フォースはいつでもエーテルと共に 作:光明面と暗黒面ってルビ無しで読めないよね
邪魔するな、どちらからともなく同時に吠えた俺と星見さんは殺し合いをしていたはずの相手と全く同じ方向を向いて全く同じタイミングで弾丸のように飛び出した。このエーテリアスたちは覚えがある。あのクソデカエーテリアスの取り巻きたちだ。ただ、数が多い、多すぎる。一面視界どこに入れても空が見えない、こいつしか見えないのだ。
だが、知ったことか。折角掴んだこれを振るう相手が最高の相手ではなく最低の邪魔者になり下がったが、放っておいても邪魔されるだけ、余計なノイズが走るくらいなら最初から全滅させてから再開したい。
踏み込みも剣速も何もかもが速い星見さんは一瞬で閃光と化しエーテリアスを薙ぎ払っていく。俺は両手のライトセーバーの柄尻同士を合体させダブルブレードにした後、空いた片手をエーテリアスに向ける。フォース・ライトニングが迸り、エーテリアスは煙を上げて動かなくなっていく。
閃刃と光刃の乱舞が戦場を蹂躙する。それでも数が多い、多すぎる。斬っても斬ってもきりがない。古今東西数の差というのは厄介極まりない。それでも、ここで死ぬには惜しすぎる。さっきの死線に比べたらやはり……どうしても足りない。星見さんの残像にぶれた姿からもわかる、作業になっている。
結局それからどれほど時間がたったのだろう。少なくとも昇っていた日が落ちかける程度には時間がたっていた。全滅させたエーテリアスと、さすがに堪えて背中からぶっ倒れた俺。刀を仕舞った鞘を支えにしている星見さん、生殺与奪の権はどちらにあるか火を見るよりも明らかだ。
「もう無理ですね、俺は戦えません。お好きにどうぞ」
「悪いが、私ももうこれを抜けるとは思えない。お前との勝負がなければあの程度のエーテリアスに膝をつくなんて無様な真似は晒さないが、立っているのでやっとだ」
「お互い無傷なのに動けないとは……ままならないものだなあ」
「嘘をつくな。ここで仮に私が斬りかかってもお前は先ほどの不可視の力で私を吹き飛ばすのだろう。逆もまたしかり、水入りだ……行け」
……え?この人今なんて言った?行けっていったのか?俺に?逃げてもいいと、見逃すと言っているのか?何とか体を起こした俺がズタボロのジェダイ・ローブのフードを脱いで問いかける。
「逃げてもいいと?」
「ああ……お前は悪ではない。戦い方からも剣筋からもそれは理解できた。除悪務本、悪を定むるは私……私がそう判断する」
「……またホロウで出会ったときに決着をつけたいからなんて言わないよね?」
俺がそんなことを言うと、彼女は相好を崩して大声でお腹を抱えて笑い出した。こんな風に笑う人なのか、と会うの初めてでもニュースなどでどんな顔をしている人なのかは知っていたので驚いてしまった。ひとしきりお腹を抱えた後で、彼女は座り込んで俺に向き合う。
「ああ、ああ……それもいいかもしれないな。だけど私は、いつかお前と肩を並べてみたいと思う……義はすべての人にあり、我が手動かぬ時に見えざる手を欲す、というわけだ」
「正義は人に眠っていて、誰かが両手がいっぱいで困っているときにもう一つの手になってやれって?」
「お前のそれは、正義だろう?」
いつもやってることを難解な言い回しにされて混乱したが、要は困ってる人を助ける行いは何をどうしても正しいからそうであり続ける限りは見逃してやろうって話でよしんば私が手こずっていたら手を貸せってことか。この人が手こずることあんの?疲れて座ってても隙ないよ?
