フォースはいつでもエーテルと共に   作:光明面と暗黒面ってルビ無しで読めないよね

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第17話 飛行船とフォース

 反乱軍の皆様は対浸食装備を着込んでらしたのでしばらく放置しても問題ないと判断し動けないようにしてエーテリアスが入らないような狭い場所にすし詰めにして放置することにした。反乱軍にハッカーが捕まっているというのはとてーもよくない状態なので現場判断ということでご留意いただきたい。

 

 フォースに導かれる、というのは毎度毎度俺がやっていることであるがフォースは口下手というか伝え方が曖昧というかあんまりお上手ではないので俺が頑張って解釈しなければならないのだ。一歩間違えれば人が壊れるくらいには伝えるのが下手だからね!あはは!笑えないがとりあえずがんばろ。

 

『もう隠す気なしって感じだね!?どこから出てくるの!?』

 

「奴さんがたのキャロットは最新版だな!じゃなきゃこうもぽんぽん空間跳躍できるか!」

 

「ああ、もう!邪魔!」

 

 あの小隊をボコして放置したのがばれてるからなのかくるわくるわ俺たちのもとに武装した反乱軍の皆様が。個々人の技量で言えばぶっちゃけそこらのチンピラレイダーより少し上程度であって超一流エージェント集団であるヴィクトリア家政とは比べるべくもない、べくもないのだが……。

 

 厄介なところは、装備の質だ。反乱軍はもともとエリー都の防衛軍が裏切ってできた組織なんだがその軍ってのが厄介なところだ。当然軍の装備は最新最高最上級のエーテルやら素材やらが惜しみなく使われているので高性能だ。チンピラが手作りしたパイプ銃やスタンロッドなんかとは比べ物にならない。

 

 弾幕張られたらいくら皆でもいったん物陰に隠れなきゃいけない。統率が取れてないのだけが唯一の救いだ。弾切れのタイミングが大体一緒で助かる。さすがの俺もプロキシデースとか抜かしてる場合じゃないので遠距離で戦えるリナさんにイアスを託して前線に出ることにした。

 

「っしゃ、オラァ!!」

 

「なんと見事な首投げ……!このライカン、投げ技で感動したのは初めてでございます」

 

「……なんかすいません」

 

『なんで褒められてるのに謝ってるの?』

 

 前線に突っ込んだ俺が相手を殴るのではなく一撃で昏倒させるために触れては投げて触れては投げてを繰り返しているとライカンさんがかなり感心したような声を出してお褒めくださった。そして謝罪する俺、なぜかって?フォースでズルしてるからなんか申し訳なくなって。

 

 投げ技の術理というやつは力の操作という重心やらなんやらを上手に操れよって技術なんだろうけど俺の場合掴んだらフォースで持ち上げて投げるという見た目だけ取り繕ってるような投げ技になってるからだ。何で最初からフォースで持ち上げないかって?近ければ近いほど、つまり接触してれば相手のフォースを掌握できるので投げやすいのだ。殴り飛ばすよりも低燃費だし。

 

「ここは一時的な拠点のようですね……皆様、少々探索をしましょう」

 

何度めかの交戦ののち軒並み気絶して山のように積み上げられた反乱軍の皆様、やたら数が多いと思ったらどうやらここは一時拠点だったらしくて物資やらモニターやら書類やらが壁際に積まれていた。

 

 ライカンさんの号令で家探しを開始する俺たち、ただ特にめぼしいものはなさそう……そう思っていたらリンさんがナニコレ、と指をさす。俺の目にはただのでかい箱にしか見えないがどうやらそれを一瞥したライカンさんには違ったようで、急いでその箱を開ける。その中にあったのは……たくさんのボタンやらつまみであった。俺にゃわからんやつだ。

 

「……なんです?これ。エレンさんしってる?」

 

「逆にあんたが知らないものをあたしが知ってると思う?」

 

「俺よりヴィクトリア家政長いじゃん」

 

「あたしバイトなの。カリンちゃんの方がよほど詳しいって」

 

「え!?えーっと……軍用の通信装置、です」

 

 え、マジで!?とコントのようなやり取りをした俺とエレンさんが半分冗談でカリンさんに振ってみたところ彼女は急に矛先を向けられて動揺はしたものの迷うことなくこれですと言い切ったのだ。エレンさんも驚いて舐め切った飴の棒が口から落ちている。失礼だがライカンさんに顔を向けると彼はカリンさんに微笑んで頷いた。カリンさんすげえ、さすがはヴィクトリア家政の正規メイド。

 

「補足をいたしますとこれはG03型多周波数信号送信機という軍用の送信機になります。送受信ではなく送信、送ることに特化しているものですね。カリン、よく覚えていましたね」

