続 時空を超えて   作:ぴょんぴょん店長

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トーベと戦う気がないが出撃したスマル、さてどうなる?


第7章 11話

 スマル中尉は地上にいる隊員たちを乗せるトラックを用意すれば良かったと思いながら、各戦車にその隊員たちを乗せるように指示して退却を命じた。スマルは最後尾を走りながら撃ち落とせなかった黒のドローンを観察する。ドローンが追跡してくるかと思ったがジャングルの焼け跡には進んでこないで退却の様子を眺めているようであった。スマルは判断した。敵は領内に侵入すれば攻撃するが外までは追ってこない、陣地は安全だと。

 

 スマルは陣地に戻り、戦車3台を壊したことを詫び、戦況をイマト大尉に報告していた。そして、確かめたいことがあるので、もう一度、戦車を借りて出動させて欲しいとイマトに訴えていた。そこへナーイ地方軍のカマルがやってきた。

 「戻ってきた戦車が減っているようですがやられたのですね。敵をどのくらい倒しました?」と嫌味なカマル。

 「・・・・・」スマルは黙って部屋から出ていく。

 「先陣を切って戦いに挑むだけでも意外でした。イマト大尉殿、敵をどのくらい倒したと報告がありました?」とカマル。

 「報告はありません。多すぎて数えられなかったのでしょう。」とイマトはトボけた。

 「イマト殿はいつ出陣するのですか?」

 「私は出陣しないと言ったでしょう。部隊が出陣するのは明日です。スマル殿がすぐに出陣するそうです。観戦武官殿、同乗に間に合いますよ。」

 「いえいえ、あの部隊は苦手です、辞退します。明日、イマト殿の部隊に同乗させていただきます。」

 

 スマルは戦車に乗り込み、再びジャングルの焼け跡を進行していた。スマルの乗った戦車1台とトラック1台だけである。トラックには運転手だけが乗っていて、戦車が破壊された時に引き返す車両として念のために戦車についていっている。

 スマルの戦車がジャングルの焼け跡を抜けると、黒のドローンが2機、ブオーン ブオーンと大きな音を立てて飛んできた。青のドローンはいない。飛び回るドローンを狙って砲撃するのは難しい。

 ドン ドン 的が小さすぎる。しかも、こちらの砲撃を察知して動き回っている。

 スマルはその様子を観察しながら、敵に赤い光線を照射するドローンはなく、この位置でいる限り攻撃されないことを確信した。確実に命中するロケット弾が使用できないのなら、進攻して敵を撃退出せることができると考えられたが、再度の敗退で敵の強さが身に染みており、安全な攻撃の真似事に徹する決心でいた。

 撃ち落とすことなく砲弾が尽きた。引き返すしかない。黒のドローンは追ってこなかった。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 三木はテーブルのコーヒーを飲み干すと、「もういいだろう。」と席を立った。何か言いたそうなタクシーの表情であったが、「メルン殿、勘定を頼む」と老婆に声をかけると、「あたいが引き留めたんだ。あたいの奢りだよ。気にしないで、また来てくれ。」と老婆メルン。

 

 三木は街角のレストランを後にして、隊員たちが調査をしていない地区に向かって歩き出した。占領下であっても街の人たちの生活はある。街にそれなりの活気はあった。見かけるカメリル兵の数も少なく、知らなければ占領されていると分からない街の状況であった。

 三木の探しているスラム街というのは、体制とか宗教とかの違いに関係なく、貧富の差が拡大すればするほど生じやすいものだという持論を三木は持っていた。この街の人たちの貧富の差など三木が知ることはできないが、三木の予想通りカメリル領事館にうまく取り入っているものだけが豊かになっていることは確かであった。三木の探しているスラムというのは、大都市の一角に形成される貧困者が集中して暮らす地域のことであるが、ボントの街が大都市だとは言えなくても同じ程度の街リベルテの首都カンナにはスラム街があった。三木はそこで反政府組織と出会ったのだ。だから、スラムを探すことにこだわっているのである。人の噂に耳を傾け、見知らぬ街を歩き回り、手掛かりを得る以外に方法はない。三木は足が棒になるまで歩き回った。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 カメリル軍の陣地に戻ったスマル中尉の安全にドローンを砲撃する訓練ができるとの報告を受けたイマト大尉は、部下の戦車隊に出撃を命じた。念のため戦車が走行不能になった乗組員を助けるため、最後尾を1台の医療班救命トラックが続いていた。そのトラックの助手席にナーイ地方軍のカマルが座っていた。

