フォースはいつでもエーテルと共に   作:光明面と暗黒面ってルビ無しで読めないよね

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第25話 フォースと情報

「ふああ……マジで作ったんだ。サイドカー」

 

「そりゃ作らないとね。エレンさんの尻尾を地面に擦り付けたりしたら俺はどうやってライカンさんとリナさんに謝ればいいのかわからないでしょ?」

 

「それ、すごく大袈裟……えっと、仕事あるんだっけ」

 

「そうだね。パエトーンの二人はライトさんとルーシーさんと組んでホロウ内でのデータ収集、俺たちはシーザーさんとバーニスさんと一緒にリサイクル業者をあたってパーツ探しだよ」

 

 翌々日の事、俺たちは一応協力者として顔合わせ自体は済んでいたので仕事の連絡があるまで引っ込むことにしたんだけど割とすぐに連絡があったので出かける準備をしていた。拾っててよかったバイク用品という感じで何とかサイドカーを1日で組み立て俺のバイクにドッキング。ドリフトはできなくなったけど郊外で乗り物無しの移動はマジであり得ないので仕方ない。

 

 パエトーンの二人をパエトーンたらしめるのはどうやら個人の資質もそうだけど機材とシステムがないとダメらしい。リンさんがいったん帰ってそのシステムの出張版みたいなものを車に積んできたらしいんだけどどうやら昨日のうちにそれが動いたそうなので肩慣らしをしつつ準備をするのだそうな。

 

 で、折角お前もバイク乗ってんならカスタムの知識あるだろ?俺様達と一緒に来いよ!とシーザーさんとバーニスさんが行くらしいホロウ内で拾ったものをリサイクルしている工場に一緒についていくことになった。エレンさんは興味ないだろうけどレポートのために同行するのだそうな。まあ万が一ということもあるから戦力がいて悪いことはない。

 

「ん、わるくない。尻尾も窮屈じゃないし」

 

「おー、よかった。目で測定しただけだけど尻尾をゆったりできるように後ろに余裕持たせたからね」

 

「器用だよね。これ私のため?」

 

「そりゃそうでしょ。誰を乗せるために作ったと思ってるのさ。エレンさん専用だよそのサイドカーは」

 

「……そっか」

 

 ほいじゃスタント運転はやめて安全運転で行きましょう、とエレンさんにヘルメットを手渡して俺もヘルメットをかぶる。途中で合流予定なので大体この時間に行けば間に合うはずだ。燃料が満タンなのを確認してエンジンをかけ緩やかに俺とエレンさんは荒野に飛び出していった。

 

「そういえば、どうしてわざわざホロウの中まで買い物なんかするの?普通に侵食しない場所で取引すればいいのに」

 

「エリー都の中じゃそれでいいんだけどよ、郊外の買い物のルールの根底にあるのは『早い者勝ち』だぜ。運んでる間でも金を投げれば買えちまうのさ」

 

「つまり産地直送ってこと?ふーん、面白そうだね」

 

「ねー!それにホロウの中に入ると思わぬ掘り出し物があったりするんだよ!この火炎放射器とかもそう!」

 

 バーニスさんがバイクの上で背中に背負っている燃料タンクとそれに繋がっている火炎放射器を見せびらかしながらそんなことを言う。あっさり合流は済んだ、と言っても買い物に行くだけだから何にも悪いことは起こらないか。油断はよくないけど郊外は修羅の地獄みたいな場所ではなくて普通に人が生きる場だ。ホロウほど緊張する必要はない。

 

「あぁ!?商品がないだぁ!?」

 

「あぁ、生憎じゃがツール・ド・インフェルノが終わるまでは商品は売れん。今朝方若い衆が数人来てな。在庫を全部買い上げていったんじゃ」

 

「えー、他の人用に残したりしてないのぉ~~?」

 

「お嬢ちゃんの言う通り、資源はできる限り分け合うのが仁義じゃ。じゃが、郊外で我を通すなら力がいる。残念ながらわしにはそれがなかった、それだけじゃ。金払いがよかったのが不幸中の幸いかのう、あのカリュドーンの子っちゅうやつらは」

 

「ああ!?俺様達がそんなことするかよ!」

 

「ごめん、シーザーさん落ち着いて。カリュドーンの子っていったんですか?店主さん」

 

「あ、ああ。おっかないシリオンが一緒だったから……いや?むしろシリオンは抑えておったかの。とにかくそう名乗っとったよ」

 

