フォースはいつでもエーテルと共に   作:光明面と暗黒面ってルビ無しで読めないよね

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第28話 フォースは裁定する

「ねぇ、一緒に見ないの?なんで?」

 

「別口で仕事が入ったんだ。申し訳ないけど一緒にはいられない。守秘義務もあるから俺一人で対処する。シンダーグローレイクにいるから終わったら合流するよ」

 

「怪しい……ねえ、それ走り屋絡みじゃないでしょ」

 

「ノーコメント。正直ここまで話すのも割とギリギリなんだ。頼むよ」

 

「……別に、私はあんたがまた変なことに首突っ込んでないか聞いてるダケ。でもさ、友達で同僚じゃん………………もうどっか行っちゃえば?」

 

 ぷいっ、とエレンさんは顔をそっぽに向ける。不機嫌に尖らせた唇と伏せられた瞳、口の中で不満そうにかみ砕かれる飴。明らかにバッドコミュニケーションをかましたことがありありとよくわかる。どうしたもんか……そりゃあ、押しかけて来たのはエレンさんだとしてもツール・ド・インフェルノに誘ったのは俺だし、申し訳ない気持ちはありありだし?仕事はいりましたーごめーんって?そりゃキレるわ。

 

「エレンさん、仲間外れにしたいとかそんな話じゃないんだ。この仕事に君が関われば君だけじゃない、ヴィクトリア家政にも累が及ぶかもしれない。俺はそれに耐えられないんだ」

 

「……知ってる。アンタがそういうお人よしって奴なのは。だからさっさと終わらしてさっさと戻ってきてよ。まだサイドカー乗せてもらってない」

 

「ありがとう。終わったらちゃんと乗せてあげるからさ。リンさんたちの護衛よろしく」

 

「うん。ちゃんとやっておいてあげるから、心配しないで」

 

 カリュドーンの子にももうすでに別口の仕事でシンダーグローレイク周辺に行くということは伝えてある。ルーシーさんとライトさんはおそらくきな臭さを感じてはいるものの静観、シーザーさんはなんだよ見てくれねーのかよと口を尖らせていたけど。まぁぶっちゃけ焼き入れられるかと思ったけどそうでもなかったかな。

 

 ビデオ屋の車が泊まりアキラさんとリンさんが顔を出す。俺の背中を一発尻尾ではたいてから車に乗り込んだ。うーん、人生って上手くいかないなぁ。もしかしてフォースがなんか試練をくれてるんだろうか。それならまぁ、しょうがないか。乗り越えるだけだ、俺は俺でやることをしないと。見逃してくれたみんなのためにも。

 

「出てきていいですよ」

 

「また気づかれちゃった。ザオちゃんこれでも凄腕って呼ばれてるのに複雑。はい、これ」

 

「なんですか、これ」

 

「超~~~強力な抗侵食薬だよぉ。ザオちゃんたちはもう打ってきたけど一回打ったら昏倒しちゃうくらい強力だけどこれならシンダーグローレイクのエーテル濃度がどれだけ上がってもエーテリアス化することはないだろうねぇ。危なくなったら打ってね」

 

「まぁもらっておきましょう。ダイアリンさんは?」

 

「ダイアちゃんはOJTみたいなものだったから実働はお休み~~。君が冷静だったから私一人でも充分かなって」

 

 TOPSの人は隠れるのが上手だなぁと思いつつも声をかければ首をかしげながらザオさんが現れる。本当に何でばれたかわからないという顔をしながら彼女が差し出したのはガス式の無針注射器。満たされてる液体はエーテルの玉虫色をしていて説明を聞いてもなおこれを体に入れる気にはならない。ただ、気を使ってもらったので緊急用ということで受け取っておくことにした。

 

「シンダーグローレイクで待ち合わせ、じゃなかったでしたっけ」

 

「それでもよかったんだけどぉ、君の意思に変わりがないか確認に来たの。大丈夫そうで安心安心。じゃ、いこっか」

 

「了解です」

 

 ぴょんこぴょんことザオさんがスキップ……いやあれ普通に小走りになってるだけなのか。兎のシリオン特有なのかね、とにもかくにも車に乗り込んだザオさんは一足先に別ルートで去っていく。どうやって運転してるんだろあのバギー……まぁいいか。と俺はそのままシンダーグローレイクまでバイクを走らせるのだった。

 

 

 

 

「はぁ~~~~、余計なことばっかりしてんなルシウスのやつ」

 

