フォースはいつでもエーテルと共に 作:光明面と暗黒面ってルビ無しで読めないよね
細切れにされるイメージというのは冗談でも何でもない、そのヴィジョンが見えて0.5秒後……俺のいた場所を無数の斬撃の嵐が過ぎ去った。バラバラになったテントと俺が座っていた座布団の綿が舞い散る。数m先に跳躍して避けた俺を抜刀術の残身をとっていた星見さんが見ている。来ると分かっていて抜くのも仕舞うのも見えなかった、化け物だ。
「弁償してくれます?」
「同行するならば」
「じゃあ無理だ。にしても生きて捕らえるのが目的だと思ってましたよ」
「できれば、生かしたい。だがすでにお前は私の加減できる領域をゆうに超えている。相対するだけでこの刀が震えるなどなかった。お前は斬らねば」
フォースが危機を知らせている。だけど、フォースの導きは絶対だ。過程はどうあれ、その先には必ず何かが待っている。最終的に俺の首が飛ぶかもしれないがこの世界はこの選択によりよくなるはずだ。忘れてはならない、俺のためにフォースが存在しているのではなく、フォースが俺を使っているのだと。フォースが選択する未来は最良のはずだ。
虚狩りである星見さんをして俺には手加減できないというのか。師匠のあの言葉は半分リップサービスであると思っていたけど本当に本心でもあったのか……薄く唇が上がるのを抑えられない。ライトセーバーを取り出して起動する。選択するのはフォーム2、マカシ。
ライトセーバー同士の決闘に特化したフォームだが相手は刀……刀剣相手だ、これが最善だと思う。片手で持ち、持っている手を軽く上げて横に刺すようにライトセーバーを構える。ドゥークー伯爵のこの構えから繰り出される殺陣は有名だ。今からやるのはホンモノだけど。
「ふっ!」
「はぁっ!」
フォースで見えた未来に従うように突っ込む、対する星見さんはフォースで強化した俺よりも強い踏み込みで素早く迫ってくる。一撃目は抜刀からの横薙ぎ、わかっている。手首のスナップと全霊のフォースを込めてセーバーを上に跳ね上げた。
「なっ!?」
「合わせられた!」
ドンピシャのタイミングで下から刀に当たったセーバーに星見さんは刀を跳ね上げられる。刀を切り飛ばしてやろうと思ったけど、やっぱり……ライトセーバーにも耐えうる物質で作られてるみたいだ。跳ね上げられて初めて見えた刀身は、莫大なフォースとエーテルを纏っている。まるで一個の恒星のごとく。
1撃目を防いだだけで、2撃目だってすぐに来る。来た、来た!跳ね上げられた刀を持った両手による縦一文字が!セーバーを戻し両手で柄をもってフォースでセーバーを支えて受け止める!接触の瞬間蒼のエーテルが爆散し、受け止めた俺の背後のビルが真っ二つに斬れて両側に倒れるのがわかる。
「やはり、お前は危険だ。私の刃に2度も合わせた。未来でも見えているのか?」
「どうでしょうね。偶然でしょう」
「偶然で私の剣を防がれては困る……それほどの腕を持ちながらなぜレイダーをしている。何が目的だ?」
「自分の身を守るためだよ。貴方は俺が欲しいんじゃない、俺が持つホロウ探索技術が欲しいんだ。指名手配もそれ目的だろ?希少な個体が行きつく先なんて決まっている」
「……それが、素か。己が身を守りたい、立派な理由だ。そして悔しいことに……私はお前を納得させるだけの言葉を吐けない」
つばぜり合いの最中に言葉を交わす。彼女の手が閃けば俺のいた場所に斬撃の檻が出来上がる。逐一それにセーバーを合わせる。これか、これが死線か。一度ミスればそれだけで勝負が決まる。俺がそうなのに対して彼女は多少ミスしてもそれは致命傷にならない。圧倒的実力者への命を懸けての抗い。俺の中で急速に何かがハマっていくのがわかる。
セーバーの持ち方、斬撃の出し方、フォームの立ち姿……逐次修正する。こういうことか、理解してきた。
マカシじゃダメだ、絞れ。彼女の剣は空を飛び越え果ては空間まで跳躍する。斬撃を飛ばしてくる以上遠距離攻撃をほとんど想定していないマカシでは後れを取る。選択を急げ、指数関数的に斬撃は増えていく。セーバーで防ぎきれなくなる前に懐に飛び込むんだ。
……待てよ、防御に必死で疑問にも思えなかったがおかしいことが一つある。
じゃあなんだ?躱すたびにローブのすそに切れ込みを入れるこれは?何もない空なのにセーバーを持つ手を痺れさせるこの攻撃の正体は?あまりに斬撃が速すぎて空間が割れているのか?いや、違う。彼女の手元から撃ち出されて俺に届いてるこの攻撃の正体は、エーテルだ。エーテルを斬撃で撃ち出しているのだ。
