続 時空を超えて   作:ぴょんぴょん店長

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トーベ征伐の意欲を亡くしたイマト大尉の部隊、これからどう展開する?


第7章 12話

 砲弾を打ち尽くしてもドローンに命中させることができなかった戦車部隊は、カメリル軍の陣地に戻ってきた。トラックから降りたナーイ地方軍のカマルは、その足でイマト大尉のいる指揮テントに向かった。

 カマルが指揮テントの中に入ると、そこにはイマトではなくスマル中尉がいた。

 「どうしたのですか?カマル殿。血相を変えて?」とスマル。

 「あんたじゃあ話にならない。イマト大尉は?」とカマル。

 「イマト殿は戻ってきた戦車隊の出迎えにいきましたよ。会いませんでした?」とスマル。

 カマルはトラックから降りるとわき目も振らず、この指揮テントにやってきた。戦車隊を出迎えていた兵たちの中にイマトもいたのだ。

 カマルがテントから出ようとすると、スマルがカマルに言った。

 「また、入れ違いになりますよ。ここに戻ってくるのだから、待っていた方が賢明ですよ。」

 それもそうだと思ったカマルは、出るのを止めて椅子に腰かけた。

 

 「カマル殿は戦車隊に同行したのですね。何があったのですか?」と微笑みながらスマルはカマルに話しかける。カマルはスマルを睨みつけて「あんたには関係ない。」と答えた。そこへ、イマトが戻ってきた。

 「イマト大尉、部隊はどうして侵攻しなかったのですか?」とイマトの顔を見るなり、立ち上がってカマル。

 「部隊長に尋ねなかったのですか?ドローンを撃ち落とさなければ、進んでも追跡ロケット弾で戦車が攻撃されるからですよ。スマル殿の部隊が3台もやられたでしょう。」とイマト。

 スマルはニヤニヤ笑いながら、「追跡ロケット弾はヤバいですからね。戦車が3台も爆発して、死人が出なかったのが不思議です。 」と言った。

 カマルはスマルの話など聞きたくないという顔をしてスラムを睨みつけ、「でも、イマト大尉、攻撃は1発もなかったのですよ。」とイマトを見る。

 「そうですか、それはラッキーでした。攻撃されれば無事ではすまないからね。ナーイ地方軍から砲弾が届くと、明日我が部隊が再び出陣しますが、また観戦に参加しますか?」とイマト。

 「明日ですか、考えておきます。」と不服そうに答えて、カマルはテントから出ていった。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 三木はカメリル軍の武器倉庫の近くにタクシーの運送会社があることに注目していた。三木がカメリル軍を攻撃する工作のためボントの街に来ていることを話した時の彼の眼の輝きは通常ではなかった。武器と弾薬を盗んだのはタクシーたちではないかと思った。

 

 タクシーの運送会社に特殊部隊の隊員を忍び込ませているが、三木は独自にその運送会社に探りを入れていた。中核には隊員が忍び込んでいる。三木は外側から運送会社の調査を始めた。

 タクシーは戦災孤児で、23歳、妻はいるが子供はいない。運送会社の社員は約100名。主に運転手と荷下ろしの助手。経理は副社長の妻が引き受けている。そのうち、幹部社員は20名、すべてタクシーと同じ孤児院にいた若者で、会社の設立当時のタクシーの仲間たちである。

 業務は車の運転に関わる全ての業務と言えるほど多種多様、人と物の運搬はもちろん、道路と建物の整備、建設に伴うブルトーザーやクレーン車など重機の運転操作に人と車を派遣、挙句は家庭の庭の整備やごみの収集に人と車を派遣していた。

 三木はタクシーの運送会社を調べているうちに、奇妙なことに気が付いた。幹部社員20名のうち、役職など役割が分かっているのは5名だけということ、後は姿さえ見えないのだ。社長のタクシーが自ら運転手をしている会社の社員なのにである。

 

 会社に出社しない幹部社員、いても不思議ではないのであるが、三木は気になってそれを調べ始めた。社員名簿を手に入れているから、名前と住所は分かる。当たって砕けろとばかり、直接話を聞きに幹部社員の1人の家に向かった。タクシーの運送会社の近くに自宅があるからその幹部社員を選んだのだ。

 三木は気付いていた。何人かの男たちがつけてくるのを。下手な尾行だと思いながら、運送会社の前を通り過ぎると、長身の男が近づいてきて、「嗅ぎまわっているようだな、ついてきてもらおう。」と囁いた。三木の脇腹には見えないようにナイフが突きつけられている。つけてきた男たちが周りを囲う。隣でナイフを突きつけている男を含めて5人。三木は相手を倒して逃げることは簡単だが、騒ぎを起こしたくはなかった。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 トーベ侵攻のためのカメリル陸軍陣地にナーイ地方軍の基地からトラックが1台到着した。砲弾と食料の補充をするために引き返していたトラックである。荷を降ろすために出迎えている兵と一緒にイマト大尉とスマル中尉がいた。トラックを運転していた兵が降りてきて、イマトに説明していた。

 「戦車の砲弾はないのかね?」とイマト。

 「はい、食料だけです。でもカーレンの基地から砲弾と新たな部隊がきているそうですよ。」

 「新たな部隊?」とイマト。

 「はい、ボントに派遣されていた部隊がこちらの援軍としてやってきていると聞きました。」

 イマト中尉の顔が曇った。砲弾が届かないのは願ったり叶ったりであるが、新しい部隊の到着は困る。イマトとスマルは顔を見合せた。

 イマトは兵に「ご苦労様」と言って敬礼をすると、スマルと一緒に指揮テントへ戻っていった。

 

