フォースはいつでもエーテルと共に   作:光明面と暗黒面ってルビ無しで読めないよね

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第6話 虚狩りはフォースに鞘走る

 雲嶽山に訪れた数日後、俺の姿はとあるホロウの中にあった。零号ホロウ、リンボとも呼ばれる超大型のホロウで10年ほど前に新エリー都の前身、旧エリー都を飲み込みつつ暴走、未曽有の大災害を引き起こした最大最悪のホロウだ。

 

 何でそんなところに俺がいるかと言えば、雲嶽山でお師匠様に言われた死線の話である。本当の意味での死線を超えたことはない……確かにその通りだ。俺は死に物狂いで生き残った経験というモノには恵まれていない、それが幸せなことなのか、戦士としては不幸せなのかはわからないが。

 

 お師匠様を除いて俺は圧倒的な格上と相対したことはない。当然ヤバそうなエーテリアス相手にも先んじてフォースで気づいているので接触しないようにホロウを探索していた。そりゃそうだ、だって俺生きるためにホロウに潜ってんだもん、死ぬような真似できないって。

 

 だけど、お師匠様は多くを語らない……まあ雑談とかはよくするので口下手なわけでもないし割とお茶目だとおもうんだけど、それはともかくとして修行や教えについては気付きを促すタイプだと思う。頭から尻まで面倒を見たい福姐さんとは真逆のスタイルだ。

 

 おそらくお師匠様が言いたいのは俺はもう格下と戦うことや素振りや瞑想と言った自己研鑽だけでたどり着ける壁にぶち当たっているということだと思う。確かに最近フォース関連の技術が頭打ちしてるんじゃないかと思ってたところにそれは図星をつかれた気分だった。

 

 つまり、俺は死にに来たのだ。一応遺書も書いておいた。エレンさんにもライカンさんにも福姐さんにもお師匠様にもノックノックで『強くなるために一回死んでくるので1週間後に次の連絡なかったら死んだっておもってちょ』とメッセージを送っておいた。

 

 生きるためにホロウに潜っていた俺が死ぬためにホロウに潜るとは……ワンチャンフォースで霊体化できたりして、なんつってな。矛盾を感じる行為だが俺自身、どれくらい強くなれるのかは興味がある。今のところ俺一人しか使えない力をどこまで高めあげることができるのか。

 

 銀河の英雄にして最強のジェダイ、ルーク・スカイウォーカーのように、暗黒面に落ちながらも最後は光へ帰還しフォースへバランスをもたらしたアナキン・スカイウォーカーのように、偉大なる師であり守護者であったオビ=ワン・ケノービのように、卓越した緑の賢者ヨーダのように、フォースとは何なのかを俺なりに答えたい。

 

 だから、今日俺は死にに行く。フォースと最も親密になれる行為は、経験を積むことだ。ダース・ベイダーからフォーム5を見て盗んだルークのように。己惚れてもいいなら俺は才能があるはずだ。だけど今はそれに胡坐をかいている。

 

 胡坐ではなくその才能をきちんと活かしたい。そう思って俺は一度、死ぬ気になってみることにしたってわけだ。1週間分の食料と衣服を背負い、背嚢の上にテントを重ねて俺は今零号ホロウの中にいる。まずは前哨基地の設立からだ。

 

 本来ならば俺は1日もいれば浸食限界でエーテリアス化するだろう。だがそこはフォースの力で補う。試したことはないけど常時フォースを纏い続けることができれば相当に長く浸食を抑え込めるはずだ。常時フォース・ヒーリングを使ってもいい。酷使することが今回の目的だからな。

 

 重力がめちゃくちゃになっている地域を避けつつ視界が良好で隠れる場所がある、かつては公園だったであろう場所を見つけたのでそこにキャンプを張ることにした。1日目はホロウの環境に体を馴染ませたかったので、瞑想をし続けるつもりだ。本当に、フォースでエーテル侵食に抵抗できるのを証明するためでもある。

 

 座布団を敷いて、胡坐を組んで周囲にあるフォースに語り掛ける。自らの内的フォースを外的フォースに融合させるようなイメージで自身を世界に溶かし込んでいく。やがて自らという自我が消え、世界を俯瞰しているような感覚に陥る。あとはこれを、集中力の続くままに続けていくのみ。

 

 周囲100mにいるエーテリアスは、すべてフォース・プッシュによる押しつぶしで刈り取る。ルーク・スカイウォーカーは星を超えて超高等技能であるフォースの幻影を届けたんだ、これくらいできなくてどうする。

 

「……ねえ!……ねえ!

