フォースはいつでもエーテルと共に   作:光明面と暗黒面ってルビ無しで読めないよね

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第13話 フォースと幕引き

「素晴らしい……!」

 

「……何を言っているんだ?」

 

 お抱えの軍隊は全滅、影武者のパールマンは腰が抜けて動けず、自らは地に足がついてない上に首に手をかけられている状態。その状態で、素晴らしい?何をバカなことを言ってるんだ?ちゃんと息ができるようにしているんだけど。

 

「あら、ちゃんと褒めたのにお礼も言えないの?その不可視の力、エーテルを寄せ付けない未知のエネルギー……!欲しいわぁ……!」

 

「……悪いんだけど、あなたにこの力は相応しくないよ。すぐに暗黒面に堕ちるだろうさ」

 

「……やはり、知っているのね!?自らが振るう力の詳細を!それはその力が体系的に存在する証!もう少し、見せて頂戴……?」

 

 その言葉と共に、強制的に刹那の未来が見えた。自らの胴と頭が泣き別れする未来を。回避をするために全力で動く、姿勢を正し、ライトセーバーを握り締め全力で斬り上げる。その結果感知よりも早く俺に迫っていた有機的な刃を根元から断ち切ることに成功する。

 

「さようなら。悪いけど、茶番に付き合ってる時間はないの。実験なら大歓迎よ」

 

「なんだこいつ……?エーテリアス、なのか……?」

 

「■■■■■……!!!」

 

 そんな馬鹿な、という自らの常識を打ち壊す光景に一瞬脳がフリーズする。集中力が必要なフォースの制御にそれは致命的な隙となった。フォース・チョークから脱することができた秘書は多量の煙幕とフラッシュグレネードを起動して姿をくらます。チクショウ!逃がした!

 

 仕方ない、今は目の前のことに集中しなければ。ホロウ外なのにエーテリアスが死なずに実態を保ってるだなんて、驚愕だ。もしこれが自然にあるいは人為的に起こりうることならこの都市は多大な危機に直面する。秘書は逃がしたが、こいつは逃がせない。

 

 右手に生えた刃を再生させ終わったヤツは、ふいに俺から視線を外す。その先にあるのは、無力化した武装隊員たちだ。また、未来が見える。ヤツは手当たり次第に武装隊員と融合して異形の肉塊と化していた。ここじゃダメだ、死人が出すぎる。ああくそ、厄日だ。

 

「おいパールマン。逃げずに捕まるなら助けてやるが、どうする?」

 

「逃げない!絶対逃げないからあの化け物を何とかしてくれぇ!ほら、もうこれで逃げられないだろ!?」

 

「まあ、誠意だけは伝わった。じゃあな、人の心があるなら自分がやったことを省みてくれ」

 

 後ろでもう顔中汁まみれになってるパールマンに問いかけると後ろに倒れてる武装隊員たちから手錠を漁るとそれを両手両足に着けた挙句に近くの鉄骨に縛り付けた。さすがにそこまでされたら信用するしかない、ヴィジョンは人でなしだが俺はそうはなりたくない。

 

 フォース・グリップで化け物を掴んで俺も移動を開始する。目指すはデッドエンドホロウだ。抵抗が激しいがここら一帯のフォースはさっき軍隊を壊滅させたときに掌握している。いくら抵抗が激しかろうがこれなら掴み続けることができる。

 

 投げ飛ばすようにデッドエンドホロウに化け物をぶち込み、続けて突入する。叩きつけられてぺちゃんこになった化け物はみるみるうちに再生して元の形に戻る。俺を完璧に脅威と感じたらしいヤツは脱兎のごとく逃げようとするもののフォースでそれを読んでいた俺はすれ違いざまにコアをセーバーで貫いてやった。

 

「冗談だろ、さすがにこれで死なないのか……?」

 

 再生した、それも変わらない、むしろ加速しているようにすら思える。エーテリアスにとってコアは弱点だ、なくなれば崩壊する。そのコアをぶち抜いてやって再生するだと?逃げられないことを察した化け物は反転して俺の方に迫る。

 

 その一撃は重く、強い。ヌシ級並の攻撃力があると考えていいだろう。返す刀でいくら切り刻んでやっても再生する、埒が明かない。フォース・ライトニングで感電させ、プッシュで押しつぶし続ける。地面が蜘蛛の巣状にへこんでいきヤツは起き上がれぬままになっている。

 

「……あー、勘弁してくれない?」

 

 電車の信号機を侵食させて作ったらしい斧をセーバーが両断する。俺に攻撃を仕掛けてきたのは今潰れたせんべいになってるやつじゃない。このホロウの主、デッドエンドブッチャーだった。さすがに2対1はやばいと感じ、背中に冷や汗が垂れる。

 

 だが、デッドエンドブッチャーにとって俺はおまけに過ぎなかった。両断された斧を適当な信号機を引っこ抜いて再生させたデッドエンドブッチャーは、俺が動きを抑え込んでるヤツに猛然と突進して斧を振り下ろし始めたのだ。

