フォースはいつでもエーテルと共に 作:光明面と暗黒面ってルビ無しで読めないよね
「リンボに行きたい?」
「そうなんですよ。何とかなりませんかね」
「まあ、動く前に私に知らせたのは評価してやろう。任せておけ」
と、いうのが俺がここに……つまりスコット前線基地に来るまでのお師匠様と俺のやり取りである。ちなみにその時のお師匠様なんだけどへるぷみーしたらものすごく機嫌よくなってその日のうちに手続きを済ませていた。さすがはお師匠様なんだけどこの場合どうやって零号ホロウ・リンボに一般人(偽)である俺を連れ込む手配を済ませたのか気になる。
ちなみに今回一緒なのはお師匠様だけです。福姐さんは算術の成績が死んだらしいので補習です。瞬光は本山で缶詰。何でそっちからこっちこないのかわからんけどお師匠様が誘っちゃダメっていうもの。寂しいなあ。
もしかしてなんだけど俺のこと嫌いになって適当観にいるときは来ないようにしてるのかな、それだったらちょっと悲しい。連絡も控えるか。そういえばあの剣棺ってなんなんだろな、フォースをもってしてもエーテルが濃すぎて中身見えないし、聞いてもみんながみんな話題逸らすし。うーん。触ろうとしたら血相変えて取り上げられたし、謎である。
さて、雲嶽山の修行者が着るコスチュームに身を包んで大兄弟子や瞬光と揃いの剣を腰の後ろに斜め刺ししてスコット前線基地までやってきたのはライトセーバーの中枢であるカイバークリスタルを見つけるためである。これがなければライトセーバーは作れないのだ。
宇宙由来というかとある惑星にしかない物質がなんで零号ホロウにあるかはぶっちゃけわからん。ただ、エーテルのモノではないのは事実。クリスタルだけはエーテル素材じゃないのだ、だから貴重だってエンゾウおじさんって人は言っていたのだろう。
「これはこれは儀玄様。今回調査を受諾していただけたことは誠に感謝しております。そちらは?」
「これは直弟子でな、雲嶽山ではなく私個人の。調査に同行させるために連れてきた。なに、そこらの調査員よりは腕は立つ」
「え、俺雲嶽山の弟子じゃないんですか?」
「本山に行ったこともないだろ、お前。宗主が個人的に弟子をとってはいかんなどというしきたりもない。当然、他の弟子たちもな。そもそも雲嶽山だろうが私個人だろうがお前が弟子なのは変わらん、些細なことだ」
確かにそうだったわ。雲嶽山のメインは武術ではなく術法、つまりエーテルを操る術だ。フォースのせいでそれが一切使えない俺は雲嶽山の教えの8割以上を実践できない。だからお前を教えるときは適当観でやるとお師匠様は言ってたっけ。本山に行っても何もできることがないなら近い方がいいだろって。
手短に頼むぞ、とだけ言って手続き待ちになった俺たちは零号ホロウ全体を一望できる場所で待つことになった。なったんだけど……視線というか圧を感じる。振り返りたくない、お師匠様も務めて無視してるみたいだし。ああ近づいてこないで~~~~!!