 

 いったいどれほど時間がたったのだろうか、エーテリアスを刈り取ってからはもうフォースのことしか考えていないから接近されても気づけな……まった今人の声聞こえなかった?

 

「起きてってば~~~~っ!!!」

 

「うおっ!?何事!?」

 

 零号ホロウの割と中まで進んだうえでエーテリアスまで駆除した上で人なんていなかったから知性体から声をかけられるなんざ想像だにしなかった。肩を跳ねさせた俺が目を開けると、青い肌に大きな角が生えた少女が俺を覗き込んでいた、が一気に警戒ボルテージを跳ね上げる。来ている服が局の……H.A.N.Dの制服だったからだ。公的機関に見つかったか……!

 

「よかった~!蒼角何回も声掛けたんだけどぜんっぜん気づいてくれなかったから!死んじゃったのかと思ったよ~!」

 

「あ~……ごめんね?」

 

「あ、そうだお仕事しなきゃ!えーっと……ここはきけんくいきです!一般人の侵入は固く禁じられてるので速やかにご同行を……」

 

「うん、うん」

 

「……蒼角のキャロットが入った端末壊れちゃってたんだった……」

 

 最後の言葉に俺は落ち着こうと水を入れて沸かしていた鍋をひっくり返しかける。この子はおそらくH.A.N.D.というこの都市のホロウ関係全てを仕切っている公的組織の構成員だろう、それも実働部隊の。

 

 けど、今それは関係なくなりどうでもよくなった。彼女は今、キャロットが使えないと言ったのだ。このまま彼女を放っておけばそのうちエーテリアスになってしまうかもしれない。俺のフォース・センスによる感知では零号ホロウすべてを把握できないし、方向だけ示すのも何が起こるかわからない以上案内して外に出してやるしかないだろう。

 

「ううぅ……ナギねぇ、ボスぅ、ハルマサぁ……どこにいるのぉ……」

 

「あー、まあ大変だったのはわかった。仲間とはぐれたんだね?とりあえず落ち着いて、これをどうぞ」

 

「ココアだ!マシュマロ浮いてる!」

 

 子供、か……?振る舞いがそう感じてしまう。一定程度実力がなければ零号ホロウには組織としては入れないはずだし強いのは見ればわかるが、正直その中身がね?可愛らしいと言えばいいのだろうが緊張感が足りないというか。あつあつのココアをマシュマロごと一気に飲み干す彼女に思わず笑みが浮かんでしまった。

 

「おにーさんはここで何してるの?」

 

「死にに来た」

 

「ふぇっ!?ダメだよそんなの!?蒼角がお話聞くからやめよ?ねっ?」

 

「というのは半分冗談なんだけどね?修行として死ぬくらい大変な目に遭いに来たのさ。秘密にしてくれる?」

 

「……ムリだよ。蒼角は対ホロウ六課で、おにーさんはホロウレイダーなんでしょ?蒼角、おにーさんと戦いたくないから捕まってほしい」

 

 この提案を拒める人間はそう多くないだろう。彼女は心からそう言っているのがフォースによるサイコメトリーを行わなくてもわかる。彼女は純粋にこんなところにいる俺を心配してホロウレイダーという犯罪者であっても戦わずに何とかしたいと思ってくれているのだから。

 

「そうか、ならごめんだけど捕まってあげることはできないかな。君のことはちゃんと助けるから安心して」

 

「ふぇっ……?」

 

 マインド・トリック。フォースによる精神操作の術を使い蒼角ちゃんを眠らせる。純粋だからかこういう類の術に耐性がなかったらしく。深い眠りについた蒼角ちゃんを抱き上げ、彼女の身の丈ほどある大きな大剣をフォースで浮かし、俺は歩み出した。彼女と縁を紡いだフォースがある方向へ。

 

 空間を飛び越え、ホロウ内の位相を一つ一つ皮をむくようにフォースで確かめより安全なルートで零号ホロウの外へと彼女を運んでいく。いや、外じゃないな……比較的浅いところに彼女のフォースと似たフォースが動いているのを感じる。そっちか。探し回っているからか、移動が速い。

  

 俺自身もフォースで身体能力を強化し一足飛びに目当てのフォースを追い続ける。やがてそれに追いついたとき、そこにいたのは桜色の髪を編み込んで後ろに流し、必死に何かを探している薙刀を持った女性であった。彼女は俺を見つけると、手に抱かれている蒼角ちゃんを見て眦をつりあげる。

 

「蒼角っ!あなた、蒼角に、なに……を……?」

 

「そこまで必死になって探すくらいなら最初から一緒にいてあげてほしい。次は助けてあげられるかわからないから」

 

「え……?」

 

