続 時空を超えて   作:ぴょんぴょん店長

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 ボントの街からカメリル軍がいなくなるのを確認した日本は、外交官や調査官をガボリ共和国に派遣する。その目的は?



第7章 14話

 日本では、ボントの街の陸軍基地からカメリル軍が引き上げていく様子や領事館から車両が出ていく様子が偵察衛星でモニターに映し出されていて、政府も防衛省もボントの街がカメリルから解放されたことを知っていた。

 輸送機Cー2が2機の戦闘機Fー35Bに守られて、ボントの空港に向かって飛び立っていた。輸送機Cー2には外務省の川本外交官、文部科学省の中川調査官、そして18年前に不時着したと思われる航空機会社の調査員が何人か搭乗していた。

 

 ボントの街では、タクシーの運送会社から多くのトラックが元カメリル陸軍基地に向かっていた。武器倉庫から武器や弾薬をツール地方との境界近くに設置した運送会社という名の基地に運ぶためである。タクシーは会社の広場でトラックの運転手一人一人に詳細な指示をしていた。

 カメリルの領事館は看板をガボリ共和国大統領府と塗り替えられ、選挙までボント市長ケロシ―が代理を務めていた。そして、ボント市政の職員がそっくり大統領府に移動していた。命令をする領事がいなくなりカメリル兵が消えただけで、街の人たちの生活は何の混乱もなかった。

 ボントの街の全ての組織がタクシーの反カメリル集団に協力的だったのは、タクシーをはじめ調整役の幹部社員たちみんなが、事後の地位を要求しなかったことに尽きる。彼らは自分たちの運送会社が発展すればそれで良かったのである。ツール地方との境界近くにある運送会社の基地も、ガボリ共和国に売却して防衛軍を組織する計画で、そのトップにボント警察署の署長が内定している。

 

 三木や特殊部隊の隊員たちはタクシーの運送会社の敷地内にある社員寮で寝泊まりしていた。トラックの荷台での雑魚寝に比べれば雲泥の差である。社員寮にいた社員たちのほとんどが、ツール地方との境界近くにある運送会社の基地の宿舎に移動していて空室になっていたからである。三木は宿泊料を払おうとしたのだが、タクシーは譲ってもらった武器代で支払い済みと受け取らなかった。

 

 「三木殿、リベルテ軍からの指令です。空港に二ホンの航空機が到着するから、着陸許可をとれと。」とメイキ大尉。

 「二ホンが来るって?」と三木。

 「はい、沖にいる軍艦からの無線連絡です。早急に入国許可など手続きをせよと。」とメイキ。

 

 三木はすぐにタクシーに連絡、ボントの街の権限のある人のところへ案内して欲しいと頼んだ。三木はこの街の行政組織を全く知らなかったのだ。そして、特殊部隊の隊員たちには二ホンの航空機が来るからすぐに空港へ行って待機しているように指示した。

 やってきたタクシーは、三木の急いでいる口調と様子から重大な事と察して、すぐに車を用意し、自らの運転で三木とメイキを大統領府に運んだ。

 

 タクシーが建物の門番に口をきくと、門番がすぐに電話をした。建物から職員がやってきて案内をする。案内の職員の後をタクシーと三木とメイキがついていく。

 

 タクシーがケロシー市長に三木とメイキがリベルテ国の人だと紹介する。

 「リベルテ?知らんな。で、タクシー殿、どうしてこの人たちを紹介するのだ」とケロシー。

 「二ホンの航空機がこの街の空港に到着します。入国許可と着陸許可をお願いしに参りました。」と三木。

 「二ホン?知らんな。何をしに来るのだ?こんなややこしい時に。ん、思い出した、不時着した飛行機が確か二ホンとか。」とケロシー。

 二ホンと聞いてタクシーの眼が輝いた。三木はそれを見て(タクシーは二ホンを知っているのか?)と思ったが、許可が大事とケロシーに言った。

 

 「是非入国許可と着陸許可を。ガボリ共和国にも大いなる利益があると思います。」

 「利益かどうかよく分からないが、許可もくそもない。私も市長のままで、まだ国の体裁が整っていないのだ。空港も機能していないし、勝手に着陸するしかないだろう。我が国を攻撃しないのであれば好きにすればいい。」とケロシー。

 「管制塔は?」と三木。

 「機能していない、カメリル兵がやっていた。」とケロシー。

 「メイキ殿、管制官の資格を持っていた隊員がいたですね。」と三木。メイキが頷く。

 「管制塔を使用してもいいですか?」「勝手にすればいい。」

 「ありがとうございます。」三木はそう言って、メイキとタクシーを促すと、大統領府の市長室を出ていった。

 

 ・・・・・・・・・・

 

 空港に到着した三木たちは、すでに着陸している輸送機Cー2と戦闘機Fー35Bを眺めていた。特殊部隊の隊員が管制塔から滑走路に誘導していたのだ。

 輸送機Cー2の大きさに圧倒されていたタクシーやリベルテのメイキ大尉や特殊部隊の隊員たちは、格納庫が開き車両が2台出てくるのを見て唖然としていた。

 