「もし、儀玄どの。久しいな、今日は如何様にて此処に?」
「ボス~~~?急にどうしたの~~ってあ~~~っむぐっ!?」
「はぁい蒼角ちゃんお口チャックだよーーー。月城さん、どうしますこれ」
「あまりに堂々としすぎて気づけませんでした。また修行ですか?」
顔割れてんのかよ星見さん以外はマインドトリックしたはずなのに。という言葉を飲み込んで俺は無視を決め込む。お師匠様に対応するから黙ってろと背中を叩かれたのもあるのだが。なんで対ホロウ6課がここにいるのか、いてもおかしくないけどタイミングだよ。
「対ホロウ6課か。なに、調査協力ついでに馬鹿弟子に修行をつけてやろうとな。全くもって合法だから安心するといい。そら、挨拶しとけ」
「ア、ハイ。馬鹿弟子ですコンゴトモヨロシク」
「それで誤魔化せるとでも?何を目的としているか私たちには聴取する義務が「よせ、柳」……課長」
「悪ではない、私は断言した。前回においては。2度目の来訪の理由を知りたい」
「ふむ、ならば来るといい。メイフラワーのやつからホロウ内の採掘も依頼されている。人手が多いに越したことはない。それに……私の弟子がより使えるようになったから気になってるんだろう?」
蒼角ちゃんのキラキラした視線に罪悪感を覚えつつもほとんど棒読みで初対面(嘘)の挨拶をかましてみるものの副課長という月城柳さんの顔が険しくなるのみ。さりげなーく唯一の男性隊員である浅羽悠真さんが俺たちの退路を断つような位置にいるもののお師匠様の一瞥を受けて慌てて退いている。
というかついて来いって言ってるのお師匠様?確かに何の問題もないや、メイフラワー市長と俺は話したこともないけども俺がどういうことができるのかという概要はお師匠様が話したみたいだしそれが本当かのテスト代わりに今回の零号ホロウ遠征を許可してくれたそうな。ついでに資源の持ち帰りもね。ビバ市長パワー。
「……体よく利用されてません?僕たち」
「別に来なくても構わんぞ。馬鹿弟子がいればこちらとしては問題ないからな。ただ、今ここで事を構えるならメイフラワーと私に弓を引く覚悟をしておけ」
「……ずいぶんと少年が大事にみえる。儀玄どの」
「師は弟子を大事にするものだ。出来が悪いと猶更心配になる」
「ひどくない?お師匠様?ねえ?良いこと言ってるように見えて俺を刺してるよ?」
バチバチと見えない火花がお師匠様と星見さんの間で散っているように思えてならない。それ俺を挟んでやらないでほしい。もっと言うなら自慢げに俺の頭を撫でないでほしい。ほら、浅羽さんなんてものすごく気の毒そうな顔してるもん。蒼角ちゃんこれいる?はいどうぞ~~。
いつも懐の御供、カロリーバーを取り出すと蒼角ちゃんが純粋すぎる輝く笑みを浮かべてこちらにやってくるもののだめですと月城さんにインターセプトされた。餌付けで癒されよう作戦は失敗か……ん?浅羽さん、なんかヤバくね?え、こんな体で対ホロウ6課やってんの?
「……なにかな?じーっと僕の方を見て」
「いや、なんでも。ホロウ6課ってブラックなの?」
「そうだね~、書類仕事の山以外はホワイトかな」
浅羽さんの体、ヤバい。どうやばいかっていうのは正直言い表せないんだけど内臓全般が病んでる。普通なら入院していてもおかしくない。特にやべーのが心臓と肺。よく立ってるなこれ、根性ある人だな~。少しなら手を出してもバレないかな?いやでもなー、怪しまれてもしょうがないし。完治は無理だけど楽にはできるんだけど……。
「それで?ついてくるのか?」
「ご一緒しよう。柳と蒼角は待機。悠真は出撃だ、私たちも申請をしてくるので少し待っていてほしい」
「え~~~~!?何で僕なんですかぁ!?」
「承知しました。蒼角、お腹が減ったのなら食堂に行きましょう。では、くれぐれも不法行為のないようお願いいたします」
「おにーさんと白いおねーさん、またね~!ごはんだごはん~~!」
全員そろってテントの中に消えていく対ホロウ6課を見送る。お師匠様の少し険し目だった顔が元に戻ってくれたので一安心である。何がそんなに気に食わないのだろうか、まあ俺がジッサイ犯罪者なのが悪いんだろうけどそれはそれとして私情みたいなものが見える気がする。
「……あのなあ、大事な弟子を殺しにかかられてるんだぞ。法的にはお前に非があろうとも
殺しにかかったのは星見雅が先だ。未熟な師匠ですまないな」
「トゲありすぎですよそれでも。一応見逃してもらってる立場なんですから俺。気持ちだけもらっておきます」
「お前という奴はほんとに……自分に無頓着なのもいい加減にしとかないといつかしっぺ返しがくるぞ。それよりも、気づいたようだが」
「ええ、まあはい。あんなんでよくホロウに潜ってますね」
「……お前でもそう思うか。要らぬ節介と言われなきゃいいが、終わったら申し出てみるといい」