急速に俺の中で開けていく感覚がある。相手の攻撃がこれなら、打ち返すことができるはずだ。エーテル銃を相手にしたことが何度かあるが、あれはブラスターと同質のものだ。エネルギーの銃弾を撃ち出すそれをセーバーで弾いたことが脳裏によぎる。
セーバーの持ち方を変え、俺は次に迫る斬撃の波をすべてはじき返した。いくつかはミスって明後日の方向に飛んでいったが、おおむねほとんどの斬撃を彼女に向かって打ち返すことに成功した。目を見開いた彼女は焦ったように鞘から刀を引き出して撃ち返された自分の斬撃をすべて防御する。
「それが、お前の本気か」
「最初っから本気だ。ただ、もう少しで何か掴めそうだけど」
「ククッ……私が修行に使われるとは」
「すいませんね、不遜で」
「いいや、気分がいい。防いで見せろ」
もう一つ、セーバーの起動音が響く。左手に握られている赤い光刃を見た雅さんは隠しきれていない高揚感を見せつつも犬歯をむき出して問いかけてくる。どうすればいいのかは分かった、俺が見つけた俺のフォームを今から完成させる。
フォーム5、シエン。暗黒面に近づくとすら言われている攻撃に重きを置いたフォームに、フォーム6、ニマーンの派生形ジャルカイを混ぜる。二刀流のジャルカイの手数を確保しつつブラスターの反射ですら相手を積極的に打ち倒しに行くシエンの攻撃性を主軸にする。
アナキン・スカイウォーカーのシエン、オビ=ワン・ケノービのソレスのように型の名前は同じでも使用者によっては劇的に違うフォームに変わるように俺はこのシエンを俺のシエンに変える。
この赤いライトセーバーは、俺にもフォースの暗黒面への適性があることの証明。なぜライトセーバーを作ったときに、スプリット・セーバー……そして色違いのセーバーができた理由が今わかった。フォースは俺に光明面と暗黒面を振り子のように行ったり来たりを繰り返せと言ってたんだ。
人に、ライトセーバーは振れない。殺してしまうから。この考えはフォースの光明面のものだ。だけど、今この考えは捨てよう。相手を打ち倒し俺は生き残る。今ここで俺はあの人に向けてセーバーを振るう。暗黒面に堕ちるんじゃない、二つのフォースの側面を同時に使う。光明面であり暗黒面、フォースはもともと一つなんだからできない理由なんてない。
「振るう気にはなったのか?」
「振るよ、当たったら死ぬからね」
「今更の話だろう」
そりゃそうだ。と思いながら息を大きく吸って吐く。瞬間、斬撃の雨が俺を全方位から襲う。まだ上があったのかと恐れ入りながら、俺は二つのライトセーバーを振るってその斬撃を反射する。斬撃が斬撃にぶち当たるように調整して。外から見る俺はまるで独楽のように回っていることだろう。
「はぁぁぁっ!!!!」
「ここだぁぁぁっ!!!」
「なっ!?うぅぅっ!?」
「ぐはっ!?」
斬撃の波の第二派として星見さんそのものが突っ込んできた。きっと遠距離攻撃だけでは俺を崩せずラチが開かないと思ったのだろう。だけど、近づいてくれるならいくらでもやりようがある。むしろ、遠距離だけなら俺が潰されていたから。
ただ彼女の認識は間違っている。俺は剣士ではなく、『フォース遣い』であるということだ。腰だめに構えられた抜刀術の刀に俺はフォースを振るう。フォース・グリップによって鞘から刀を抜けなくなった星見さんはそれに驚愕の表情をして、俺はその隙に赤い光刃を彼女の胴に向けて思いっきり振った。
ただ彼女は虚狩り、そんなことで仕留められるわけない。フォース・グリップで刀を固定したのにもかかわらず彼女は脅威的な膂力で鞘ごと刀を動かし俺のセーバーを防御し、吹き飛ばされながらもその前に俺の顔面に蹴りをぶち込んだのだ。
今の攻防だけを見るなら俺が一枚上手だったが負ったダメージは俺だけ。強烈な一撃に耳鳴りを覚えつつも空中で姿勢を正しフォースで着地を補助する。フォースがなかったら頭がザクロになってただろうな。あんなに不安定な姿勢からの蹴りだったのに。
星見さんの方を見ると、彼女の口元は三日月のように吊り上がっていた。おかしいな、偶に目にする彼女のインタビューではあんな顔してなかったとおもうんだけど。一部が赤熱した鞘を振って刀を抜きだした彼女は待つことなく俺に向かって飛び込んでくる。
ありゃだめだ、もうフォースがあるの前提で突っ込んできてる。飛ぶ斬撃も使ってこないあたり俺には効かないと割り切ってるんだ。直接斬る気だ。蹴られた痛みが媒介になり暗黒面の力が沸き立って冷静な心を保つのがきつくなってくる。
抜刀、斬撃、納刀。その3モーションの中に数十の斬撃が込められている。その一撃一撃が手からセーバーを吹き飛ばしかけるほどの威力。エーテルを纏った空の斬撃でもやばかったの刀という本身が入った斬撃はもっと非道い。防いでるだけで花丸くれてもいいんじゃないか!?
