フォースはいつでもエーテルと共に 作:光明面と暗黒面ってルビ無しで読めないよね
……俺はザイン、ザイン・スカイウォーカー。しがないホロウレイダーである。しいて変わったところをあげるとすればフォースという脅威の大宇宙パワーを使えることと現状左腕全体が粉砕骨折しているところカナ……現実逃避はやめよう。
「はい、ザイン。あーん」
「……あむっ」
「はい、よろしい」
俺は今、学友であり同僚であるエレンさんと一緒にルミナスクエアに新しくできたケーキバイキングに訪れていた。あえて言うまでもないが俺のおごりである。報酬だしね、しかたないね。だが、不可解なのはなんで俺はエレンさんに食べさせてもらっているのかということだ。
いやわかってるよ理由は、デッドエンドホロウで無茶苦茶した罰なんだろ?この前から続いてこれだからエレンさんとしてもお仕置きが足りなかったとかなんとか……なんでここまでされるのか、あるいはしてくれるのかはわかんないけど。
珍しいことにカスタードクリームでデコレーションされたショートケーキをエレンさんのフォークから直接口に運ばれる。中流から上流の階級をメインターゲットにしてるだけあって上品でしつこくない甘さとイチゴの酸味がマッチしている。ありていに言い表せば美味しい。
エレンさんはサメのシリオンという特性上一口がかなり大きい、彼女のサイズで切り分けられたケーキは俺には大きすぎるので頬張ったとしても口がクリームで汚れてしまう。ナプキンで口を拭っていると、同じフォークをそのまま使ってエレンさんはケーキを片付けていた。
「なに?足りないの?」
「あぁ……いや、割とお腹いっぱい。俺はいいから好きなだけ食べなよ。気に入ったのがあれば持ち帰りもできるみたいだしね」
「ふーん……ねえ、ザイン。あんたさ、いつも
「エレンさんが気にしてること自体は割と最近からだよ。君たちと出会うまでは、正確には虚狩りとやり合う前はむしろ危険は避けてた」
「じゃあ、なんで?」
「そうだなあ……今までは俺、仕事の時はずっと一人だったからね。誰かと一緒に行くようになって守りたいって思ったからかな。多分俺は根本的に自分より他人の方が大事なんだろう」
オーバーサイズのパーカージャンパーの前を開けてネクタイ付きシャツに黒のスカートという私服姿のエレンさんは、俺にフォークを向けてそんなことを問うてくる。俺は自分の命が大事だからいままで危険を避けてきたが、デッドエンドブッチャーの変異体とやり合ってから気づいたのだ。
例えば、エレンさん、イアスにパエトーン、あるいは福姐さんあるいは儀玄お師匠様。それこそヴィクトリア家政の面々、雲嶽山のだれか……あそこでだれが来たとしても、俺より強かったとしても俺は迷わずあの肉断ち斧に割り込んでいただろうということだ。
ホロウ内では基本俺は一人だった。だから、優先するものが俺一人だっただけの話だ。片鱗なんざいくらでもあった。目的忘れて救助優先にするとかね。実際のところ俺が何か変わったといえば何も変わっちゃいない。
光明面だけでも暗黒面だけでもなくありのままフォースを受け入れるのが肝要なように、これがありのままの俺だっただけっていう話。そういう話をしたつもりだったんだが、エレンさんの顔はちょっと不満そうだ。まあ、こういうことだろう。
「やられる方はたまったもんじゃない、でしょ」
「あんた言葉にするの上手いよね。そ。でも、あそこで割り込んでくれなきゃあたしは死んでた。それはお礼を言わないと。でも、なんだろ……ここぎゅっとすんの。イタイからいやだ」
「気を付けるけど、約束できないかも。例えばエレンさんは、目の前で人が死ぬ光景がみえたとして、それを見て見ぬふりできる?」
「……わかんない。それ、メンドクサイじゃ流せない話題だし。でも……カリンちゃんがそうなったら多分、あんたと一緒のことする」
「そうさ。俺の戦いってそれの連続なんだ。一人の時は俺だけしか見えなくても、誰かと一緒にいればその誰かがどうなるのかわかる」
ネクタイごとシャツの胸を掴んで珍しいことを言うエレンさん。彼女が曝け出した剝き出しの感想に俺も誠意をもって回答することにした。フォースによる未来予知を半ば肯定した回答にエレンさんはさほど驚いた様子は見せない。まあ予想通りだったってことかな。
