フォースはいつでもエーテルと共に   作:光明面と暗黒面ってルビ無しで読めないよね

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第30話 フォースと六課と揉め事と

「……やめない?」

 

「この状況でそれは通らないって分かっていってるでしょオーダー君」

 

「それはそうなんだけどさあ……善意の第三者からの通報で武器構えるのはちょっとねぇ」

 

「善意かどうかはともかくとして、ホロウレイダー相手に僕らがハイそうですかで引き下がれないのもわかるでしょ」

 

 うーん、ド正論と俺は緊迫した場の中で武器を抜かずとも手にかけている悠真さんに声をかけてみるものの正論パンチで殴り返されてなんも言えねえ状態になっている。パチパチと刀の鍔を親指で抜いたりさしたりしている星見さんの方はできるだけ見ないようにしつつ……いやむりだわ。何で真後ろで立ってんのよ勘弁してよ。

 

「そうだけどね、俺はこの取引に関してはバランサーとして呼ばれているんだ。パールマンの身柄を確保した邪兎屋に対して貴方たちが強引な手段に出ないとも限らない。ましてやヴィジョンの件で邪兎屋はまだ係争中だ。貴方たちが彼らをしょっ引くなら俺はあなた達をヴィジョンと同じ側についたとみなす」

 

「……まて、どうしてそうなる」

 

「だって、体制側と係争中の相手を体制側に属する組織が現行犯でも逮捕状もない状態で拘束するんだから六課がこの係争でヴィジョンが負けたら困る以外に理由ある?出廷させなければ邪魔ができるもんね」

 

「言葉が過ぎます。ましてや私たちには職務上の権利として現場判断での拘束が許されていますよ。言いがかりも甚だしいです」

 

 挑発的な言葉をぶつけてみても冷静、まあ当たり前だけどな。暴論を吹っ掛けて隙を探ってみるもだめだこりゃ。自分で首を突っ込んだヤマとはいえこの人たち呼びつけるのは聞いてないぞニコォ!お前俺から借りた訴訟代早く返せや!

 

 はあ、とため息をつく。一触即発、そうみるべきだろう。目の前にいるのは対ホロウ六課の面々でその後ろには拘束されたパールマンがさめざめと泣いている。対してこちら側には俺、その後ろの邪兎屋の面々とリンさんがいる。

 

 まあなんだ、パールマンの件はもう関わらないと思ってたんだけど郊外の一件が終わったと思ったら割とすぐにパエトーンの二人、というかアキラさんから連絡が入った。パールマンの話を聞くと黒幕がいてそれをどうにかするために体制側に司法取引を持ち掛けるから双方から手が出せないようにするために同席してほしいとのことだった。

 

 いっすよ、と二つ返事でオッケーを出した俺と顔にありありと『リンを守ってくれ』と数千文字書いてあったアキラさんは固く握手を交わしいざ当日。アキラさん当人はビデオ屋に機材で通信担当をするのでここにはおらず、尋問されたパールマンは悲惨そのものだったがそれはともかくとしてそのあとが問題だ。

 

「星見さん、あなたが彼女を連行するというのなら俺は全力で抗う。俺は依頼主にそう約束したからです。その場合、彼女は邪兎屋が逃がしてくれる。そちらは生き残れても無事ではすみませんよ」

 

「その通りだ。だからそこを通してほしい。少年、例えお前を切り伏せてもこちらもただでは済まない。死人も出るだろう、私の四肢が付いているかどうかも最早わからない」

 

「だからここに俺がいるんです。逆にこれが邪兎屋からでも俺は止めてた。素直に刀を引いてください。死合をするならここは狭いし人が多い」

 

「…………」

 

 状況証拠と推論だがパールマンの証言からすると黒幕に繋がってるのは今の新エリー都の治安局副長官のブリンガーという男である可能性が最も高い。だからニコさんは体制側で最も信頼できる相手として対ホロウ六課を選んだわけだ。まあ裏目に出てるんだけど。

 

 まずパエトーンの二人はいろんなところで顔を売ってしまっていたらしい。零号ホロウの独立調査チームの責任者までやってるとは思わなんだ。だけどまあ関与した事件が全部勘繰られてるのはさすがに変なめぐりあわせとしか言えない。疑われるのはしょうがないとしても連れて行くというのなら話は変わる。どっちにも手を出させないために俺がここにいるんだからね。

 

 ぺたん、と耳を頭に伏せてあくまでも武力には頼らず言葉でどかそうとする星見さんと万が一を考えて武器に手を置き続ける六課とどっちも手を出すなよ俺が無理やり鎮圧するぞという意思表明をする俺。そこでぴたっと俺が止まったのを見て星見さんが眉を顰める。

