フォースはいつでもエーテルと共に   作:光明面と暗黒面ってルビ無しで読めないよね

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第15話 バレエ・ツインズの上にフォース

「帰って」

 

「なんで?」

 

 べっちんべっちんと電灯を吊っているポールに尻尾を打ち付けているのはエレンさんなのだがなぜか俺に帰還命令を下したのだ。えぇ……と思いつつライカンさんを見る。彼は俺の視線に聡く気づいて咳ばらいを一つして説明を始める。

 

「エレン、今回オーダー様は戦闘員ではなくプロキシとしての参加になります。理解をしてください」

 

「そんなんこの前知り合ったビデオ屋の二人でいーじゃん。パエトーンなんでしょ?」

 

「その二人が受けられないから俺にお鉢が回ってきたんですけど?」

 

「そういうことですわ。エレン、オーダー様の健康につきましても既に完治……してらっしゃいますのよね?」

 

「医者は信じられない顔してましたけど完治してます」

 

 とまあ、エレンさんはどうやらライカンさんに似て割と過保護なところがあるらしく復帰仕事である今回の依頼から何とかして俺を遠ざけようとしているわけなんだ。まああれから2週間くらいしか経ってないからね。医者はレントゲン撮ったら看護師に間違えてないか3回確認してたけどギプス外して手を振り回してやったら青い顔をして納得してくれた。フォース万歳。

 

 あのヴィジョンの件から少したって俺の体もフォース・ヒーリングで完治したんだけど何かリハビリ代わりの仕事を探してて、それでライカンさんに相談したらそれならプロキシ代わりについてきてほしいと言われてここにやってきたわけだ。

 

 現在俺がいるのはバレエ・ツインズと呼ばれる超高層巨大ビルである。ツインズ、というだけあって2本の巨大ビルが真ん中で橋につながれている構造であり……その大部分がホロウに呑まれて天辺だけ突き出ているという不思議なホロウ構造の空間だ。簡単に言ったらクソデカイ双子ビルを中心に発生したホロウってわけだ。

 

 まあエレンさんが言う通りプロキシなんだったらパエトーンのお二人に頼めばよかったんだろうけどどうやら先に先約というか事情があったらしくてこの日程は無理と言われたのだとか。それなら仕事を復帰する俺を護衛しつつリハビリさせようって流れなワケ。

 

「エレンさんは俺が来るのイヤ?」

 

「……その聞き方は、ズルくない?言ったでしょ、わかってよ」

 

「まあまあ、今回俺はほんとに非戦闘員だよ。セーバーもないんだから」

 

 むすぅ、と口を尖らせるエレンさんだが彼女の前で散々危険なことした挙句腕をオシャカにしたのを間近で見せたんだからその反応になるのはしゃーないだろう。間近で見てないからかライカンさんやリナさん、カリンさんもそこまで過反応はしてないわけだし。

 

 別にエーテリアスだけならフォースと雲嶽山仕込みの体術で何とかならないこともない、とは口に出さないことにしよう。ポールが愉快なオブジェに変わってしまうか今度は俺の首の骨が折れそうだ。

 

「ではブリーフィングを。今回のご主人様の依頼はバレエ・ツインズの電源設備、その他のメンテナンスになります。保守点検は私とリナが行いますのでカリンとエレンはその護衛、そしてオーダー様にはプロキシとして案内をお願いしたく」

 

「了解です。元のキャロットと見取り図あります?わかってると思いますけど俺の探索はほとんど感覚みたいなものなので目的地が明確じゃないと迷うんですよ」

 

「それでしたらこちらに。準備ができ次第ホロウに突入いたしましょう」

 

 よし、とフードを被る。今回俺はなんとジェダイ・ローブを着ていない。執事服である、執事服である。ただリナさんが本気で改造したらしくてフードがついているのだ。ソレアリ??と思ったが執事服の上にジェダイ・ローブだと見苦しかったのも事実。まあ、みんなから見てもフードは俺のトレードマークだったってことか。

 

「ではまず、電源設備の確認から……オーダー様、いかがなされましたか」

 

「……いや、知り合いがいるから何でかと思って」

 

「……ダレなわけ?こんなところに」

 

「邪兎屋とパエトーン」

 

「あら、そうなんですか?これはこれは、目的次第では敵対してしまうかもしれませんわね」

 

「できればそれは避けたいところ……オーダー様、先に御一行のところまで案内をしていただけませんか?」

 