「いつか私たちが信頼できるようになれば、6課に来るといい。お前ならば、私も蒼角も歓迎しよう」
「まあ、考えておきますよ。どうやらH.A.N.D.も捨てたもんじゃなさそうですしね」
「ああ、だから私からお前の顔を消すな。蒼角なんて思い出せないと取り乱していたぞ。次に会ったときわからないでは困る」
ようやっと立ち上がることができた俺は膝を笑わせつつもその場を立ち去る。後ろからかけられたその声にマインド・トリックをかけることをやめてフォースを絞り出すようにしてジャンプをして空間の裂け目に入る。もう二度と戦いたくはないが街で会ってみたくはある人だったな、星見雅。
「きっつ~~~~~」
ズタボロになったうえで荷物も全部失った零号ホロウ遠征は死線に出会えたけど死ななかったという結果に終わった。あえて言えば大成功なのだが、もうダメだこりゃ。フォースを酷使しすぎて全身いろんなところが痛い。ああ、フォースを纏わないでいるだけでこんなに楽になるなんて思わなかった。軽く浸食されたみたいだがほっとけば治る程度だし問題ない。
全身筋肉痛に加えて脳みその酷使、集中力の反動でもう何も考えられない。5日ぶりのベッドに倒れこむ。起きてからシャワーだの何だのはしよう。もう駄目だこりゃ……。
翌日のこと、まだ全身が鉛のように重いものの何とか起き上がった俺は風呂に入り、髪を整えて学校に行っていた。学校には私用で休むことは伝えていたので何の問題もない。いつもの時間に教室に入り、学友たちと久しぶりと言葉を交わす。そうしているといつもと変わらない時間にエレンさんが教室に入ってくる。
「エレンさん、お久しぶッ!?」
「………………」
エレンさんは席に俺の姿があることを確認すると、少し驚いたように目を見開いた後に一気に不機嫌になったように顔をしかめた。つかつかと俺の隣の席に立った彼女は座るために椅子を引き……そのまま尻尾で俺の後頭部を打ち付けて机の天板に熱いキスを交わさせた。
「えーっと、なに……を」
「ん」
エレンさんの尻尾の先、尾びれの下から返事をした俺に対して彼女が見せたのはスマートフォンであった。そこで俺はそういえば電源を切ったままで帰った連絡をしてないことを思い出し、電源をつけるとノックノックにえらい数の連絡が溜まってた。
福姐さんは言うに及ばず師匠どころかライカンさんにリナさん、カリンさんに至るまで何度か連絡が来ている。ダントツで多いのは福姐さんだけど、他の人も結構な数。あ~~、死んで来るって言い回し結構まずかったかな?ちゃんと修行で生きて帰るってことは伝えたはずなんだけどなー。
『あんた、何あの連絡。フザけてんの?』
『申し開きもございません……』
『知り合いから死んで来るって連絡、初めて受けた。次やったらあたしが殺すからもうやんな。あと今日店に来い、ボスにも連絡しといて』
ノックノックを起動した瞬間にメッセージが送られてくる、もちろんエレンさんから。あかん、完全に怒らしてる。そりゃそうだとしか言いようがないんだけどね?尻尾が後頭部の上から退かされてエレンさんは改めて座る。俺はそれを横目に見ながら知り合いにノックノックでメッセージを入れる。学校にいるので電話に出れないことを添えながら。
はい、すいませんでした。ノックノックで裏関係の知り合いから総すかんを受けた俺です。特にお師匠様の理詰めと妙に文体に圧があるリナさんがキツかったです。ついで心に来たのは福姐さんとカリンさんでした。とりあえず謝罪行脚をせねば。
「ハァ……とりあえず生きててよかったね」
「実際死にかけたけどね」
返答は後頭部への尻尾だった。わざわざ立ってそれやんなくていいじゃん……見ろよクラスのやつらの顔。君がそんなことをするからありえないものを見る目されてるぞ。正直俺も君がツッコみのためにわざわざ立ったことに驚いてるよ。とりあえず尻尾の下から彼女に手を伸ばす。そこにあったチョコバーを無言で取った彼女は改めて椅子に座りなおすのだった。もう何も言わんどこ……とまた伸びてきた手にチョコバーを置いて入ってきた教師に目を向けるのだった。
「修行のために零号ホロウに……しかもあの虚狩りと……ザイン様、命は投げ捨てるものではございません。いくら何でも無茶が過ぎます」
「そうですわ、しかも虚狩りと殺し合いだなんて……命があるだけ奇跡ですわね」
「よかったです~~!ザインさんが生きてました~~~!!」
「ああいやあの……すいませんでした」
べっちんべっちんとエレンさんの尻尾が壁を叩く音を聞きながら俺はヴィクトリア家政の面々に頭を下げていた。体中生傷だらけではあるが、ぶっちゃけクリーンヒットだった顔面蹴りよりも痛い。主に心が。いやだって、ねえ?外部協力者相手にここまで心配してくれるホロウレイダーいないよ?すごいぜヴィクトリア家政。
「まあ次やるときはへぶっ!?」
「もうやんな」
「言葉でお願い……」
「言ってんじゃん」
「そうだけども!」
エレンさんはなんなの?尻尾で俺をしばくのがお気に召したの?サンドバッグじゃないんだぜ俺は。もう一度やるかもってところがお気に召さなかったんだろうけどさ……まあ普段ドライな彼女が心配してくれていると考えれば嬉しいのかもしれない。
「というわけなんで暫くホロウには潜るつもりはないデス……ハイ。何かご依頼がありましたら申し訳ないんですけど別のプロキシか誰かに……」
「いえ、直近でホロウへの侵入が必要なご奉仕は予定されていません。死闘を演じたばかりであれば休息も当然、是非とも私共にお任せを」
「………………え?」
「さあさあ、こちらに」
なんか今ライカンさんの隻眼がキラーンって光らなかったか?待ってなんで俺は立たされてるの?歩くから手を引かないでカリンさん?基本的に俺は善意に弱いのでこういうの断れないの。蒼角ちゃんの提案蹴ったとき泣きそうだったんだぜ?
