フォースはいつでもエーテルと共に   作:光明面と暗黒面ってルビ無しで読めないよね

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第12話 ヴィジョンとフォースの暗黒面

 パエトーンと猫又さんの二人より少し遅れてしまったが俺はデッドエンドホロウの離脱に成功した。そして、カリンさんの連絡が上手くいったことにも安堵している。普段はおどおどしてドジも多いがカリンさんも曲がりなりにも超富裕層御用達のメイドの一人、仕事はきちんとしてくれるのだ。

 

「ザイン様、カリンより連絡を受けて参りました。また、カリンの救助へ心から感謝を。して、私共に何用でしょうか」

 

「ごめんね、ライカンさん。急な呼び出しで。ヴィジョンの爆破の件は知ってるよね」

 

「勿論です。現在何者かの襲撃を受けて爆弾の輸送を行っていた列車が止まったと……」

 

「うん、それ俺ね。別口の依頼で止めたんだ。爆破予定場所に人がいるから時間稼ぎが欲しいっていうの。だけど、事情が変わった。あの列車の中には武装した人間が乗っていたんだ」

 

「……なるほど。少々込み入ったお話になりそうですね」

 

 この出口から出るので待っていてほしい、そうヴィクトリア家政に言伝をカリンさんにお願いしたのだが、さすがはライカンさん。俺が呼び出すということは相応に重い事態だということを見抜いたらしく今の仕事を任せて本人がやってきてくれた。

 

 往々にしてこの町、新エリー都には黒い噂や取引が絶えない。なにせ上を仕切っているトップの企業ですらそうなんだ。プロキシやレイダーに全く頼らない企業の方が少ない始末なのだから。ただ、今回のヴィジョンの件はちょっとおかしなことが多い。頼れる人手が欲しいと思った。

 

「いま俺の依頼人が事情を聴いてる頃だ。なんで無人のはずの列車に兵士が乗っていたか、場合によってはめんどくさいことになると思う」

 

「そのご依頼の方の事情如何になりますが、確かにヴィジョンは黒い噂が絶えません。入札の際もひと悶着あったと」

 

「……俺が今してる最悪の想像なんだけど……爆破エリアの住人が丸々残っててそれを抑え込むための増援じゃないかって疑ってる」

 

「――――由々しき事態です、仮にザイン様のご想像の通りなら……」

 

「依頼人の仲間がどうして爆破エリアから動かないのか、じゃなくて動けないなら……これが一番可能性が高い。そうなったら俺じゃ手が足りない」

 

「如何様にもお任せください。必要な物資、人手、あるいは伝手でもなんなりと」

 

「ありがとう。詳しいことは事情を聴いてから連絡する。ディニーに糸目は付けないから」

 

 皆まで言わずともライカンさんには俺が想像する最悪の未来が想像できたらしい。いくらフォースを操れても俺は一人だし、ワープゲートを作るみたいなこともできない。人手がいる、レイダーでもなんでも。ただ公的機関には頼れない、なら一番信頼できる裏の人たちに頼むのだ。

 

 お送りします、とライカンさんの運転する車でパエトーンのビデオ屋まで戻ってきた俺はclosedの看板を無視してドアを開けて中に転がり込む。すまない遅れた、と挨拶をするとアキラさんはほっと息をついてリンさんはよかった~~!とへなへなソファに沈んだ。駆け寄ってきたイアスを抱き上げ、事の次第を訪ねる。

 

「で、何がどうしてそうなったのかの事情は聴いた?予想とはずれてくれると嬉しいんだけど」

 

「……ちなみになんだけどどんな予想をしてたか聞いていい?」

 

「住民が爆破エリアに残ってるから何とかして救いたいって予想」

 

「あはは……ザイン、大正解だ。予想通りだよ、もしかして未来とか見える?」

 

「……外れてほしかったんだが?ああ、もう。どうするんだよ」

 

 俺は、戦闘時以外でフォースの未来視を使わないようにしている。STARWARSだってそれで不覚をとったり変にこだわりがでて最悪な事態に陥ったりすることがあったしな。そもそも視えるのはその時点での大体最悪な結果だ。変えることはできるにしろ見たいもんでもない。

 

 どうするんだよ、と俺がぼやいた時点でどうやら対処法まで会議は終わっていたらしく、まずはとにもかくにも住人達の足を確保しなければならない。なんせ100人単位らしいからな、そこでヴィジョンの監視所にある電車を拝借しようという話になった。

 

「……電車自体は手動なら走行できるけど武装した奴らは軒並み重傷まで追い込んだよ。徒歩の方が安全じゃないか?」

 

「え、そうなの!?てっきり目くらましかけて一時的に止めたもんだと」

 