 「ボントに派遣されていた部隊がこちらに、困りましたね。」とスマル。

 「そうですね、どうします?スマル殿。」とイマト。

 「その部隊と戦いますか、トーベ軍よりましですよ。あは、冗談ですよ。」

 スマルは冗談だと言ったが、内心、トーベ軍に寝返ってもいいと思っていた。トーベ陸軍のマカロ大佐はかつてスマルの上司であった。マカロの上司がカーレンの刑務所にいるカイルだったのである。イマトの上司は現軍務大臣トロルであったが、自分勝手で臆病で卑怯者という評判通りの上司に鍛えられたと自負していた。

 「やって来るまで時間がありますから、それまでに対策を考えておきましょう。」とスマルが続けると、「そうですね。」とイマトが答えた。

 

 そこへ、指揮テントにナーイ地方軍のカマルが入ってきて、「今日は出陣しないのですか?」とイマトを問い詰めた。

 「戦車の砲弾が届いていないので、砲弾待ちです。砲弾のない戦車隊を進めても、意味がないですからね。」とイマト。

 「銃と弾丸はたくさんあるし、無駄飯食らっている兵も大勢いるではないか。戦車なしで侵攻できるだろう。」とカマル。

 「何を言っているんですか、カマル殿。トーベは過去のように銃撃戦で戦うような相手ではない、歩兵で突進すれば全滅ですよ。」とイマト。

 「カマル殿は飯だけ食らう兵がたくさんいることが御不満らしい。私の部下を10人程お貸ししますから、自ら玉砕しに手向いてはいかが?」とスマルがカマルを挑発。

 カマルはスマルを睨みつけると、「戦わない部隊にいても意味がない。帰って報告します。イマト大尉車の手配をお願いします。」とイマトに言った。イマトの顔が険しくなる。

 「あなたを送迎する車両はありません。どうぞ歩いて帰られては?焼けたジャングルから抜け出した猛獣がたくさんいますからお気をつけて。」とスマル。

 カマルはスマルの部隊の車両が全壊して、徒歩で退却した時のことを思い出した。

 スマルをまた睨みつけて、「歩いて帰れるわけがない。」そう吐きつけて指揮テントから出ていった。

 そして、1台のトラックの運転手である兵にナーイへ運ぶように頼んだが、イマトの指示以外に動くはずもなかった。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 5人の男たちに捕らわれた三木は、タクシーの運送会社の玄関を横目に通り過ぎ、狭い路地を通って、運送会社の裏手の門を入る。中に入ると、車両整備をしている人たちがいたが、誰もこの5人の男たちを気に留める者はいなかった。車両の並んだ広場を通り過ぎると、倉庫のような建物がある。その入り口付近を掃除している男が三木に気付き、懐に手を入れようとした。三木はそれを察して、目でその男を制止する。潜り込んでいた特殊部隊の隊員である。

 

 倉庫の中に入ると、脇腹に突きつけられていたナイフが除かれ、椅子に座れと指示された。男たちに囲まれているが、手足が拘束されているわけではない。特殊部隊の隊員の助けがなくても、簡単に脱出ができる。三木が指示された通り椅子に座ると、1人の男が倉庫から出ていった。

 長身の男が、座っている三木の顔を覗き込んで、「お前は何者だ?カメリルのスパイか?何を探っている?」と言った。

 「分かりました、全て話します。その前に、教えて下さい。あなたたちは、この会社の社員ですか?」と三木。

 「それには答えられない。その代わり、俺の名前を教えよう。マイキーだ。お前は?」と長身の男。

 「私はミキ、ミッキーと呼ばれている。カメリルの兵でもスパイでもない。」と三木。

 「じゃあ、何者だ?どうしてこの運送会社を調べている?」とマイキー。

 そこへ、「マイキー、もういい。正体は分かっている。」と倉庫から出ていった男と一緒に入ってきたタクシーが言った。

 「社長、この男を知っているのですか?」とマイキー。

 「うん、何度か会って、話をしたよ。リベルテという国の工作員だそうだ。」とタクシーは三木に手を差し出し握手を求めてきた。

 

 三木も手を差し出し握手をすると、「鋭いですね。ここが反カメリル武装集団の根城だと気付いたのですね。」とタクシーが言って、今度は大声で倉庫の入り口に向かって「そこで聞き耳を立てている人、中へ入りなさい!正体はバレている!」と叫んだ。

 特殊部隊の隊員が辺りを警戒しながら倉庫の中に入ってくる。

 

 「どうして彼が私の仲間だと?」と三木。

 「入社面接の時、変だと思いました。宿なし一文無しで住み込みで雇って欲しいと言っていたが、健康そのもの、とくに鍛え上げられた躰は浮浪者のものではない。泳がせてみようと思って雇ったのです。」とタクシー。

 「社長、この男、信用していいのですか?」と心配そうなマイキー。

 「大丈夫、カメリル側でないことは確かだ。」とマイキーに顔を向けてタクシー。

 三木は特殊部隊の隊員にこちらに来るよう手招きをして、タクシーに言った。

 「蜂起する人は何人いるのですか?武器が必要なんでしょう。必要なだけ提供しますよ。」




三木はついに反カメリル組織と出会った。どうカメリルと戦う?
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