フォースはいつでもエーテルと共に 作:光明面と暗黒面ってルビ無しで読めないよね
「スイマセンデシタ」
「……いきなり、ナニ?私が悪いことしてるみたいだからヤメテ」
「いろいろありまして、シリオンの尻尾関係の事を詳しく知りました。ですのでこの場を持って無礼を働いたことを陳謝し、ケジメを着けさせてもらいます」
「…………ねえ、待って。何で謝るのにライトセーバー持ってんの?」
「我が腹を掻っ捌きケジメとさせていただく所存。いざ……ぶへぇぅ!?」
なんだかんだあったブリンガー事件が終わり、フィオニーさんの介護を経たとある日。割とマジで久しぶりにヴィクトリア家政に呼ばれた俺はそういえばエレンさんにケジメを着けていないのを思い出し、出迎えてくれた彼女に対して初手土下座を繰りだしたのである。
女神のごとき優しさを持つエレンさんは今までセクハラ(恐らく)を無自覚で繰り返し続けた俺が額を土にこすり続けることをやめるよう促してくれた。だがしかし、クラスメイトで隣の席の友達に対してセクハラをし続けていたとなれば俺自身が俺を許せないのである。
ブオォン、と聞きなれたライトセーバーの起動音、最短に設定したセーバーの長さは大振りのナイフより少し長いかどうかくらいか。俺はそれを両手で逆手に握り、自らの腹に向かって思いっきりぶっ刺そうとした瞬間、最早慣れ親しんだと言っていい痛みと共に吹き飛んでテーブルに突っ込んだ。
いつもより痛いってことは手加減抜きの尻尾フルスイングだろう。くらくらする頭を振って正気に戻す。身に染みた習慣となったライトセーバーのスイッチオフは為されていたので被害はなかった。代わりに俺の体がヴィクトリア家政のクソ高そうなテーブルセットを粉砕した。
「ねぇ」
「ハイ」
「死ぬほど面白くないからもう二度とやんないで。で、尻尾の件だっけ」
「ソウデス」
いや、割とマジで全力以上の謝罪ってもはやこれ命でもって償うしかないんじゃないかって思うわけなんですよ。だってさあ、エレンさんの尻尾触るたびにもしかしたら不快超えるくらいの思いさせてたわけでしょ?そりゃあ殴ったりもしたくなりますわ、今まで尻尾でシバかれるたびにちょっと理不尽って思ってたけどそう考えると全く理不尽じゃなかった、残当でしたわ。
「…………ごめん、考えたんだけどワカンナイ。私の尻尾のことでどうしてあんたが切腹しないといけないワケ?」
「えーっと、ソレハデスネ」
「何その反応。あんたが言い出したことじゃん」
それはそうなんだけどさぁ!でもさあ!いち男子高校生として隣の席のクラスメイト(ウルトラハイパー美少女)にセクハラしてましたごめんなさいってこの一点の曇りもない疑問顔した彼女に言える!?いや、言わなきゃならないんですけども……チガウンデス、そういうつもりは微塵もなかったのです……。
「この前の事件で、シリオンの尻尾を触るのは家族に近い間柄でもないとセクハラであるというのが一般常識であるということを知りました」
「うん。で?」
「俺結構エレンさんの尻尾触ってるよね?」
「そうだね。それで?」
「何回セクハラしてるかわからないので命でもって謝罪をしようとしておりました」
「ふーん」
ねえまってその淡々とした反応怖い!まだ尻尾で殴られるか鋏でジャストミートでもされた方がまだ心臓にやさしいよ!じっとーと自主的に正座した俺をねめつけたエレンさんは無言で俺の前にしゃがみこんだ。そして、俺の膝の上にすっと自分の尻尾を置いてしまう。え?
「いいよ」
「ええ?」
「いいよっつってんの。言わせないでよ、あんたもルビーたちと同じ私にとってのトクベツってやつなんだから。別に変な触り方してないしさ。私もほら、いろいろ触ってるし背中借りたりしてるし……」
あの、その言い方男子高校生にはかなりキクやつなんですけど自覚あります?いや、許してもらってとてもありがたいから口には一切出さないけども。ん、と膝の上で動かされた尻尾に改めて触れるがやっぱり手入れの行き届いた尻尾だなあという感想がでてくる。あれ?バトラーどうした?
