悪魔ウォッチ   作:龍座

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奇妙な出会い

夏休み。それは学生にとって心踊るイベント。

 

此処、さくらニュータウンの学校でも夏休みが始まり、各々が思い思いの夏休みを満喫していた。

 

小学5年生の「天野景太」はレアな昆虫を探してセミの鳴き声が降り注ぐ「おおもり山」の奥深く、それも普段は人が立ち入らないような神木の根元へと足を踏み入れていた。

 

虫を探していると大樹の下で見つけたのは虫ではなく、古びたガシャガシャのマシン。

苔むして、異様な雰囲気を放つその機械に景太。するとー。

 

『入〜れろ入れろ』

 

何処からかラジオから通されたかのような声が…。

 

『入〜れろ入れろ』

 

景「ガチャ(ここ)から…聞こえてるの…?」

 

『入〜れろ入れろ。入れろ!入れれば入れずんば〜』

 

景「何だよ…此処に…お金をいれるの……?」

 

景太は恐る恐ると100円玉を投入し、レバーを回す。

 

ガチャ……ガチャ……ゴトン。

 

出口に転がり落ちたのは、不気味なほど鮮やかな赤と黒のツートンカラーのカプセル。

 

景太が恐る恐るそのカプセルを開けた、その瞬間。

 

キィィィィィン……ザザッ……

 

景「うわっ!?」

 

チューニングの合わないラジオのようなノイズ音と共に血のように赤い霧と、耳障りなノイズ。

 

周囲の空間が歪み、影が長く伸びていく。赤い霧の中から、すらりと背の高い人影が、まるで舞台に上がるかのように現れた。

 

小さいながらも鋭い鹿の角、片手にはマイクスタンドの様な杖片眼鏡、赤髪・赤目・赤いスーツなど全身赤を基調としたカラーリング、そして目を引いたのは耳まで裂けそうなほどの満面の笑み。

 

「ああ……やっと解放されました……」

 

その声は、さっきと同様にまるで古いラジオスピーカーを通したように、僅かにこもり、ノイズが混じってる。

 

ケータは尻餅をついたまま、目の前の異形を見上げました。震える声で問いかけます。

 

景太「えっと……おじさん……誰?」

 

男の首が、コキリと不自然な角度で傾いた。

彼の瞳はラジオのダイヤルのように赤く輝き、笑顔のまま景太を覗き込んだ。

 

「おやおや! 『おじさん』とは手厳しい! ですが、久しぶりの現世の空気は実に美味しい!」

 

男は杖をくるりと回し、高らかに笑いました。

 

「私の名前は「アラスター」。貴方達、人間で言う所の悪魔(・・)です。以後お見知りおきを」

 

礼儀正しく一礼するアラスターに対し景太は悪魔が今、目の前にいる非現実な現象に脳が追いついていなかった。そんな事など関係無しにアラスターは景太へとゆっくりと近づいて来た。

 

アラ「親愛なる小さな友よ! あの狭っ苦しい薄汚れた場所から解放してくれたお礼に、貴方の手助けをしてあげましょう!」

景太「て、手助け……?」

アラ「ええ、そうですとも! 退屈しのぎ……おっと失礼、ちょっとした恩返しです。さて、何が良いですかねぇ?」

 

考え込むアラスターに恐怖故か興味故か又はどちらもか景太はアラスターに問う。

 

景太「あ、あのさ、それが本当なら、魂を貰うってのは無しで大丈夫…なんだよね……?」

アラ「タマシイ……?」

 

放たれた禍々しいオーラと低音ボイスでのセリフに景太は戦慄し、顔を青褪めた。

 

アラ「ニャハハハ!そんな恩を仇で返す事、するはずないじゃないですか!

 

マァ、ヤロウトオモエバデキルノデスガネ…」

 

「そうだ!」とアラスターは指をパチンと鳴らすと、空中に赤い火花が散り、一つの腕時計が実体化してケータの手元に落ちてきた。

 

それは、アンティーク調の真鍮と、不気味な赤いレンズ、そしてバンド部分はまるで生きているかのような赤黒い革で作られた、禍々しくも美しい時計。

 

景「これは……?」

アラ「これはこの世には目に見えない『奇妙な存在』を映す摩訶不思議な時計。未練たらたらの幽霊、悪意を持った悪魔、あるいはただのイタズラ好き……。この時計があれば、それら全てを視る(・・)事ができるのです」

 

アラスターは顔を近づけ、ノイズ混じりの声で囁きます。

 

アラ「貴方の周りでおかしなことが起きるのは、全てそいつらの仕業。さあ、それを腕に巻いて。私と一緒に、最高にエンターテイメントな日常を始めようではありませんか!」

 

ケータは本能的に「これを着けてはいけない気がする」と思った。しかし、アラスターの放つ圧倒的な威圧感と、その奥にある底知れない「笑顔」に射すくめられ、逃げ出すことすら出来ない。

 

景太「え、遠慮しときます……」

アラ「ニャハハ! 遠慮なんてナンセンス! お礼は素直に取っておくものです!」

 

アラスターが強引にケータの腕を取り、時計を装着させた。

 

カチリ、と時計が腕に巻き付いた瞬間、ケータの視界が一変。今までただの森だった風景の中に、ドロドロとした黒い影や、木陰で笑う奇妙な生き物たちの姿がハッキリと浮かび上がったのだ。

 

景「うわあああ!! 何これ!? お化けがいっぱい!?」

アラ「お化け? いえいえ、彼らは貴方の新しい遊び相手ですよ。さあ、行きましょうケータ君! この退屈な世界を、ラジオ・ショーのように賑やかに変えてやろうじゃありませんか!」

 

アラスターの背後には、影のような触手がゆらめき、森のセミたちが恐怖で一斉に鳴き止みました。

 

圧倒的な力を持つ地獄の支配者と、巻き込まれた平凡な小学生。

 

景太「とんでもないことになっちゃった……」

 

ケータの嘆きは、高らかなラジオの笑い声にかき消されていくのだった…。




きょうの悪魔大辞典

アラ「此処では出てきた悪魔について紹介します」

景「悪魔の紹介…それじゃ、最初はアラスターか」

アラ「いえ、守秘義務がありますので控えさせていただきます」

景「え〜、教えてくれたっていいのに……」

アラ「ソンナニ知リタイデスカ?」ジジジジ…

景「ヒェ…け、結構です……!」

アラ「結構。ニャハハハハ!」

景(こ、コワ〜…)
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