フォースはいつでもエーテルと共に   作:光明面と暗黒面ってルビ無しで読めないよね

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第23話 襲撃されても問題ない

 郊外の朝は早い……というか俺が勝手に起きてきているだけなんだけど今日は特別に早かった。フォースによる第六感、虫の知らせと未来予知の合わせ技でたたき起こされたのだ。勘弁してくれよ、と思いつつ寝間着のままベッドから立ち上がった。あと少しでセーバーができるのになぁ。

 

「シリオンが頭かぁ。うーんしかし、何でこんなところにいるのかねえ?」

 

 ブルォォン、とバイクのアクセルをひねる音が耳を劈く、結構多いなあ。組織的な感じとみていいだろう。俺の隠れ家に何の用か知らないけど走り屋関係とみていいかな?だけど、カリュドーンの子じゃないな。彼女らだったらこんな回りくどいことも他人を使うこともしない。真正面から気に入らないのでぶっ潰すくらいは言ってくると思う。

 

 しかし、頭っぽいシリオン……ライカンさんに近いタイプの猫のシリオンはどーもやる気がなさそうに見える。あー、たぶん傭兵で顧客の金払いがいいからとりあえずやるだけやってみよっていう感じかね?それだったらもう俺としても穏便に帰ってほしいんだけどなあ。

 

「その危ない物しまっといてくれるかな?」

 

「なぁっ!?」

 

「エーテル爆弾……こんなものを手に入れられる集団なんて郊外じゃ限られてるな。トライアンフの子飼いかお前ら」

 

「へっへっ……なんのことかわかんねぇなあ兄ちゃん?俺たちゃ金で動く傭兵さ。金を払われて依頼を受けただけだ。依頼人の正体なんてどうでもいいんだよ」

 

「ふぅん」

 

 俺の家の壁に爆弾を設置しようとした男から爆弾を取り上げてフォースで内部の配線を引きちぎって作動しないようにした後投げ捨てる。間近で俺を見た男は冷や汗をかきながらも何度かバックステップをして後ろに下がっていった。

 

「俺を狙う理由は何かな?ああいや、ぶつかるって言うんならそれもそれで構わないんだけど……命あっての物種っていうだろ?死にたくなけりゃ見逃してあげるから帰っていいけど」

 

「腹立つなテメェ!残念だが都会のもやしも根元から断っとけって依頼だ。プルクラの姐さん!やっちまいましょう!」

 

「名前呼ぶんじゃないよ!傭兵何年目だテメェ!ハァ……あんたに恨みはないけどここで死んでもらうよ」

 

「はいはい。ホロウで死ぬほど聞いた脅し文句をどうもありがとう。殺しに来たんだ、死ぬ覚悟はできてるんだよね?」

 

 まぁ殺す気は今のところないけど再起不能程度にはするかも。フォースを纏って接近、プルクラと呼ばれたシリオンさんをすり抜けて後方でバズーカやらロケランを構えた傭兵たちを先に対処する。顔面を覆ったヘルメット兼マスクを拳で粉砕しつつ殴り飛ばして岩に叩きつける。砂岩だからか見事にめり込んで崩壊した。

 

「ハイ次、キミ」

 

「えっ!?がああああっ!?」

 

 ボキン、と掴んだ肩が俺の握力に耐えきれずに骨ごとひしゃげる。多分もう腕使えないだろうけど俺の知ったことじゃない。できるだけ命は奪わないようにするのが俺のやり方だけど命を狙ってきたんだ、死なないだけありがたいと思って欲しいよ。うずくまった男の顔をサッカーボールキックで蹴り飛ばす。空中2回転だ、跳ぶねえ。どっちがもやしなんだか。

 

「ね、姐さん……!」

 

「……っ!」

 

「次はどっち?寝起きで加減が効かないけど許してよ?」

 

 いろんなところが曲がらない方向に曲がって呻いている死屍累々の山を見たプルクラとその金魚の糞は明らかに動揺しているけど残念ながら彼我の戦力格差の見積もりが甘かったね。まあ俺はフォースを利用している分見た目で技量がわかりにくいのかもしれないけど。エーテル濃度も薄いみたいだし。

 

 ババッ!バババッ!とプルクラがリボルバー拳銃を発射しながら俺に近寄ってくる。弾丸と弾丸の間をすり抜け、両手を叩いて拳銃を地面に落としお腹を掌底とフォースで押した。吹っ飛んで岩にめり込むプルクラをそのままに金魚の糞の胸ど真ん中に蹴りをぶち込む。間に差し込まれた銃が飴細工のように曲がって直撃、沈黙。後片付けめんどくせー。

