フォースはいつでもエーテルと共に   作:光明面と暗黒面ってルビ無しで読めないよね

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第27話 フォースと肉食ウサギ

「ごめんね、エレンさん。そっち行かせることになって」

 

「いーって別に。向こうが手段選ばないんだったら危ないのプロキシじゃん。カリュドーンの子が表で動いてるときになんかされたらヤだし」

 

「うん、ありがとう。おおっぴらに俺がブレイズウッドで我が物顔してるとカリュドーンの客分とはいえツール・ド・インフェルノそのものについてはメンバー外だからルールに抵触しかねない。それを突かれたら面倒だ」

 

「わかってるって。アンタが動きづらくなったって話でしょ?片方はシーザーがいるから大丈夫だろうけどもう片方を襲われちゃたまんないしね」

 

 ポンペイとの接触があってすこし。あのあと帰ったら起きてたリンさんとエレンさんに噛みつかれて諸々話したうえでもう一度就寝したんだけどま~~機嫌直すのが難しかった。置いていったのは意図的とはいえエレンさんにとっては寝耳に水だもんね。リンさんも事情は知ってたみたいだし。

 

 で、連絡でちょこちょこうちに来るルーシーさん曰く一応カーサさんとの間にあったことは誤解として和解することはできたんだけどシーザーさんがあの日から考え込むことが多くなったそうで。まぁ、言っては悪いけどシーザーさんはポンペイに比べてリーダーとしての格はどうしても劣ってしまうから直接見て何か思うところはあったのかもね。

 

 上に立つということはまっすぐ行ってぶっ飛ばすというだけじゃ解決できないことは多々ある。それこそ師匠が市長とつながりがあるように、人脈や思考能力、経験がものを言うのは事実だから。だけど現在の格はともかく器としてならシーザーさんも負けてないし、経験は後からついてくるものだ。だからそう落ち込むようなことでもないと思うのだけど。

 

 そんなわけでとてもとても仲間想いなルーシーさんは一計を案じデータを持っていったんビデオ屋に戻るアキラさんにシーザーさんを気分転換に連れ出すように頼んだわけだ。アキラさんの甘い言葉に一対一でさらされるシーザーさんがどうなるかわからないけどとりあえず何とかなるという確信がなぜかある。アキラさんはそういう男だからだ。

 

 だけど、他のカリュドーンの子たちはポンペイとの交渉で得た新規ルート開拓でてんてこ舞いになってしまって出払ってしまうのだそう。シスコンのケがあるアキラさんはそれでリンさんが一人で作業するのをたいそう心配なさったのでエレンさんにお願いして護衛に行くことになったのである。俺はポンペイの件で派手にやらかしてるので目立つなですわとのことなので缶詰です。

 

 いってくるぜい、と迎えに来たパイパーさんにしっかり準備したエレンさんを託してアイアンタスクが土煙をあげて去っていき、地平線から見えなくなったあたりで思いっきり踏み込んだ。フォースを利用して空を跳ね、跳躍を繰り返すこと3回。俺の作業場から見て死角になるところに……いた。

 

「はじめまして、でいいかな。トライアンフと考えてもいい?」

 

「違うよぉ……すごいね、気づけない位置にいたはずなのに。それもキミの能力ってワケ?オーダーくん?」

 

「あわわ、ちょ、ちょコレ!?ヤバイですってザオちゃん先輩挑発しないで!」

 

「あ、動かないほうがいいよ触れたら問答無用で斬れるから。こんなふうにね」

 

 その場にいたのは小さな兎のシリオンと白と黒のツートンカラーの髪の毛を複雑に編み込んだ少女……面倒くさいのがどちらもデキるであろうことだ。見た目はちみっこいが明らかに侮れない兎のシリオンではなくまだ御しやすそうな少女の方の首筋にライトセーバーを突きつけ威力の程度を示すために浮かばせたセーバーを地面に落とす。柄までずっぽりと地面に自重だけで刺さったセーバーを見た少女が動かないままあたふたするという器用な真似をしている。

 

「バレちゃったから自己紹介するねぇ。ほんとはもっとちゃんと平和な感じでしたかったんだけど……TOPS監査部門『クランプスの黒枝』所属の照ちゃんだよぉ。こっちは後輩のダイアちゃん」

 