 

 そうか、デッドエンドブッチャーは異物を感じてそれを排斥しに来たわけか。だけど、その程度で殺せてるなら俺がもう殺してる。どうするべきか、と思考を巡らせようとした途端にコアを光らせた化け物がデッドエンドブッチャーのコアに己の腕を押し込んだのだ。

 

 爆発的なエーテルの奔流が発生する、フォースを纏った俺でも感覚的に感じ取れるほどの破壊的なエーテル濃度。仮にエーテル適応体質であろうと一時間でエーテリアスになるであろう程の濃度だ。これ、もしかして……最悪な結果って奴じゃないか?

 

 両手は斧と融合し、背中と腰からは手が一対ずつ生えたようなデッドエンドブッチャーを前にして俺は無言でガスマスクを投げ捨て、フードを深くかぶりなおした。前にいたところで言うなら阿修羅、それがしっくりくるであろう融合エーテリアス。

 

 強さ、というならおそらく俺が戦ったエーテリアスの中でトップに位置するであろう。お師匠様や星見さんと比べるのが申し訳ないくらいにランクダウンするものの強敵であることに違いはない。

 

 バキィィン!とプラズマの刃が奏でたとは思えない音でヤツの肉断ち斧を弾き返す。過剰なエーテルとフォースが反発しあってる。返す刀の斬撃は通るものの再生力も変わらず焼け焦げた肉が盛り上がるように元に戻る。ただ、固くはなっている。鉱物が変化したエーテリアスのような斬り心地だ。どうする、これは……!

 

「いた!オーダー!あんたなに……して……っ!?」

 

『オーダー!きゃあっ!?』

 

 反応できたのは、たぶんフォースが俺に未来を見せたからだ。外の状況はわからないが凄腕のプロキシであるパエトーンの二人と戦闘力に秀でたエレンさんが俺を探しに来ることは不思議じゃない。だけど、彼女たちにとっては既に作戦は終わったものだったから俺と合流するだけのつもりだった。臨戦態勢じゃなかった、そこに隙はできる。

 

 フォースで感知できなかったってことは空間の裂け目を通じて直接ここに現れたんだろう。そのせいで臨戦体制に入るのが数瞬遅れた。それだけでヤツにとっては十分だ。ホロウの主と融合した埒外の化け物にとっては取るに足らない距離にいるのだから。

 

 新たな乱入者に歓喜したヤツは斧で真っ二つにしようとイアスを抱いたエレンさんに斬りかかる。全力で攻撃に割り込む、だけで精一杯だった。エレンさんとイアスを左手で抱きかかえ何とかセーバーを割り込ませる。

 

 咄嗟だから、フォースなんて二の次だった。当然吹き飛ばされる……せめてぶつかる角度だけでも調整してミサイルのように廃棄された電車とコンテナに突っ込んだ。衝撃と激痛、金属の箱を3つも4つも貫通して背中から地面に叩きつけられる。

 

「……っつ、痛ぅ……ザイン!?アンタ無事……」

 

『ザイン……左腕……』

 

「ああ、イカれたらしい。取れてないだけ奇跡だな……ごめん二人とも、無事?」

 

「言ってる場合じゃないでしょ!?逃げるよ!仕事は終わったんだから!」

 

 俺の上に乗っかる形となったエレンさんとリンさんは血相を変えて俺の上から退いて、恐らく変な形にぐしゃぐしゃになってるであろう感覚のない左手を見て言葉を失う。慌てて本名の方を呼んじゃってるや。むしろクリーンヒットで形があるだけすげーだろ、さすがはフォースだぜ。

 

 エレンさんがした逃走の提案は全くもって正論なんだが、今ここでアレを逃すわけにはいかない。ホロウ外で形を保って尚且つヌシ級の戦闘力をもつエーテリアス、まあエーテリアスじゃないかもしれないがとにかくそんなもんを野放しにできない。新エリー都がひっくり返りかねない。

 

「いや、あれは仕留めないとだめだ。あとで詳細は説明するけどあのエーテリアスはホロウの外でも生存できる。デッドエンドブッチャーを乗っ取ってああなったんだ。外に出たら最悪地区まるまるが死体の山になる……」

 

『ホロウの外で生きられるエーテリアス……!?』

 

「だとしても!それはあんたがやらなきゃいけないことじゃない!一緒じゃん、5日間どっかいったときと……!」

 

「フォースが言ってるんだ……アレを放置するなって……」

 

 最後の方はほとんどうわ言に近かった。意識は割とはっきりしてるけど喋るのがつらい。右手で何とか左手の袖を漁ろうとするも上手くいかない。固い音をたててもう一つのライトセーバーが転がった。それを拾ったのは、リンさん……じゃなかった。

 

「ンナ」

 

