フォースはいつでもエーテルと共に 作:光明面と暗黒面ってルビ無しで読めないよね
「落ち着いた?全くもう、どうしたのよ急に?初対面の年下の男の子相手にあんなことするなんてお前らしくもない」
「ああああもう言わないで頂戴!た、たしかにさっきの私はどうかしてたかもしれないけど!仕方ないじゃない!私が知らない合金よ!?」
「そこがおかしいのよ。ねえザイン?お前フリンツ合金を持っているの?」
「持ってませんけど。持ってるのは俺が鍛造した合金で作った自作の武器です」
熔光館、というらしいフリンツ家の別邸へ案内された俺。なぜかついてきたリンドヴェルヌさん。落ち着きを取り戻したけど真っ赤っかのフリンツさん。んでフリンツさんのメイドさんであるロクシー・イフリータ・プライスさんがひとまとめになってソファに座り、テーブルに置いてある紅茶をいただいている。
「……手を見た時もしかしてって思ったけど貴方職人だったのね」
「職人だなんてそんな。俺はどちらかといえば作る者じゃなくて振るう者ですよ。これについても作れる人間がいないから俺が作った。それだけの話です」
「勿体ぶってるけど私にもわかるように教えて頂戴。クラレッタ、どういうことなのかしら?」
「そうね、リンドヴェルヌは分かっているけどフリンツ合金はどれだけつくられてどれだけどこに運ばれたかすべてわかっているわ。私が知らない行先の合金はない。だけど、その子の両手からした合金の音は私の知らない音だった。フリンツ合金に非常に近いけど、決定的に違う未知の合金の音よ」
「…………へえ、ますます面白いわね。メイフラワー市長が自慢したいだけかと思っていたのだけど、ちょっと話が変わってくるわよ?」
家名がつけられているだけあってフリンツ合金とやらはどうやらかなり貴重かつ慎重な管理をされているらしい。だけど、それはなんでだ?恐らく輝磁を使っているから貴重品であろうっていうのはわかる。だけど、素材は素材だ。なぜそこまで金属の行き先までこだわって管理しようとしているのか?まあ軍事転用されるとめんどくさいって言うならわからんでもないけどねえ。
「それで、一度見せてほしいの。お願いよ」
「特許とかあるんだったらばらまかないのでご勘弁願えませんかね?武器は武器ですし、見せびらかすもんでもないです」
確かにライトセーバーを見せるだけなら全く構わない、構わないんだけど……相手が職人だというなら話は変わる。ライトセーバーの中身を理解されて量産でもされたらちょっとねえ……?軍事品が日用品を魔改造すれば再現可能である、という気付きを与えるのはあまりよろしくないんじゃないかと思うのよ。決定的な部品であるカイバークリスタルもこの世界じゃ手に入れようと思えば手に入れられるんだし。
「…………流石に事情を説明しないのはアンフェアか。ねえザイン、どうしてフリンツ合金がフリンツ合金と呼ばれるか説明してなかったわね」
「単純にフリンツ家の資産だからとか、フリンツ家が作ったから、とかじゃないんですかね?」
「それもあるわ。だけど決定的な要素は……合金の素材に私たちの一族の血液が触媒として使われているってことよ。私はいつか私たちの血がなくてもフリンツ合金を作りたい。この高純度の輝磁もその研究のために取り寄せたわ」
「血、ですか。なるほど文字通り心血注いで作られているわけですね……だとするならば余計です。俺が作ったコレもそちらと同じ。俺でなければ作れないから」
そう言って俺は袖からライトセーバーを取り出した。ただし、フォースを使って。一人でに浮いているライトセーバーを見た3人は大なり小なり目を丸くし、目の前の現象を理解しようと試みているのがわかった。俺はクラレッタさんの前にセーバーを移動させて彼女の膝に落とす。食い入るようにそれを手に取って見つめるクラレッタさんを見ながら話の続きを始めた。