「だ、ダイアリンでーす……できれば高評価とノークレームでお願いしまーす、はは、は……」

 

「TOPS?猶更不自然だな、こんな荒野に用でもあるのか?」

 

「あるんだよぉ。さっきキミが名前を出した……トライアンフのルシウスくんの件について、お話しできないかなぁ?」

 

 いやな厄ネタが降ってきたな、と思いつつTOPSであると名乗った彼女、ザオさんとダイアリンさんでいいのか。とりあえずは嘘じゃないのは分かるのでライトセーバーを収める。ダイアリンさんはほっとした顔をしているが努めてカワイイ顔を崩さないザオさんの方は要警戒だ。それにしても……。

 

「余計なもの聞こえてるんだな、うるさいだろそれ」

 

「えっ?」

 

「……キミ、何で知ってるの?」

 

「見ればわかるんだよそういうの。感覚過敏みたいなもんだしな、俺に言わせればだけど」

 

 ダイアリンさんを見てわかった。フォースとの親和性があるせいでそこに残留したフォースを通して余計なものが聞こえてるんじゃないかと。エーテルを日常的に扱ってるから減退して一部の感覚器官にしか残ってない。大方過去に残された強い思念を伴ったフォースの乱れを聞き取れるってとことか。中途半端にフォースとエーテルが干渉しているせいで制御もできてない。

 

 ただ、長くエーテルと共に過ごしすぎているから今から修行したとてフォースを自在に操るのは無理かな。耳をふさぐ程度はできるかもしれないけど、今うまく付き合ってるなら俺が口を出すことじゃないか。偶にいるんだよね、俺ほどじゃないけどフォースと仲良くなれる素質を持っている人。そういう人はエーテルとはうまくいかないから変な特異体質抱えてたりするみたいだし。少なくとも俺がホロウ内で助けた人はそういう人いたよ。

 

「で、TOPSだっつーのは理解したがクランプスの黒枝ってのはなんなんだ?」

 

「ほら、TOPSってなんでもやって利益を求めるっていうのが根底にあるワケでしょ?だけど、一線を越えてはならないっていうのは当然あるの。ザオちゃんたちはやり過ぎちゃった子たちをメッ!ってするのがお仕事な組織ってワケ」

 

「へー、TOPSって自浄作用とか気にしてたんだ。その割には会社お取り潰しレベルの不祥事の隠蔽に事欠かないって印象だけどねぇ」

 

「その印象は全くもって間違ってないから安心していいよぉ。力を持つとどうしても振り回したくなる人、おおいから」

 

「なるほどぉ」

 

 あっはっは、とザオさんと一緒に笑ってみる。皮肉の言い合いだが割と心地いいな、会話のテンポ感がかなり俺と合う人って印象だ。ダイアリンさんは笑顔が引きつっているけど、俺たちそんなヤバイ空気出してるのかな。ザオさんは普通の椅子に座ってもらおうとするとテーブルと頭が大体同じくらいの高さになってしまうのでソファに座っているが、まずなんで俺がオーダーだってバレてんのか……そんなもん監視カメラかなんかで割ったんだろうな。人の記憶からは消せても機械は壊さない限り誤魔化せないし。TOPSならなおさらか。

 

「で、なんでルシウスの件を俺と話す必要があるんだ?」

 

「うん、確証が欲しいと思うから先に言っちゃうけどトライアンフのルシウス君がTOPSの企業に郊外を売り渡そうとしているのは事実だよ。ザオちゃんのところで裏は取れてる。ただ、やり方が問題」

 

「やり方?」

 

「えーとですね、ただ郊外と取引をする、というのなら黒枝が動く理由にはなりません。ですけど~~企んでいることが企んでいることなので動く必要があるとの結論に至りました、ハイ」

 

「勿体ぶるってことはこっからは有料ってことね。俺にどうしてほしいんだ?」

 

「ルシウスがやらかして逃げられなくなった時、ザオちゃんたちにルシウスの身柄を渡して。それがこの先を聞く条件」

 

「難しいんじゃないか、それは。できなくはない、殺したように見せかけるとかどさくさ紛れとかね。ただそれじゃあトライアンフとカリュドーンの子両方に対してスジが通らない」

 

