単刀直入に言うわ、えぇ感じのネタくれ
キヴォトスの中でも特に近未来化が進んでいて、新興であるにも関わらずキヴォトスの三大学園の1つとして名を広げている地区、「ミレニアムサイエンススクール」のとある歩道。疎らにいる友達と買い物、写真などの青春を謳歌している生徒達の間を何か目的がある訳でもなく、ただ適当に一人で歩いている鹿紫雲
先日、エンジニア部に頼んだとある物が完成したとの連絡を受け、取りに行きその場で勝手に自爆装置が付けられてないか等を少し確認をした後に完璧な物と分かった鹿紫雲はその物を肩に担ぎぶらついていた
「(そういえばこうやって理由もなく歩く事も無かったな…こういうのも新鮮でいいな)」
最近は休日が埋まってばかりで、何も無い日はアビドスに遊びに行ったりとこうやって一人で歩く事が少なくなっていた鹿紫雲は、久しぶりのその感覚にどこか懐かしさを覚えていた。鹿紫雲は戦うのは好きだが、こうして何もすること無く、理由もなくただ適当にする時間も好きであった。
最近多くなった風紀委員会での書類仕事により凝り固まった体を伸ばすと、体の節々から骨の鳴る音が聞こえてくる。鹿紫雲は一度動きを止めた後ほんの少しだけ自分の体に危機感を覚えるのだった
だが、そんな静かで平和な時間も唐突に過ぎていく。
鹿紫雲の前…およそ10m程だろうか、そこに不良生徒7人が小学生ほどの身長でイカしてるスカジャンを着ている子を恐喝していた。鹿紫雲にとってこういう行為は不愉快極まりない、1人じゃ何も出来ないくせに仲間と居るだけで自分が強いと思ってそうな奴ら。鹿紫雲の眉間に皺が寄っていく
「なぁチビ?ウチら金欠だからちょーっと恵んでくれないかな?」
「恵んでくれたら、痛い目見ずに済むぞ?」
「……」
典型文で自分より小さい者に金をせびる不良共、視界に入れるだけでストレスが溜まる存在だが…こういう場面を見てしまったら放っておけなくなってしまったのは風紀委員会としての癖が染み付いたからだろう。不良達に人差し指を向けた時─
「誰がチビだオラァ!!」
「ゲフゥ!?」
「…!このっ」
「落ちろぉ!!」
「ガフッ…!」
─遠くから小さな電撃を不良共の頭目掛けて放とうとした瞬間、スカジャンの子が怒りの声を上げながら殴り倒していく。
「(……近接、キヴォトスじゃ珍しいタイプだな…しかも中々に力がある)」
銃乱戦が基本のキヴォトス、それなのにわざわざ近接を使うということはそれ程に自身の硬さと強さに自信がある奴なのだろう。しかし、タダの不良だとしても近接で全員沈めたのは賞賛に値するな…
「おい、そこのアンタ」
「…ん?」
そんな考え事をしながらその光景を見ていたら、いつの間にか俺の方に体を向けているその子と目が合うと俺の方に歩いてくる。よく見るとスカジャンの下にメイド服とかいう特異な服装をしていた。見た目は小学生程だが、ヒナとホシノの事があるから念の為同じ高校生として接するよう専念しようか
「さっきからジロジロ見やがって…コイツらの仲間か?」
「違うぞ、カツアゲされてるあんたを助けようと思っていたが…大丈夫だったみたいだな」
「ハッ、舐めてもらっちゃ困るな。この程度の奴らなんてアタシにとっちゃ朝飯前だわ」
嘲笑うかのような笑みを浮かべ俺を見上げてくる。よく見るとソイツの腰には金色の龍の模様が入っている二挺一対の短機関銃があった。
「まあ、助けに来ようとしてくれた事は感謝するわ、ありがとうな。アタシは美甘ネル、C&C所属のミレニアム2年生だ」
「…美甘ね、よろしく。俺は鹿紫雲ハジメ、ゲヘナ学園風紀委員会所属の2年生だ」
鹿紫雲は友好の印として握手をする為に手を差し出すが、その手を握ることは無く…美甘の視線は、自身の名を言った直後復唱したと思ったら不敵に笑みを浮かべる鹿紫雲の顔を見据えていた。
「(雰囲気、立ち姿でわかる。コイツはいわゆるミレニアム最強格…ヒナレベルの奴…!)」
不敵に笑みを浮かべていた鹿紫雲の脳内は、自身と対等に戦えるであろう貴重な人物との出会いにより気分が高揚し、それが顔に出ていただけであった。それを察したのか美甘は一瞬だけ驚いた表情を浮かべるが、その顔は直ぐに鹿紫雲と同じような新たなる天敵を見つけた事への笑みへと変わっていた
「ハハァ…ゲヘナの風紀委員会で鹿紫雲ハジメって名の男……噂に聞いてたゲヘナの雷神だな?会いたかったぜ」
「そいつは嬉しいな。俺もお前みたいな(強い)奴と会えるのを楽しみにしてたんだぜ?」
「ハッ!戦闘狂がよぉ、そんなに死に急ぎてぇのか?」
「死ぬ気なんて毛頭ないから、こんなことやってんだよ」
お互いに歯が見えるほど獰猛な笑みを浮かべ、相手の本来の力量を探りながら話していく。傍から見ればそこだけ空気が歪み、近寄り難い雰囲気を醸し出しているだろうが…そんな中一触即発の彼らに近づく1つの影があった
