フォースはいつでもエーテルと共に 作:光明面と暗黒面ってルビ無しで読めないよね
「ザイン、先に聞いておきたいんだ。ここに盗聴器の類はないよね?」
「あるわけないでしょ。俺しか入らないし最近入ったのだってカリュドーンの子とエレンさんだけだよ。それで夜更かしの相談?」
「ああ、そうなんだ。きっとザインなら気づいていると思ってね」
「内通者の話だね」
プルクラは暫くカリュドーンの子で匿うというか、疑いが晴れるまでは軟禁という形になった。一応報酬はその場で振り込んだのでしばらくいい生活はできると言っていたけど意外とあっさり捕まったなとは思う。そんでエレンさんとリンさんが仲良く客室へ向かって行ったしばらく後、アキラさんが話を切りだした。
「そうだね、君たちがシーザーとバーニスを連れ立って出かけてくれたからルーシーは僕に明かしてくれたんだ。どうも彼女も最近カリュドーンの子の動きが外に漏れすぎてるんじゃないかと思ってたみたいでね」
「まぁ、彼女なら気づくよな。ルーシーさんが言うんだ、ある程度の目星はついてるんだろ?」
「ああ、疑われてるのは……カーサだ」
「なるほど?」
すっとぼけた物言いをしてみたけどわりとえらいこっちゃな話だな。カーサというのはブレイズウッドの町長の名前だ。カリュドーンの子の前身、カリュドーンに町として借りがある彼女はカリュドーンの子が一時的に町を拠点にしたいという話を持ち掛けた時に快く受け入れたそうだがそういう狙いが……いや、何も知らないのにこれ以上言うべきじゃないな。潔白かもしれないのに。
「パイパーが『偶然』彼女を見かける時は特産品を出荷したその日の夜。対浸食装備を身に着けてホロウの中に消える、のだそうだ」
「怪しいな。アキラさん、君のことだからもう依頼は受けているんだろう」
「ああ、その次の出荷日が明日の夜だ。決行は僕とルーシー、パイパー。そして……万が一があった場合に備えて君にも来てほしい」
「信頼してくれてどーも。悪いけどエレンさんは置いていくよ。夜は彼女のスイッチも切れちゃうからね」
「はは、君なら対ホロウ六課に囲まれても逃げ出せるだろう?そうやってエレンに気を使ってるところも信頼できるだけさ」
内通者ねぇ……プルクラに色々嗅ぎまわさせた俺が言うのもおかしいけど向こうも手段選ばないね全く。まあ無関係の俺をどうこうしようって言うんだから郊外の義理人情っていう文化ももう廃れてきてるのかな。まぁ一回、トライアンフとは膝突き合わせて話したいところだね。
「遅くに申し訳ありませんわ、オーダーさん。ご協力感謝します」
「良いよ、気にしなくて。それよりもライトさんは何してたの?えらく疲れてるみたいだけど」
「バーニスを眠らせるためにずっと運動に付き合ってたんだ……そのかいあってバーニスもシーザーもぐっすりさ。ただ、エーテリアス相手に加減できる気力はなさそうだ」
『全員そろったね、いこう。オーダー、カーサの位置を』
イアスに憑りついたアキラさんが号令を出してぐだついてた空気が引きしまる。既に先にカーサはホロウの中に入っていった。俺たちも一つ頷き合ってカーサの後ろを気づかれないようについていく。不安そうに周りを見渡すカーサ、どうやらホロウには入り慣れていてもエーテリアスをどうにかする力は持っていないようだ。
しばらくするとカーサは集合場所らしいところで立ち止まる。俺たちも遮蔽物に身を隠して息をひそめる。というか、待ち合わせの相手はルーシーさんから聞かされたヤツだ。確か名前はモルスとかいう犬系のシリオンだ。外れてほしかったが……トライアンフのメンバーと接触した以上彼女への疑いは濃厚なものとなったな。
何やら話していたらしいけどモルスは唐突にカーサの首筋に斧と銃が一体化したような武器を突きつけカーサが動揺しているうちに正確に俺たちに向けて狙いをつけて発砲した。ルーシーさんのヘルメットの上を素通りした弾丸をみてバレていることが分かった俺たちは素直に姿を現すことにした。ただ、適材適所だ。
「ルーシーさんたちはカーサを。俺はあのシリオンをやる。喋れる程度には形を残しておくからこっちは任せて。腹を割って話してくるんだ」