 

「……まだやるの?」

 

「いや、ワタシらの負け……だよ。加減したね?アンタがその気なら全員一撃でお陀仏だったはず」

 

「正確には加減したのは君だけだけどね。乗り気じゃない、やる気がない、冷静。取引するのにはちょうどいいかなって」

 

「……とんだヤマを掴まされたね……いいさ、何が聞きたい?悪いけど契約上話せないことはごまんとあるよ」

 

「ふーん、じゃあ俺がそれ以上の金を積み上げるとしたら?」

 

「……それは、随分と都合がいい話だね?アンタじゃなくてワタシに」

 

 プルクラを見下ろしてそういう俺に怪訝そうにマスクの下で顔を歪めた彼女は美味しい話に飛び乗るかどうかを逡巡している。俺が襲われる理由は今想像できてふたつ。単純にたまたま見つかってなかった別荘が見つかって金目の物を欲しがったから。そしてもう一つがカリュドーンの子の協力者になったから。この二つだ。前者はこの規模で傭兵を雇ってすることじゃないので十中八九後者でしょ。フォースでうめいてるやつらの意識をすべて落とす。さあ交渉開始だ。

 

「……いくらだい?」

 

「そうだね、とりあえず倍だそうか。吹っ掛けてきてもいいよ?」

 

「こんだけやられて吹っ掛ける勇気はさすがにないね。いいさ、それで。アンタの言う通りこれはトライアンフの仕事だよ」

 

「だろうね。それで?差しさわりのない範囲でどこまでいける?」

 

「トライアンフはカリュドーンの子をどうしても覇者にしたくないみたいでね。だからいろいろ妨害工作をしてるのさ。アンタが狙われたのもあいつらに割り当てられたルート上にあるちょうどいい補給地点になり得たからだよ、まあこれはワタシの推測。依頼人はトライアンフの人間ってことしか知らないからね」

 

 ふむ、トライアンフって分かってる時点でずさんだけど誰が依頼したかを悟らせないようにはしているのか。もしくはここで俺が死ぬから伝わるはずがないって思ったとか?まぁいいや。それじゃあ彼女に頼む仕事は決まった。

 

「プルクラ、でいいんだっけ?このままトライアンフに取り入って向こうの情報をある程度抜くことは?」

 

「できる、だろうね。この仕事とは別口でカリュドーンの子関連の依頼は向こうからひっきりなしに来てるんだ。報酬分の働きはできるつもりだよ」

 

「じゃあ、頼むよ。そうだなぁ……向こうさんに渡していい情報は後で俺が選別する。持ち帰った情報の重要度に応じて追加で報酬、とりあえずこんなもんか。交渉成立?」

 

「やり方はワタシに任せてもらえるわけね。向こうさんよりずいぶんと好待遇、乗った」

 

 プルクラはかぶりを振って立ち上がると握手をするように手を差し出す。まぁあっちへこっちへ寝返ってもらっても俺は構わないけどね。少なくともこの規模程度なら返り討ちにされるっていう認識を持ってもらえればそれでいい。プルクラ本人の素性もどうでもいいけどこの烏合の衆の中だと明らかに仕事ができるから残したわけだし。

 

「返り討ちにされたから手を出すのはやめろって一応言っておく。だけど死人が出てない以上郊外じゃ『甘いヤツ』の認識は受けるだろうね。ワタシはあんた絡みの仕事は降りるけど他のやつはわからない。用心してよ?」

 

「いいよ、それで。連続してやってくるなら直接『お話し』をする理由ができるからね。後悔するのはどっちにしろ向こうだ」

 

「少なくとも甘いってだけじゃなくて安心だね。わかったよ。あいつら何人か持って帰るけどそのほかはさすがに面倒見切れないね」

 

「ちょうどいい知り合いがいるんだ、カリュドーンの子っていうんだけど」

 

「悪いやつだね、アンタも」

 

 プルクラはバイクが運転できるくらいにはケガの程度が軽いやつを蹴り起こし、見逃してもらえることを伝えて足早に去っていく。残ったやつはまぁあれでしょ、俺の好きにしろってんでしょ?もしもしカリュドーン?

