フォースはいつでもエーテルと共に 作:光明面と暗黒面ってルビ無しで読めないよね
デッドエンドホロウ、原生ホロウの一つだ。この猫宮又奈、自称猫又さんが言うには彼女は邪兎屋にとある依頼をした。家族の形見を探してほしいという依頼でそれを受けた邪兎屋と猫又さんはデッドエンドホロウに突入して……なんだかんだ爆破エリアで立ち往生しているという話なのである。
この爆破エリアというのがキモで地下鉄だかなんだかの再開発事業を入札で手に入れたヴィジョンという会社があるのだが、工事の際の発破で使う爆弾をそのデッドエンドホロウ経由で爆破予定場所に運ぶらしいのだ。
正確には建物の爆破解体らしいのだが、そんなことはどうでもいいか。とにもかくにもホロウを経由して資材を運ぶという前代未聞の工法にいま世間は大賑わいというわけさ。無人制御技術を導入した貨物列車をつかうらしいし。
「よくわからんが、何でそこで逃げるって選択肢がないんだ?電車を止めるよりもそっちの方が楽だろうに」
「えーと、あーとその……と、とにかく最後の電車がもう出ちゃうの!止めないとほんとにニコが……!」
ニュースで垂れ流されている生中継の動画を焦った様子で見る猫又さん、リンさんは既にどうしようかと考えているみたいだけど俺とアキラさんはまだ怪しいと疑ってる状態。なんだけど、実際時間がないのは事実だから止めてから考えるのがいいのかな。
選択肢は二つ、避難勧告が出ているエリアにいる邪兎屋をなんとかして別エリアに行かせる、もう一つは電車を止めて爆破そのものをなかったことにするか遅らせることだ。個人的には前者をお勧めしたいところだが猫又さんが主張するのは後者。依頼者って形になるんだろうからその意見は尊重すべきだが……
「まずどこで止めるんだ?通報ってのはダメだろ?ホロウレイダーだし」
「そうだね、彼女たちがホロウレイダーだと公的機関にバレるのはよくない」
「だからってみんながいる前で電車を止めたら治安局が~~……」
『提案、ならばホロウの中で電車を停めるのはいかがでしょう』
Fairyの提案に俺はなるほどと膝を打つ。ホロウと中と外は通信ができず外部から中を覗き見ることもできない。無人の列車ならばそれはトラブルとして映るはずだ。その間に邪兎屋が直面している問題を何とかしてしまえってことね、優秀なアシスタントだこと。さすがはパエトーン。
そうしてあれよあれよという間に話が進んでいく。なんと車両のリアルタイムでの位置把握まで可能なFairyのおかげで今からデッドエンドホロウに行く運びとなっていく。まあ、ほぼほぼ部外者の俺が話に置いて行かれるのはしょうがないのだが。
「さて、あとなんだけど……オーダー、今の話を聞いても依頼は受けてくれるかな?」
「構わないが、テストもなしに依頼していいのか?」
「ああ、君の腕は信頼できる。イアスがここまで心を許してるんだから悪い人でもないだろう」
「了解した、荷物をとってくるから5分待っててくれ」
「なるはやで頼むよザイン!猫又とイアスだけだったらデッドエンドホロウは少し怖いから!」
了解、と声をあげてから俺は店を後にする。イアスが嬉しそうに手を振り振りしてるのに振り返してから全力でマンションまで帰り、ライトセーバーと何とか繕ったジェダイ・ローブを背嚢に入れて指定されたビデオ屋の裏に回り込む。
すでにそこにはイアスと猫又さんが社用車らしい車に乗り込んで待っていた。乗り込むと猫又さんがアクセルを踏み込んで横転しそうな勢いで道路に飛び出していく。イアスだけ持っていくのはなんか変な感じだな、いやボンプの案内を頼りにホロウ内を探索するのが一般常識だから俺がおかしいのだけど。
俺がいなくなった後にどうやら作戦を考えていたらしく、まず無人走行の列車のレールの切り替えポイントあたりで進路に障害物を設置しトンネルに誘導、誘導後トンネル内でイアスを電車内に投げ入れて制御を奪って止める、これらしい。
「それが一番足がつきにくいか。了解だ、猫又さんは体力を温存しといてくれ。道中のエーテリアスは俺が請け負う」
「舐めないでよね!エーテリアスくらいへっちゃらだよ!」
「そうじゃない、適材適所だ。いざという時君が全力でイアスを持って走れないと俺が困る」