「ね~~、計算高いのはいいけどやり方がずさんで証拠残しまくり。ん~~~、郊外ってもしかしておバカ?」

 

「TOPSに比べたら他は大体おバカでしょう。郊外だって郊外のやり方があるだけです。それは頭脳労働じゃなくTOPSが捨て去った仁義だとか、そういうものでしょ」

 

「まぁ確かにザオちゃんにはよくわからないものかも。等価交換とかじゃないんでしょ、それ。多少不利でも先のため、こっちが有利でも喋らない。バランスがとれてないったら」

 

 俺たちがシンダーグローレイクに移動している間にツール・ド・インフェルノはスタートしてしまった。特段ラジオで聞く限り何か起こっている様子はないものの一帯のホロウのエーテル濃度がどーも上がっている気がする。エーテリアスを間引けばエーテル濃度は下がるはずなのに、あがる。何がどうなっているのやら。

 

 シンダーグローレイクの火の海を一望できる高台にて、待つ。ツール・ド・インフェルノに勝ってほしいのはもちろんカリュドーンの子だけどここで俺が小細工をするようなことはない。たとえ先にトライアンフが来ようとシンダーグローレイクに何か小細工を、あるいはホロウに何かをしない限りは介入しない。その条件はザオさんにも飲んでもらった。犯行が確定しない限りは俺たちはただここで見物をするだけだ。

 

 ザオさんが暇つぶしに見る?とよこしてきた資料の中にはルシウスの悪行の証拠とつながった企業の証拠がわかりやすく並べられていた。ルシウスの方は隠しているつもりだけどバレバレって感じだが企業の方はかなり巧妙に隠してたのを暴いたって感じだ。ルシウスは郊外の中じゃ確かに計算高くて狡猾かもしれないが、TOPSからすれば井の中の蛙だったってことか。

 

「きたよぉ、残念だったね。トライアンフだ。でも一人足りなくなーい?」

 

「まぁ、それは仕方ないでしょう。妨害工作でもしてるか足止めに残ったのか。ルールは『何でもあり』です。正々堂々はあくまでも当人同士の間でしかおこらない」

 

「達観してるねー。別に誤魔化しても怒られないよ?だってもう、ここの映像はダミーに切り替わってるんだから」

 

「徹底してますね。郊外の命を支えるイベントもあなたにとっては仕事の方が大事なワケだ」

 

「うん、別にザオちゃんは郊外をどうこうしたいわけじゃないし郊外から何かを受け取るつもりもないから。お仕事だけすましたら帰るよ」

 

 シンダーグローレイクにエンジンの重低音を響かせて表れたのはカリュドーンの子じゃなくトライアンフだった。モルスはいないが足止めしてもセーフっちゃセーフだ。ただ、今までのツール・ド・インフェルノでそんなことしたヤツはいないらしいけど。ルール上セーフならそれはどこまで行ってもセーフだ。問われるのは感情論、俺としては一言『好ましくない』だ。

 

 火の海の中にポンペイが握っていた火打石が投げ込まれる。これで今回の覇者もトライアンフか―――――ッ!?何でこのタイミングでこんな未来見せるんだよフォース!もうちょっと早く教えてくれてもいいじゃないか!ザオさんの静止も振り切って飛び出す。フォースでカメラやらなんやらをすべて作動停止させてポンペイとルシウスの間に降り立った。瞬間、火の海からエーテル結晶が屹立する。

 

「なっ!?これは……!?ルシウス、どういう事だ!」

 

「エーテル重合触媒……だね。ルシウス君、こんにちは。まあこれだけ名乗ればいっか『クランプスの黒枝』だよ。君の身柄を確保しに来た」

 

「なぁっ!?なんで黒枝がここに……!そうか、お前かオーダー!!」

 

「待て、ルシウスはこちらの人間だ!TOPSに連行する権利など……うぐっ!が、はぁ……」

 

 エーテル濃度が爆発的に増大する。いまさっき未来視で見た通りだ、まさかこんな強引な手段で潰しにかかるとは。ツール・ド・インフェルノ中に何かやらかすとは思っていたから待機していたわけだけど、想定以上だ。ダイアリンさんが侵食させるとは言ってたけどその手段を知らなかった。さっきの資料にもなかったし。馬鹿なことをしてくれたものだ。

 