「ンナ、ンナワタ、ンナナナ」
「請求書?ごめんな余計な仕事増やして……次の依頼から引いといてもらえる?」
「それ、半分私にまわして。私が吹っ飛ばしたせいだし。あ、そーじゃん。ザイン、ちょっとお願い聞いてくれない?」
「もちろん、どうしたの?」
「ガッコの課題で期末の課題あるじゃん?私ルビーたちと同じグループなんだけどさ」
ヴィクトリア家政のボンプであるバトラーがいつの間にか俺が壊したテーブルセットを片しておりついでに壊した分の請求書をわたしてきた。何てしっかりしたボンプなんだ、ちゃんと払うんでゆるして。
エレンさんが話すところによるとヴィクトリア家政の依頼で資料を探しにバレエ・ツインズに潜ることになったんだけどちょうど課題の会議をする予定にバッティング。仕方ないのでパエトーンの二人にお願いして通信をホロウ内からつないでもらい会議に参加したそうだ。
そこまではよかったらしいんだけどなんとその後の依頼で友達3人そろってメイド服姿を見られてしまったのだそうな。あるぇ?確かエレンさんってその3人には裏稼業であるヴィクトリア家政のことは絶対にばらしたくないとか何とか言っていたような。
「どんな誤魔化し方したの……?」
「えっと……プロキシのビデオ屋でアルバイトしててメイド服はキャンペーンの一環って……」
「ッスー……素直にヴィクトリア家政のメイド喫茶のこと言えばいいよかったと思うよ」
「…………恥ずかしかったし。それに、来られても困るし」
ヴィクトリア家政はメイド喫茶を経営しつつさらには家事代行派遣サービスも同時に展開している。裏稼業を知っている人は一握りだが派遣業があるので裏稼業の時はその出張であると表の人たちには伝わってる。つまりこっちの方がボロが圧倒的に出にくいのだ。まあ、エレンさんのその気持ちはわかるけども。
「そんで、手伝ってほしいことって?」
「同じゴシュジンサマからの依頼でボンプの捜索を依頼されたの。ソッコー終わらしたいから一緒に来て。探し物得意でしょ?」
「あー……その探すボンプが持ってたものとかある?依頼主が身に着けてたものでもいいんだけど」
「なんで?」
「俺の力、生物はなんもなしで探せるんだけどボンプみたいな機械となると無理なんだよ。もし探したいなら何か縁を持っているようなものが欲しいんだ。警察犬みたいなイメージ」
「ふーん、意外とメンドクサイんだね。じゃあ、普通についてきてよ。探す方はプロキシに頼むからさ」
フォース・センスによる探知は生き物が最も探しやすくフォースとの親和性が極端に低い機械とは相性が悪い。ボンプは生き物っぽいがメカだし知能構造体とかも無理だ。なんだったら知能機械人も俺には探せない。大抵ホロウ内で探すのは人だから困ったことはないけどこういう時には困るんだよなあ。
しかし、難航してるんだな学校の課題のやつ。俺は即効で終わらせたけど。グループワークっていうけどグループ作っていいよって言うだけだから俺は一人でやった。協力は猪突猛進でお送りしました。ありがとうルーシーさん、課題に付き合ってくれて。おかげで大作レポートが完成したよ。
じゃ、バレエ・ツインズで合流で。というエレンさんに頷き返して俺は正座から立ち上がった。そういえば最近こういうホロウレイダーらしい真っ当な依頼してなかったな。この前なんかさー、零号ホロウの調査に六課主導で呼ばれたよ。市長名義で正規のホロウ調査員の身分も手に入っちゃったしさー。ちなみに終わった後の模擬戦が一番つらかったです。
「お待たせ。こっちは準備完了だよ」
『あれ!?オーダーもいるの!?』
「おう、エレンさんから頼まれてな。手短に終わらそうぜ。終わったらビデオ屋行くから火鍋でも食いに行くか?奢りで」
『ええ!?いいの!?fairy!速攻でおわらせよう!今日は火鍋パーティだよ!』
「聞いてない。まあ、行くけどさ。じゃ、いくよ」
バレエ・ツインズで滞りなく合流した俺とエレンさん、ついでに俺の足に抱き着いて嬉しさを表現するイアス。憑依したリンさんを晩飯に誘ってから大体の目星をつけてた場所まで俺たちは迷いなく走り出した。道中遭遇するエーテリアス程度は俺たちの相手ではないのでまとめてなで斬りされて終わる。
『お待たせいたしました。ボンプの位置の特定が終了。前方100m先です』
「おっ。みっけたな。バッテリー切れか。見た感じ問題なさそうだな……ん?」
「どうしたの?」