 マジかぁ……と天を仰ぎそうになった。いやせこ過ぎだろトライアンフ、カリュドーンの子を騙るのもそうだしそれでやることがパーツを断つというあまりにも遠回しすぎる妨害策。一体郊外にいくつホロウがあってそれぞれ独自のパーツリサイクル工場を抱えてると思ってるんだ。行きつけを調べてるのはいいがなんだか脇が甘いやり方だな。

 

 バーニスさんがうちにはシリオンの従業員がいたの!?とめちゃくちゃにテンションが上がっているところに水を差す形でそれは違うっていう風に訂正する。パエトーンの二人についているルーシーさんにこっちを任された手前ある程度は仕事を果たすべきだと思う。名前を使うって言うのはメンツを使うってことだ。こんなしょーもないことをしてメンツに泥を塗られたシーザーさんは表に出さないようにしてるけどかちんと来てるみたい。

 

 ホロウ深部にある廃車墓地、まだ出荷されてない部品があるらしいのでその一団はそれも抑えに向かったのだそうだ。お礼参りするチャンスはまだあるってことだ、と俺たちは各々のマシンに飛び乗ってエンジンをふかした。シーザーさんが持ってたキャロットで廃車工場の位置は把握した。良かったよ俺がプロキシの真似事できてさ!

 

「あいつらか!テメェ!ウチの名前使って何のつもりだゴラァ!!」

 

「くっ!もうバレたのか……!えっ!?プルクラの姐さん!?なんのつもぐふっ!?」

 

「あれあれ?猫ちゃん仲間割れ?」

 

「楽でいーじゃん。シメるんでしょ?」

 

「いや、シメなくていいよ。彼女はこっち側だから。意外と早い再会だったねプルクラ?」

 

「ほんとにね。嗅ぎまわってくうちにこっちから手を切るべきだって思ってたから丁度よかったよ」

 

「え!?なになにオーダーちゃんどういうこと!?」

 

 あっちは徒歩でこっちはバイクだからか割とすぐに追いつくことができた。5人集団で一人は見覚えのある黄色いモフモフシリオンだった。何というか福姐さんとはまた別の尻尾してるんだよねこの人。そう、プルクラである。彼女は俺を見た瞬間に油断していてた仲間を鮮やかに気絶させる。なにがなんやら状態の他の人たちにも説明しとかないと。

 

「私はプルクラ、まあアンタたちならわかると思うけどオーダーの隠れ家を襲撃した襲撃犯の頭やってた」

 

「んじゃあやっぱり敵じゃねえか!おし!ぶん殴ってやるから顔貸せ!」

 

「はいストップ、エレンさんも鋏仕舞う。彼女とはその時交渉してね、こっち側に寝返ってもらった。トライアンフ側へのスパイとしてだけど。いろいろわかった?」

 

「大まかには。ただもうトライアンフ側とは縁が切れるね。失敗2回目だから。悪かったねカリュドーンの子。名前使う真似をして。パーツは全部譲るからそれでチャラにして頂戴」

 

「スパイだぁ?聞いてねえぞオーダー。どういう事だよ」

 

 あーやっぱそういう反応になるよねシーザーさんは。こういうの嫌いそうだから。ただ、もうカリュドーンの子だけの問題じゃない。俺も巻き込まれている以上俺のやり方ってものがある。メンツは大事だ、間違いない。だけどそれ以上に守らなければならないものを守るために手段を選んではいられない。特に今俺の傍にはエレンさんがいるのだから。

 

 詳しい話はあとで、と俺が促すとシーザーさんも渋々鉾を引っ込めてくれた。エレンさんはまあ何となく不満そうだけど納得はしてくれたらしい。それじゃあ俺の家で集合しようとパエトーン側に連絡を入れて俺たちはパーツ選びに精を出すのだった。マジで安い上に品質がいいな……通おうかな郊外。

 

 

 

 

「で、説明してくれんだよな?スパイ云々について責める気は毛頭ねーぜ。お前襲われたんだしよ。んでもそれが俺様達に関わってくるってんなら話は別だ」

 

「それはもちろん。今回関わってなくても情報次第じゃ共有はするつもりだったけどね。プルクラ、よろしく」

 

「はいよ。まずアンタらカリュドーンの子にちょっかいをかけてんのは100%トライアンフだ。ルシウスっていうナンバーツーが元締めだな。首領には知らさず勝手に動いてる」

 