あっという間にメイド喫茶のVIPルーム的な場所に案内された俺の前にティーセットが並べられ、目の前でライカンさんが茶葉を入れて蒸らし始めた。蒸らし始めたのと同タイミングくらいでバトラーというヴィクトリア家政専属ボンプがケーキスタンドを運んできた。
卓上に無音で置かれたそれの上には上にスコーンとジャムにクロテッドクリーム、中段に色とりどりのケーキやムース、下段に野菜と肉がたっぷり入ったサンドイッチが乗っていた。何事!?と混乱していると蒸らし終わった紅茶をライカンさんがカップに注いで俺の前にことりと置く。
「お疲れでしたら是非ヴィクトリア家政のおもてなしをお受けください。こっそり後をつけたお詫び、と考えてくだされば」
「いやあれは別に何とも……」
「ゴシュジンサマ、はい、あーん」
「え、エレンさん……!?」
とん、と俺の隣に浅く座ったエレンさんはケーキスタンドの上段からスコーンをとり、ジャムとクリームをたっぷり塗ってからそれを俺の口元に差し出すのだ。見目麗しいクラスメイトの女子からそんなことをされた俺は頭がぐるぐると混乱し始めてしまう。
『仕事終わらんからはよ食え』と普段ならいつも顔に書いてありそうなエレンさんなのに、いつもと違って普通に友達に接する顔をしていた。俺がぽかんとしているのがあまりにツボだったのかエレンさんはクスリと笑う。
「ふふっ……いくらあたしでも頑張って来たヤツ相手に怠いとか言わない。反省してるなら、さっさと食べて」
「……じゃ、遠慮なく」
流石に衆人環視の中であーんは俺としても堪えるのでエレンさんの手からスコーンを受け取ってそれを齧る。残念ですわ、となぜかスコーンを持っているリナさんは置いておくにしても生きて帰ったことを労ってくれるとは、予想外にすぎる。でもなあ……
「せっかくおもてなしされているところに申し訳ないんですけど、みんなで頂けませんか?楽しむなら皆がいいんですよ、俺」
「まあ、そう言ってくださるのであればお受けしないわけにはいきませんわね……追加を作ってきましょうか」
「ン!ン!リナ、すでにバトラーが準備を進めています。折角のザイン様のご提案ですしお受けするとしましょう」
いつの間にかバトラーはいなくなっていた。俺の提案を受けてすぐに出て行ったって感じか?えらい優秀だな。なぜかリナさんが料理をしようとするのを咳払いして止めるライカンさんがリナさんを席にエスコートして追加の紅茶をカップに注いでいる。
今日はヴィクトリア家政のことがよく知れた日だったなあ……リナさんを怒らせると怖いのとか、ライカンさんがちょっと心配性気味だけど人格者なこととか、カリンさんは意外と力があるとか、エレンさんは思ったよりも人を見てて、表に出さなくてもちゃんと考えてるところとか。
そういえば、こんな風に歓迎してもらったのって雲嶽山以外じゃここが初めてだっけか。なんというか、勝手に考えてることだけど居場所が増えるのはいいもんなんだな、と実感する一日だった。
蒼角「なんかおにーさんがマシュマロ入れたココアくれて助けてくれたの……でも顔がわかんないの(´・ω・`)」
星見さん「なんか刀の鍔鳴りがひどいから見てくるわ。副課長あとたのんだ」
柳さん「待って、せめて単独行動はやめて」
ハルマサ「もう見えないんですがそれは」
星見さん「特別手配犯のあいつやな。正直気になっとったしちょうどえーわ」
こんなノリで単独行動してました雅さん。悪かどうか見極めたかったんだけど主人公くんが自分側の領域に手をかけていたので斬ってみたらいいやつだったので悪じゃねえわってなりました。主人公犯罪者だけど。