2月18日、いつも通りのゲヘナ学園風紀委員会の教室にて一人の生徒が慌ただしく話しかけていた
「ケーキは注文しましたか?注文のデッドは今日なんですからね!?」
「うるせぇぞアコ、今日で何回目だよそれ」
なぜこんなにも慌ただしくしているのか、それは明日はヒナの誕生日だからだ。ヒナを愛してやまない横チチはこれを逃すことなど許さん、と言わんばかりの気迫で過ごしていた。それに伴い鹿紫雲もシャーレの先生から特別に2日も休みを貰い、風紀委員会の仕事を処理しつつ話し合いに来ていた
休みを貰った時に鹿紫雲は目の下の隈が酷い先生を見て「一番休むべきはアンタじゃないのか……?」と思ったそうな。先生、可哀想に
「ご安心ください。予算ギリギリではありますが、注文できました…」
「……はい?」
「予算ギリギリ……?どうしてですか?この為に、先月からお菓子代を一部カットしておいたのですよ?」
「なんかお菓子少ない気がしてたんだよな……」
「お前のせいだったか横チチィ……いつもより岩塩飴の数が少ないと思ってたら……」
「岩塩……飴……?」
「黙ってください。とにかく、なぜ予算がひっ迫しているんです?」
「それが、万魔殿が……」
「またあのタヌキどもですか?今度は何を……?」
「プレゼントの請求先を風紀委員会にしておいた、と……」
「……万魔殿が委員長に!?マコト議長、頭でも打ったんですか!?」
何故こんなに驚いているのかというと、万魔殿の上に立つゲヘナの生徒会長の羽沼マコトは風紀委員会をめちゃくちゃ嫌っており、今までにもこれでもかと嫌がらせをしてきたのにいきなりプレゼントを送られたとなったらこんな反応をするのは間違いではないだろう。……その荷物の内容がちゃんとしているのなら
「いえ……あんこ抜きのどら焼きを用意しようとしたそうです」
「あんこ抜きのどら焼きって……そんなもの、どこで見つけてきたのやら……」
「わざわざ特注したそうです」
「もっと注力すべきことがあるでしょうに……」
風紀委員会に対する嫌がらせの為なら何だってする、それが羽沼マコト。多分これで合ってると思う
「でも、普通のどら焼きが届いたんだって。注文ミスだと思われたとかなんとか」
「あぁ、あのどら焼きってそれだったのか」
「……食べたんですか?」
「うん、美味かったぞ」
「それならヒナ委員長に全部渡してくださいよ!!……はぁ……」
ちなみに、ハジメはヒナから貰ったので食べました。程よい甘みのあんこが美味だったとの事でした
「……ん?待ってください。どのみち、こちらに請求が回ってくるのは変わりないんですよね!?」
「うん……」
「そのせいで、予算がカツカツになってしまって……」
「注文は無事できましたが、配送業者は一番下のランクのところになってしまいました」
「……まあ、それぐらいなら。送料が安いに越したことはありませんし」
「というか、一応俺らで料理できるんだし、手作りでも良かったんじゃないのか?」
「ヒナ委員長にはちゃんとしたケーキを食べて欲しいんですよ!だからこうしてわざわざ頼んだのですからね!!」
それなら給食部に頼めば……と思っていたが、流石に毎日忙しい所に、作るのが難しいケーキを頼みにいったらどれだけ迷惑がかかるのか想像したので、大人しく口を噤んだ
「……おほん、少し取り乱しました……それで、配送状況はどうなってます?」
「ちょっと待ってね──はい、追跡サイト」
「ありがとうございます。どれどれ……仁志川センターを経由したところ……と」
「えぇ、これなら無事に間に合いそうですね。今から明日が楽しみです。皆さん、お疲れ様でした」
「仁志川センター……、どこかで聞いたことあるような……まあいっか。はいお疲れー、解散解散っ!」
「はっや!?ちょ、鹿紫雲先輩ー!?」
