フォースはいつでもエーテルと共に 作:光明面と暗黒面ってルビ無しで読めないよね
「おお……ふかふか……」
「ふふん!でしょう!?尻尾のケアには気を使っていますからね!」
「いいなー!蒼角も触りたーい!」
「なんて緊張感のない……蒼角、シリオンの尻尾を触れるのは親しい人間というのが常識です。我慢しましょうね」
もふもふ、ふかふかと黄色と茶色っぽいストライプが入った尻尾を俺の手が撫でまわす。巻かれたリボンがキュートな尻尾の持ち主は俺の姉弟子である福姐さんだ。爆速でポート・エルビスについた俺たちは道中で連絡したプロキシがここに到着するまで待機と相成った。
できればすぐにブリンガーを追いかけたいところだが俺のフォースによる案内は我流で癖が強い上に常識的ではない。それに港のホロウはすぐ道が変わるから現時点での道案内しかできない俺よりも計算による予測で先の道を把握できるパエトーンの二人がいないと効率が悪い、だから来るまで待つことにした、つまり暇になった。未来予知すんのも考えたんだけど最近のフォースさんはなんか未来予知に余計なもん混ぜ込んでくるのでやめた。
で、俺が何で福姐さんの尻尾をモフってるかっていうことバイクでの道中あまりにもそのふかふかの尻尾が腰に巻き付いている状態で気になってしまったので落ち着いたら触っていい?と福姐さんにきいたらどうぞ!と返ってきたのでモフっているわけです。マジ触り心地最高。
「親しい人間だけ……よかったの、福姐さん」
「何を今さら言ってるんですか?ザインは家族ですよ家族!」
「そりゃどうも。ルーシーさん向こうの方は?」
「はぇ!?こ、こほん!まだ治療室にいるとのことですわ。治療が終わり次第最短最速で運ぶのでおまかせくださいな」
じと。という顔で福姐さんを見ていたルーシーさんに話を振ると彼女はあまりにも俺の話の振り方が雑&適当なうえに突然だったせいで背を撥ねさせてから咳き込んでから俺の疑問に答えてくれる。流石の虚狩りといえどもこの短時間に復活は無理か。いや復活したけどドクターストップかかってる可能性の方が高そう。あの人の頑丈さを見るとそっちの方が可能性高く思えちゃうぞ?
ん?待てよ?今俺福姐さんの尻尾をモフるどころか顔面埋めて吸ってる勢いなんだけど唐突に思い出したことがあるわ。俺、死ぬほどエレンさんの尻尾に接触してないか?ビンタとかトリプルアクセルとかは別としても普通に触ったりとか膝の上に置かれたりとかなんだったら隣に座ってるとき肘掛けにしたこともあるぞ?これ俺やらかしてないか?全部終わったら土下座しよ、ワンチャン割腹も視野に入れよう。女の子のそういうのは命より大事ってフォースが言ってるし(責任転嫁)
「ごめん!!みんなお待たせってザインはこんな時に何やってるの!?」
「何って……虎吸い?」
「吸っちゃダメでしょ!?絵面すごいよ!?お兄ちゃん手錠!!婦女暴行の現行犯!」
「同意の上なので何ら問題ありません!っておや?貴方は零号ホロウの調査員さんでは?一度ホロウ内で会いましたよね?」
しゅるっ、と俺の顔面から福姐さんの尻尾が離れてドリフトのような勢いでやってきたパトカーからアキラさんとリンさんが降りてくる。元気なリンさんが俺を指さしてやんややんやとしていると唇に指を一本当てて何かを考えてた福姐さんがリンさんにそう話しかけている。あれ?知り合い?
