フォースはいつでもエーテルと共に 作:光明面と暗黒面ってルビ無しで読めないよね
「実際のところ何がどうなってこんなことになってるかは俺にもわかんない。説明を聞く前に介入したからね」
「オーダーさん、あなたがいてルシウスを逃がすとは考えられませんわ。一体全体何があったのか隠さずに説明してくださる?」
「やめろ、小娘。俺は浸食でエーテリアスになりかけていた。オーダーが止めてくれた隙に奴は逃げた、それだけだ」
「そうだぜルーシー、犯人は分かっているんだ。あとは捕まえるだけだぜ?それよか、コッチをなんとかしねーとな」
ルーシーさんは誤魔化せなかったみたいだが事態が事態だ、シーザーさんが言う通りシンダーグローレイクを何とかしないといけない。ルーシーさんもそれ自体は分かっているからこそシーザーさんの指摘に対しては反論せずに黙り込む。エーテル結晶の破砕作業は続けているもののさすがはTOPSが開発した触媒、単純作業じゃ追いつけない、じりじりと真綿で首を絞めるようにシンダーグローレイクはふさがっていく。
「……シーザー、その火打石は本物だな?ゴホッ、ゲホッ」
「当たり前だ!俺様達が手に入れた時アンタたちがなんか仕込んでなけりゃ、だけどな。けど、俺様はこいつを肌身離さず持ってた。ルシウスだって入れ替えられねえ」
「ポンペイおじさま、言いたいことは理解できましたが、危険すぎます。あの、あんな状態のシンダーグローレイクにどうやって火打石を投げ入れろと……!」
「ポンペイのオッサン、言ってる意味理解してるんだよなそれ。俺様に譲ってもいいってことか?」
「シーザー!?」
咳き込みながらも逆転の手段を提示してくるポンペイ。俺は破砕作業を続けながらもそれに耳を傾ける。火打石だ、そうだ。ツール・ド・インフェルノの目的は覇者を決めるだけじゃない、シンダーグローレイクに火種を投げ込んで活性化させてシンダーグローレイクを手入れする、コレも目的の一つだ。つまり、火種を投げ込むことができれば火の湖そのものがエーテルを吹っ飛ばしてくれる。
「理解だと?そんな下らない話は後回しでいい。シンダーグローレイクの火を消さないこと、それが今すべきことだ。そもそももう、俺は覇者になるべきではない」
「そうじゃねえ、あんた騙されてたんだろうが!みりゃわかるよ!オッサンのエーテル耐性はこの程度でエーテリアス化するほど弱かねえ!ルシウスがなんかやったんだろ!こんなことで覇者が決まってたまるか!」
「ちがう、それも含めてトライアンフの責任だ。いいか、シーザー。アクシデントがあろうがツール・ド・インフェルノは続いている。ならば、火打石を投げ入れろ。英雄に、覇者になれ。お前が伝説を刻むものとして覚悟があるならばだ。見届け人は俺だけでよかろう」
ふらつく足で立ち上がり、両手でシーザーの肩を掴んで諭すように言葉を紡ぐポンペイ、現覇者として見抜くべきものを見抜けず、防がなくてはいけない暗躍を許した悔恨と郊外に生きる人間を守護しなければならない庇護者としての矜持が入り混じった言葉だ。無理して立ったせいですぐに膝をついてしまったがそれだけでもう、シーザーさんには十分だった。
だが、問題なのは火の海の面積は刻々と狭くなっており、確実に投げ込むには火の湖の源泉……奥の奥まで飛び込んで火打石を投げ入れなければならないであろうことだ。それはつまり一方的な帰り道無しの特攻といっても過言ではない。それを理解しているからこそポンペイは英雄という言葉を選んだのだろう。体が動くならすぐにでも自分でやりたいだろうに。
