南基地の指令室の窓から双眼鏡で沖を眺めていた日野は、ネント中尉に言った。
「来ましたよ。見て下さい、戦艦ですよ。」
ネント中尉も双眼鏡で沖を眺める。
「こちらは1隻、攻撃されるとマズい。我が国のように、素通りを願うしかないですね。」とネント。
スパン南基地の港には護衛艦まやが停泊していた。
「あはは、そうですね。」と日野は笑って同意したが、心の中では攻撃してくれることを願っていた。
護衛艦まやが基地防衛のため、ゆっくりと港から離れ、警告すべく航行して行く。
カメリルの戦艦からミサイルが発射され、護衛艦まやに向かってくる。
ドカーン。空中で爆発。まやにはイージス装置があるのだ。SSM装置も搭載されていて、攻撃されたまやから対艦ミサイルが発射される。
カメリルの戦艦が爆発し、傾いていく。
「ああ、やっちゃった。知らねえよ。」と内心喜びながら、双眼鏡を覗いていた日野が呟く。
飛んできたミサイルが撃ち落とされるのを見たネントは、唖然としている。
「まやから、ヘリを出し、救助して去れと警告するように要請が来てます。」と日野の部下が伝える。
「早急に対処せよ。」と日野が答える。
スパン南基地からヘリが飛び立った。
「ここはスパン王国の領海である。攻撃を休止する。海の中にいる乗組員を救助して、立ち去れ。」
フランス語の警告である。カメリルの戦艦2隻は傾いていた。
「これで、二ホンは参戦しますね。」と唖然としていたネントが立ち直って言った。
「多分、しないと思いますよ。お詫び声明を出して。まやの艦長は責任をとって降格か減給。海上自衛隊のトップも。」
「何ですか、お詫び声明って?」
「この度、手違いで貴国の戦艦2隻を沈めてしまったこと、深くお詫び申し上げますと、政府が発表することです。」
「えっ、変な国ですね。我が国は臆病だけど、まやの艦長は英雄ですよ。昇格間違いなし。日本政府はあなたたちとは違って臆病なんですね。」
「あはは、違います。我々より政治家や官僚はしたたかです。お詫び申し上げると言いながら、腹で笑ってます。お詫び声明ではなくてイカン声明かも。」
「イカン声明?」
(転移前によくやっていた。)と日野は思いながら、説明した。
「基地を警戒している護衛艦に向かってミサイル攻撃をしたこと、誠に遺憾に存じますっていう声明。さあ、どっちでしょう。あはは。どちらにせよ、参戦しません。」
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カメリル国の物資の輸送と兵の増員をするためのトラック3台が、港町セルルの見える位置まで来ていた。町ではアコリ中尉率いるロマスクの陸軍小隊が待ち構えていた。住民はまだ入れていない。
町から戦車が出てくる。かメリルの兵には見覚えのある自国の戦車、勇んで進行して行く。
ドーン。ドカーン。
戦車の砲撃で武器弾薬を積んでいるトラックが爆発する。増員の5人がその中にいた。
味方のはずが敵、こちらは砲弾や弾薬があっても戦うべき武器はない。残りの5人が乗っていた最後尾のトラックは、運転手が機転を利かせて反転し逃げて行った。食料などの物資を積んでいるトラックは動けなくなっていた。
やってきたカメリルを撃退、カメリル国は?