フォースはいつでもエーテルと共に   作:光明面と暗黒面ってルビ無しで読めないよね

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第9話 フォースは叱られる

 ……いや無理では?と俺は雲嶽山の適当観を前にして怖気づいていた。なんか……こう……フォースで感じなくても俺にとって良くないことが起きるのをビンビンに感じ取れるのだ。なんか暗黒面のフォースに似たオーラすら感じる。行きたくない言い訳を並べているだけなんだけども。

 

 俺が何でいつもは楽しい適当観に入るのを躊躇っているのかと言えば先日の零号ホロウ死線潜り抜け生き残れ大修行1週間スペシャル(5日間で途中切り上げ)の件であることは想像しなくてもわかっていただけると思う。ちゃんと死線くぐって来たぜ!じゃすまされないだろうし。

 

 エレンさんは俺を学校の帰りにヴィクトリア家政へ強制連行したわけだけど、これがまあまたキツかったのだ。なにせエレンさんには容赦というものがない。面倒そうではあったものの心配はしてくれてたらしく俺としても素直に聞くしかなかったし。

 

 そしてヴィクトリア家政についてからもそれは続く。ヴィクトリア家政の人々は紛れもなく善人であるからして、死にに行きますと適当な連絡を残してホロウへ失踪した俺をたいそう御心配してくれていたのだ。なにせライカンさんなんて俺を見たらめちゃくちゃ安心したようなクソデカため息ついたからね。すいませんでした。

 

 でも多分、往々にしてこういうことはおこると思うんだよねタチが悪いことに。現状フォースを認識して操れるのは俺一人だからフォースが何かしたければ俺を使うしかないわけで、連絡できるだけ有情まであるぞ。この世界、エーテルとフォースでお互い乱し合いしてるからね。

 

 物質として存在できエネルギーでありつつ人にメリットデメリットをもたらすエーテルと無形であるエネルギーであり人に同じくメリットデメリットをもたらすフォースは実際相いれないのだ。フォースはホロウ邪魔ってなってるしエーテルはフォース邪魔ってなってるもん。フォースを使う俺がエーテル使えないのってフォースが拒否してるからだろうし。

 

 俺が多大な才能をもって生まれたもしくは移されたのは間違いなくフォースのせいだがフォースが俺をどうしたいのか全く皆目見当がつかん。零号ホロウ消せみたいな無茶ぶり目標隠れてたりしないよね?一度フォースに壊されてる手前何を言われても驚かんが勘弁してほしい。

 

 俺という人間は一度中身をスクラップビルドしている。まあこの世界のフォースはSTARWARSと同じく原初からありつつも、この惑星では認識したのは俺が初めてだ。宇宙では知らんが。フォースは調整がへたくそだったので触れた瞬間に真理みたいなものを流し込もうとしてきたわけで、そりゃ耐えられんわって話さ。

 

 俺の中身は前のエッセンスを保持しつつも流し込まれたフォースも多分に刻み込まれたので俺はフォースに一種の信仰を抱いている。だけど前の俺も混ざってるから客観的に自分を観察することもできる。ある意味でフォース狂信者になるのを前の俺が防いでいるのかもしれない。

 

 で、つらつらとこんな話を考えているのはこの門をくぐる勇気がいまだに沸いてこないからである。だってそうじゃん?怒られるの確定してるもん、6年の付き合いなんだから福姐さんもお師匠様も兄弟子もどんな性格をしているのかは大体わかるし、ご飯を一緒に食べたり出掛けたりする程度には仲がいいんだもん。ヴィクトリア家政よりも怒られるのわかってるし。

 

「お邪魔しま~……ウワーーーッ!?」

 

「ザイン!反省しなさ~~~い!!!」

 

 門から一歩入った瞬間に、福姐さんが虎威を振り回して俺に叩きつける。壁の染みにならないといいなあ。

 

 

 

 

 

 

 失うということは、人を壊すということを橘福福は理解していた。11年前のあの日、旧都陥落の悲劇が起きたせいで橘福福はすべてを失ったのだから。虎のシリオンは数が少ない、それはあの日に里が滅んでしまったからである。

 

 それから11年、幼かった自分も曲がりなりにも大人と言われる年齢に近づき、雲嶽山の最古参の一人として修行を続ける中で大切をいくつも見つけることができた。お師匠様と橘福福の二人で始まった雲嶽山の再興は道半ばではあるものの細々と続ける程度には成っている。

 