「仕事はきっちりやる主義なんだ。それはともかく襲撃されたことは伝わるはず。電車が引き返してるのか監視所にいってるかはわからないけどね」

 

「いや……それでも電車の走行性能と運べる量は高い。早ければ早いほどヴィジョンの悪行を止められる時間的猶予ができる」

 

 なるほど、そもそも住民が避難したら爆破されてもよしじゃなくて爆破そのもの、もしくは工事そのものをいったん止めたいわけか。それなら奪いに行く時間も考慮すると電車の方が確度がたかいな。ここはアキラさんの言うことに従っておこう。

 

「じゃ、提案。最悪の想像が形になった以上巻き込めるものは巻き込みたい。さっきカリンさんの上役に言伝を頼んで協力を取り付けた。俺と同僚たちで電車を奪ってくる。パエトーンの二人と猫又さんは先に爆破エリアに行って住人たちを駅に集めてほしい」

 

「そっか、ザインってばプロキシいらずだもんね!しかも人の記憶に残らないし、誰が行くよりも安全かも!」

 

「そんなことしてたんだ……なんか、ニコたちと違って用意周到で怖いぞ……」

 

「邪兎屋ってそんな行き当たりばったりなの?」

 

「経営面に関しては、そうだろうね……」

 

 あ、そうなんだ……と顔だけ覚えてる二人組の上にいるいまだ顔も知らぬ社長になんだかポンコツ属性が追加された気がしたが作戦は決まった。プロキシたちはここに残り、俺は回り込んで監視所へ、猫又さんはイアスと一緒にデッドエンドホロウに。行動開始だ。

 

「あ、きた。あんたの仕事って聞いたけど、詳しいこと教えてくれる?」

 

「ライカンさん、待っていたのも驚きましたけどなぜエレンさんを?」

 

「彼女たっての希望です。説明を二度聞きたくはないそうなので申し訳ありませんが車内で情報共有を。どこへお送りしましょう」

 

「最悪の想像が当たりました、とだけ先に言います。ヴィジョンの監視所わかります?」

 

「把握しております。いきましょう」

 

 俺がビデオ屋を出るのとドンピシャのタイミングで前に車が止まる。運転席にいたのはライカンさんで、後ろの席にいたのは膝の上に尻尾を置いているエレンさんだった。大方リナさんが来ると思ってたんだけど彼女とは意外な。

 

 それはともかく、と俺は車内で情報共有を済ませる。ヴィジョンの工事予定の場所にまだ住人が取り残されていること、それを避難させるためにヴィジョンの監視所から電車を奪ってデッドエンドホロウ経由で逃がすことにしたこと、よしんば工事自体をストップさせることだ。

 

「なにそれ、ヴィジョンってやつサイアクじゃん。ニンゲンなんだと思ってるわけ?」

 

「全くもってその通り、だけどエレンさんいいの?ホロウレイダーなんて比にならないくらいの犯罪しに行くんだよ?ライカンさんも、降りたければ送ってくれるだけでも、いった!?」

 

「あのさ、聞かせておいてそれはないでしょ。悪いことかもしんないけど、人助けならいいことじゃん。話聞いて逃げたら今日からあたし気持ちよく眠れない」

 

「あくまで選択権を提示しただけぶべらっ!?」

 

「くどい」

 

 エレンさんの膝の上にあった尻尾がしなりをもって俺の顔面にぶち当たる。ヴィクトリア家政と学校においてもはや日常に一部になったそれだけど、痛いもんは痛いのだ。しかも連撃である。力が抜かれた尻尾がそのまま俺の膝の上に置かれる。ライカンさんも苦笑いで何も言わない以上参加するということらしい。ほんとにいい人達と知り合えたもんだ。

 

「エレンさん、これの報酬とは別に最近ルミナススクエアにできたケーキバイキング、どう?」

 

「奢り?」

 

「勿論、これで返せるかはわかんないけどね」

 

「あんたあたしのこと食べ物やっときゃ釣れるって思ってない?ま、付き合ったげるけど」

 

 尻尾がまた持ち上がって、尾びれの先で俺の頬を撫でてからエレンさんの膝の上に戻る。ライカンさんにも何か考えるべきだなと思いつつも、軍用車の通りが多くなってきたので俺は気を引き締め、ジェダイ・ローブのフードを被ったのだった。

 

 見張りはマインド・トリックで眠らせ、監視カメラはこういうのに異様に詳しいライカンさんが映る前に一つ残らず見抜き、死角に入ってやり過ごす。どうしても無理な時はフォースで配線を弄って一瞬作動不能にしてその隙に抜ける。フォースの感知で人を避け、最小限の戦闘で電車が保管されているエリアに入り、目的の電車の運転席をこじ開けて乗り込んだ。

 