 

「どうした、少年」

 

「……何人かこちらに近づいてる。そっちに心当たりは」

 

「ない、そちらは」

 

「俺がいたら要らないでしょう」

 

「そうか、確かに。全員武器を構えろ。邪兎のニコ、プロキシ。話は後だ」

 

 フォースの感知範囲に武装した人間が潜り込んだのを説明すると短くどっち側の人間でもないことを確認して即座に戦闘態勢に入る。他はどうか知らないけど俺と星見さんは知ってる。星見さんと俺にとっては伏兵なんてやる意味がない。だって自分でやった方が確実で圧倒的に早いんだから。お互いそれをわかっているので意思疎通は一瞬だ。

 

 邪兎屋とリンさんは頭に?が浮かんでいるもののビリーさんはすぐさまに銃を抜いた。そしてさすがは六課、武器を抜いて陣形を整えた。車に乗ってるのか速い、接敵の瞬間に飛び出して邪兎屋とリンさんの前に立つ。ライトセーバーの起動音がなると同時に銃声が響く。向かってくる弾丸をすべて切り捨て叫んだ。

 

「パイパーさん!」

 

「あいよぉっ!」

 

「親分!」

 

「もう!なんなのよーー!」

 

 トラックの中で待機していたパイパーさんが見事なドリフトで前に割り込んで盾になりつつも助手席のドアを運転席から開けた。そこにリンさんとアンビーさんが乗り込んだ。とりあえずそこにパールマンを蹴りこんでおく。そしてビリーさんがもう一台のトラックの運転席に駆け込み這う這うの体でニコさん猫又さんが乗り込んで発進した。

 

 手筈通りだけど想定した相手じゃないんだが。と俺はある程度弾丸を切り捨てて防御したのちダッシュで走ってその場を後にする。パイパーさんの鬼ドラテクトラックに追いつけるかは別として頭数は減らしておこうと湧き出る軍用トラックを切り裂いたりフォースで横転させてトラックのあとを追う。

 

 ……早くない?これでも俺足の速さには自信あるんだぜ?並のバイクよりは速いはずなのにクソ重いトラックに追いつけないって自信なくしそう。それだけ走り屋のドラテクがすごいということにしておこう。

 

 追手の対処をしながらとはいえバイクを置いてきたのは痛い。本当だったら俺は六課の足止めで残るはずだったからトラックに追いつく必要なかったんだもの。だれだよ襲撃者、目的は確実にパールマンなんだろうけど星見雅を見ても襲撃を決行するとはプロフェッショナルだな。

 

『おい!オーダーのあんちゃん!聞こえっか!』

 

「ビリーさん!?そっちはどう!?」

 

『ヤバイんだ!パイパーの嬢ちゃんのトラックがミサイルに吹っ飛ばされてホロウに突っ込んじまった!未踏破ホロウだ!キャロットがねえ!とにかく探すから手伝ってくれ!』

 

「わかった!ホロウの中は俺が行く!外に飛び出てないかしらべてくれ!」

 

『たのんだぜ!追手の残りは俺等で片づける!とにかくプロキシの嬢ちゃんを頼んだ!侵食されちまう!』

 

 ビリーさんからの着信の内容は最悪だ。俺は追ってくる車をすべてフォースでひっくり返した後に全速力で向きを変え郊外の中でもそれなりの大きさを持つホロウに躊躇なく突っ込んでいく。入った瞬間に空間がいくつも分岐してシェイクされるような感覚に包まれて平衡感覚があっちゃこっちゃにいく。人の手が入ってないか調査中とはいえなかなかひどいホロウのようだ。

 

「……少年」

 

「星見さん、追いついたんですか」

 

「ああ、ここに来るまでに車を11台、バイクを8台、戦車を3台蹴ってきた。目的はそこのプロキシだ」

 

「リンさん、よかった……!」

 

 着地点にいるのは星見さんと気を失っているリンさんだった。一番心配だった彼女を見つけることには成功したがどうやらこのホロウはどこから入ってもスタート地点のようなこの位地に放り出されるのだろう。トラックがないのは多分、横転した時に彼女だけ投げ出されたとかそんな感じか?見た感じ怪我はなさそうだがフォースで侵食をごまかしても長居はしたくないな。

 

「して、少年。出口は?」

 

「方向は分かります、だけど道順がわからない。あまりにもエーテルが濃すぎる。彼女に頼らないと出れないでしょう」

 

「……そうか」

 