「やっほー!……て、あ!ネルちゃんが男の子捕まえてる!」
「そんなんじゃねぇよお前!!!」
手を振りながら俺らに向かってきたのは、床まで届きそうなアッシュグレーの長髪に青色の瞳のツリ目でメイド服を着て、そして…凄いダイナマイトボディの子だった。
彼女が放った言葉に美甘は顔を赤くし怒りの形相でそう叫ぶが、彼女はそれを気にせず笑顔で俺に近づいてくると手を握り上下にブンブン振ってくる、その度にメイド服の上からでも目立っている巨峰が……おっと、危ない危ない
「初めまして!私は一之瀬アスナ!C&C所属の2年生!よろしくね!」
「お、おう…俺は鹿紫雲ハジメ、よろしく」
初対面なのに磁石かと思うほどに距離を縮めてくる一之瀬、余りの距離の近さに後ずさりをするがさらに詰めてくる、そこから放たれるは質問の嵐。「好きな食べ物」だとか「好きな事」だとか…そんな他愛もない質問だが一応初対面なのにこうやってパーソナルスペースにズカズカと踏み込んでくる奴は鹿紫雲は少しだけ苦手だった。
「おいアスナ。離れな、ソイツ困ってるじゃねぇか」
「えぇ〜?まだ質問したいことあったのに〜…」
「…後で聞いてやるから、今は離れてくれ」
お調子者の乱入に先程の雰囲気は吹き飛び、美甘は熱が冷めきっていたが鹿紫雲は違った。目の前に自分の本気をぶつけれる相手がいるのだから、この程度のことで興を削がれる訳がないだろう
一之瀬が自身の体から離れていくと、そのまま美甘の方に歩み寄り笑みを浮かべる。そんな鹿紫雲を美甘は見上げていたが鹿紫雲の一言でその表情が変わる
「なあ美甘、ちょっと付き合えよ」
「…!」
それは美甘に対して向けられた宣戦布告。その言葉を聞いた美甘は先程の熱が戻り、笑みを浮かべて鹿紫雲を見上げる。両者の目にはこれから戦う相手の姿しか写っていなかった
「…いいぜ、その喧嘩。買った」
「そうこなくちゃ」
「だがここで戦うとなると周りに被害がいくからな…ちょっとセミナーの奴に体育館借りれるか聞いてくるわ」
そう言うと美甘はスマホを操作し、誰かに電話をかける。恐らくは先程言ったセミナーとやらに所属している子だろうが……その電話先の子と揉めてるようだ。どんどんと美甘の顔が歪んでいき、力強く画面をタップして電話を切ると額に青筋を浮かべ、眉間に皺が寄り、歯ぎしりをしながら俺を見てくる
「許可取れたから行こうぜ…」
「……おう」
そう言い、まるで子供が親に怒られて不機嫌になったかのように歩き出していくその姿を後ろから一之瀬と共に着いて行った
「…変なこと考えたか?お前」
「いや?」
ミレニアムサイエンススクールにある1つの体育館。そこに美甘と鹿紫雲の両者が向き合っていた。
軽いストレッチを終えた美甘はその両手に自身の愛銃を、鹿紫雲は片手に赤い如意棒を握っていた
「アンタの武器ってそれか?ヘイローがねぇのにわざわざ近接選ぶとかヤベェな」
「近接じゃねぇと俺の本領が発揮できないんでね…新しいエンジニア部製の武器、試させてもらうぞ」
「ハッ、試す間もなく地面に転ばしてやるよ」
「強気だねぇ…足元救われないようにしろよ?」
こうして互いに話しているが、言葉の節々に力強さと楽しみを感じる。体育館内には一之瀬を含めた5人しかいない為、その声は響き渡っている
一之瀬の両側にはC&Cの1年生のメイド服を着た褐色肌の角楯カリンと長いスカートのメイド服を着た室笠アカネが、この戦いの行先を見届けるために座っていた
戦闘が始まる直前、鹿紫雲の放つ言葉の雰囲気が変わる
「美甘ネル、お前はまな板の上の魚だ」
「…」ピクッ
「多少他より活きが良く、名前がついてないだけの魚」
「まずはその鱗から剥いでやる」
指の骨を鳴らし、如意棒の先を美甘に向けるように構える鹿紫雲。対称に美甘は先程の言葉に怒り、顔には青筋が何本も浮かんでいた
「誰が…魚だぁ?」
美甘の持つ銃の持ち手を握る力が強くなり、ギシギシと音を立てる。怒っているが獰猛な笑みを浮かべたままの美甘は姿勢を低くし何時でも飛び出せるよう構えた
「二度とそんな事が言えねぇようにしてやるよ…」
見た事のない美甘の姿に軽い気持ちで見に来ていたC&Cの後輩たちは、その怒りの矛先が自分たちに向けられていないと分かっているはずなのに背中には冷や汗が流れた。
そんな後輩とは違い、一之瀬はいつもと変わらない笑みを浮かべて銃口を天井に向けて掲げた
「…よーい…」
一之瀬の引き金に掛かる力が強まる。鹿紫雲と美甘は重心を前に移し最高速で飛び出せるよう準備をした
「どーん!」
その声と同時に体育館内に響いた銃声を合図に美甘と鹿紫雲は前へと飛び出していく
ミレニアム最強とゲヘナ最強格。その戦いの始まりを告げるゴングが、今鳴り響いた
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