『報告。バレエ・ツインズ内に複数の生命体が侵入。闇雲に動き回っているため付近のエーテリアスを刺激しています。救出を推奨』
「…………エレンさん。ルビーさん、モナさん、凛さんが……入ってきた。つけられてたんじゃない?」
「ウソ……」
入ってものの五分でほとんど最深部と言っていい場所まで到達した俺たち。パエトーンのスキルと俺のフォースが合わされば探索効率は3倍以上に跳ね上がってる。だからこそ少ない時間で奥まで来れたのだ。フォース・センスを広範囲に広げてなかったから気づけなかった。fairyが報告してくれて初めて気づいたくらいに距離が離れてしまっている。
「助けに行く。ボンプ持ってて」
「わかった。リンさん、この際壁の破壊も視野に入れるから裂け目がない最短ルートを」
『うん、わかった!fairy!電気代は気にしないから最速で!』
片手にボンプを抱えもう片手でライトセーバーを握った俺といつになく顔をシリアスにしたエレンさんが頷き合って走り出した。なんだって3人が入ってきたんだ?いや、尾行したくらいだ。エレンさんのバイト先の誤魔化しに納得できなかったんだろうな。それでついてきたのはいいもののホロウに入ったせいで悩んだ末に入ってきたんだ。
道中のエーテリアスは無視し途中の壁をぶった切って最速で3人のもとに向かう。もう既にエーテリアスに囲まれている。エレンさんがいつになく焦っているし俺も背中に冷や汗をかいている。知り合いが死にそうってのは冷静さを欠くには十分な理由だ。
「うわああ!?こ、怖いよおおお!?」
「ルビー、大きな声だしたら……!」
「や、ヤバイよ……!」
「間に合った!3人とも下がって!」
「ええ!?エレンに……ザイン君!?」
ルビーさんが大小さまざまなタイプのエーテリアスに囲まれたせいで涙を浮かべながら悲鳴を上げている。エーテリアスが刺激を受けたせいで動き出し始めたがそこで俺とエレンさんが割り込みに成功して3人が別の驚きを含んだ声をあげる。あっちゃー、正体ばれちゃったか?ジェダイ・ローブのフード被ってないからオーダーとは別人判定でセーフだ。
無言で頷き合った俺たちは俺は3人の背後に、エレンさんは前に飛び出してエーテリアスの駆除を始める。360度囲まれた状態からみるみるとエーテリアスの数が減っていく。エレンさんの鋏が氷結させ砕き、俺が蹴り飛ばしたエーテリアスが壁にめり込み消え、両断した奴もチリになって消えていく。ものの数分で周囲のエーテリアスはいなくなってしまった。
「ねえ、なんでここにいるの?」
「えっと……ホロウの、見学……」
「……もっかい聞く。なんで、ここにいるの「はいストップ」……むぐぅ」
「いろいろ話し合いは後だ。まずは出るのが最優先ね……って無理かぁ……エレンさん持ってて。んで、前には出ないように万が一に備えて」
「……わかった」
「え、何言ってってきゃあっ!?」
その場で3人を詰めようとしたエレンさんの口を押えて止めて脱出を促そうとしたが暴れすぎたことに気づいてため息をついた。そのままボンプをエレンさんに渡して前に出る。疑問に思ったらしい牛のシリオン、モナさんが俺に声をかけようとした瞬間バッキイイン!!という甲高い音がして俺が振るったライトセーバーと貫手が衝突した。ライトセーバーは切り結ぶとか鍔迫り合いは不可能だが弾き飛ばすという動作は頗る有用なのでフォースで弾くという動作ができるように最近練習した。大体雅さんのせいである。
そして俺に攻撃を仕掛けてきたのは明白。縄張りで暴れ続ける不届きものに演目を届けに来たバレエ・ツインズのデカ物、マリオネット・ツインズの登場である。明らかに他のエーテリアスとは一線を画す存在に遭遇した3人がそろって顔色を真っ白にしている。
「エ、エレン……や、ヤバイんじゃないのあれ……!?」
「ヤバイよ、でも倒さないと帰れないし。あんたたちが来なかったらこんなことしないで済んだんだから反省して」
「そ、そうじゃないよ!ザイン君危ないって。助けたほうが……」
「そっちは大丈夫。だから見とけば?ホロウ見学なんでしょ?」
カタ、カタカタと名前にたがわぬマリオネットのような動きのバレリーナが俺に吹き飛ばされた先で2体に分裂する。この前来た時は殴り飛ばして終わったが今回は駆除まで行かないと安心できないな。オーダーとバレてしまえば問答無用のマインドトリックをしなきゃいけないのでうまいことやらないと、フォーム3のソレスで構える。