 ルシウスの件は、罪を白日の下にさらして郊外のルールの下で裁いてこそ初めて意味がある。トライアンフのメンツ、被害を受けたカリュドーンの子のメンツを両方ともとるやり方がそれだ。だから俺はあの時ルシウスを糾弾しなかった。確かにTOPSにとっては商売相手本人からの証言は巨大な意味を持つだろうから理由は分からなくもないんだけど。

 

「そーくるよねえ。スジにメンツ、大事なのはわかるよぉ。だからザオちゃんたちはカリュドーンの子でもトライアンフでもなくキミに話を持ち掛けるの。キミが上手くやれば走り屋チーム二つとも傷を浅くして終わらせられてザオちゃんたちも任務を確実に終わらせられるの」

 

「今オーダーさんが仰った不可能じゃない、という言葉。トライアンフとカリュドーンの子に伝えれば絶対無理と返ってきますよ。できるけどやりたくない、それだけの言葉を実現できる実力があるという自信が私たちがここにいる理由です」

 

「ルシウスを裁けなかった留飲をどう下げるつもりなんだ?たとえ俺が攫って行っても両陣営とも消化不良で終わるだろ?」

 

「ん?それはもう盛大に裁くんだよ。TOPSに隠れて好き勝手してる企業もろともね。それに、終わったら郊外に返すこともできるし?奇跡的に生き残ってたのを見つけたよーって」

 

「後になるか先になるかの違いってことか……ハァ、いいだろう。先を聞かせてくれ」

 

 契約成立!というザオさんがぴょこんと飛び上がると同時にダイアリンさんがどうもどうもーと嬉し気に呟いて機械を取り出す。それを操作すると空中に画面が映し出されてルシウスのプロフィールやらなんやらが表示される。取引を持ち掛けた企業は……エーテルエネルギーの大手か。

 

「結論から言うね。ルシウスは油田を壊滅させて郊外にエーテルエネルギーを導入、その供給を自分の手に握るつもりでいるんだぁ。成功したら何人死ぬかわからないね」

 

「自分の国を作りたかったわけか、アホらしいな。ポンペイはカリスマだけど人を見る目はないらしい。どうやってやる気なんだ?」

 

「シンダーグローレイクですよ。あそこの火を止めちゃえば勝手に油田全体がエーテルに侵食されてパァです。おそらくツール・ド・インフェルノを隠れ蓑にする気でしょう」

 

「なるほどね、ザオさんたちは俺にどうしてほしいワケ?」

 

「うん、どうにかしてルシウスを一人にしてほしい。手段は問わないし何してもいいよ。そうしたら必要な情報をもらってから郊外にお返しするからさ」

 

 できなくはない、という感じか。フォースを利用すればルシウスを孤立させるのは容易だが問題はどこでするかだ。ツール・ド・インフェルノ中はホロウのそこかしこにカメラが入って中継される。何かをしたら一瞬でわかるんだ。だからこそ、タイミングを考えないといけない。

 

「詳しい作戦は追々でいいよぉ。今日は急な接触になっちゃったからねぇ。ああでもそうだ、オーダーくん?」

 

「なにか?」

 

「クランプスの黒枝に入る気はなぁい?」

 

「断るよ。あなた方は俺も欲しいんでしょうけどそれ以上にこれとそれが欲しいんでしょ?」

 

「こんだけ鋭ければそりゃバレるよねぇ。でも仲良くはしたいんだよ?これはホント」

 

 それとこれ、つまりはライトセーバーとフォースだ。空中に浮かべたマグカップとライトセーバーの柄を見せればザオさんは苦笑してぽりぽりと頬を掻きながら苦笑いをする。TOPSどころか新エリー都の中枢にすらフォースとライトセーバーの技術を渡すのは不安を覚える。エーテルに反発する新しい概念とか言われても困るだろ。しかも適合者はエーテル適応体質よりもよっぽど貴重で10年単位の修行期間が要りますって言われたらさ。

 

 領収書とか念書とか契約書とかきれないからせめて握手させて、というザオさんが差し出してきた手を握り返す。ライカンさん並みに気を使って整えられた毛並みの奥には武器を握る人間特有の硬さがあった。笑顔の下にいくつもの仮面を被っているであろう彼女は信頼はしてもいいが信用はしちゃいけないタイプのシリオンだ。必要ならこっちをすぐに切るだろう、俺もそのつもりでいないと。

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