シリオンの身体能力は人間の比じゃない。猫のシリオンだというのならばその俊足は必要な時まで取っておいてほしいだけだ。デッドエンドホロウは原生ホロウ、俺のフォースの知覚が及ばないほどでかい。不確定要素があるなら排除すべきだ、特に彼女はまだすべてを話していない。何かを任せるには不安が残る。
「で、イアスの中にいるのはどっちだ?」
『私だよ!あと少ししたらホロウに入ってね!最短ルートで案内するから!』
「よし、任せた。猫又さん、出るぞ」
「りょ、了解!」
絶対無免許だろ、という勢いで停車した車。帰りは絶対俺が運転することに決めたがそれはともかくバレない位置に停めてあとは徒歩だ。当然ながら犯罪行為なので周りに治安局がいないのを確認してホロウに入る。すると
『二人とも!前方にエーテリ、アス……おわっちゃった』
「は、速いんだ……」
「任せろって言った手前仕事はしっかりする。急ぐぞ、リンさん方角を」
『う、うん!そこからまっすぐ行って!』
侵入した直後に目の前にいたエーテリアスを抜きざまに起動したライトセーバーですべて切り捨てる。星見さんの踏み込みを参考にしてみたがまだ多分速くなるな、要練習だ。しかしまあ、どうやってホロウ内で通信してるんだ?こんなアドバンテージがあればそりゃあ伝説のプロキシにもなるわな。
進むこと少し、電車の路線だったという話に間違いはなかったらしく線路とホロウに呑まれたせいで回収不能になったらしい電車……というか多すぎだろ。一体いくつ電車があるんだとフォース、あるいはリンさんの案内がなければとっくのとうに迷っているデッドエンドホロウに顔をしかめる。
「ストップだ」
「んにゃ!?あう~……お鼻潰れた……」
『どうしたのオーダーってうわ……』
「ああ、ヌシの仕業だな。近い位置にはいないが息をひそめたほうがいいだろ……ん?」
線路を横たわるように横倒しになった電車の前で立ち止まった俺が手を横に差し出すとドリフトしつつも止まれなかった猫又さんが俺の腕に見事に顔面をぶつける。悪い悪いと謝るものの鼻を両手で押さえた彼女のジト目に苦笑するしかない。
それはともかく、電車同士の衝突でこうなったわけじゃないな、一つだけだし電車の前へこんでたりしないし。外的な力、もっと言えばエーテリアスのせいだ。エーテリアスにはホロウと深く結びついている固体や、単純に力を持ちすぎた個体がいる。俺はそれを勝手にヌシとか呼んでるんだが、実際は金属に肖ったランク付けがされてるはずだ。
それはそうと、何でいるんだ……?へし曲がった電車の向こう側にいる実質同僚のフォースに首をかしげるしかないが、まあいいだろ。とフォースで電車を持ち上げる。ミシミシと音をたてて持ち上がる電車にぎにゃーっ!?と尻尾の毛を膨らませて青ざめる猫又さんとすごいすごいと無邪気に手を叩くイアスの中のリンさん、そして……。
「カリンさん、どうしたんだいこんなところで」
「ザ……オーダーさん!?ああ、よかったですぅ……実はカリン、迷ってしまって……」
『えーと、オーダー知り合い?』
「知り合い。まあ同僚みたいなもんだ。腕は立つぞ、心根もいい。良物件だね……ってあー、みんな来てんの?」
「はい、あのオーダーさん……出来たらでいいんですけどカリンと皆さんを合流させていただけないでしょうか……?」
電車の向こうで所在なさげにもじもじたたずんでいたカリンさんは俺を見て両手をあげて駆け寄ってくる。そりゃーこんな危ないホロウで独りぼっちになったとはつらかっただろうなあ……。カリンさんって16歳で一応同い年になるのになんというか、こう……年下扱いしちゃいそうになる。小動物ってやつだね、捕食されないよう祈っとこう。腹からチェーンソー突き出てきそうだけど。
「ごめん、今割と緊急の依頼回してるんだ。プロキシ、選んでくれ。一緒に進むか、俺がいったん離脱してカリンさんを送り届けた後に合流するか」
『……カリン、だったよね?一番近い出口に案内するから一緒に来て!』
「うん!今オーダーいなくなったらコワイぞ!おっきいのに出くわしたらいくらあたしでも……」
「だ、そうだカリンさん。合流は無理だけど出口までは送ろう、我慢してくれないかい?」