 

 ジャングルの焼け跡を抜けると、2機の黒のドローンが飛んできた。

 ドン ドン ドローンを狙って砲撃する。ドローンは狙われているのを察しているのか、不規則に動き回る。当たらない。

 その様子を停車しているトラックの助手席から眺めていたカマルは、隣の運転手に尋ねた。

 「どうして、攻撃もされないドローンを砲撃しているのですか?小さい的で当たりもしないのに。」

 「知りません。私は医療スタッフです。部隊長に聞いてください。」

 カマルはドローンをいつまでも攻撃している部隊の行動が理解できなかった。無視して侵攻すべき、敵の戦闘車両でも現れて砲撃すれば、ドローンよりはるかに大きい的だから命中するのにと思った。

 

 部隊がドローンを狙って砲撃している様子を、トーベ陸軍基地のモニター室でタイト司令とマカロ大佐が眺めていた。

 「何か、変だと思いませんか?」とマカロ。

 「何が変なのだ。ドローンを砲撃しているだけだ。」とタイト。

 「それが変なのですよ。敵は侵攻してきて、侵攻する気がないようなのです。」

 「どういうことなのだ、よく分からない。」

 「侵攻するためにあの位置に陣を構えたのは、我々に気付かれないための位置だと理解できます。でもジャングルの焼け跡を越えた後の敵の行動、遊んでいるとしか思えません。特に黒の偵察ドローンだけになっても侵攻してこない。」

 「それは、最初のように攻撃されると思っていて警戒しているからではないのかね。」とタイト。

 「違います。こちらに照射ドローンがないことを察知しているはず、2度目の1台の戦車でやってきたのはそれを確認しにきたのです。理由は分かりませんが、敵は侵攻する気がないことだけは確かです。ともかく、照射ドローンをガーゴから購入するように手配してください。」とマカロ。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 三木は森のトラックに戻っていた。隊員たちは街に偵察に出かけていて、残っているのは留守番役のメイキ大尉だけであった。

 「どうでした?何か手掛かりは?」とメイキ。

 「ダメ、全く手掛かりなし。私の勘がハズレだったのかも。」と三木。

 「あなたの勘がハズレたことありました?必ずありますよ。」とメイキ。

 「優秀な8人の隊員が調査して見つけられないんだ。それにスラム街があるとしたら、ならず者の巣窟だよ、街の人の噂にもなる。それもないとしたら、この街にはないのかもしれない。」と三木。

 「まあ、調査は若い者に任せて、夜も更けてきたからもう寝ましょ。明日の報告会で何か出てくると思いますよ。大金持たせて夜遊びさせているのですから。」とメイキ。

 「そうだね、寝ることにするよ。今日は歩き回って疲れた。」

 

 翌朝の戻ってきた隊員たちの報告会でスラム街の情報は皆無であったが、1人の隊員がカメリルの兵がら重要なことを聞きつけていた。それは、カメリル陸軍兵が武器と弾薬が盗まれた責任を取って、厳罰を受けたという情報である。夜のクラブでつい愚痴がこぼれたのであろう。それを特殊部隊の隊員は聞き逃さなかった。

 その情報を得た三木は、ボントの街の地図を広げ、カメリル陸軍基地の武器倉庫の位置をマークする。そして、その周辺を念入りに調べ、いくつかの場所にラインを引く。その中にタクシーの運送会社が入っていた。三木がラインを引いたのは複数の人間が集まっている会社、組織、店舗の名前である。

 三木はそれらに隊員を配分し、潜入調査を指示した。武器と弾薬が盗まれたのなら、それを使おうとする者がいることは確かなのだ。




やっと見つけた反カメリルがいる兆候、三木はどうする?
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