「俺の能力をわかりやすく言えばエーテルに寄らない超能力とでも思っておいてください。その合金を作ったのも言うなればテレキネシス。異なる金属の分子を無理やり動かして整列させて一纏めにさせたものにすぎません」
「……そうなのね。明かしてくれたこと、感謝するわ。それでクラレッタ?どうなのかしら?」
「…………ありえないわ、これ。フリンツ合金じゃない。だけど私が目指したいもののある意味で理想形……!」
「でも、ダメ。そうでしょう?」
「そうね、ダメだわ。自分で言うのね」
「本職の職人なら見ればわかるかなと思いまして。それ、一枚の鉄板を作るのに2日かかります。工業品としてはありえない効率です」
手打ちの手作業としてもだ。俺が全力で集中しフォースを総動員しつつ金床で熱し、叩いて、織り込んで、2日。素材の素材に2日だ。しかも俺しかできない。フリンツ家の人間の血ならだれでもいいらしいフリンツ合金と違って俺一人がかかりきりになって2キロほどの合金が2日でできる。俺一人が使う分ならそれでいいが、いきわたらせようと考えれば気が遠くなるだろう。
「貶しているわけじゃないのよ?手をかけただけで作れるしなものじゃない。剛性なんかはフリンツ合金を上回っているわ。実直で素直で、それでいて雄弁。これだけのものを魅せられたら嫉妬すら覚えないもの。正直これを素材にして何か作れたら……って思っちゃうわ」
「いわゆる職人芸、という奴ですね。お嬢様」
「それだけで片付けたくはないけど、その通り。でも突破口にはなるかもしれないわ。にしてもこれ何なのかしら?スイッチ?うわっ!?」
「あ、触れたら死にますよ」
「あ、安全装置とかつけてないわけ!?」
「俺しか使いませんし」
不用意にライトセーバーのスイッチを入れてはいけない、というのはジェダイどころかシスにも伝わる絶対の不文律である。覗き込んだ状態でスイッチ入れなくて良かったねフリンツさん。そうなったらフォースで不発に終わらせたけども。
「変わった武器ね?エーテルブレードかしら?いや……エーテル技術じゃないわ!?純粋プラズマの放出!?どうなってるの!?」
「えーっと、つまりどういう事かしら?」
「リンドヴェルヌ様に分かりやすく説明いたしますと現行の技術においてはエーテルを介さず純粋なレーザー、ビーム、プラズマ等のエネルギー体を放出あるいは形にするのは非常に難しいのです。ぶっちゃけこの剣は技術革新の塊です」
「…………だから見せたくなかったんですよ……」
ロクシーさん(そう呼べと言われた)が微に入り細を穿って全部説明してくれたので俺は苦虫をかみつぶす顔をしながらその言葉を絞り出した。職人にその方面でのインプットを与えた時の爆発力と危険性は自分でよく理解しているつもりだ。俺は職人じゃないけどそういう事はあったもの。
「まぁ、安心しなさいよ。ぱっと見じゃあ何が起こってるのかは分かってもどうしたらそうなるかなんてわかんないわ。分解でもすれば話は別だけどそんなことは流石に、ね」
「俺この世の軍事技術に革命を起こしたいわけじゃないので勘弁してほしいですね、フリンツさん」
「クラレッタ、でいいわ。にしても冶金技術に優れてて、なおかつ機械技術も革新的……ねえ、うちで働く気はないかしら?ディニーに糸目は付けないわよ?」
「堂々と市長の懐刀を引き抜き交渉とは、お嬢様は随分お気に召したようですね、ザイン様を」
「えっ!?何それ聞いてないわよ!?私は衛非地区の雲嶽山から輝磁の護衛が来るとしか」
「言ってないもの。その輝磁の護衛が市長の直属エージェントで私たちに顔見せしに来るついでに輝磁を持ってくるなんて」
「~~~~~~っっっ!!!ロクシ~~~~!」
弄られキャラなんだなあ、クラレッタさんは。というかロクシーさん大胆だな、自分の主人にこれからくる人間の概要を途中までしか教えないだなんて。いや、これもしかしたらロクシーさんも知らなくてリンドヴェルヌさんがクラレッタさんが俺の合金に夢中になっている隙に教えたんじゃないか?