「……イアス、ありがとう」

 

「ンナーーッ!」

 

 すごいな、イアス。上位命令であるはずの憑依の接続を自分の意思で切るなんて。差し出されたライトセーバーの柄尻を合体させて起動。赤と緑のダブルブレードを右手に持って追ってきたヤツに対峙する。

 

 少しだけ振り返ってみるとエレンさんは唇を噛んで、意を決したように武器を担いでつかつか歩いてきた。戦うつもりなのか、できれば逃げてほしいんだけど。無理か、彼女にそれを選択する理由が何一つないことに気づいた。

 

「あとで凹むまでたたいてやるから」

 

「勘弁してほしいな、十分凹んだばっかりなんだ」

 

「じゃあ、今度はあたしの手からちゃんと食べること」

 

「……なんで?」

 

「恥ずかしくないと罰にならないじゃん」

 

 バッキィィン!と音をたててエレンさんの武器である選定鋏がデッドエンドブッチャーの肉断ち斧を挟んで止める。フォースで勢いを殺したとはいえ止められるエレンさんの膂力はさすがというところ。さらに凍てついたエーテルが斧に氷の波紋を広げる。俺も当然反撃に転じる。ライトニングを纏ったセーバーを回転させて切り上げ、二撃、三撃、四撃で斧ごと手を切り落としてやった。さあどこまで耐えられるか……?

 

「……再生、しない?なんでだ?」

 

「さあ?大きいから時間かかるとか?好都合だしどうでもいい」

 

 たたらを踏んで仰向けに倒れたデッドエンドブッチャーの切り落としてやった右手は、再生しない。むしろ腐っていったようにすら見える。エーテルを使った攻撃を混ぜたから?わからん、けど突破口が見えた気がする。今の状況を再現すればいいんだ、凍らせて感電させ灼き斬る。もう一度だ、急げ!

 

「エレンさん、俺は正直限界が近い。速攻でいこう、全力で凍らせてほしい」

 

「いーよ。あんたに合わせるから……がんばろ」

 

「ありがとっ!!」

 

 パキパキ、ピキピキ……武器の持ち手までも凍り付かせたエレンさんと今できる全力でフォース・ライトニングを込めた俺が同時に飛び出す。エレンさんが前、俺が後ろで。何とか立ち上がってもう片方の肉断ち斧を振り上げたヤツだが、それより先にエレンさんが到達した。

 

 融合したことでできたらしい胸の中央にあるコアに正確に突き入れられた鋏から解放されたエーテルが一瞬でデッドエンドブッチャーを凍結させ動きを止める。一瞬先には内から砕かれるだろうがエレンさんが離れた瞬間コンマの差で俺が放ったフォース・ライトニングに感電してさらに動きが止まる。

 

「オラァッ!!」

 

 我ながら物騒な掛け声だと思うが必死なので取り繕う余裕なんてあろうはずもない。乾坤一擲、これが外れたらいよいよ俺が囮になってエレンさんたちを無理やり逃がすしかない。コアに向かってライトセーバーをぶん投げる。槍投げのようなような形になったそれはコアにぶっ刺さる、もののコアは砕けず残ったまま……しくじったか……!!

 

『オーダー!あそこまでぶっ飛ばして!おねがい!』

 

 唐突に聞こえたリンさんの声にセーバーを引き戻すのすら忘れて全力でフォース・プッシュを使いデッドエンドブッチャーを吹き飛ばした。線路の上に横たわったコンテナに激突したデッドエンドブッチャーが立ち上がろうとした瞬間に、走ってきた電車と正面衝突した挙句にとんでもない規模の爆発が起きる。

 

 咄嗟にエレンさんをかばおうと前に出るが、それよりも先に前へ飛び出て俺たちを庇ってくれたのはいつだか助けた知能機械人と白い髪の少女、そして初めて見るピンク色の髪の女性と猫又さん、ライカンさんだった。

 

「お疲れ様でした。オーダー様、エレン。決死の覚悟、見届けさせていただきましたが遅れてしまったことには恥を覚えるばかりです」

 

「よかったわ~!ヴィジョンのやつらが爆弾ごと電車を捨てて逃げてたんだから!足と武器両方手に入れて一石二鳥よ!」

 

「お、おま!?その手ヤベェぞ!店長!くっちゃべってる場合じゃねえ!すぐにホロウを抜けねえと!」

 

『うん!まかせて!オーダーは歩くの禁止!おとなしく運ばれること!』

 

 どうやら帰りは疲れることはなさそうだ、と両手を腰に当てるポーズをしたイアスの中のリンさんに平身低頭する。いやなフォースは消え去った、つまり殺せたんだ。ああ、よかった……。




 多分このくらいしないと暗黒面パワーを振るう主人公くんから逃げられません。サクリファイスの登場だぁ!!!なお後のことは全く考えてませんお許しください。

 感想での指摘を受けて加筆を行なっています
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