フォースはいつでもエーテルと共に 作:光明面と暗黒面ってルビ無しで読めないよね
「輝磁の輸送依頼?何で俺が?」
「指名だ。メイフラワーのやつがな、お前が持っているものに興味を示した。お前はフォースとやらの導きに従ってその合金を作ったのだったな?」
「合金っていうよりも織り込んだだけなんだけど。でもさ、ライトセーバーの技術はないわけじゃないでしょ?エーテルブレードは実用化済みじゃないか」
「そっちではない、合金だと言っただろう?お前が作ったその合金がとある合金に非常に酷似しているんだ。どうやって作ったんだ?」
適当観の一室にて、お師匠様と俺が持ってきたお土産のチートピア特性バスクチーズケーキ(パエトーンの二人からのもらい物。最近飲食店を出し始めたのだそうな)を和やかに食べていた時に、お師匠様がガサゴソと俺の懐に手を入れてライトセーバーを出しながらそんなことを言う。
輝磁っていうのは適当観のある衛非地区のホロウで採れるレアメタルに近い物質のことでとんでもなく汎用性があるすんばらしい物質だ。特にエーテルへの耐性が強い物質である。ちなみにライトセーバーに使ってもいる、エーテルへの浸食耐性をつけるためにね。あとはいくつか種類のレアメタルを使っている。
特殊な方法を使ったのはただ一つ。フォースを使って鍛造したことだ。そのまま打ち続けるだけではまとまらないであろう金属の板たちをフォースで強引に分子レベルで整えた結果生み出されたのがこのライトセーバーに使われている合金である。無機物故のフォースへの無耐性となんか最近フォースがえらい馴染んで仕方ないでお馴染みの俺のフォース・センスのたまものである。つまり
「お前以外にはまずもってできないということか。しかし、邪気にも話題にも事欠かん弟子だな、お前さんは」
「邪気って……俺別に好き好んでトラブルしてるわけじゃないよ?」
「そう言うな。邪気はともかくとしてお前の災難は吉兆の始まりでもあるだろう?星見雅、お前さんの言うビデオ屋の店長、郊外の走り屋……な?」
「平和に遭いたかったよ!星見さんは俺が100悪いのはそうだけど!」
「ともかく、だ。輝磁自体はそう大した量じゃない、お前が担いで運べる量だ。工房主の個人研究のためのものだからな」
「にしても純度99.9999%って……どんな精密機械作るつもりなのさ?」
「さあな。ただ、機密特区にお前さんは入る。くれぐれもメイフラワーの顔に泥を……まあ塗ってもいいがきちんと、ここに、帰ってきなさい」
「圧、お師匠様圧がすごい」
誰のせいだと思っているこの馬鹿弟子、とついには俺の頭を脇で抱え込んで拳骨でぐりぐりしてくるお師匠様。任務の話が出た時点でむっすーとしながらチーズケーキをちみちみつついてたからどうやらお師匠様的には俺を市長さんの指名とはいえ任務で機密特区にやるのはとても反対らしい。お師匠様のこの反応ってことは、あれだね。よくないことが起こるってことだね。準備しとこ。
「よくない事おこったぁ……」
「え、エーテリアスだぁ~~~!!!」
飛行船、墜落しました。はい、ホロウ災害です。いつものやつですねふざけんな。市長閣下の命の元極限まで純化した輝磁50キロを担いだ俺を乗せた超少人数用の飛行船は目的地まであと少しというところでスカモールホロウから派生した共生ホロウが突如発生、飲み込まれて船体ごと空間の裂け目に引き裂かれました。乗組員は全員助けました。俺いれて8人だからほんとに機密特区なのね……
「あー、これあれか。消せるな?よし、機長さんちょっといい?」
「は、はい!どうされましたか?」
「ホロウ消すんであっこで全員待っててください。これ持ってて、オッケー?」
ホロウの消去は不可能ではない、このホロウは出来立てほやほやの共生ホロウ。エーテル活性度は著しく低いから消すのはそう難しいことじゃない。幸いギリギリ船の船体が外に出ている。ホロウを消すと内部の生命体は絶対に死ぬが時間内に脱出できれば問題ない。ホロウ内で救助を待つよりも生きる目がある。
まあまあと目を白黒させている機長さん副機長さんに輝磁を渡して指定した場所というかホロウの出口でギリギリ浮いている元飛行船の残骸で待っているように伝えた。おかしなものを見る目になった恐らくお偉いであろう乗客の方たちをまあまあとホロウから出した。