「んぅ、ん……!おーだー、と星見さん……?」

 

 フォースとエーテルは相反する物質だ。未踏破ホロウは人の手が入らない分エーテル濃度が濃くなりやすい。それがフォースの導きを中途半端にしている。方向は分かっても空間を跳躍する順番がわからなければ出られない。リンさんの力がいる。

 

 ぼんやりと目を覚ましたリンさんに状況を説明する。セルフチェックをした彼女が言うには通信機能などの重要な部分がダウンしているらしい。星見さんはそれを聞いてどうしたものかと考え出したもののリンさんと俺がいる時点でここから出られるのは分かり切っている。

 

「リンさん出口の方向は大体あっちなんだけど道順がね……何台くらいデータスタンドを経由すれば行けそう?」

 

「最低3台、かな。5台あったら確実だとおもう」

 

「待て、何の話をしている。重要な機能は使えないのではなかったか?」

 

「うん。だけどね、訓練を受けたプロキシならホロウ内のデータがあればある程度の確度のキャロットは作れるの。私は大ベテランだから、もっとすごいのが作れるし、それにオーダーが居ればキャロットどころか全域マップだって作れちゃうかも!」

 

「つまり、一時休戦というわけだな。承った。久々に共闘だな、少年」

 

 こんな状況でワンチャン敵になるかもしれないのにちょっとうれしそうなのは何なんだろうこの虚狩りの人は?俺が自分に肉薄してきたのがそんなに嬉しいのだろうか。正直強くなった自覚はあるよ?今まではこの人の強さの輪郭すらつかめなかったのに今はああこれくらいデカいのかぁくらいまでは認識できるようになってるからね。勝つのは無理でも1日くらいなら粘れる根拠はそこだ。

 

 まぁここでドンパチやっても意味はないってことはお互い分かり切っているので今更この人もことを構えようとはしないだろう。データスタンドの位置はさすがにわからない、機械だからね。ここはプロキシの感を頼りにさせてもらおうとリンさんに目を合わせると彼女は手持ちのスマホをカタカタ弄って計算を終えて指をさした。あっちだね。

 

 データスタンドに群がるエーテリアスも何のその。そもそも星見さん一人いれば脱出はともかく生還は絶対だ。そこに最高のプロキシであるパエトーンとそれに比べれば見劣りするけどそれなりにいろいろやれる俺。咄嗟に組んだパーティーにしては最高だろう。それにしても……

 

「星見さん、なんか刀おかしくないです?なーんか抜くときに一瞬おかしな方向にいってるような」

 

「……私もそう思っていた。一瞬刀が抗うようなそんな感覚だ。だが問題ない、恐らく刀自身ではなく何か外的な要因のはずだ」

 

「お師匠様に聞いたけどその刀って虚狩る戎具っていうヤバイ刀なんでしょう?どうやって抑え込んでるんです?」

 

「この鞘だ。父上が誂えてくれたものでな。詳しいことはわからないがホロウの原理を応用することで無尾を抑え込むらしい」

 

 違和感、このホロウに入ってからのそれだ。だがフォースが何も言わないってことはフォース絡みの未来がヤバイとかそんな話ではないはず。最近そうじゃなかったから疑ってるけどそれはそれこれはこれ。俺自身の観察眼によると星見さんの抜刀術の速度が若干狂ってる。早くなることはあるにしろ遅くなることは絶対ないだろこの人の場合。

 

 星見さんはおそらく気を許した相手には緩くなるタイプの人なので俺とは結構お話してくれるつもりではあるらしい。気を許されてるのか情報収集されているのかはわからないけど、耳がピコピコしてるからそうじゃないと思いたい。これリンさんだけだったら地獄じゃないかなあ?いやでもリンさんのコミュ力だったら……?

 

 道中のエーテリアスを雑談しながらお片付け、なお抜刀術の違和感についてリンさんは頭の上に???と浮かんでいたのでどうやら俺と星見さんのみが共有できる話題だったみたい。うーん、でもいつも星見さんの戦闘を見ている六課の皆なら気づけそうではあるなあ、と余裕過ぎて若干緩んできたところで、ぶわっ!と熱い冷気という矛盾を感じて振り返る。

 

「くっ……なっ……!?」

 

「えっ……?」

 

「リンさんっ!」

 

 星見さんが確認のために抜いた刀から青い狐火が間欠泉のように噴出し必死に抑えようとする雅さんの顔が歪んでいく。ぶるぶると震える手は刀を上段にあげて雅さんとコミュニケーションをとろうと近づいていたリンさんに向かって薙ぎ払いを繰り出した。

 

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