 「三木さん、お久しぶりです。またお会いしましたね。」とフランス語で声をかけてきたのは川本外交官であった。三木の周りにいる人たちを見て日本語を使わなかったのだ。西方大陸東岸地区の集落で会った時は日本語であった。あれから、1年も経っていない。

 「川本さんはどうしてこちらへ?」と三木もフランス語で尋ねた。

 「この国との国交と交易の交渉に参りました。それ以上の詳しいことはご勘弁を。」そう言って川本は近づいてきた車に乗った。川本の乗った車は大統領府に向かう。

 もう1台の車の前で、中川調査官と何人かの調査員が話し合っていた。三木は、呆然と輸送機や戦闘機を眺めているメイキたちから離れて、中川のいるほうへ歩いていった。

 

 「車の運転手は不時着した航空機までの道を知っているのですか?」と航空会社の調査員。

 「私が案内しましょうか?途中から歩かないといけませんが。」と聞きつけた三木が言った。

 「三木さんでしたね。結構です。地図を持参していますから。途中から徒歩になることも承知しています。」と中川。

 「そうですか。お役に立てると思ったのですが残念です。」と三木が言ったのを無視して、中川は、

 「乗客名簿は持ってきてるのでしょうね?乗客ごとの遺品を持ち帰ることが目的ですから。」と調査員に尋ねた。

 「はい、抜かりはありません。」と調査員。

 

 乗客名簿と聞いた三木は、「乗客名簿ですって。不時着した航空機のですか?」と調査員に言った。

 その調査員が「はい。」と答えると、「見せてください、その名簿を。」と三木。三木は弟である未来託次の搭乗を確認したかったのである。

 その調査員は怪訝な顔をして中川の顔を見た。中川が頷く。

 「ローマ字表記と漢字かな表記の2種類ありますが、どちらをお望みで?」と調査員。

 「漢字かな表記の方をお願いします。」と三木。

 

 三木は手渡された乗客名簿から未来託次の名を見つけると、思わず呟いた。「なんてこった。」

そして、礼を言ってその名簿を返すと、「では、お気をつけて。」と中川に声をかけ、足早にメイキたちのいる場所へ戻っていった。

 

 三木が戻って来たので、「どうします?我々はこれから。」とメイキが三木に声をかける。三木はそれに返答もしないで、タクシーのところに歩み寄り、「あなたは二ホン人ですね?」と日本語で言った。

 「そうです。今まで隠して生きてきましたが二ホン人です。」とタクシーが日本語で答えた。

 「日本語の氏名、覚えていますか?」と三木。

 「はい、ミキタクシです。」そうタクシーが答えると、三木は涙をポロポロこぼしながらタクシーを抱きしめた。タクシーは思いがけない三木の行動にキョトンとしている。三木の涙は止まらない。

 メイキや特殊部隊の隊員たちは、三木とタクシーの会話が日本語で内容が分からないが、三木の異様な様子に只事でないと感じていた。

 

 三木は18年前に不時着した航空機の乗客名簿に未来託次 未来聖羅 未来託史の名前を確認していた。そして、託史、タクシ、タクシーとこの男に辿りついた。日本から遠く離れたこの地に姪のセイルがいたというだけでなく、タクシーというこの男は甥だったのである。奇跡の遭遇というほかなかった。

 

 未来託史は航空機が不時着した18年前は5歳、当然、自分の名前も親も出身国も、そして赤ん坊の妹がいたことも覚えている。しかし、戦乱の中、両親の死と妹の生き死にもわからない失意を抱えて、この異国の地で生きてきた。過去を忘れることはできないが、頭の片隅に追いやって、天涯孤独と割り切って生きていく以外になかったのである。

 

 三木は自分の行動に照れながら、キョトンとしているタクシーに、父親託次が自分の弟であり、自分が叔父であること、妹は生きておりカメリルにいることなどを話した。

 意外なことを聞いて驚きのあまり声も出ないタクシーは、眼を潤ませたまま頷くだけだった。

 

 惑星暦504年、日本はガボリ共和国を独立国家と認め、川本外交官の交渉により濃縮ウラン工場とウラン鉱山の管理使用権を得た。ガボリが簡単にそれらを手放したのは、今まで長い間カメリルが運営していたたため、ガボリはそれらを稼働させるノウハウを知る者がいなくなったからである。当然、日本はカメリル国と真っ向から対立することになった。

 

                  第7章 完

     

              続 時空を超えて 遭遇編  完

 




 最後まで読んでいただきありがとうございました。残っている謎も未解決のままで中途半端な結末ですが、遭遇編は完結といたします。
 なお、誤解を招く表現などの見直しをして修正し、最終的な完結といたします。

 続きは「新 時空を超えて 争乱編」を予定しています。それも読んでいただければ幸いです。遭遇編から争乱編へ、新たな戦乱の時代が始まる。
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