「そういえば星見さんが虚狩りになった時、5分かからずにアルゴスを鎮めたんだっけ」
星見さんとメロンを食べながら彼女自身の口からきいた話だったかな、と思いつつそんな場合じゃないとどこかで考えながらカウントを開始してしまう。周囲一キロもないホロウ。足場は海の藻屑と化した船や飛行船たち。エーテリアスもまあそこそこいる。だけどな、できるという確信が湧いてしまうのはなぜだろう。
両手に2本、周囲に6本を浮かべたライトセーバーを起動して手近なエーテリアスを斬り捨てる。どのエーテリアスもみたことないな、恐らくスカモール特有のものだろうか。ただ、最近週一ペースで星見さんと模擬戦やっているのでこう……どうしても弱いとしか思えなくて。一回斬ったら死ぬんだ……みたいな。おかしいな、感覚が毒されているような気がしてならない。
フォース・センスの精度に任してエーテリアスを片っ端から斬り捨てていく。防御しようが何しようがよほどのことがなければライトセーバーを防ぐことはかなわない。一撃必殺にものを言わせて見つけ次第エーテリアスを排除していく。おおよそ200秒過ぎたあたりで均衡が崩れた。エーテル活性度の著しい減少、空間のもつれ……間違いない、もう消える。すぐに出口へ跳ね飛んだ。
「あ、キミ!よかったホロウから戻ってきてくれて……それで、え?」
「あ、お預かりどうも。もう消えますんで近づかないようにお願いします。そんで救難信号ってどうなってます?」
「あ、ああ。ヴィルリウムにいる空巡局がキャッチしてくれました。高速艇でこちらに向かっているそうです」
「おお、よかった」
そうかそうか、ミネルヴァ暴風帯が近いからキャッチされるかどうかわからなかったけどどうやら俺が行くロスカリファとやらの治安局ポジションの組織が拾ってきたらしい。俺はなんか知らんけどヴィルリウムっていうのを経由してブーアストラムっていうとこまで行かなきゃいけないとか。んで、なんかお偉いさんに顔見せしてきてね~~って言うのが市長閣下のご要望です。輝磁はリアルマジでついでとのこと。多分フォースの事市長閣下に話したせいやろなあ。つってもお師匠様が知ってることをそのまま伝えただけなんだけど。
口々にありがとうと乗客の皆さんからお礼を言われたのでいえいえ困ったことがあればどうぞお気軽に雲嶽山の適当観にお問い合わせを~~と営業トークをして暫く。高速艇のエンジンの音がして俺たちが浮いている飛行船の残骸を船が取り囲んだ。
「あれ?ホロウ災害に巻き込まれたって聞いたのだけど、ホロウは?」
「リ、リンドヴェルヌ様!?なぜこんなところに!?そ、それに関してはこちらの彼がホロウの消去を……」
「ええ!?消しちゃったのっていうか消せちゃったの!?賓客だってエルダが言ってたからホロウに呑まれたって聞いてすごく急いでやってきたのよ!?」
気づいたら袖の中でライトセーバーを手にしていた。スイッチを押しかけた指から力を抜いて袖口から手を出す。なんなんだ、アレ。あの人ではない。そもそも人ではない。知能構造体とエーテリアスのあいの子というのが一番表現としてはしっくりくる。ヒトガタなのにエーテリアス。まさかサクリファイス?と考えてかぶりを振る。違う、そういう存在じゃない。
大きな角が生えた頭、長い銀髪。片手剣というには少々大き目な剣を携えた少女……にしか見えない存在。確かリンドヴェルヌと呼ばれていたか。彼女は俺がホロウを消滅まで持っていったことには驚いた様子ではあるものの不可能ではないということを理解しているからその表情は面白そうなものを見る顔だった。
「お前、かなり若いのに随分と強いみたいね?市長からお話は聞いていたけど、半信半疑だったの。リンドヴェルヌ・サンブリンガーよ」
「ザイン・スカイウォーカーです。貴方がサンブリンガー様でしたか。すいません、市長閣下からはお名前しか聞いていなくて」
「様付けなんてやめてよ寂しいじゃない!リンドヴェルヌでいいわ!さ!全員乗ったわね!?すぐにヴィルリウムまで行くわよ!」
市長さんに事前に聞いた話だと、ロスカリファという場所は初代虚狩りであるサンブリンガーが起こした空中都市で今もサンブリンガーが治めているらしい。100年前の話だからどうだかわからないがサンブリンガーは3人に増え、協力し合ってロスカリファを統治しているのだとか。で目の前にいるのがそのうちの一人というわけで、会ってきてほしいっていうお偉いさんか……え、待って深く考えてなかったけど俺市長さんクラスの人間?にあと2回会わないといけないの?お腹痛くなってきた……。