挟撃するように俺を挟んで剣のような足で蹴りをぶち込んでくるマリオネット2体、黒いヴェールの方の片足を斜めに弾いて白いヴェールの方の蹴りを紙一重でよけ軸足を切り飛ばしてやった。ガシャアン!と金属のような音をたてて明後日の方向へすっ飛んだ白いヴェールから視線を外して体勢を立て直した黒いヴェールに向き直る。
手刀を身を半歩ずらして避け、カウンターで肩口から斬り飛ばしてやる。もう片手の貫手を肘で側面から弾き飛ばし円運動で動かしたセーバーで同じく肩口から斬り飛ばした。両手を失ったヤツの回し蹴りへのカウンター、膝から下がどこかへ飛んだ。無防備になったやつへ胴体へ滑り込ませるようにセーバーを振るう。胴体が泣き別れした片割れが消えた。
「え?ザイン君ってこんな、強かったの?」
「学校とは全然違う……スゴい」
「……めちゃくちゃカッコイイ」
「言ったでしょ、心配いらないってさ」
同級生からのお褒めの言葉になんかむずがゆくなりながら片足で何とか立ち上がった白いヴェールに向き直り突っ込む。反応できなかった白いヴェールは肩から腰まで斜めに入った切り口に沿ってずれ、倒れこんだ。エーテルの塵が舞い上がり何もいなくなる。振り返るとやるじゃんと顔に書いてあるエレンさんとなんか顔が赤くなった3人が俺を見ていた。俺は苦笑いしながら出口を親指で指さすのだった。
出口に行く道すがらいつになくぷんすかしているエレンさんがした事情聴取の内容はまあ概ね予想道理でエレンさんがバイトの日になると生傷を作ってきたり疲れ切っているのに心配していた3人はエレンさんの嘘がほんとかどうかを尾行で確かめようとしていた。まさかホロウに入るとは思わなかった3人は5分ほど悩んだものの意を決してホロウへ突入した。
ただ、入った場所は俺たちが入った安全な入り口ではなく危険な裂け目が連続する場所だったせいで完全に迷ってしまいエーテリアスに追われて何とか俺たちが間に合ったって話だ。クソ危ないのでそれはマジで説教するつもりだ。言っとくけど俺手遅れになった人両手の指じゃ足りないくらい見てるからね?そこに関してはエレンさんに同意だ。
「ちょっと、そこの5人。特にその3人、監視カメラにホロウへ入る姿が映っていたから救助に来たのですが……無事で安心しました。どうやって出てきたのですか?」
「え、ええ!?それは、そのぅ」
「そこの二人も。理由はどうであれホロウ内にいましたね?事情を聞かせてもらえますか?」
「申し訳ないっす朱鳶さん。任務内容は機密となりますので明かすことはできませんが身分証はこちらに。彼女はインターン中の助手になります」
「え、ええっ!?そうだったのエレン!?この前のビデオ屋の店長のやつは!?」
「…………!そうだけど、何?アンタら危ないことしてるって言ったらついてくるっしょ?こんな風にさ。キョーリョクして誤魔化してもらってたの」
持っててよかった市長直属調査員の身分証明書ォ!!!エレンさんだけわかるように背中をポンと叩いてどうやら3人がホロウに入ったのが通報されていたらしく治安官のお方がスタンバイ為されていた。というか朱鳶さんだった、俺とエレンさんを見た瞬間に事情は察してくれていたので知り合い同士としつつも裏のことは話さずに身分証を見せた。
エレンさんも俺と朱鳶さんが誤魔化すというのを察したらしく話に乗ってくれる。まあ、この前の件で事件にかかわった人にはヴィクトリア家政が市長直属のエージェント集団ってことは周知の事実になってしまったので朱鳶さんも事情は分かってくれている。で、3人が事情を話せば深くため息をついた。
「ホロウ災害の怖さを知らないんですか?今回は腕が立つ調査員がいてくれたから事故こそ起こりませんでしたが……本来ならば犯罪行為です。ですが、今回は御目こぼしとして補導で済ませましょう。ホロウに対する安全教育を受けてもらったのち、反省文を書いてもらいましょうか」
「うっ……はーい」
「はぁ……私もザインも行くからさ。さっさと終わらせてご飯食べにいこ。奢ってくれるんだよね?」
「えっ、この人数で?あー、まいっか。でもちゃんと反省してくれよ」
心配事が奇麗になくなったエレンさんは俺に向かって珍しく笑顔を作りつつそんなことを言う。まさかこんな大人数の食事の代金を持つことは想像していなかった俺ではあったけどエレンさんの笑顔というレアなものを見れたということでお財布のひもを緩めることにするのであった。市長さんのおかげで最近懐あったかいし。