「……わかりましたわ。おまかせします」
「おいテメェ。俺をあの猫と猿と一緒にしてもらっちゃ困るぞ!ここで引導を渡してやる」
「引き際の判断がへたくそだなお前。プルクラだったらもう手を挙げてるぞ」
発砲された弾丸をライトセーバーを起動して切り捨てる。弾丸は熔けるのではなく蒸発し独特な匂いを発しながら姿を消した。俺が持つライトセーバーを見て顔色を変えるモルス、どうやらオーダーの特徴くらいは知ってるのかね。
踏み込んでセーバーを振るう。持っていた武器をなます切りにされて跳ね上げられたモルスの腹に手加減した蹴りを入れて瓦礫の山に突っ込ませた。喋れる程度にはしておくと言った手前手足切り落として痛みで喋れないなんてことになっても困るしな。
「くそっ!?なにっ!?」
「腕は立つし判断力もあるんだろうけど……最初の判断を見誤ったな」
「くっ……カッ……」
スモークグレネードを取り出したモルスであったがフォースでそれを奪って潰しフォース・チョークで持ち上げて拘束する。さて、あとはこうして縄抜けできないように拘束すれば終了だ。大方の話はまだ聞いてる途中だから俺がある程度聞くとしよう。
「おい、吐けよ。何の目的でカーサと接触した」
「はっ、呑気なてめえらは知らねえだろうがな……ガソリンの枯れた町ってのは悲惨だぜ……こうやって俺等に頼らなきゃ生きていくこともできねえんだからよ。悪いが、接触したのはあっちが先だ」
「つまりトライアンフは覇者としての役割と果たしただけだと?」
「そうだぜ?確かに覇者は利権を握る、郊外のすべてをだ。だが、それと同時に責任を負うんだ。たとえどの町が困ろうが見捨てることは許されない。目の前の町の危機に気づかなかったどっかの間抜けなチームとはちがってなぁ!!!」
「堂々と接触しなかった時点で後ろ暗いことがあったんでしょうよ。で、大方物資だろうけどどこにあんの?あ、嘘ついたらわかるからね」
「……ケッ、この先だ」
俺がモルスの小指に手を添えると彼は素直に口を割った。一本ずつ折っていくぞっていう脅しはかなり素直に効いてくれたらしい。カーサ曰く、ガソリンスタンドが枯れたせいで明日の食事にも事欠きそうになっているのをトライアンフに助けてもらっていたらしい。世話になっていたカリュドーンの子たちにはどうしても打ち明けられなかったのだそうだ。
「シーザー!?どうしてここに!?」
「俺様だって馬鹿だけど間抜けじゃねぇ。お前らがこそこそなんかやってんのはわかってる。でもよ、水臭いっていっちゃあ……ダメか?」
「シーザー、これは……!」
「わかってる、カーサ。全部持ってけ。中身は確認した」
「久しいな、カリュドーンの子。シーザーよ」
物資のある場所にいたのはシーザーさんだった。正直に言おう、気づいてた。彼女が俺たちを着けていたのは。だけど彼女に秘密でこそこそ何か暗躍して知らないうちに解決っていうやり方に後ろめたさを感じていた俺は、あえて無視した。クライアントを無視するやり方だがルーシーさんのやり方は少々計算と合理に傾きすぎている。シーザーさんは現実を受け止められないほど弱くはない。
そして俺たちの後ろから声をかけてきた人間がいた。壮年の鍛え上げた肉体を持った老人と若いが抜け目なさそうな顔つきの人間。老人が現覇者のポンペイでもう一人が……ルシウスってやつだろう。何というか、良くないフォースの感じがする。ポンペイは明らかにライトサイドにいるがルシウスは気質がガッツリダークサイドだな。
「覇者ポンペイ……!どの面下げて此処に表れたんですの?カーサを懐柔してまで覇者の座が大事でして?」
「結論を急くな小娘。カーサとブレイズウッドは貴様らの側だ。問題は……モルス!貴様だ!これはなんだ!?今回の特産品の中からこれが見つかった。貴様の仕業だな……?それだけではない、ほとんど無関係の人間の家を消そうともしたと報告が入っている」
「お、親分……!俺が間違っていました……!責任は俺が……」
「抜かせ。貴様の首を晒してももう足りんわ。連盟の和を乱すことは我々の本意ではない」