 その中で見つけた大切の中に一人の少年がいた。ザイン・スカイウォーカー……新エリー都ではそう珍しくもない孤児にしてエーテルではない不思議な力を持つ弟のような存在。6年前までは自分の方が背が高かったのにいつの間にか大差をつけられてしまったことはいまだに納得していないものの、橘福福にとっては孤児同士家族に等しい存在である。

 

 もちろん弟弟子妹弟子はたくさんいるが、橘福福にとってザインが特別なのは孤児同士だからではなく、彼女が初めて師匠である儀玄から面倒を見なさいと受け持ったからである。面倒をみられる立場から見る立場へ、初めての弟子ともいえる存在。それがザイン・スカイウォーカーである。

 

 当時の橘福福はそれはもう頑張った。孤児院ではなくマンションに住んでいると聞いて生活はどうしているのかと聞けばホロウに潜っていると返ってきて尻尾が爆発したように逆立ったり、ホロウ内でミスしていろんなところが折れたから行けないと連絡が来て泡吹いて倒れたこともあった。何とかしたくて雲嶽山で暮らしましょうと提案したら泣きそうな顔で断られてこっちも涙目になったりもした。

 

 そんな弟弟子が、音信不通になった。5日間もである。それは福福の喉を干上がらせるのには十分な恐怖である。ノックノックに届いた簡易的なメッセージ……『死線を潜るために一度死んできます』……これだけを残して。すぐに電話をしても圏外、メッセージを送っても送ることができない。

 

 死線という言葉には覚えがあった。お師匠様が前日に言っていた話だ。ザインは既にお師匠様が殺す気で行かないと仕留められないレベルまで力を高めていたものの壁にぶち当たっていたのだ。それを超えるには手っ取り早く死にかけるほどの経験がいる……ので後でどうにかしてやろうまでがお師匠様が伝えたいことだったはずだ。

 

 こういう時儀玄の悪いところはあまり口が上手でないところにある。あとでどうにかしようの部分は福福しか理解していなかった。というか、そんな言葉を聞いて軽々と死にに行くなという話である。全くもってしょうもない弟弟子であった。

 

 だが、福福にそんなことを考える余裕はその時全くなかった。それはそうである、なにせ多少揶揄われることはあるものの素直に尊敬してくれた上で先達として敬ってくれる弟弟子がホロウに呑まれに行ったのだから。

 

「お師匠様!ザインがぁ!!!」

 

「福福……」

 

 転がり込んだ儀玄の部屋で福福が見たのは青い顔でスマートフォンを胸に抱いて震えている儀玄であった。冒頭、失うことは人を壊すと述懐していたがそれは雲嶽山の宗主である儀玄も同じこと。儀玄も福福も11年前のあの日失い、壊れている。

 

 福福は一族全てを、儀玄は最愛の姉を失っていた。それでも二人で雲嶽山を支えて再興を目指している。儀玄も福福も失ったものは失ったまま新しいものを手に入れ、欠けを補って新しい自分を作り出していた。

 

 だが、福福も儀玄もその時だけは11年前に戻ってしまっていた。自らの説法で弟子をホロウに送り出してしまった儀玄は特にである。ホロウ災害で姉を失った人間がホロウで身内の自殺を手助けする形になったのである。そんなつもりでなかったにしろ、残されたほうはたまったものではない。

 

「福福、すまない。取り乱した。馬鹿弟子を連れ戻しに行くぞ、零号ホロウだ」

 

「は、はいっ!」

 

 だがしかし、11年の歳月は儀玄と福福に精神の強さも与えていた。すぐに気を取り直した儀玄は福福を伴い零号ホロウに潜る……浸食限界まで潜っても見つからなかったが。もうすでに方法は通報して大々的に探すか、信じて待つかの2択になっていた。

 

 ザインの不在はその日のうちに雲嶽山全体に伝わり、天地をひっくり返した大騒ぎになっていた。なにせ山に修行にこもっていた弟子まで降りてきた始末なのである。だが、雲嶽山が選択したのは信じて待つことであった。帰る、とメッセージには書いてあったからである。

 

 そこで話は現在に戻る。門の前にはザインがいて、扉を隔てて熱しすぎて破裂寸前の虎威の尻尾を持つ橘福福、術法で大量の鳥を生み出して待つ儀玄、笑顔で剣棺を両手でつかんで素振りする葉瞬光、同じく笑顔でシャドーボクシングをする葉釈淵、大量の料理を無言で並べる潘引壺というザインにとっては地獄の光景が生み出されていたのであった。

 