「リン、長くなりそうなのでその話は後にしよう。待たせてすまない、みんな。僕らの方の準備も完了した。いつでも潜れる」
「場所の方の特定は?」
「そっちも大丈夫!イアスも治ったよ!いこう!ブリンガーを逮捕しに!」
リンさんの目がうすぼんやりと光っている。同時にイアスに憑依したのがわかった。へー、初めて見たけど目になんかあんのか。フォース使ってみるのはやめておこ、プライバシーだし。全員そろって埠頭のホロウに潜っていく。既にホロウ内外で規制が始まっているようだ。ブリンガーはどうやら徒歩らしいな。
パエトーンのナビに俺の感知で補正を入れてダッシュでホロウの中を突き進んでいく。流石は対ホロウ六課、全員体力を消耗する様子もなく走り続けている。雲嶽山仕込みの俺と福姐さんも同じだ。案内のためにルーシーさんは埠頭に残ったがこのメンバーなら万が一にも負けはない。あの人が来るまでは持ちこたえられるだろう。
暫く走っていると俺のフォースの感知内にブリンガーを捕えることができた。俺は浅羽さんの肩を叩き手で方向を指し示した。彼は一瞬いぶかしんだものの目を凝らしブリンガーの姿を捕えた瞬間に腰から武器を引き抜き合体させて雷を纏った矢を数本打ち放った。それはレーザービームのような勢いで突き進みまるで予想してたようにブリンガーを超えてその前に突き刺さりブリンガーはたたらを踏んだ。
「止まりなさい、ブリンガー副長官。いえ、元になりますか」
「予想よりも速いな、流石は対ホロウ六課……それに器といったところか?」
「器?俺のことか?悪いがもう中身は一杯でな。注ぐ余裕はないぞ」
「中身も含めて、だ。まあもう関係ない話だ。妖刀の解析は終わった、貴様らに拝ませてやろう。ホロウの先を往く力、その姿を!」
ブリンガーは俺を見て器と言った。だが俺の過去に奴と接触した覚えはない。一瞬の疑問に気をとられた俺をフォースが現実に引き戻した。ブリンガーに覚えのあるエーテルが湧いて出たのだ。そう、エレンさんと一緒に倒したあのよくわからん死んでも死体が残ったエーテリアスと同じエーテルが。
「始まりの主よ……再創を!」
『あの腕……!?』
「避けてっ!」
「ブリンガーのやつ……エーテリアスに!?」
「正確にはエーテリアスもどきか、それよりも上位の存在ですね。福姐さん、オレが怒られたヤツ覚えてます?アレです」
「ええ!覚えてますとも!かき回しますよザイン!六課の皆さんの態勢が整うまで!」
始まりの主に再創、この二つのフレーズは嫌でもとある宗教団体を想起させる。ザオさんの話に出ていた讃頌会のフレーズだ。ポスターにデカデカと書いてあったからな。ブリンガーは全身に目玉をはやした巨大な腕を持つエーテリアスになりはてた。こんな創造はごめんだね、と俺はバックステップで下がった六課とは逆に福姐さんと一緒に突っ込んだ。
福姐さんが虎威をぶん回してヤツに投げつけ、俺はブリンガーにぶち当たって跳ね返った虎威の着地点に先回りして虎威の尻尾を掴んで投げ返してブリンガーに更にぶち当てる。その跳ね返り先にはさらに福姐さんが、というやり取りを繰り返していく。投げ返すうちに虎威は加速し続けしまいには残像を残してマシンガンのように虎威はブリンガーに当たり続け時には溜めこんだ火のエーテルで爆発をかましてブリンガーを追い込んでいく。
「ザインっ!かましてください!」
「オッケー!虎威!思いっきり行くぞ!」
滅多撃ちになったブリンガーが怯んだ隙に福姐さんは虎威を俺に向かってパス、俺は思いっきり足で虎威を蹴りこみさらにフォースで加速をかけてブリンガーの胸ど真ん中にぶち込んでやった。変身直後なのに襤褸切れのようになったブリンガーがコンテナの中に突っ込んでいく。
「……雲嶽山ってなに?僕らよりヤバくない?」
「……死んじゃった?」
「いいや、だが面白いものを手に入れた……!くらえっ!!」
「くっ!?エーテル化合物!?」
跳ね返ってきた虎威を福姐さんが危なげなくキャッチするのを横目に浅羽さんのボヤキと蒼角ちゃんの疑問が聞こえてくる。死んではいないと返そうと口を開く前に本人から答えが返ってくると同時にコンテナ内に残っていたエーテル化合物を投げつけてきた。不安定なものにそんな危ないことをすれば待ってるのは当然爆発だ。フォースで物自体は逸らせたが爆発半径を見誤った。全員巻き込まれて吹き飛ばされる。でも、大丈夫。
「お待たせいたしました。参戦が遅れてしまったのはこちらの不徳、ご容赦いただきたく存じます」
「ナニアレ?デッドエンドホロウのアレじゃん。プロキシ、平気?」
『ヴィクトリア家政のみんな!?どうしてここに!?』
「ザイン様から連絡を受けたのですわ。ご主人様からも助力の依頼を命ぜられましたので、ここに」
大きく吹き飛ばされて橋から転落したがその着地点に先回りするような形でいたヴィクトリア家政の面々がイアスを受け止めてくれた。福姐さんと蒼角ちゃんは俺がキャッチしたし問題ない。問題はブリンガー、とんでもない濃度のエーテルと一緒に急速に逃げていっている、追いかけないと。わらわら湧いてきたエーテリアスを睨みつけながら感知範囲のブリンガーを逃さないように集中する。
