フォースはいつでもエーテルと共に 作:光明面と暗黒面ってルビ無しで読めないよね
ヴィルリウムの朝は新エリー都にいた頃となんも変わらない。普通に朝が来て、起きて、シャワー浴びて歯を磨く。準備が終われば朝飯を食らう……その朝飯が一流ホテルのバイキングであるということを除けばだけど。いやーどれもこれも美味いなあ、持って帰りたくなるくらい。
ヴィルリウム、というかロスカリファ全体の話になるんだけどボンプの数が非常に多い。というか住民の6割以上がボンプらしいのだ。流石はボンプの生みの親サンブリンガーが興した町である。その中で特筆すべきなのはボンプにも市民権があることだ。この町においてボンプは人の手伝いをするロボットではなく住人らしい、俺には関係ない話だけどね。
「ンナ?ンナナ」
「お茶のお代わり?ありがとう。これチップね」
「ンナッ!?ンナナ!?」
「いいよいいよ。あ、こっちのボンプだとこれ流行ってるんだっけ?キャップ。これもあげるよ」
「ンナ~~~!!」
なぜ関係ない話なのかって?そもそも問題俺はボンプを消耗品だとかロボットであるとかは考えていない。確かに彼らはプログラムで動いているかもしれないがそこには感情があり、心がある。彼は個としてそこにいるんだという感じだ。まぁつまり、人とは違うが人のようなものであるということだ。そっちの方が接しやすいし。
それよりも驚いたことと言えばボンプのサイズだ。ロスカリファにおいてはボンプにもサイズ差がある。というか3種類に区分される。まず通常サイズ、これは置いておく。その次がビッグサイズで俺の胸くらいまでの高さがある。性格も大人びた個体が多い。んでその逆、ミニサイズ。大体通常の半分。このサイズどちゃくそかわいい。怒られなければ持って帰りたいくらいに可愛い。俺も相棒ボンプ欲しいなあ、イアスとかものすごく可愛いじゃん?
台車に乗ったボンプがお茶のお代わりと勧めてくるのでありがたくいただきお返しにとディニーを握らせさらにここら辺のボンプの流行りらしい瓶ジュースの王冠を渡すとボンプは嬉しそうに台車の上で跳ねて落っこちた。まあキャッチしたんですけど。
「随分と楽しんでいるみたいね?どうかしら?ロスカリファは」
「穏やかでいいところですね。まぁこの感想は俺がお客様だからというのもあるでしょうけど。実態はわかりません」
「実直ね、そういうのは好きよ。それでなんだけど……急だけど明日ブーアストラムに入れるようになったわ。準備しといてね?」
「きっかり1週間ですか、こういうお役所仕事は伸びると思っていたんですけど良かったです」
「もう、かわいくないわそんな言い方。まったく、確かにクラレッタやロクシーがそっけなくなったから私の仕事が弾んだのは事実だけど」
俺の朝食の席、というかもうデザートに取ったフルーツしかないけど後ろから現れたリンドヴェルヌさんが俺の対面の席に座る形で出現した。不満そうに口を尖らせているが多分休憩の名目で俺のところに来たんだろなあ。この人書類仕事好きじゃなさそうだし。でもなんでわざわざトップオブトップの人が使い走りしてんだろ?