 無事に戻ってきたという連絡を受けた時に全員が全身の力が抜けて床板と一体化したのだが、そのあとに雲嶽山の主要メンバーが感じたのはこれだけ気を揉ませておいて帰りましたの一言で済ませようとするザインへの怒りであった。

 

 心配がそのまま怒りに変わった雲嶽山主要メンバーはとにもかくにもすぐに来いと圧を飛ばし、当然悪いことをしたとは思っていたザインは謝罪のために雲嶽山を訪れる。そして、門が開いた瞬間に肉食獣のシリオン特有の瞬発力で飛び出した福福の流星錘と化した虎威がアホのザインにクリーンヒットしたというわけである。

 

 

 

 

 

 焦げたポップコーンに福姐さんの怒りを感じました、ザインです。ついで兄弟子の釈淵さんに一撃胸にもらって壁にめり込み、同じタイミングで弟子になった瞬光の剣棺をド頭に叩きつけられて、全身を鳥についばまれた後大爆発で締められました。これも死線ですねフォースよ、すいませんでした。

 

 いやどう考えても俺が悪いし何も言い返せないんだけど、俺じゃなかったら死んでたよ。というか星見さんに会う前の俺だったら死んでた。死線潜ってなかったら生き残れなかったや……というか瞬光が山を下りているの何事?これも俺のせい?そういえば瞬光にもノックノック送ってたわ。

 

「ザイン……無事で安心した。説教は後でまたやるが生きて戻ってきたのは誉め……られんな。死にに行くな馬鹿弟子」

 

「ハイ、スイマセンデシタ」

 

「そうですよ!お師匠様は後でちゃんとザインが成長できるように考えてたのに短絡的に死にに行くって何考えてるんですか!福福は心配で尻尾が取れちゃいそうでしたよ!」

 

「ザイン!何あのメッセージ!死にに行くって何!?」

 

 がっくんがっくんと福姐さんと瞬光に揺さぶられながら俺は何とか言葉を探すものの出てくるのは謝罪の言葉ばかりである。謝りに来たので当然だけど。心配させてすいませんでした、ごめんなさい。違うんです強くなりたかっただけなんです。

 

「なんだ結局虚狩りと戦ったのか」

 

「結局?」

 

「うむ、実はあの後お前に試練を与えるにはどうするべきか考えてな、VR施設で星見雅と一戦交えたことを思い出した。一度お前に当ててみようと思ったのだがな」

 

「お師匠様~?それって結局機器の故障で決着がつかなかったとか言ってませんでしたっけ?」

 

「俺も水入りになったんですよ。いい感じに殺しあい……ごはっ!?瞬光、痛いんだけど……」

 

「む~~~」

 

 説教より前に腹ごしらえを、とパンダのシリオン潘さんに提案されて山盛りの飯をいただいてると話題は当然俺が零号ホロウで何をしていたかの話になる。そこで虚狩りの星見雅に出会って殺し合ったと言ったら頬を風船のように膨らませた瞬光からまた剣棺による一撃を頭にもらった。

 

 最近エレンさんに始まり福姐さんに続いて瞬光……俺物理的にシバかれること多くなってない?悪いことしたのはわかってますけど、痛めつけないでください。それはともかく、お師匠様もお師匠様で星見さんを俺にぶつける気だったのか……。

 

 でもなー、VR施設だと俺弱いんだよ。だってフォース使えないもん。エーテル系のアレソレならVRで再現できるんだけど俺しか感じ取れないフォースを再現しようっていうのは土台無理な話だと思う。だから結局物理の殺し合いになってたんじゃねえかな。

 

 虚狩り級、と称されるお師匠様はさすが人脈も広いな。それはともかく瞬光はさっきから俺の背中をグーでシバくのはやめてほしい。福姐さんも爪研ぎしそうになってる。貴方の爪金属から火花散るんで俺でやったら俺の皮全部剥けるぞ、それで死ぬぞ。拷問ですか?

 

「さて、ザイン……わかってると思うが……食事がすんだら説教だ。帰れないと思え」

 

「ハイ……」

 

 助けてフォース、ボクしんじゃう。




フォース君「死んだら死んだて一体になってくれるからヨシ!でも生きててくれた方が便利だから死なないでね♡」 



瞬光さんは幼馴染枠です。最近山に行ってるので疎遠らしいですけど。偶に会いに行くと尻尾を振って喜ぶとかなんとか。あれ、こいつが仲良しなのって大体シリオンな気がしてきた。フシギダナー。
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