「少々、荒い運転になりますがご容赦を。オーダー様、切り替えはお願いいたします。エレンは万が一の露払いを」

 

「了解」

 

「おっけー」

 

 なんでライカンさんが電車を運転できるのかはともかく助かった。ターンテーブルのように路線を切り替える切り替え装置をフォースで強引に動かして回転させ、目的地の路線に合わせる。

 

「ごめん、一旦降りる。3分で戻るからそのまま行って!」

 

 フォースでの感知で引っかかりを覚えて俺はそのまま運転席から二人が止める間もなく飛び出す。目標は、ただ一人……廊下を歩いているヴィジョンの社長、パールマンだ。どうやら俺たちが潜ってるのはわかってるから避難したみたいだが、そうはいかんぞ。

 

「やあ、こんにちは。ついてくるか、無理やり連れていかれるか選んでくれ」

 

「お、お前は!?何してる、早く蜂の、巣、に……っ!?」

 

「後者か、手間が省けてたすかるよ。ああ、抵抗すれば膝から順番に落とすからそのつもりでね」

 

 窓を蹴破って現れた俺にビビリ散らかしたパールマンであったが、すぐに護衛に射撃の指示を出す。だがその前に俺がライトセーバーで銃をすべて断ち切り、護衛全員をフォース・プッシュで壁に叩きつけて制圧したのを見て喉を震わせるだけになった。

 

 これ見よがしに分厚い鋼鉄製のドアを紅い光刃でゆっくりと切断してやるのを見せるとパールマンは振り子人形のように首をぶんぶんと振って静かになった。うん、これでよし。フォースでパールマンを持ち上げて電車に追いついた後また運転席にお邪魔する。

 

「ただいま、重要参考人連れてきましたよ」

 

「お見事です、オーダー様。速やかにデッドエンドホロウへ参りましょう」

 

「いや、このまま別れよう。俺はこれを持ってヴィジョンを脅します。時間稼ぎにしかならないでしょうけど、ないよりましかと」

 

「……承知いたしました。キャロットは私が持っていますのでこのままでも問題ありません。ご武運を」

 

「……一応、心配はしてるっていっとく。戻ってきてよ」

 

「ありがと」

 

 差し迫った危険は、住人達……それもエーテル適応体質じゃない住人達だ。パールマンを確保した以上下手なことをしないだろうが万全を期したい。最後のピースは、俺が嵌めよう。背嚢の中からガスマスクを取り出して装着する。パールマンは記憶を消せるが、機械はそうじゃない。黒のガスマスクの呼吸音を残して、また俺はパールマンを掴んだまま電車から飛び降りた。最後の切り替えポイントが切り替わり、電車が去っていく。

 

「責任者、あんたか」

 

「ええ、そうよ特別指名手配犯さん?」

 

「そうか、じゃあ言うが……こいつが惜しければ爆破を今すぐやめろ。住民を巻き込む理由はないだろう」

 

「簡単に言ってくれるわね……それじゃあヴィジョンはこの件を世間にどう申し開きしろと?」

 

「知るかそんなの。最初から避難を済ませておけばよかった話だったろ。そうやって蔑ろにした結果がこの状況だ。自業自得だな、実権者さん」

 

「そう、その男に価値がないのは最初から気づいていたのね。でもね、この状況……狩る側は一体どっちかしら」

 

 やってきたのは、大群とパールマンが会見をしたときに常にいた女性……秘書だ。ただ、その態度からしても、フォースで見た中身からしてもどうやら実権を握っていたのはこの女らしいな。大群に囲まれた俺に価値のない人質、有利なのはどっちかと言えば女の方になるだろう、普通ならな。

 

 銃を構えた兵士たちを一瞥した俺は、怒りで煮えたぎるフォースを全力で開放する。腹が立っていた、事情が分かったときから。人を人とも思わぬその態度に、逃げることも許さない傲慢さに。だから、さっき無意識に紅い光刃を手に取ったのだ。

 

 怒り、殺意、憎しみ……暗黒面のフォースは制御が難しい代わりに比類なき威力を持っている。殺しはしないが立場はわかってもらう。大群が嵐に呑まれたように吹き飛び、車がいくつも舞い上がって原型を失っていく。殺しはしないように調整したが、戦闘は不可能だ。

 

「狩る側が、なんだって?」

 

「くっ……かっ、は……」

 

 フォース・チョークで持ち上げた秘書に、俺はそう問いかける。パールマンは地獄のような光景を見て逃げることすらできずに、震えていた。

 




 住人巻き込んだのを知ってブチギレ系主人公。動機はライトサイドなのにやってることは圧倒的ダークサイド。やっぱりライトセーバーの色分けは便利ですね。描写するだけで主人公が今どっちにいるか分かりますもん
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