 振り向いてポンペイを見る。古強者の眼光は一切揺らがずグラディウスをこちらに向けている。だが明らかに様子がおかしい。エーテル適応体質なのに浸食を受けている……?それもあまりにも速いスピードで。判断は一瞬だった、ポンペイの手首を抑え首筋にザオさんからもらった注射器をあてがい注射する。目に見えて侵食速度が下がるどころか盛り返してきた。苦悶の声一つ上げないままポンペイは気絶する。

 

「それ、そう使っちゃうんだぁ。何も返ってこないよ?」

 

「俺にはな。だけどこの人はツール・ド・インフェルノの勝ち負けに関わらず郊外の未来には必要な人間だ。おまえとちがってなぁ!ルシウス!」

 

「う、うるさい!なんなんだよお前!あと少し、あと少しだったんだぞ!俺が、郊外のすべてを握るのは……ああああああっ!!!??」

 

「ちょっと、持ちにくいからそういうのやめてくれなぁい?ザオちゃんに引きずっていけってこと?うーん、まるでタコかイカ……いや、ナメクジのシリオンだね」

 

「さっさと持っていってください。勢いあまって首の骨も折りそうだ。ルシウス、お前の望みは果たされない。次に見るのはきっとここよりハイテクなお部屋だろうね」

 

 ザオさんの指摘はまあ正論だけど、世の中理屈じゃない部分はどうしたってある。ザオさんはそこらへんは理解できないだろうし俺も強要するつもりもない。だけど俺は思うんだ、トライアンフというデカイ組織を食わせてきたこの人をこんなくだらない内紛じみたことで亡くす理由は見つからない。シンダーグローレイクが仮になくなってしまった場合、郊外で迷った人々を導くカリスマは多い方がいい。

 

 崩れ落ちるポンペイを支えつつ火の海の中のマグマのごとき怒りを吐き出す。手足が一瞬でつぶれかろうじて死んでないというほどに体の中の骨をめちゃくちゃにされたルシウスが悲鳴を上げて支えを失った軟体動物のようにどちゃっと倒れ伏す。ザオさんには嫌な顔をさせてしまったけどこのくらいは返させてほしい。

 

「ザオちゃんのお仕事はこれで終わり、どうするの?オーダーくんは」

 

「ケツ拭いて帰りますよ。あの偽物の火打石がエーテル結晶を作り出し続ける効果だったとするならいつか効果が切れるはずだ。それまで俺が……シンダーグローレイクを守る」

 

「ふぅん、かっこいいね。じゃあまたお話ししようね。今回のお仕事、もらいすぎたから返さなきゃいけないし」

 

 ばらばらばら、とローブの裾を振るって8本のライトセーバーを浮かべた俺に対し、あまりにも雑にルシウスを持ち上げたザオさん、まあ半分引きずってるけど知ったこっちゃない。彼女はまた話そうとだけ言ってシンダーグローレイクを抜けていく。さて、ここからは俺の仕事だ。

 

 8本のセーバーの刃の長さを最大まで伸ばしてから、フォースで操る。仰向けに寝かしたポンペイの浸食が進まないようにエーテルを退けながら成長し続けるエーテル結晶をライトセーバーで根元から刈り取る、いくつも、成長する先からだ。支えを失ったエーテル結晶はフォースで持ち上げ適当な場所に積み上げていく。何トンもある結晶を刈り、持ち上げ積み上げる。火の海の酸素を断ったらそれで終わりだ。結晶が火の海を覆わないようにしなければ。

 

 そうしてしばらくその作業を続けていると聞きなれたバイクのエンジン音が耳に入った。フォースの操作で必死過ぎてちょっと索敵まで割く余裕がない。待ちに待ったカリュドーンの子の登場だ。間に合ったか、と思いつつもさすがに物理じゃ無理があったかじりじり進んでいく結晶の海をとどめ続ける。どうするんだ、これ……!

 

「オーダー!?それにオッサン!?これ、どういうこった……!」

 

『侵食反応……!ねえオーダー、何があったの!?ルシウスは!?』

 

「ルシ、ウスだ。奴が火打石を……エーテル侵食を進める物質に変えていた。ヤツはもう逃げたが……彼が今、押さえ続けてくれている」

 

「オッサン!?大丈夫か!?」

 

 ポンペイ、意識を取り戻してたのか。そして俺の事情を汲んで誤魔化すためにルシウスの話題を逸らして今起きている事象に意識を向けるように一同を誘導してくれている。体を動かす気力はなさそうだけどとりあえずよかった。あとは、これだけだ……!

 

 

 

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