 ホロウに入って、フォースの感覚を広げていくと俺たちが入った関係者用の裏口ではなくメインエントランスの方に見知ったフォースが動いているのを感じた。どこか物静かだけど時折エキセントリックな銀髪の少女、アンビーさんに知能機械人でかなり感情豊かなガンマンのビリーさん、二股に分かれた尻尾がキュートな猫又さん、そしてパエトーンが操るボンプのイアス。

 

 ふーん、ヴィクトリア家政の仕事を断ったのって先に邪兎屋でここに来る仕事があったからなのか。何の目的か知らないけど敵対するようなことはないと願っておこう。マジで話し合いで何とかしてくれ、知り合いにフォース向けたくない。

 

 原生ホロウ一歩手前の共生ホロウであるバレエ・ツインズの中身は複雑怪奇っていうか複雑すぎない?これさあ、デッドエンドホロウよりも空間の裂け目もめちゃくちゃになってる空間も多すぎるんですけど?だが俺もそれなりの場数を踏んだレイダーなので安心してほしいところだ。

 

 というかこのビルデカすぎ。高すぎて一番上までフォースの感知が届かない。まあ此の際それはどうでもいいや。こっちでーすと案内してメインエントランスから少し入ったところまで案内する。ライカンさんたちも俺が道を間違えることはないと分かっているので安心した様子でついてくる。

 

「お久しぶり、なのかな?プロキシに邪兎屋さん方。とりあえず話し合いしない?」

 

『あれ!?オーダーにヴィクトリア家政の人たち!?』

 

「ん、あれ?あのボンプなんかちょっと変わった?」

 

「まあ、素敵なアクセサリーですこと。よくお似合いですわ」

 

「おおお!!メイドの嬢ちゃんたちに執事のあんちゃんじゃねーか!?ってお前!?怪我なおったのか!よかったな~~!」

 

 敵意がないことを示すためにあえて気配全開で両手で手を振りながら現れた俺とそれに続くヴィクトリア家政の面々をみたお相手方は即座に武器から手を離して歓迎の意を示してくれる。イアスの中にいるリンさんも俺だと気づいて嬉しかったらしく近づいてきてくれた。

 

 あれ?とエレンさんがイアスを持ち上げる。確かに変わったところがあった。イアスの左耳には紅い結晶をあしらったリング状の部品が、さらにスカーフの結び目には緑色の結晶をあしらったブローチが輝いていた。どちらも俺があげたセーバーの中枢のクリスタルを加工したものだろう。

 

『でっしょ~~!?オーダーがくれたクリスタル、イアスってばず~~っと手から離さないからさ、エンゾウおじさんにお願いして外装パーツに加工してもらったの!これ、ものすごく貴重だっておじさん言ってたけど、よかったの?』

 

「いいよ、砕けちゃって再利用はできないからさ。ここまで喜んでもらえたのなら俺も嬉しいよ。それでなんだけど、何でここにいるの?あ、ヴィクトリア家政はこのビルのオーナーから設備点検を依頼されたんだって」

 

『私たちは……人探しかなあ。えっとね……』

 

 センスいいなあ、そのエンゾウおじさんって人。それはともかくとしてリンさんが言うにはバレエ・ツインズ内でパエトーンの友人兼協力者が失踪したかもしれないので手がかりを探しに来たとのこと。オーダーならわからない?と聞かれたけどホロウが大きすぎて今見れる範囲じゃわからないとしか返せない。

 

「それはさぞかし心細いでしょう。良ければ協力いたしませんか?幸いセキュリティキーは受け取っておりますので裏道を通るよりは安全かと」

 

「俺としてもそれだと助かるなあ。ちょっと広すぎて頭の中でキャロットを作るのがキツイんだわ。計算とかやってくれると助かる」

 

『すまない邪兎屋の皆、今ニコから連絡があった。どうやら裁判の書類に邪兎屋全員で参加すると書いてしまったらしいんだ。皆が飛行船に乗らないともう間に合わない。ヴィクトリア家政の人たちが手伝ってくれるというならイアスを預けても構わないだろうか?』

 

「……デマラさんなにしてんの?」

 

「まあ、いつものこと。あと私もデマラだから名前で呼んで」

 

 ポカである。それはもう大ポカである。実は邪兎屋の面々はヴィジョンの爆破の件について住人達の代理として裁判を請け負っているのけどその裁判に邪兎屋の皆で出るって言っておいて向かったのはニコさんだけとはこれいかに。俺も思わずライカンさんと顔を合わせて苦笑いをしあってしまう。

 