「クラレッタさんですか。そういえば何というか俺が合金のサンプルを作り終えてからずっと工房に籠ってるらしいですね。何かいいヒントになったんでしょうか」
「そう!そうなのよ!聞いてくれるザイン!?クラレッタったらね!昨日も一昨日もお茶のお誘いに行ったのに忙しいって言って構ってくれないの!」
「そうなんですねってリンドヴェルヌさんは偉い人なんだからお茶飲む時間あるんですか?」
「時間は作るものよ!」
「そう言って3回くらい連れ戻されたの見ましたけど」
うぐう、とリンドヴェルヌさんが固まる。なんかこの人仕事のサボタージュをよくするらしいのだ。いや必要な仕事はするんだけどあまりにも量が多いから遠い目になってるとかそんな話を聞いた。なんというか、いい意味でリンドヴェルヌさんからお偉いさんのオーラを感じない。親しみやすさはめちゃくちゃあるし仕事もできるんだろうけど。
「ご用件はそれだけです?わざわざ出向いてもらってありがとうございました」
「まさか!ねえザイン、お前……ちょっと体を動かしたくない?」
「と言いますと?」
「折角市長直属の一流エージェントが来てるのよ!空巡局の隊員たちに発破をかけるなら今しかないじゃない!」
「なるほど?興味わいてきました」
でしょう!?と目を輝かせてこちらに身を乗り出すリンドヴェルヌさんに思わずのけぞる。一応俺は市長さんの代わり扱いでここにいるらしいのだが実はロスカリファはTOPSと同じく市政とは半ば独立している特別な場所。俺も波風立てたくはないのでできるだけお願いは断らないようにしないといけない、要は顔潰したりして新エリー都との関係に何かあったら俺は責任をとれないのだ。お師匠様は最悪潰せって言ってたからどこまで踏み込ませるかは俺に任せるという意味だったのだろう。
だから先に誠意として俺自身の能力を市長に明かしてよしと言われた範囲まで明かし、見せたくないものとして示したうえでライトセーバーも見せられる範囲は見せた。これはまあイレギュラーだったとは思うけども。どこまで明かしていいかは協議済みだけど俺自身腹芸は得意ではないのでボロを出しかねないっていうか出した。合金の話の時とか。
現状俺がフォースについて外に明かしているのは俺にしか扱えないこと、様々なことができることにホロウへの驚異的な耐性と道順の把握だ。お師匠様にしか知らないのは未来を見ることが限定的にできること、フォースという名前とこれが宇宙由来の大いなる意思であるということの3つ。
結構いろいろ明かしているけど俺自身が半ばフォースの傀儡であることとフォースが全ての源であり過去であり今であり未来であり全てである、ということは明かしてない。そして、素質さえあれば使える普遍的な力であるということはほとんどバレかけている。だけどただでさえホロウだけで手いっぱいなこの世界にフォースの存在を確立させるのが劇薬が過ぎる。
これ以上は踏み込まないでくれ、というのは合金の話の時点でリンドヴェルヌさんにもクラレッタさんにも示した。だから彼女らはあの時以来俺のパーソナルな事情に踏み込むことはなかった。でもそんなの関係ねぇとばかりに毎日遊びに来るんだよねこの人……。でもねえ、親しみやすいんだわこの人、人じゃないけど。
「訓練に混ざってくれって言う話でいいですか?」
「そういうこと!お前が助けた人がホロウを一人で消したって話を隊員にしてから皆気になってるみたいなの。オーダーって言ってけどそれがお前のコードネームなのかしら?」
「あー……まぁ、そういうことです。まあレイダー上がりなのでお察しください」
「ということは二つ名というやつなのね!?いいじゃないっ!そんなオーダー君には局員をめいっぱい鍛えてもらおうかしら!?」
そうかしまったお偉いさんの中には俺の概要知ってる人がいるんだった。というか、上の立場である人ほど俺のことを知っている人は多くなるんだ。狙ってた人もいるだろうからね。うーんマインド・トリック……はもう無理か。だけど俺が市長の直属だっていう事も同時に伝わったわけだから下手なことはできないだろう……きっと、たぶん、めいびー。
早速行きましょう!と俺はリンドヴェルヌさんに引っ張られて空巡局の支局らしいところに連れていかれた。やっと戻ってきたみたいな出迎えをされたけどリンドヴェルヌさんが集合!と声を掛けたら一瞬で当番以外の人が出てきた。治安関係っていうより軍属っぽい感じかなあこれだけみると。
「さて、皆の目の前にいるのは新エリー都市長直属のエージェントよ!交流を深めるために訓練に混ざってもらうわ!当然最後のアレにもよ!」
「アレとは?」
「それは最後のお楽しみ!さ、まずは筋力トレーニングから始めるわ!」
アレってなんだよ!というツッコミはともかくとして始まったトレーニングはまあ当たり前のトレーニングというかなんだったら一部は雲嶽山の方がキツかった。まあお師匠様が俺用に直々に組んだトレーニングだからそれはそうなのか、と思いつつトレーニングをこなしていく。
筋トレ、走り込み、柔軟と続いて素振りが入ったがライトセーバーを振り回すわけにはいかないので雲嶽山仕込みの体術の型を披露したら拍手をもらいました。なんでも真上を蹴り上げたりとかそういう技術はないらしい。リンドヴェルヌさんも挑戦したけど足を振り上げすぎてひっくり返っていました。とてもかわいかったです。じゃなくて!