「は、はい!ご無理をさせてすいません!カリン、頑張ります!」
見捨てるって選択肢はないと信じたかったので手分けするか一緒に行くかの2択を提示してみたがデカブツが近くにいるかもしれないと考えたリンさんは戦力の分散を嫌ったらしく中継地点を増やすことにしたらしい。まあ、個人的には手分けしたほうがいい気がするけどね。何でここにヴィクトリア家政がいるのか聞きたかったから。
「電車との合流ポイントは?」
『大丈夫、私たちの方が先行してるよ!』
「了解、出口はこっちだ!」
「なんで!オーダーは!キャロットも見ずにホロウの道がわかるんにゃあ!?」
『それ、私たちも知りたい!』
「企業秘密だ!」
ひと手間増えたので走っている俺たちである。元から余裕はほとんどなかったので時間短縮のためだ。リンさんがホロウ内の線路を組み替えてホロウの出口のあるあたりに変えてくれたおかげでどうにか間に合いそうだ。素早いけど持久力がないらしい猫又さんがきつそうだが、イアスをカリンさんに持ってもらい道中のエーテリアスはすべて俺が片付けることで何とかなっている。
カリンさんのチェーンソーが唸ることはなかったもののおおむね予定通りに事は進んでいく……待てよ。列車が近くなっていくごとに感じているものがある……これは、おかしい……電車の中に人がいるぞ!?
「リンさん、猫又さん……このままカリンさんとホロウを出るんだ。電車は俺が止める」
「にゃ!?何言ってるの!?それは無理だってさっき……」
「事情が変わった。電車内に人がいる、このままいくと猫又さんの顔が割れる。俺なら止めた上で何とか逃げられる。だから……先に戻って全部話すんだ」
『でもそれだとオーダーが……』
「で、できます!オーダーさんはこの前虚狩りの方と一戦交えて逃げ延びてらっしゃるんです!電車くらいならお茶の子さいさいですっ!」
「そゆこと、カリンさんと抜けてくれ。俺は後で合流する、いいな?」
最後は有無を言わさなかった俺の口調に猫又さんとリンさんは唾をのんで頷く。さっき電車を持ち上げて見せたんだから止めることだってできるさ。バチン、と猫又さんの背中を叩くと彼女は覚悟を決めた顔をして走り去る。カリンさんがついていこうとしたときに彼女に書きなぐったメモ用紙を手渡した。頭が取れそうな勢いで頷いたカリンさんもそれに続く。イアスが止まってるのでどうしたのかと思うと
『オーダー、僕だ。アキラだ。リンに変わってもらった』
「どうしたんだ急に?」
『いや……自棄になったのかと思ったんだけどどうやらそうじゃないみたいだ。できるって顔に書いてあるね』
「できないことは最初から言わないさ。だけど、不安因子は潰すべきだよ。いつも一人でやってるから一人の方がいいんだ。最近は皆も悪くないとは思ってるけどね……巻き込みたくないんだ、許してくれ」
『謝らないでくれ、彼女たちのためなんだろ?……勧めたいビデオが山ほどあるんだ、会員カードだって渡してないし』
「ドキュメンタリーがいいな、落ち着く奴。最高の頼むよ」
『了解、きっと趣味が合うよ僕ら。頼んだ』
任された、と返事をするとイアスはリンさんが入っているときは違う力強い動作で先で待っている二人に追いつこうと走り出した。ふーん、ドキュメンタリー好きなんだアキラさんは。いいな、男友達になれるかもしれない。
もう急ぐ必要はないので歩きで地下鉄の路線に入っていく。間近に迫った電車のライトと不協和音が目と耳を刺激して不快感を走らせる。目の前に迫った電車に向かって俺は片手を向けてフォースを振るう。
ビタァッ!!!と物理法則を無視した止まり方で電車は止まるものの、慣性は殺せなかったのでありとあらゆるところのガラスがはじけるように粉砕され、中身がシェイクされる。運転席をライトセーバーでくりぬいて侵入し、自動運転機械を一刀両断してやった。手動で動かないとさすがに中のやつらが脱出できなくなっちまうからな。
実質的な列車事故の中身となった傭兵らしい奴らは全員が気絶、死にかけだけフォース・ヒーリングで死なない程度に治してやってから、俺はデッドエンドホロウを後にした。
軽率に電車持ち上げたり止めたりしてる……。それはともかくお待たせしました。構想がすみましたのでゆっくりと更新していきます。