 せっかく会えたのに、と猫又さんが頬を膨らませているが仕事は仕事、ということでアンビーさんは手を振ってビリーさんを引っ張って猫又さんを伴い出て行ってしまった。それじゃあとりあえず人探し優先でなおかつ設備の点検も進めていくとしましょうか。

 

『ごめんねー病み上がりなのに。ほんとに大丈夫なの?お医者さんにはなんて……』

 

「ほんっとそう。きいてよプロキシ、こいつここに来るまで戦力として来るつもりだったんだけど。丸腰でホロウに潜るつもりっていうか今も丸腰じゃん!やっぱ帰りなよ、プロキシいるしさ」

 

「さすがに信用なさすぎじゃない?素手でもそれなり程度には強いよ俺」

 

『んー、でも私としてもあんな怪我して2週間で復帰っていうのは苦言を呈したいかなー。帰れとまではいわないけど、心配は心配だよ?』

 

『エレンの言ってること自体は間違ってないと僕も思う。オーダー、君はいささか自分の限界を先に設定する癖があるんじゃないだろうか。イアスを助けてもらって上でこんなことを言うのは心苦しいけど』

 

「何?今日俺って四面楚歌なの?ってあれ?」

 

 なんか最近の俺怒られてばっかりだな、と階段を上ってパエトーンの二人の目的地……ホロウから突き出たビル、つまりB棟の最上階を目指すために今いるA棟からB棟へつなぐアトリウムを目指すことになり……階段とエレベーターを乗り継いでいくのだが……電気系統に問題があるのか電灯が点滅した。

 

「そういやここって心霊現象が起こるんだっけ?ほらあの、双子のバレエダンサーの怪みたいな?」

 

「あんたそんなの信じてるワケ?カリンちゃんおびえるからやめなよ」

 

「だ、だだだ大丈夫ですっ!カリン、頑張れます!」

 

「いやその、ごめん。俺が悪かった、だから泣かないで。悪かったから!心の底から反省してるから!」

 

 じわぁ、と目に涙を浮かべて俺を見上げるカリンさんに圧倒的罪悪感を抱えた俺は胸を押さえて後ずさる。ちなみにパエトーンの二人は俺がヴィクトリア家政だと契約上はともかく私的な部分では立場が弱いのがわかったのかケタケタ笑っていた。ひどくないか、それ。

 

 ただ、ライカンさんが言うには与太話だと思っていたバレエ・ツインズの怪の話はともかくとして電気系統に実際問題があるかもしれないとのことで先を急いだほうがよさそうとのこと。とくにアトリウムのシャッターは停電すると自動で下がる、急がないと。

 

「時間がないから最短でいこう。エーテリアスがいるルートを通るから臨戦態勢を崩さないで。行きます!」

 

「お任せください」

 

 全員が自らの得物を確認したのを見てライカンさんが手袋を直して俺に視線をやる。俺はイアスを抱き上げて、駆け足で進んでいく。リアルタイムでホロウ内の座標の計算ができるらしいパエトーンの二人にフォースで感じた空間をすべて伝えて把握させるとリアルタイムでキャロットを作った二人からより詳しい道を提示されるわけだ。

 

 道中で出るエーテリアスは俺がフォースを振るうより前に出たライカンさんやリナさんが対峙してくれる上しんがりはエレンさんにカリンさんと来ればもはや万全の布陣だろう。ただ、問題なのは電灯の明滅がより激しく長くなっていることだ、もう持たないかもしれない。そう思ってたらバツン!とブレーカーが落ちるような音をたてて電気が完全に切れた、マジか!

 

『あとすこし、あそこっ!!』

 

「はあっ!」

 

 アトリウムは目の前、そういうところにまで来て出てくるのはエーテリアスの山。だがそれで進行速度は緩まない。シゴデキなのがヴィクトリア家政だ。ただ、電気が切れたタイミングが早かったせいかもうすでにアトリウムのシャッターは半分しまっていた。ライカンさんが義足から冷気を噴射して飛び出す。

 

 その数瞬後に俺はシャッターの進行を止めるためにフォースを使ってシャッターを持ち上げる。このシャッターは電源が切れると自重で落ちる仕組みだ。つまりぶち抜くとかならともかく持ち上げるなら破損はしない、はずだ多分。

 

 案の定エーテリアスが邪魔をするのを蹴り飛ばしたライカンさんだが、目を向けたシャッターが閉まるのではなく開いていくのを見て振り返る。目線が俺に向くと、イアスがグッドサインを出した。ライカンさんはそれで、ふっと微笑むのだった。




 バレエツインズも巻きっていうか主人公が便利すぎるので特に難所になり得ません。悲しいなあ
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