「やっぱり……!そこまで言い切るってことは何か証拠を掴んでますの!?」

 

「いや、それはない……というよりもできなかった。ルシウスは基本私ら傭兵に顔を出さないし契約書の類もださない。何人も部下を挟んでるから伝言ゲームみたいでね、金がよくなかったらまず従わないやり方さ」

 

 プルクラが説明するところによるとトライアンフの妨害行為は現覇者であるポンペイっていうおじいさんではなく次期首領とも噂されているルシウスという男が主導しているということだ。用心深い性格だがどこか抜けているというプルクラ評と今までの妨害行為の感想もそんな感じだった俺はそこは信じていいかなと思う。ただ、物証がない以上なんとも。

 

「そんで、トライアンフは妙にアンタらの情報を握っていた。たった数日しかいなかったオーダーの隠れ家の場所もそうだが今日の予定だってなぜか知っていたんだ。アンタら見張られてるんじゃないの?心当たりない?」

 

「すくなくとも尾行とかはなかったはずだ。オーダー、君のところはどうなんだ?」

 

「俺のところも俺たち以外はいなかったね。んじゃあ……機械的な部分じゃないか?拠点とか持ち物。最近買ったものとか調べてみないと。盗聴器ついてたりしないかとかさ」

 

「そうですわね、それを洗ってみるのがいいですわ」

 

 チラチラとルーシーさんが必死な感じで俺に瞬きで合図を送っているのに気づいて決定的な一言を引っ込めて別方面に意識を逸らすことに成功してほっと一安心。多分彼女はこちら側にもスパイ、内通者がいるかもという疑いを持っているけど言葉にはしたくないんだきっと。それはカリュドーンの子の内部不和につながるから。

 

「そこらへんはあんたらの領分だから私は関知しないよ。それと最後に一つ。私がトライアンフと縁を切ろうとした理由でもあるんだけど……ルシウスはエリー都、それもTOPSのどこかとなんか取引をしている」

 

「はぁ!?それこそ馬鹿な話だぜ!?郊外とエリー都、それもTOPSなんてあっちからしたらアリと取引するようなもんだ!何の得もないだろ!?」

 

「理由も内容も知らないよ。ただ、4日前だったかな。ルシウスとその子飼いがそろって拠点を出て行ったんだ。バイクで追いかけたかったんだがさすがにバレるからね。徒歩でついていったんだが……あいつらの車が向かった先にTOPSのマーク付けたヘリが着いていったのを見た。流石に追いつけなかったけどね」

 

「ない、話じゃないですわね。新エリー都のエネルギーは基本エーテル資源ですわ。ですけど安定したエネルギーではありませんの。ですから、御しやすい化石資源を求めて覇者にラブコールを送っても不思議ではありませんわ」

 

 プルクラも気づいたのかさらに大きい情報を被せてくれて事態をうやむやにしてくれたらしい。猪突猛進を地で行くタイプであるシーザーさんと楽観的で深く考えないタイプのバーニスさんはそれで誤魔化されてくれたけどライトさんとパイパーさんはそうはいかないよなあ。あとパエトーンの二人もか。そこは後でうまく調整しよう。

 

「そのルシウス?ってやつが誰だか知んないけどさ、それって郊外からエリー都にガソリンもってこようってだけじゃないんじゃない?ガソリン自体はエリー都に入ってきてるんだし安くなっても別に私ら使わないじゃん?エーテルあるんだからさ」

 

「それって、エリー都から郊外に何かもってこようとしてる……ってこと?エレン」

 

「シーザーが郊外とTOPSが取引する理由がないって言ったワケって、どっちにもメリットがないからでしょ。でも郊外の王様相手に商売する理由がどっかにあるってわけじゃん?なら郊外から持ってくるんじゃなくて郊外に何か売りつけようとしてる、とかあるんじゃない?」

 

 TOPSとは新エリー都の実質的な財政の実権を握っている上位企業の連盟だ。つまりは、商売人。メリットとデメリットを秤にかけてメリットを選んだからには理由があるはずとエレンさんは言うわけだ。だけど、それがわからない。

 

 郊外はエリー都に見捨てられた土地で寄り集まってできた集団と経済圏だ。別に豊かなわけじゃないし寧ろ貧しい。化石燃料はあってもエーテル資源ほどは儲からない。だからこそ謎が深まる。トライアンフ、いいや……ルシウスっていう男が何をしようとしているのか。フォースを使わなくてもわかる嫌な予感が脳裏から離れない。

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