「え、えっと……」
「チナツ、どうかしたのですか?」
「いえ……」
「(なんだか嫌な予感がするのですが……)」
「(鹿紫雲先輩のさっきの言葉も……いえ、考えすぎでしょう。きっと大丈夫なはずです)」
「(けど……どうか……何も起こりませんように……)」
その頃、ゲヘナとは遠く離れた山海経にある玄龍門の貴賓室にて、こちらも何か話をしていた
「これを見てもらおうか。玄龍門は、かの有名なパティスリーに、門主様の誕生日ケーキを注文した」
「お前たち、玄武商会に頼ること無く……だ」
「この程度、玄龍門の力を使えば朝飯前だからな」
そう胸を張り、どや顔をしながら自慢しているのは玄龍門の執行部長兼門主の護衛である近衛ミナ。そんな彼女を呆れながら見ていたのは玄武商会会長の護衛兼本店マネージャーの鹿山レイジョ
「あ、はい。まあ、良いものを選んだと思います。ケーキはそれでいいとして……お店に取りに行かなくてもいいのですか?」
「安全に、そして確実に手元に届くよう、配送業者を依頼したからな。もちろん、選定に抜かりはない。最も安いのに、最も早く届けてくれるところに依頼した」
「……それ、大丈夫なんですか?」
「うん?ケーキ屋が提示した選択肢の一つだ。滅多なことはあるまい。それに安くて早い。文句の付け所がないじゃないか」
「それを鵜呑みにするのはいかがなものかと……」
「自信があるからこそ、喧伝するのだろう?」
「はぁ……純粋なのか、それとも……。ちょっとそのチラシ貸してください」
さらっと悪口が出そうになった彼女だったが、頼んだ配送業者が気になりミナが持っていたチラシを借りて見てみると、どんどんと顔色が変わっていく
「……っ!?よりによってここですか!?」
「な、なにか問題でもあるのか?」
「……良い機会ですので、覚えておいてください。この業者は文字通り、一番安くて早いところではあります。……何事もない限り」
「やはりな!私の目に狂いはなかったようだ」
「……肝心なのは「何も無い限り」ですよ」
「……何が言いたい?」
「……かなりの確率で配送トラブルに巻き込まれる、という意味です」
「とはいえ、高が知れているのだろう?」
ミナの問いに一呼吸おき、しっかりと言い聞かせるように発したその言葉にミナは逆に疑いをかける。たとえトラブルに巻き込まれるとしても、そんなのはひと握りだろうから
「甘く見てはいけません。特に悪名高いのが仁志川センター……またの名を、「物流の迷路」です」
「仁志川センターはキヴォトス屈指の物流センターであり、あまりにも規模が大きいことから……トラブルが後を絶たないんです……」
「と、トラブル……?」
先程からどんどんと不安になる要素を言われ、ミナの心情はかなり焦っていた。もしこのトラブルがここに起こってしまったら……どうなるかは想像は容易かったからだ
「挙げたらキリがないのですが……。荷物がごちゃごちゃになって、配送先を間違えるとか。ザラですよ」
「馬鹿な!そんな会社、どうして潰れずにいられるんだ!?」
「あなたの言った通りです。「一番早くて安い」から。これに尽きます」
「……その裏では、正確さが損なわれている訳ですが」
「……!げ、玄龍門、集合っ!!」
「何をするつもりですか?まさか、センターにある荷物を一つ一つ確認するつもりじゃないですよね?」
「……」
いきなり玄龍門を集めたミナにレイジュは急いで何をする気か聞いた瞬間、ミナは一度止まると彼女の方を向いてこう答えた
「その手があったか!」
「だからそれをするなと言ってるんです!」
実は意外と塩っぽい物が好きな鹿紫雲。他にも黒豆煎餅とか好んで食べてます。作者も同じです
ユメパイは救いますか?
-
当たり前だよなぁ?(救う)
-
ホシノは曇らせとけ(救わない)