 

『でもなんでこれがこんなところに?確かにレインを確保したら強力な武器になるのは間違いないが、目的が読めない』

 

「……ねぇ、なんかこんなのあったんだけど。ヤバくない?」

 

「……わぁ、素敵なパンフレットだぁ~~」

 

『あまりのことにオーダーが壊れた!?』

 

 アキラさんが通信越しに首をかしげているのが伝わる。他のところを脚でがっさごっそとやっていたエレンさんが何かを見つけて拾い上げて表面だけを見て俺に渡すので、俺は中身もちゃんと読んだ上でライカンさんに渡した上で壊れることにした。

 

 べちこんとエレンさんの気つけ尻尾ビンタでトリプルアクセルを決めた上で慌てふためいたカリンさんに起こされて正気に戻る。なにせ数枚の書類に書いてあったのは政府飛行船の遠距離ハイジャック&墜落作戦だったからだ。

 

 しかもこれがただの政府飛行船だったらいいんだけど、このフライトスケジュール通りなら……パールマンと邪兎屋の面々が乗ってる裁判所まで行く飛行船しかないはずだ。秘密の路線とかがない限りはだけど。

 

「実に綿密な下調べです。これがあれば優秀なハッカーさえ見つけることができ次第作戦を完遂させることができるでしょう。オーダー様、レイン様の位置は?」

 

「近づいてはいるけど、まだ範囲外。上を目指さないと」

 

 導きは上を指し示している。だけど、反乱軍は感知できても大事な本人が見当たらないんじゃどうしようも……待てよ、これってまだ……作業中なんじゃないか!?この通信装置は予備として考えるべきで、本人はホロウ内では見当たらない。ホロウ内では外部と基本的に通信はつながらない。それじゃあ、彼女がいるのは……!

 

「屋上です。この作戦が事実だとするならまだ作業中の可能性がある」

 

『そっか!私たちじゃなくてレインが飛行船をハッキングするならホロウの外に出ないとダメだから、唯一ホロウの外に出てるB棟の屋上!そこしかないよ!』

 

 リンさんからfairyが再計算したらしい屋上までの最短ルートが提示されると同時に俺たちは弾かれたように走り出した。仮にこれで飛行船に何かやられた場合、待っているのは邪兎屋の死とパールマンという証拠を握った人間の消滅だ。後者はまあ諦めがつかなくもないが前者はごめん被る。

 

 階段を駆け上がり、止まったエスカレーターを飛び上がり、全力で上を目指し続ける。もう電源設備とか後回しだ。人力で上るにはつらい高さのビルであるけど空間跳躍によるショートカットを何度か繰り返せたおかげで戦闘を挟まずに屋上につくことができた。

 

『レイン!やっぱり!』

 

「何!?下のやつらは何をやってるんだ!?動くな!人質が見えないわけじゃないだろ!」

 

「ライカンさん!」

 

「承りました!」

 

 B棟のヘリポートになっている屋上にはそれなりの数の反乱軍に囲まれてパーカーフードを被った女の子が泣きそうになりながら作業をしていた。あれがレインさんか、やはり脅されているんだなとわかると同時に向けられた銃をみて俺とライカンさんが同時に飛び込んだ。

 

 気づけば俺は自分でも理解できない一瞬の速度でレインさんを確保して屋上の淵ギリギリまで到達していた。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()レインさんも何が起こったのかわからずに目を白黒させている。まるで星見さんが踏み込んだあの速度だ。あとで考えろ。いまは!

 

 横凪ぎのフォース・プッシュによって明後日の方向に銃を向けていた奴らが軒並み吹き飛んで壁に叩きつけられる。ライカンさんの氷結蹴りとエレンさんの鋏が乱舞して一瞬後にはもう反乱軍は倒れこんでいた。

 

『レイン!?無事!?って私のことわかんないよね……!邪兎屋のニコの依頼であなたを助けにきたんだけど……』

 

「助けに……わたしを?そうじゃない!今すぐ命令を中止しないと!」

 

 脳みそがやっと現実に追いついてきたらしいレインさんは飛びつくように機械に張り付いて鬼気迫る勢いでタイピングをして、止まったと思ったらダン!と機械を思いっきり叩いた。まるで思い通りにいかなかったかのように。

 

「遅かった……!飛行船のルートがもう変わった後なの!反乱軍が言ってたんだけど、乗客も乗組員も眠らせたんだって!だから、飛行船のルートが外れても修正できる人が……!」

 

『fairy!邪兎屋に連絡して!今すぐ!』

 