「これだけ斬っているのに一切通らない……!あまつさえ反撃までも!」
「おおおおおおおおっ!!!!」
俺にはもう、言葉を発する余裕はない。2本というアドバンテージを活かして片方で防げば片方で斬りこむというのを忠実に繰り返す。そのたびにエーテルを纏った刃がそれを防ぐ。無数の光刃の軌跡とそれを弾く火花、それが空間を彩る花火のようにとてつもない速度で散っては増えていく。
それでも俺の目は、フォースはまだ先があることを感じ取っていた。それはなんだと彼女を観察しながら沸騰しそうな脳で巡らせる。何を見落としている、まだ何かあるはず……!そこで俺が目にしたのは、彼女が振るう刀。凍てついたエーテルを纏う白刃だった。
「やっと……!見つかった!」
「ああっ!?くぅ!」
バリィ!と刀とセーバーが接触した瞬間雷光が空間を劈いて彼女を感電させる。その隙を見逃せなかった俺は後ろ回し蹴りを彼女の腹にぶち当てる。咄嗟に飛びのいて威力は減らされたものの今度はクリーンヒットだった。
「……それが、完成形か?」
「今のところはこれが、俺にできる最高の形だ」
フォース・ライトニングという技術がある。シスの暗黒卿が使うフォースを雷に変えて放出する暗黒面の技術だ。俺のライトセーバーには今それがパリパリと音を発しながらまとわりついている。高等技術と高等技術を同時並行でやっているので脳が焼き切れそうな集中力が要るが多分これが、俺が目指すべき形だ。
俺は、フォースが使える代わりにエーテル関連の術は全くもって使えない。困らないから気にしてなかったが……よく考えればフォースでエーテルのまねごとができるのに今ようやく気付いた。遅すぎる気付き、この俺にとっての死線がなければ一生気づけなかった気づきだ。
「よく届かせた。これで五分だ」
「どうかな……少なくともまだ勝てるヴィジョンが見えないね」
「私も、お前を斬れるイメージが湧かないが……斬ってみればわかること」
3度目の相対。次で決着がつく……おそらくは俺の負けで。当然だ、ここまで来ても俺と彼女の隔絶した技量差が埋まったわけじゃない。だが、それでも……と考えたところでフォースが警鐘を鳴らしているのに気づく。彼女じゃない……これは、エーテリアスだ。しかもまるで軍隊のような量でこちらに迫っている。
俺が気づいたと同時に彼女も気づいていた。耳は不快そうに動き、顔が歪んでいる。当然俺も同じような表情をしているのだろう。なにせ俺は……人生最高の時間を邪魔されたのだから。同時に吠えた。
「「邪魔すん(る)なああぁぁぁぁぁぁ―――――ッッ!!!」」
今までの主人公の軌跡
主人公くん「なんかフォースって瞑想から入るんだよな?」
フォースくん「認識してくれるの?じゃあこれ僕の扱い方ね♡」
大量の情報を詰め込まれた主人公くん「ウアーーーッ!?」
フォースくん「あとあと、これがライトセーバーの作り方だよ!君だけのオンリーワン♡」
さらに情報を詰め込まれる主人公くん「グワーーーッ!?」
フォースくん「おまけに別の宇宙のやつらが生み出したフォームもつけちゃう♡」
パンクした主人公くん「ワッ……ワァ……」
フォースくん「君才能あるからワタシズットキミノコトミテルヨ」
主人公くんだったなにか「そうか、宇宙の心はフォースだったんだな」
大体こんな6年ちょいだったらしい