お師匠様が俺のために腹を立ててくれるのは正直だいぶ嬉しいんだけど殺されかかった件については星見さんを怨んじゃいない。むしろ先を見せてくれたことに感謝しているくらいだ。ただ例えばこれが福姐さんが殺されかかっていたとかだったら俺もトゲトゲしたかもしれないけど。お師匠様のそれは未熟じゃなくて慈愛ってやつでしょうよ。
待たせた、とやって来た星見さん浅羽さんと合流して零号ホロウの中に突入する。キャロットを眺めるお二人に対してお師匠様は端末を取り出しもせずに「で、どっちだ?」と聞くので俺はそのままこっちですと歩き出す。おそらくキャロットには載ってないであろう方向に歩き出した俺に対して顔を見合わせた二人は臨戦態勢を解かずに後ろをついてくる。
「こっちには何も無いはずだが」
「あれ?そうなんですか?深部までの裂け目があるんですが。ほらこれ」
「……課長、ここってちょっと前に全調査やって価値なし判断されたところじゃありませんでしたっけ」
「ホロウ内で空間が変わるのはよくあることだろう。書き写された地図とこの場所全てを視ている者となら後者の方がより詳しいというだけだ」
「千里眼の持ち主というわけか」
キャロット内にある深部までの道のりは長ったらしい上に途中で危険の山が待っている。死にに来たいつぞやならともかくとして今回はライトセーバーがない上に人を連れて……まあ危険が危険にならないような人たちではあるけどとりあえず配慮はしておこうというわけだ。
確かにそこにある空間の裂け目を見てぼそっとそんなことを言う浅羽さんに対してこともなげに言う師匠。千里眼という星見さんの言うことはだいぶ的を射ている気がしてドキッとした。核心部分はわからないはずなのに何でこんな正確なことを言うのか、やっぱ怖いよこの人。
やってきましたホロウ深部、旧エリー都の建物が多くというか……ここ未踏領域じゃないか?フォースの導きに従えば大体ここら辺にかもう少し進んだところでお目当てのクリスタルがこんにちはしてるか生えてると思うんだけど……っているよねー、エーテリアス。
「……お前の刀はどうした」
「諸事情あってイカれました。というわけで材料を探しに来たわけです」
「なるほど。そういうことなら協力しよう。剣士にとって信頼できる刀がないのは致命的だ」
「別にこの剣も嫌いじゃないですけどね」
腰後ろから抜いた実剣を眺めた星見さんに突っ込まれたものの大兄弟子と瞬光とほとんどおそろいのこの剣は別に嫌いじゃない。ライトセーバーみたいに使いそうになるけど。俺の剣術って全方向斬れるライトセーバー前提の動きをしているので……この剣でやったら腹で殴ることになりそうだ。
「ちょうどいい、折角だからお前を追い詰めたヤツに成長を見せてやれ。この程度なら遅れも取らんだろう」
「え、ちょ何言ってんですかって弓!俺の武器返して下さい!」
いつの間にか浅羽さんの腰後ろにあった合体して弓にもなる剣を引き抜いて弄んでいたお師匠様にとられたことに気づいた浅羽さんが食って掛かっている。お師匠様自体も戦う様子はなさそうなので任せるという判断でよさそうだ。
成長したっつっても踏み込みがよくなっただけな気がするけど……と思いつつもバレエ・ツインズで編み出した踏み込みでそのまま突っ込んだ。星見さんはちょっとは驚いたらしく合わせつつも少し遅れた。速度はほとんど同速度。
ただ、この踏み込みのいいところは小回りが利くことにある。ほとんど直角で曲がれるのだ。これすごいぜ、フォースの押す方向を変えるだけで自由自在に速度を保ったままブレーキを踏まずに移動できる。でもジェットコースターよりひどくて内臓が気持ち悪くなるけど。
振りかぶった剣と鞘から引き出された刀がエーテリアスを蹂躙しきるのに10秒もいらなかった。さすがは星見さんと思いつつもそれなりに強くなったぞというところを見せられて俺自体も満足という気持ちはある。
「ふむ、強くなったな少年。ほんの少し見なかっただけなのに疾くなった。良い研鑽を積んだと見える」
「こら、何をしてるんだ何を。そういうのは私の役目だ」
「柳が蒼角相手によくやっているからな。誉めるときはこういうものだろう」
「いや課長、それ子供相手にやるやつですよ」
手を伸ばした星見さんが俺の頭をぽんぽんと叩いた後撫でる。それを見たお師匠様が目くじらを立てていろいろ言っているが俺は星見さんがそんな人だったのか、というか浅羽さんが言う限り天然ボケな部分があると聞いてちょっと驚いている。なんというか、どことなくキビしい人っていう印象は取っ払われたよ、うん。
青溟剣のことは雲嶽山が全力で隠しています。事情は次の話で明らかになるでしょう。儀玄どのはお師匠様ポジションをとられるとむくれてくれるとかわいい。そうだったらいいなって。