『店長!?店長たちか!?今飛行船がヤベエんだ!パールマンが持ってたケースを開けたら麻酔ガスが噴出して皆眠っちまいやがった!呼吸システムが故障してた俺だけが残ってる!ついでに自動操縦も切り替わってて、このままだと店長たちのいるホロウに突っ込んじまう!』

 

 間に合わなかったか……!強制的にfairyが繋いでくれた通信に出たのはビリーさんで彼のわかりやすく慌てつつも簡潔で完璧な説明を聞いた俺はどうすればいいのかと頭を回す。飛行船がこのホロウに突っ込む、飛行船もビルも無事じゃすまないだろう。ビリーさんは操縦なんてできないと言い張っているし、どうしたもんか。

 

「ねえ、ボスってさ。いろんな乗り物運転できるよね。飛行船は?」

 

「嗜みとして一通りは。レイン様、飛行船のルートはどのように?」

 

「え……っと、このビルの屋上を掠めるようにしてホロウに突っ込んでいく」

 

「じゃ、オーダーがボスを浮かして飛行船に乗り込ませてボスが操縦するっていうのどう?」

 

 エレンさんが勝手に俺の懐に手を突っ込んでカロリーバーを取り出して包装紙を剥きながらそんなことを言う。俺たちは全員で顔を見合わせて、一つ頷いた。エレンさんが提案したこの作戦の成功率が俺とライカンさん頼みというもののかなり高いことに気づいたからだ。

 

「あと……10分くらいで差し掛かると思う。私の尻拭いをさせるのは申し訳ないんだけど……お願いします」

 

「過分なお言葉です。そのお言葉だけで私共が奮起するには十分、オーダー様……少々重いかもしれませんがお付き合いを」

 

「重いってライカンさんが?それはともかく初速が欲しいんで俺とタイミング合わせてあのオブジェを昇って突っ込んでください。空中で俺が軌道修正しつつ飛ばすんで最短最速で」

 

「承りました」

 

 細かいタイミングとりはパエトーンの二人に任せることにして俺は手短にライカンさんと情報共有をする。その中で俺はさっきの踏み込みをどうやったのか思い出していた。現在俺が本気で踏み込む際に浮かぶビジョンは虚狩りである星見さんの居合抜刀の踏み込みである。ただ、現状俺では及ばないのは当たり前……だったのだがさっきは速度だけなら星見さん並みにでていた。これはなぜなのか?

 

『飛行船の目標位置まで、残り30秒!お願い二人とも!』

 

 飛行船と言えどもエーテル技術が使用されている、ただの風船で浮かんでる船じゃないのだ。相応に速度は出ている。ライカンさんの義足が冷気をアイドリングしている音を聞きながら、俺は推察し終わった踏み込みの正体を再現して飛び出した。

 

 ボッ!と音をたてて残像すら残さず踏み込んだ俺と一拍おいて飛び出したライカンさんがバレエ・ツインズのオブジェを駆け上がる。さっきの踏み込みと今までの踏み込みの何が違うか、フォースの使い方だ。今までは強化した身体能力に物を言わせて地面を蹴り上げていた。

 

 じゃあ、今回は何が違うのか。それに加えてフォース・プッシュを使用したのだ。フォースで俺自身を押すことにより爆発的な加速をもたらしている。そして、これができるということは一瞬でも空中で俺自身を押せるということだ。

 

 足裏をフォースで押すことによる空中ジャンプ。フォースでの空中浮遊はほぼ不可能ともいえる超高等技術だが、一瞬押すくらいなら確かにできる。俺と同じルートを辿って空へ舞い上がったライカンさんの手を掴んで、反転。フォースでも掴んで差し掛かった飛行船の展望デッキに向かって投げ飛ばした。

 

 すでにビリーさんが出ていたその場所に危なげなく着地したライカンさんは一瞬俺を振り返った後に急いで飛行船の中に消えていく。空中ジャンプと減速を併用してヘリポートに着地した俺と同タイミングで飛行船は減速を開始、機首を上げて舞い上がりヘリポートへの着地態勢を整えだす。

 

「やったじゃん、かっこい~」

 

『すごいねオーダー!今何やったの!?空中で跳んでたよね!?やっぱり映画かゲームのキャラみた~~い!!』

 

「そらどうも。とりあえず一安心かな」

 

 着地点にやって来たイアスを抱いたエレンさん。リンさんが嬉しそうにイアスの手を振り回しているので適当にそれに合わせてハイタッチのように手を叩いてやった。ん、と俺がてを肩の上あたりで固定してやるとエレンさんは無言で尻尾で俺の手を叩いた。とりあえず、一件落着。




主人公、踏み込みを覚える。フォース君はこれでニッコリ。なお原典的には空中浮遊に類するものなので化け物レベルのフォース利用だったり。でもいいよね、この世界で唯一だもの。
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