「ソレ、苦しくないの」
「苦しいとは思ってないな。大体見えるのは最悪の結果だ、未来からの警告みたいなもんだからね。逆を返せば……俺が介入すれば避けられるんだ。むしろ、希望が持てるんじゃない?」
「ポジティブだね……暫くアンタはホロウ出禁だから休みなよ。こっちは心配しないでさ」
「これでホロウ行く気にはならないかな。でも心配はしてるさ。それくらいはしてもいいだろ?」
「……まあ、それくらいならね。でも、ま……あんたが口滑らしたのは聞かなかったことにしたげる」
それだけ言ってエレンさんはそっぽを向く。ただ、見える横顔の口元は緩く吊り上がっていた。しかし、想像だにしなかったなあ。クラスの高嶺の華、あるいはサメなんて言われてた女の子とケーキバイキングに二人して行く仲になるなんて。ちなみに俺はプリンが好きなんだが、エレンさんはクリーム系が好みらしい。でも、美味しそうに食べてるのはやっぱりカワイイや。
じゃあね、と家の前まで送ってくれたエレンさんに礼を返す。彼女は結局自腹でケーキを複数個購入したので紙箱を持っていた。また連絡するからとスマホを振った彼女を見送る。いい友達を持ったものだ。
「うぐっ、ぐすっ……うぇぇぇぇん!姉弟子が一緒に行けばザインがこんなことにならずに済んだのに~~~!!」
「いや福姐さん、福姐さんがいたら確かに多少楽になっただろうけど結果は変わんないよ。俺の自業自得さ」
「だめです!もうホロウ禁止ですっ!もう適当観からお出かけするなら福福の付き添い付きじゃないと許しません!」
「学校にも行けないんですけど!?」
「でも~~~~~!!!」
もう俺の背中は福姐さんの涙でびっちょびちょである。ホロウ内で怪我をしたことで暫く動けませんとお師匠様に連絡したんだけど、適当観に来れるかと聞かれたら片手が死んだんでいけませんって返信したら30分で福姐さんが玄関ドアを開けて現れ、お師匠様が後ろからやってきた。おかしいなどんだけ飛ばしても適当観から俺の家まで2時間はかかると思うんだけどなあ?
全治3か月、あるいはもっとが医者が下した俺の腕の診断である。尺骨、肩、二の腕3か所の粉砕骨折、筋肉損傷その他もろもろ合わせてなんだが、あと1週間で元に戻るが俺の自己診断である。なんでか?フォースって万能だぜっていう話だ。
デッドエンドブッチャーのような化け物と戦って変な方向に曲がっていた俺の左腕であるが、ホロウから出る道すがらでフォースで骨を全部元の位置に戻したのだ。その際非常に痛ましい音が鳴って俺を抱いていたライカンさんがめっちゃ青ざめてた。毛でわかんないのに表情でわかるってすごい。
で、あとはフォース・ヒーリングでめちゃくちゃになった筋繊維とか血管とか神経を修復して、怒られて終わった。いやだってさ?ライトセーバーがなくなったんだからさっさと作り直したくてね。壊れたのは回収できたんだけど爆弾で致命的にぶっ壊れて修復不可能になっちまった。もったいないので中の砕けたクリスタルはイアスにあげてしまった。めっちゃ喜んでて嬉しい。
「ことのあらましはメイフラワーから聞いている。お前が遭遇したものについて改めて質問したい」
「……なんでお師匠様が市長と通じているかはともかくとして、俺もよくわかんないんですよね。まず第一としてヴィジョンのトップはパールマンじゃなくて秘書だったみたいですし」
「そのようなことをパールマンは獄中でほざいているようだ。ただ、お前がそういうのならそうなのだろう。問題は、お前をそこまで追い込んだヤツのことだ」
「エーテリアスなのかどうなのかは正直俺もわかりません。ただ、あいつがホロウ外でも生きられるのは間違いない。なにせ襲われたのはホロウの外でしたからね」
「ああ、死体は既にヴィクトリア家政が回収してメイフラワーが分析している。死体が残る点もおかしい話だ」
死体が残っていてすでにライカンさんが回収したのか。むしろ、ライカンさんの手に渡ってよかったと思うべきか?ただ、正直新エリー都の上の方が安心かと問われたら違うとしか言えないのが怖いところだ。裏の仕事をしてるにしろただの学生がそう思うんだから相当じゃないか?