 

 連絡を受けたカリュドーンの子が急いでやってきてくれたんだけどなんかシーザーさんがえらいブチギレててそっちを宥めるのが大変だった。あとルーシーさんも笑顔の裏で怒っているので謎に触れにくかった。襲撃犯のバイクはカリュドーンの子への後処理の報酬として持ってかれて着の身着のまま怪我のままで荒野へ放り出されるんだとさ、それはともかく。トライアンフとはこれで因縁ができたので……仕事以上に私情が入ることにもなりそう。報酬以上に働いてやる。

 

 

 

 

「あー、ここ快適だね。外は熱いのに涼しくて」

 

「でっしょー。もらったものだけど快適にできるよう工夫はしてるんだよ。エレンさんは暫くこっちにいるの?」

 

「んむ、まあそうかも。アンタの顔見ないとなんか張り合いないし。夏休み入ったけど宿題のレポートあるじゃん?あれ郊外の事書こうかなって。だから、しばらく泊めて?」

 

「がっつり旅行支度整えてきたみたいだからまあそれは構わないけど」

 

 備蓄のスナック菓子を口に放り込みながら俺の家のソファより明らかに座り心地がいいソファに寝転がって地面に尻尾を垂らしているのは何を隠そう同僚のエレンさんである。俺もやること自体はもう終わってるのでこれからは休暇兼ツール・ド・インフェルノ協力という面でだらだらしながら連絡を待つのが仕事みたいなもんなので。

 

「あんたってさ、レポートの内容決めてる?」

 

「決めてる。ツール・ド・インフェルノの参加者への独占取材的な」

 

「それ仕事関係じゃん。でもそっか、そういうのもありなら来年はヴィクトリア家政のヤツでもいいか。楽だし」

 

 コーヒーを淹れてお茶菓子を用意しL字になっているソファのエレンさんが寝転がってないほうに腰掛ける。いやしかし、びっくりしたよ。今朝方郊外にはふさわしくない黒塗りの高級車が泊まったと思ったらライカンさんとエレンさんが降りてきたんだもの。マジで驚いちゃった。

 

 なんでもヴィクトリア家政も長期の休暇を順番に取るらしいんだけどエレンさんが俺のところに行きたいって言ってライカンさんが送ってきたのだそうな。そういうのもあるのかさすがはホワイト企業ヴィクトリア家政……ホロウ潜ってる時点でホワイトかどうかは疑問がつくところだけどそういうことにしておこう。

 

「俺もうすぐ仕事なんだけどエレンさんはどうするの?ここでだらけてるならそれでもいいけど」

 

「泊めてもらうんだし協力する。ツール・ド・インフェルノだっけ?郊外の王様決めるお祭り?」

 

「そうそう、何でもホロウをいくつも突っ切るクロスカントリーレースなんだってさ。見ごたえありそうじゃない?」

 

「で、プロキシも協力する、と。なんで?」

 

「……パールマンの身柄をカリュドーンの子が押さえてるからだよ。俺はもう正直どうでもいいけどプロキシにとってはパールマンのことは重要みたい」

 

 あのバレエ・ツインズで飛行船を奪って逃げたパールマンは郊外に不時着し重症の意識不明になった。たまたまその場に居合わせたカリュドーンの子は手配書で彼の顔を知っていたので金になると判断、かくまうことにしたらしい。まだ意識は戻ってないのだとか。フォース・ヒーリングを使ってやる義理もないので俺は知らんぷりしてる最中。

 

「それマジ?ボスも探してたのに見つかんないって思ったらそういうこと」

 

「言わないでよ?ライカンさんたちと敵対したくないからさ」

 

「……アタシもアンタと戦いたくないから聞かなかったことにする。つかメンドイ」

 

「それはどうも。そろそろ行くけど準備できてる?」

 

「……着替えてくる」

 

「あれ?メイド服着るの?絶対暑いよ?」

 

「アンタには言われたくないし。ホロウ潜るならアレのほうがいい。対浸食装備なんだから」

 

 グイッと立ち上がったエレンさん。それはそうなの……か?実は今日ビリーさんがパエトーンの二人を郊外に連れていく話になっているんだけど最短ルートにいくつもホロウがあるから突っ切ろうと思ってるんだよね。だから俺のソファの背もたれにはジェダイ・ローブがかかっているわけで。

 

 エレンさんのおっきな鋏はヴィクトリア家政脅威の技術力でアタッシュケースサイズまで変形するので問題ない。暫く待っていると見慣れたメイド服のエレンさんが姿を現した。なんか久しぶりにその姿見た気がするけどやっぱりカワイイね。相変わらず美人だ。

 

 バイクに跨って待っていたので二ケツになるのは許してほしい。そう思いながら俺の後ろのシートを叩けばエレンさんは何の躊躇もなくまたがって俺の腰に手を回した。何回か経験あったりするんだろうか。そう思いながら俺はバイクのスロットルを吹かして隠れ家を出発するのだった。

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