「結局アレってなんなんです?」
「うーん、もういいかしら。一応空巡局は小隊単位での行動が義務付けられているけど孤立する可能性もゼロじゃないわ。だから多対一の状況に慣れるために訓練終わりに一人を選んで多対一での模擬戦を行うの」
「その標的の一人になるのは人気がなさそうですねぇ。そんで俺が今日それをやれと」
「そうよ。怖気ついちゃったかしら?」
まさか、と返して肩をぐりんと回し局員たちの間を通ってわざわざ囲まれる位置に陣取る。いつでもどうぞと腰を落として構えると、にんまりとしたリンドヴェルヌさんが開始!と大声を張り上げて四方八方から局員たちが襲い掛かってくる。フォースによる強化も未来視もなしだ、素の俺がどれくらいできるのか試してみよう。
突き出される槍を払って穂先を逸らして懐に潜り込み、掌底、そして槍を手で掴み全身をねじることで武器を奪って後ろ回し蹴りで一人ノックアウト。武器が手に入ればこっちのものだ。ダブルセーバーの要領で槍を振り回して次々と向かってくる局員たちを打ち据える。流石に数の暴力は辛いけど六課の皆さんほど個々の実力があるワケでもないから全然余裕だね。
奪った槍で武器を弾き飛ばし続け一人一撃のペースで気絶まで追い込み続ける。ケガさせないように手加減しているけどそうすると余計に痛いだけなのでどうにも難しい、やっぱり俺はまだ未熟だなあ。
「うおっ!?」
「あら、ごめんなさい。私が参加しないとは言っていないわよね?」
「いえそうではなく、備品壊れましたけど」
「よくあることじゃない」
そうなのかなあ?と突然割り込んできたリンドヴェルヌさんの剣の一撃で槍が奇麗に真っ二つになった。明らかに業物っていうかそれ絶対フリンツ合金製でしょ、という剣に俺が真っ二つになった槍を捨て拳を構えるとひゅんっと軽い音をたてて俺に何かが飛んできた。それを掴むと、鞘に入った剣だ。しかも、寸法がライトセーバーを起動したものとそっくりの両刃の中華剣。
「どこにいるかと思ったらこんなところにいたのね!それ、使いなさい!」
「え、いいんですかこれ。かなりいい物なんじゃ……」
「当然よ!なにせ私が作ったんですからね!あなたの合金とフリンツ合金を配合した唯一無二の一品よ!」
「ちょっとクラレッタ!そういうのずるくないかしら!?ずっと籠ってたと思ったらそれ作ってたの!?」
しゃらん、と鞘から剣を抜くとお師匠様から借りた剣とは比べ物にならないくらいしっくりくる上に良いものだった。投げたのはいつの間にか訓練場に闖入してきたクラレッタさんだ。しかしあの剣だって業物のはずなのにまるでライトセーバーを握っているかのようにしっくりくる。俺用に誂えたかのような握り心地だ。
「リンドヴェルヌさん、俺拳士じゃなくて剣士なんで。こうなったら負けませんよ」
「あーらいい度胸じゃない。こちとら100年ロスカリファ守ってんのよ。舐めてたら泣くのはそっちなんだから!」
金属剣の重さ、バランスという奴は何もないライトセーバーと比べたら扱いやすくなるプラス要素でしかない。もともとジェダイだってライトセーバーの前は金属剣つかってたんだ。ならばこれしかないとフォーム7ヴァ―パッドの構えをとる。最新と最古の掛け合わせだ、暗黒面のフォースも今の俺なら引き出し制御できる。
構えた時点でリンドヴェルヌさんも俺の脅威がわかったのか迂闊に攻め込んでは来れないようだ。ただ、この型は苛烈な攻めの型。俺から攻めよう。踏み込んで剣を振るう、縦横無尽に、迅速果断に。攻め手を緩ませず反撃を許さず。寸止めで終われるように気を使いながら剣を振るい攻めを継続する。
リンドヴェルヌさんもさるもの、大剣とも言うべき肉厚の片手剣を通常の片手剣である俺と同じ速度で降って、防御を合わせ、さらには反撃を繰り出してくる。流石は初代虚狩り……本人かどうかはわからないけど強い。ただ、お互い本気を出せないのが残念だった。
「ここまでね、千日手になっちゃった。でもズルいわ。本気でやってくれないなんて」
「お互い様でしょう。それに、本気でやるならここじゃ持ちませんよ」
抵抗なく鞘に滑り込む剣に感嘆の息を吐きつつ俺はリンドヴェルヌさんを誉め、彼女も俺を誉め返してくれる。しかしこの剣どういうこっちゃ?とおれは満足げにうんうん頷いてるクラレッタさんに剣を返すために歩き出すのだった。