「先行って。なんか知んないけどヤバイんでしょ?エーテリアスはこっちで何とかするからさ」
『わかった!みんなこっちだよ!』
「別の場所では白祇重工の皆様もエーテリアスの掃討に加わっております。後ろのことは気にせずにどうぞ前へ。私たちが食い止めます」
「……協力に感謝します!」
どうもブリンガーのエーテルの余波で生まれたエーテリアスがそこら辺をうごうごしている様子だけど構ってる暇はない、規制作業中の一般職員の安全確保は言う通り任せるしかないだろう。エレンさんに背中を尻尾ではたかれて気合を入れてもらい、俺たちはブリンガーめがけて駆け出す。
コンテナが道をふさげば俺がフォースでどかし、空間が歪めばパエトーンの二人が迂回ルートを即座に算出し、エーテリアスが出れば福姐さんと六課が素早く返り討ちにする。分業がこうもがっちりハマれば追跡の速度は落ちない。あっという間にブリンガーが見えてきた、けど大量のエーテル化合物からエーテルを吸収しているのが見える。ライトセーバーを飛ばそうとした瞬間に俺の後方から矢が奔った。
一発で化合物の中に混じっている可燃性のボンベに着弾した矢は爆発を起こしてエーテルを燃やし燃やしたエーテルがブリンガーに逆流してブリンガーがのたうち回る。さて、いい加減逃げられるのも腹が立っていたところだ。そう考えてフォースを開放する。周りのコンテナが動き出しブロックのように積みあがってブリンガーの逃走ルートを潰した。あとはもう、潰すだけだ。
「やはり、貴様の力はすばらしい。器と呼ばれるだけはある。貴様だけは確保しなければいかんな」
「器器ってさぁ?俺はお前らのよくわからん実験の対象じゃねーんだよ。アレだろ?ヴィジョンの秘書、お前の上役か?鞍替えしても使い走りの上に化け物にされるんだから救いがねーな」
「ククッ、言ってくれる。だが、これは俺が望んで成された再創だ。この素晴らしい力を前にしてどこまでその減らず口が叩ける!?」
『あれは……刀!?』
ブッサイクな力の使い方に思わず顔が歪んだ。あのさぁ、妖刀のパワー手に入れたぜ!っていうてそんなコミックに出てきそうな巨大な剣にする意味あるの?力は籠ってるみたいだけどあんなんじゃあ星見さんが使うあの妖刀には遠く及ばない。そう思いつつ横の薙ぎ払いに飛び込んで下からのライトセーバー二刀の切り上げで対処する。重機のような音をたてて刀が跳ね上がった。
「バカな!?」
「腰が入ってねーんだよ。あんたホントに現場経験してんのか?」
「見事だ、少年っ!」
「ぐああああっ!?」
俺が跳ね上げた剣につられて体勢を崩したブリンガーが一瞬で滅多切りにされる。エーテル斬撃のせいか決定打にはならないがダメージは入った。そしてそれを成せるのはこの街においてただ一人。星見雅の帰還だ。
「待たせた、皆。少年、約束を果たしに来た。容疑者を捕える修行だ。さあ、共に往くぞ」
「貴方にとってはコレも修行ですか。感服ですよ、ホントに。約束は果たされました」
「星見雅、幻を振り切ったのか?だが!妖刀の力はすでに私のものだ!」
「妖刀の力はね。じゃあ聞くけど……同じ妖刀を持つなら最終的に勝つのは振るう者が強い方だろ?俺は知らないぞ、この人以上に強い剣士は。それとも何か?俺が知らないだけでアンタ虚狩りだったのか?そりゃあ無知ですまないな」
「黙れえええええええっ!!」
図星かよアホらしい。エーテルを注ぎ込みより巨大化した剣をまっすぐにこちらに振り下ろすブリンガー。避けるのは簡単だ。だけどあんなまがい物の妖刀を振り回されるのはむかっ腹が立つ。俺は星見さんから返されたライトセーバーを含め8本すべて浮かべて合体させる。
角柱型になったグリップの後部に一本、スプリットセーバーのように柄尻同士ではなくセーバーの噴出口と柄尻が合体するようにだ。それを4本ひとまとめにする。パワーセルとカイバークリスタルが直列で繫がりより強いセーバーが形成される。大体何でも斬れるが売りのライトセーバーはこの状態なら文字通りなんでも斬れる頼もしい剣だ。少々柄が長くなって持ちにくいがな。
両手に合体状態のライトセーバーを持った俺は出し惜しみなしでフォース・ライトニングをセーバーに纏わせる。白紫の刀身に紅い雷が纏わりついたのを見て俺は全力でフォースを手繰り飛び込んだ。刀を腰だめに構えて居合の構えをとっている星見さんに後を任せて全身全霊の一撃を見舞う。
音は無かった。ただただ残った結果はブリンガー側の妖刀は俺によって真っ二つに斬られてしまったということ。そして、俺が妖刀をぶち折ったのを見た星見さんによってブリンガーは斬られた。たったの一撃で、あっけなく。遅れて気づく、ホロウの外殻ごと斬られているということに。俺もなかなかだと思ってたけどこんなことをされちゃあ立つ瀬がないや。まだ勝てないかな、星見さんには。