だから、見届けると言った。成否にかかわらずシンダーグローレイクとシーザーさんと運命を共にする気なんだ。ポンペイは。シーザーさんが助かるならばそれが一番いい。ポンペイだってそう望んでいる。郊外の人間じゃない部外者としては悔しい限りだ。俺がやる、その一言が出せればどれだけいいか。言った瞬間、首と胴が泣き別れてるだろうけど。
「プロキシ、全員の脱出ルート探しといてくれ。ルーシー、ライト。あとは任せた。オーダー、今度はちゃんと見てろよ。悪い、これしか思いつかねぇ」
『シーザー、待つんだ。まだ何かあるはずだ、僕たちが見つける。だから!』
「……わかった」
「シーザー!?何考えていますの!?お待ちなさい!シーザー!ポンペイ、あなた!」
シーザーさんは火打石を取り出してバイクにまたがる。ルーシーさんがバッドを振り回して止めに入ろうとする。だけどその前にシーザーさんはロケットのようにバイクを走らせた。慌ててライトさんもルーシーさんもバイクに飛び乗るがスタートが遅いなら追いつけるわけない。
くそ、何とかならないか。なんとか!シンダーグローレイクに生え続けるエーテル結晶を豆腐のように切り裂くライトセーバーを制御し結晶を持ち上げて外に捨てる。これだけの作業でいっぱいいっぱいになって動けなくなってる自分に殺意が湧いてくる。覚悟を決めた彼女の雄姿は、こんな状況じゃなければ輝いて見えるだろう。
ルーシーさんの涙声の叫びを振り切るように劣化したパイプの上を走って燃え盛る炎の湖へ飛び込もうとするシーザーさん。瞬間、エーテルが急激に活発化して巨大なエーテル結晶が屹立し始める。もう時間がない、間に合うけど間に合わない。どうすればいい、どうすれば……!なんでこんな時に何も言わねぇんだよフォース!俺に、どうしろってんだ!
「オーダーさんっっ!!お願いです!シーザーを!助けてぇ!!!」
『オーダー、うわっ!?』
ルーシーさんの叫び、涙と情けなさと無力感。それが全部乗った叫びが耳を貫いた瞬間何も考えず飛び出した。全力でフォースを動員し体の負担を無視しての全力軌道。巻き込まれて余波で転がっていったイアスと中のアキラさんに心の中で謝る。
それにしても何フォースに答えを求めようとしてたんだ俺は。頼り切ってたらそれはフォースの光明面を妄信し続けたジェダイ評議会と何が違う。フォースとうまく付き合うんだ、それが俺のやり方だったはずだろ。
破砕作業が強制終了したせいでエーテル結晶の生成が加速されていく。だがもう、それでいい。それしかない。呼び戻したセーバーを両手で持ち途中にふさがるエーテル結晶を切り裂いて細切れにしつつただまっすぐにシーザーさんの元へ向かう。大丈夫だ、俺の足なら追いつける。なんてったって虚狩りのお墨付きなんだからなぁ!
「シーザーさんっ!」
「オーダー、お前!?」
「いいから突っ込んで!大丈夫、俺だって伊達に都市伝説やっちゃいないんだよ!」
「っ!おうっ!任せた!」
不安定な足場をドリフトかまして最高速を維持するシーザーさんに併走するどころか追い抜いて前に立つ。前方の障害をすべて切り伏せて火の海への特攻に付き合うことにした。確実に火打石を届けた後にシーザーさんをフォースで投げ飛ばせばどうにかなるはずだ、違う!どうにかする!
ついに道がなくなる。加速しきって飛んだバイクの上でシーザーさんが火打石を叩きつけるように下に向かって投げ入れた。ここ一発で狙いを外さない勝負強さを見せつけたシーザーさんが投げた火打石は寸分の狂いもなく火の湖の源泉に吸い込まれていく。これでもう、大丈夫だ!
フリーフォールの落下の中、シーザーさんのバイクをフォースで掴む。ルーシーさんの依頼を遂行しなければ。契約違反を繰り返したツケかもしれないがこれだけは完璧に完遂したい。投げ飛ばそうと意識を集中させた瞬間、あるものに気づいた。そういうことかっ!!!