カリ、カリ、と爪の先で俺のギプスをひっかいてる福姐さんを置いて話は進んでいく。そんな仕草をするから子猫ちゃんとか言われるんじゃないの福姐さんよ。正直その仕草めちゃくちゃかわいらしいよ。雄々しさゼロだけど大丈夫?俺は何も言わないけどさ。
「それ、どうするつもりだ?」
「まあ動けるようになったら作り直しですね。こっちで材料集めて郊外に行ってきますよ」
「わかった。何かあれば私にも言いなさい、というか言え。ここ最近のお前は無茶が過ぎる」
「アハイ」
「連絡なかったら姉弟子は怒りますからね!いいですかザイン!?」
エーテル爆弾の威力に耐えられなかったらしい外装がめちゃくちゃになって熔けたライトセーバーを見てどうするのか聞かれた。どうやら事情聴取は終わったらしい。もうすでにフォースによる導きはきていて材料まで頭に浮かんでいる。一番大事なクリスタルに関してはどうやら零号ホロウにあるらしいが、それは後回しだな。
外装には郊外の鍛冶施設を借りないといけないので材料だけ集めて郊外でもう一回作るのがいいだろう。とりあえず完治させないことには始まらない。出席不足でガッコを退学にならないといいなあ……んおっ!?
「し、ししし師匠!?」
「聞きたいことはもう終わった。ここからは個人的な話をしよう。ザイン、よく戻った。頑張ったな」
これから先のことを考えていた俺に対してお師匠様は話を切ることにしたらしく、趣味の畳張りに正座していたのを膝立ちになって同じく正座していた俺を真正面から抱きしめたのだ。ぐわん、と頭を殴られたような感覚がするほど驚いた。
なにせお師匠様は超が10個以上つくスタイル抜群の長身美人である。そんな人に、真正面から抱きしめられたら俺はどうしていいかわからなくなる。しかも、福姐さんまでも俺を後ろから抱きしめたのだ。なんだなんだ、何が起こってるんだ!?
「叱られると思ってたのですけど」
「どこに叱る理由がある。この前のアレは私が焚きつけたとは言え自分の命を投げ出したから怒ったのだ。今回は違うだろう?」
「いやだって怪我して戻りましたし……」
「それはなんのための、誰のための怪我だ?お前が人を助けるために負った負傷だろう。それを誇らしく思いこそすれ叱るわけないさ」
「姉弟子も嬉しいです!こーんな小さかったザインが今じゃお友達を守るために戦ったんですから!」
「さすがにそこまでミニマムだった記憶はないんですけど……」
こーんな、で自分の膝より下を指し示す福姐さんに思わず突っ込みを入れてしまう。さすがに福姐さんの胸くらいは身長あったよ。ただ、家族同然だと勝手に俺は思ってきたけど彼女たちもきっとそう思ってくれてたんだというのがわかってとてもうれしい。
お師匠様をお母さんだとは不敬すぎてとても言えないが、雲嶽山の屋台骨あるいは大黒柱はこの人である。ただ、6年前、無防備にフォースに触れて壊れかけていた俺を救ってくれた人は間違いなくこの人だ。いったん壊れて継ぎなおされた俺にとっては確かに母親のような存在なのかもしれない。口には出せないけど、ぜったいに。
福姐さんも本当に血のつながった姉ではないけど、そのくらい一生懸命になって俺を支えてくれた人だ。でも風呂まで一緒に入ろうとしてきたのはいまだに許してないけど。恥じらいとかないんですか姐さん。
「せっかくだし火鍋でも食べに行きませんか?お腹が減りました」
「いいですね!やっぱりお肉が一番ですよ!」
「そうだな、ルミナスクエアに店があったはずだ。潘には連絡を入れておこう」
抱きしめられていた状態から解放されて立ち上がる。福姐さんに支えられて立った俺は微笑んで先に行くお師匠様と背中を押してくる福姐さんを見て、幸せ者だと再確認するのだった。
なんでギミックで融合体くんを倒す必要があったか、答えがこれです。ライトセーバーくんをぶっ壊したかったからです。エーテル爆弾でもないと壊れるビジョンが見えないんで...