「エーテル侵食限界が迫ってるんだろう。俺の仕事はここまでだ、追ってくるのは勝手だが今度はあなたが帰れなくなるぞ」

 

 武器を構えた彼女に対して俺は蒼角ちゃんとその武器をフォースで浮かして彼女の前に持っていく。彼女は混乱して言葉を失いながらもなんとか蒼角ちゃんを両手で掻き抱く。俺が踵を返すとようやく復帰したらしい彼女が口を開いた。

 

「こちらは対ホロウ六課副課長の月城柳です。行方不明になった蒼角隊員の救助には感謝いたします、ですが零号ホロウは許可を得たもの以外は立ち入り禁止のはずです。速やかに投降してください」

 

「すまないけど、今は修行中でさ。1週間もしたら勝手に帰るよ。人を殺すほど落ちぶれちゃいないし、人を傷つけるのも正直キライでね」

 

「認められません。1週間もホロウ内にいればどれほど強靭なエーテル適応体質でも確実にエーテリアス化します!きちんと話を聞かせてください!」

 

「大丈夫さ、ちょっとばかしコツがあってね。それよりも今なら東北東にまっすぐ行って2回空間を超えた後西に進めば最短でホロウから出られる。エーテリアスも少ない。最後に言うが……追ってくると、確実に迷うからな」

 

「あなたは何を……!?まちなさい!」

 

「あなたたちにフォースの導きがあらんことを」

 

 最後に慣用句的な意味の祈りの言葉、つまりはグッドラックを残して俺は蒼角ちゃんを抱いたまま身動きが取れないため追ってこれない月城さんを残してその場を離脱する。念のためでたらめに空間の裂け目を移動した後また元のキャンプサイトに戻ってきて……撤収を開始した。そらだって場所割れたもん。もっと奥いこ。

 

 

 

 

 そんなこんなで5日たった。俺はエーテル侵食を受けることなく零号ホロウ内で生き続けている。残念ながら俺が求める死線という奴には遭えなかった。一番やばかったのはなんかクソデカイ女の姿をしたエーテリアスを見た時だったな。フォースがエーテルに侵食されかけたのは初めてだった。

 

 ただ、取り巻きのエーテリアスが100単位で襲い掛かってきたのでそれを相手にしていたらいつの間にかそのクソデカエーテリアスはいなくなっていた。幸なのか不幸なのか、相手してたら死んでたと言い切れるので幸なのだが修行の目的としてはうーん……。

 

「修行中のところを失礼する。お前だな?蒼角を助けて柳に安全な道を示したホロウレイダーは」

 

「どちらさまで?申し訳ないんですが知り合いになった覚えはありませんけどね」

 

「石に漱ぎ流れに枕す……誤魔化すな。茶のローブにフードを被った少年、報告にある通りだ。私は対ホロウ六課課長、星見雅。蒼角から懇願された以上できるだけ武力に頼りたくはない。速やかに投降をしてくれ」

 

「星見雅……虚狩りの星見雅さんですか。こんなところまでただの人間を捕まえに来るなんて暇なんですか?」

 

 背中に冷や汗が流れる。誰かが近づいているのはわかっていたが逃げる気にはなれなかった。フォースがこれから逃げるなと言っていたから。だが、さすがにこれは予想外だ。最強の代名詞である虚狩りに出くわすなんて。

 

 まあどうぞ、と薪の前を示して見せるものの彼女は無言のまま動こうとはしない。俺が飲みかけのコーヒーを飲み込むのを待たずに俺が持っているカップが真っ二つになり中身で地面を汚す。カップの取っ手だけ持ってるような形になった俺は溜息をついて立ち上がる。

 

「確かに俺はホロウレイダーだけど、あなたが出向かなければならないようなことをした覚えはないよ。治安局が出張るならわかるけど、俺はホロウ災害じゃない」

 

「特別手配犯『オーダー』……お前を捕えることはホロウ内での安全向上に直結する。場合によっては恩赦もあるぞ」

 

「いつの間に指名手配なんかされたのやら。俺は人助けなら山ほどしたけどホロウに入る以外は悪いことしてないのに」

 

「その方法を、私たちは知りたい。お前がなぜ、ホロウ内で5日も生き延びているのか。なぜ柳に安全な道を示せたのか……その手腕を解明できればホロウ内での生存率は飛躍的に上がるだろう」

 

「モルモットにでもなれって?」

 

「……残念だ」

 

 その言葉と同時に見えたヴィジョンは、細切れになる俺自身だった。

 

 




フォースくん「ちょうどよく強いやつおるやん。望んでた死線やで」
主人公くん「加減しろ莫迦」

 やはりフォースの加護は呪い説
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