「シーザーさん、英雄になれるぜ。あそこだっ!!!」
「オーダー!?おい、バカ止せ!お前なにしてんだよっ!!」
投げ飛ばす方向を調整して、バイクごとシーザーさんを投げ飛ばす。伝説の時代から存在したであろう次元の裂け目に。火打石が火をつけた湖が我慢できずに火を噴く。フォースによる空中浮遊なんぞできないし、空中ジャンプでも間に合わない。シーザーさんが裂け目に消えていったのを確認して俺はできるだけ分厚いエーテル結晶を選び、そこの上に飛び込んで根元をライトセーバーで断った。瞬間、マグマが噴火する。
シンダーグローレイク全体が爆発して、灼熱の奔流を吐き出し続ける。エーテル結晶はその灼熱に負けて焼き尽くされていく。だけど、俺が支えを断ったエーテル結晶は爆発の勢いで俺ごと空に舞い上がっていく。空中に吹っ飛ばされた俺は火の海を切り裂いて現れたライトセーバーをすべて回収して、何度かフォースで勢いを殺して着地する。シーザーさんに抱き着いているルーシーさんの近くへ。
「あー、依頼は完遂でいいかな?」
「オーダーさん、よ……良かったですわぁぁぁぁ……!」
「オーダー!お前任せろっつって残ってんじゃねえよ!でも、良かったぜ……!」
『オーダー、ひやひやしたよ。エレンが怒ってるよ?』
「うーん、これに関しては謝るしかないよね……とりあえず、これにて一件落着?」
ルーシーさんがいの一番に俺に抱き着いて、ちょっとぷんすかしているシーザーさんが俺の額を小突いたけどそのあと肩を組むように俺に抱き着いた。エレンさんには申し訳がないけど無茶をするべき場面だったと認めてもらうしかないだろう。あとはこれを、どうするかなんだけど。
「アンタって目を放すと無茶しかしないの?」
「そういうつもりではなかったんです……!」
「だってもう2回目じゃん。零号ホロウと今回でさ。なに?両手に手錠でもつける?」
「ちょっと賛成したいですわね」
「自由への脱出へぶっ!?」
どうも、翌々日になってめちゃくちゃ怒られてるザインです。尻尾ビンタの懐かしい痛みを受けてのトリプルアクセルをキメてとりあえずは許されたらしい。郊外にもある病院に担ぎ込まれた俺たち、ポンペイが一番重症だけどあの抗侵食薬のおかげで後遺症は有りつつも普通に生活はできるらしい。だけど走り屋業は引退だそうだ。
ツール・ド・インフェルノの結果云々だけど覇者はシーザーさんに決まった。本人めちゃくちゃ納得してないけどもうポンペイ自体がもうバイクを操れない上にエーテル適応体質も失って後遺症も出てしまった。跡目のルシウスは裏切っている、トライアンフは空中分解寸前だ。それでのもう一度は無理だし、トライアンフとしてもケジメがつかない。それに火打石を投げ入れたのはシーザーさんだから覇者はカリュドーンの子ってわけ。
とりあえずトライアンフのケジメはポンペイが全て責を負う形で引退することでとり、そのトライアンフのメンバーたちの面倒はカリュドーンの子が見るという形で落ち着いたのだとか。まぁそれが一番大事か、忙しくなるだろうねぇ。
「でも、変な話だね~~。ルシウスの足取りが一切つかめないなんて。fairyでもダメなんでしょ」
『物理的にカメラがない場所を通った場合、電子的な痕跡がないので追えません』
「仕方ないですわ。ですが、ポンペイのおじさまの宣言によりモルスも含めた悪行が知れ渡りました。もう彼には郊外での居場所は有りませんわ」
「もう!硬い話はあとにしよ!ほら!カリュドーンの子!カンパーイ!」
確かにこんな硬い話してるよりも楽しむべきか、とバーニスさんがシェイクしたスペシャルドリンクが並々注がれたジョッキを高く掲げる。そう、ブレイズウッドに泊まったアイアンタスクの荷台。それはバーニスさんが経営するバーでもある。特産のチーズ料理が山と並んだテラス席を占領して俺たちはカリュドーンの子が覇者になった祝いの席を開いていた。
「あ、そうだ。ルーシーさん、これ」
「……?鍵ですの?いったいなんの」
「俺の作業場の鍵だよ。カリュドーンの子は顔パスだ。疲れた時は好きに使えばいい。俺は都市の人間だからそう頻繁にこないからね」
「え~~~ルーシーちゃんいいな~~あーんな広いお風呂が使い放題だなんて~~!」
チーズっていう奴は実に魅力的だ。かければかけるほど幸せになる。その証拠にエレンさんなんか具がチーズで見えないピザを美味しそうに頬張っているし。それはそうと、と俺はルーシーさんに作業場の鍵を渡す。ぶっちゃけこういうことがなければ郊外へなんて月に一度こればいい方だ。それなら使ってくれる人たちに使ってもらった方がいいでしょ。
特にシーザーさんなんかはこれから重圧にさらされることになる。郊外の外れにあるあの場所だったらいい隠れ家になるんじゃないかって俺は思うわけよ。だからさ、エレンさんそのジト目やめて?