すったもんだののちにクラレッタさんのお誘いは丁重にお断りしてリンドヴェルヌさんにどのくらいでブーアストラムとやらに行けますかね?と尋ねると手続等で一週間くらいかかるとのことだ。泊まる場所そういえば聞いてないけど俺一応要人扱いだし用意されたりするのかな?あ、ある?ホテルのスイートルームでニートしててもいい?最高じゃん。あ、でもどうせ暇なら……。
「さすがにそれを渡すわけにはいきませんけど合金だけならサンプル置いていきましょうか?1週間も暇になるわけですし」
「えぇっっ!?良いのかしら!?本当に!?なんっでも言ってちょうだい!どんなものでも用意するわ!」
「お嬢様、またそんな安請け合いして……」
ライトセーバーが欲しいのではなくその素材である合金のサンプルが欲しいって言うのはクラレッタさんの顔にデカデカと書いてあるからまぁおいて置く分には問題ないだろう。暇になるならなおさら手を動かしておいた方がいい。日がな一日フォース座禅を組むのもいいけどね。
今日は解散、とリンドヴェルヌさんの号令で俺はフリンツ別邸を後にした。どうせ暇なので明日から鍛冶場を貸してほしいとクラレッタさんに材料としこたまハンマーと金床を注文して熔光館の前にあるホテルにそのまま吸い込まれていった。ちっかっ!!しかし……あの合金織り込むのマジできついんだよなあ……。
「言われた通り用意したけどこんなに金床とハンマー、何に使うの?」
「全部使いますよ、全部。ところでなぜここに?」
「え?合金作るんでしょう?過程まで全部見ておかないと意味ないじゃない!」
というわけで翌日、熔光館にあるらしい鍛冶場に案内された俺。適当な店で買ったツナギ姿。なぜかクラレッタさんも作業着姿……昨日までのおしゃれでセクシーな姿は真逆でびっくりしているのだけれどかなり使い込まれた作業着だ。何というか、親近感がわく。ってあれ?
「ロクシーさんもきたの?」
「はい。残業して時間を確保しました。マイスターとしては見ておくべきだと思いましたので」
「見てて何も面白いことはないと思うけど……」
ま、いっかと俺はバチバチと輝磁の板、レアメタル数種、また輝磁、レアメタルという順番で金属板を重ねて溶接しそのままエーテル炉へ突っ込んだ。うわぁ、俺が使ってるやつより数世代先で性能もいい。あっという間に真っ赤になった。
赤々と輝く重ねた金属板を奴床で掴み、あるだけと注文して山になっている金床をフォースで掴んで固定、さらには自分の体もフォースで強化し、ありったけの力とフォースを込めて金槌を金属板へ叩きつけた。
「うひゃああああっ!?」
「っっ!?」
どう音に表したらいいかわからないけど轟音が響き渡り、火花が飛び散る。全身全霊の一撃を受けた金属版はフォースの圧力を受けてがっつりと金槌の一撃が刻み込まれた姿をさらしていた。
「な、なななななんてことしてるの!?こんなのじゃあ……えっ、鍛接されてる……?」
「通常この種類の金属で鍛接は不可能です。それを可能とするのがフリンツ合金、ですがこのような強引な方法だとは」
「ええ、強引な力技です。金属分子を無理やり一体化させる。くっつかないものをくっつけるなら小技を使うか強引にまとめるかです。俺の場合は後者」
「これは確かに再現は難しいわね……それに、どうして金槌と金床をありったけって言ったのかもわかったわ」
クラレッタさんの指摘に今の一撃で汗だくになった俺は苦笑いを隠せない。それはそうだ。ハンマーは今ので新品からあっという間にボロボロになり果て、金床も形が変わりかけている。だから時間もかかるしものも山ほどいる。マジで郊外がある意味で物資の山じゃなかったら作れなかっただろうしね。
あとは繰り返しだ。金属板を叩いて折り曲げ、全霊の一撃。それを繰り返す。全力3回で金床もハンマーもダメになってしまった。けど職人たるクラレッタさんとロクシーさんは見ただけで理解していた。繰り返すごとに金属は織り込まれ、混ざり、固まり別れていたものが一体化して合金に変わっていくのが。
「……ハァ、フゥ……とりあえずは今日はここまでで。潰した金床とハンマー代は申し訳ないですけど請求書切ってもらえませんか」
「要求するわけないじゃない。むしろ、私がお金払うくらいはしないといけないわ。いいもの見せてもらったわよ」
「はい、ザイン様。よろしければこちらへ。シャワーをお貸しします。片付けはやっておきますのでお任せください」
「…………あと6日、か。ロクシー、スケジュール調整して頂戴。最優先よ」
「承知しました」
ロクシーさんに背中を押されながら鍛冶場を後にする俺。クラレッタさんはまだ途中の冷え切ってない金属塊を奴床で掴んで真剣に見つめて、ロクシーさんに声をかけた。それが意味することを俺は理解できなかったがとりあえず汗だくになった全身を清める方に集中することにして頭の片隅にそれを投げ捨てるのだった。
ロスカリファ編のあとどうしようかなあ。モッキンバードやってもいいんだけど主人公食い込ませる隙が見当たらないしかといって2部やってもまだ構想固まってないしなあ。瞬光ちゃんかわいい(遺言