リンドヴェルヌさんはどうやら好奇心が強めの性格らしい。もしくは俺が何を目的にして市長さんから派遣されたのか怪しんでるかのどちらかだが俺自身は顔見せてこいとしか言われていないので隠すことは何もない。洗いざらい全部ゲロるさ。俺が考える俺がここに送られてきた理由は恐らく俺自身をロスカリファに認識させるとかそんなことだろうし。
長らくインターノット上の謎の存在だったオーダーは実は市長閣下の懐刀でした~~っていうのがメインシナリオかな?荷が重いんですけど……でも多分、ロスカリファなんて場所だと俺を知っている人間はほとんど皆無だろう。だってスカモールいったことないし。物理的に離れすぎてるし。
「そういえばその背負っているのが輝磁かしら?特別に精錬に精錬を重ねたっていう」
「らしいですね?俺は中身開けてないんでわかりませんけどそうだって聞いてます。なんに使うんでしょうねこれ」
「ん~~、あの子……クラレッタがヴィルリウムに人を入れてまで欲しいって言ったんだから相当大事なものなんでしょう。そうそう、そのクラレッタったらお前たちが乗った飛行船がホロウ災害に遭ったって聞いた途端に自分が行くって言って船に乗ろうとしてね?よっぽど輝磁が欲しかったのね~~」
それはそれは申し訳ないことをしちゃったなあ。そのクラレッタって人がお師匠様が言ってた工房主ってことでよろしいのかね?そりゃだってこの輝磁たっかいだろうしなあ。例えばなんだけど純化してない掘りたて輝磁ですらクソほど高い。マジで高い。軍事物資だしね。それを99%以上の純化をしたんだ。そら場合によっちゃ人命より大事になるかもね。だから市長さんもお師匠様も俺ならほぼ死なないというある意味での信頼をもとについでに持たせたのかも。実際墜落しても死ななかったし。
そんなこんなでなぜか新エリー都の普通の暮らしに興味を示して色々尋ねてくるのをとりあえず知っている範囲で答えていると割とすぐに島が見えてきた。交易の類はほとんどやってないのか港はこじんまりしているものの飛行船の発着場は立派に見える。桟橋にはホロウ災害だけあって大ごとになってるらしく人がパンパンだ。船にロープがかけられ俺たちが局員に囲まれて降りると立派な金と赤のツインテールのお姉さんが急いでこっちに来た。
「リンドヴェルヌ!無事かしら!?」
「あらクラレッタ。貴方のご注文の輝磁は無事よ~~安心しなさい」
「輝磁ぃ!?そんなものはどうでもいいわよ!全員無事なんでしょうね!?」
「無事に決まってるじゃない。じゃなきゃ私も輝磁のこと言わないわよ」
……めっちゃいい人。一目見ただけでお人よしがわかるなこの人。なるほどこの女性がクラレッタさん、フリンツ工房の工房主か。彼女はつかつかと俺たちの方にやってきて人数を数え、全員が自分の足で立っているのを確認してほっと息をついた。
「あー、フリンツさん、でいいですか?雲嶽山宗主より輝磁を預かっています。ご確認を」
「ええ、見苦しいところを見せたわね。クラレッタ・フリンツよ。確認させてもらうわね、あら?」
「え?なにか?」
「私の知らない合金の音……貴方、その袖の中何を入れているの!?」
よいしょ、と背負っていた輝磁を両手で渡すと彼女は輝磁よりも俺の両手を手に取った。確かに袖には一本ずつライトセーバーを仕込んでいるけど音なんてなってないぞ!?落ち着いてほしいと抵抗してみるもフリンツさんは止まらない、どったんと倒れた俺の上にフリンツさんがのしかかる。両手を抑えられた俺とフリンツさんの視線が至近距離で交わった。
「まあ、お嬢様。何と大胆な」
「クラレッタ……そういうのはもっと仲良くなって誰にも見られないところでやるものよ?」
「ち、ちちちち……違うわよ~~~~!!!!」
フリンツさんお付きのメイドとリンドヴェルヌさんのツッコミにトマトのように真っ赤になったフリンツさんが返すけど……早く退いてほしいなあ。
ストーリー2部開始前にロスカリファに行くヤツがいるらしい。ちなみに裏でパエトーンはアストラとイチャコラしてます。