ポンペイは額に青筋を浮かべて俺がつるし上げているモルスに怒声を放つ。ただ……気づいてない。これだけは事実だった。主犯はルシウスである、これが言えたらどれだけいいか。もちろん今ここでそれを告発し俺がルシウスをボコボコにしてもいいんだしそれはできる。だけど、トライアンフとカリュドーンの子の両方の顔に泥を塗ることになる。なにせ物証が一切ないのだ、プルクラの証言しかないのだから。
ブレイズウッドがガソリンを枯らして困窮してた、だがカーサはカリュドーンの子がツール・ド・インフェルノの資格を手に入れ拠点にさせてほしいという申し入れを受け入れた時に助けを求めるのは仁義を通せないとして郊外全てに責任を負う立場であるトライアンフに助けを求め彼らはそれを受け入れた。ただ、内通者はカーサではなく特産品の材料に盗聴器をつけたモルス……ということになるのだろう。実際は裏にルシウスがいるんだろうが。
「それで?ご立派なご高説のあとで不躾ですが、私たちが被った損害をどう補償していただけるの?」
「最近、郊外の別エリアを経由して劣化したパイプラインの再建、および道路共有の提携を結んできたところだ。少なくともこれで新しく5本のルートは開拓できる。そのうち3つのルートをカリュドーンの子に任せたい。貴様等が被った利益の補填以上のものが出るはずだ」
「まぁ。太っ腹ですことね。何が目的でして?そんな美味しい話ぶら下げてもすぐ食いつくほどおバカさんではありませんことよ」
「目的というのは一つしかない。確実に輸送ルートを開拓できる実力がある走り屋チームに頼むだけだ。ただ、困窮している住民への支援はやってもらおう。危険なエリアもある、君たちにそれができるかね?」
「やってやろうじゃねえか!悪くない条件みたいだしな。だけどなポンペイのおっさん、はき違えてるぜ。ツール・ド・インフェルノが終わればルートの選定をするのは俺様達だ」
「いい吠え方をするようになったなシーザー。肯定ととらえるぞ。ならば念書を渡しておこう。近く会議を開きそこで正式に決定だ」
なるほど、ポンペイっていう人ただものじゃないな。流石は郊外で長年覇者をやっているだけのことはあるって感じか。カリスマ性、対応力、冷静さ。どれとっても図抜けてる。浮かんだのはお師匠様だけどコッチ方面だけ見たらお師匠様も勝てないかもしれない。
「それで、私たちへの補償はこれでよろしいとしてもですわ。貴方、もう一人保障しなければいけない人間を忘れていませんこと?」
「わかっている、彼のことだろう。君がオーダーだな?インターノットの生ける伝説。このような形で会いたくはなかったが……私の部下が失礼なことをした。私にできることなら埋め合わせをさせてもらいたい」
「実質的な被害はなかったから特に物損に関しては何もなくていい。だけど一つ、俺が言いたいことがあるとすれば……しっかり足元を見ることだ。次はないぞ、あったら……直接伺わせてもらう」
「……肝に銘じよう」
ポンペイはルーシーさんが俺にお鉢を向けたからではないだろうが、しっかりと俺を見て姿勢を正し頭を下げた。ぶっちゃけそれだけでもう俺として留飲は下がってしまったのでもうよくなってしまった。組織の長が敵対組織の面前で部下を前にして頭を下げる、これが郊外でどういう意味を持つのかはもう十分理解していたつもりだったから。
ただ、ポンペイは組織としての責任を果たしたに過ぎない。問題はポンペイが頭を下げたのを驚いて止めている、演技をしているであろうルシウス。お前だよ。流石にこれにはカチンときたので最後の最後で威嚇の意味を込めてフォースを開放した。
ホロウ内の空間が重く沈むような軋むような音が響いて目に見えて力場が形成される。フォースが渦巻いてエーテルが端っこに追いやられる様子を見たポンペイは少しだけ汗を流して肯定の言葉を吐いてくれた。じろり、とルシウスを睨みつける、わかっているんだぞという意味を込めて。泡を吹きそうになっているルシウスと拘束されたモルスを伴って先にホロウを抜けるポンペイが見えなくなってから俺はフォースを引っ込める。ルーシーさんにバットでひっぱたかれた、理不尽。