朝から雪が降り注ぎ、ゲヘナの地面が白く染まりきった12月24日。この日になると、美食研究会などの危険人物達も暴れるのを止め、各々が翌日の「クリスマス」に向けての準備、または「クリスマス・イブ」を堪能しているだろう。
それはゲヘナの治安を守る組織である風紀委員会も例外ではなく、今日は皆で書類を早く終わらせ、本部内ではクリスマスパーティーの為の準備をしていた
実は、昨年は風紀委員会ではクリスマスパーティーをしようという声は無かった。だが現風紀委員長が今年になって……というか、生徒会長がマコトになってから増えた書類に押しつぶされていったみんなを危惧して休憩、そしていつも頑張っているみんなに楽しい思い出を作るために計画していたそうだ
「そこに置いてある飾り取ってきてー」
「はーい!」
「イルミネーションって何処に付ければいいですかー?」
「それはね──」
「みんな張り切ってんなぁ」
「初めての事だから、みんなテンションが上がってるのよ。それも今後無いかもしれない事だからね」
「まあ来年はヒナが風紀委員長になるんだし、時間あればやるのもいいんじゃない?」
「それなら、副委員長のハジメにも手伝って貰わないとね」
「言われなくても手伝いますよー」
頼まれた範囲の飾り付けを終え、休憩がてらコーヒー片手に談笑しているヒナと鹿紫雲。勿論、ヒナが飲んでいるのはブラックだがそれを鹿紫雲は「よくそんなの飲めるな……」という目で見ながら、ほんのり甘く暖かいコーヒーを堪能していた。外の寒さの影響でコーヒーカップからは白い湯気がはっきり見え、悴んだ手にその温もりが心地よく感じる
それを嫉妬の目で見つめている者が1人……
「ハジメェ……呑気にヒナ委員長(まだ委員長じゃない)と談笑するなんて……う゛ら゛や゛ま゛し゛い゛」
「落ち着いてよアコちゃん……まあ今日は
届かない天井付近に飾りを付けるために脚立に乗り、後輩のイオリに手伝ってもらいながらしていたアコは、器用に飾りを付けながらヒナと談笑する鹿紫雲の方に顔を向けてるた。それなのに飾りは完璧と言っていいほどの精度で付いていたのでイオリはアコに対して変な物を見る目で見ていた
コーヒーを飲み終わり、他の人達の手伝いをしに行こうと立ち上がった鹿紫雲は丁度近くを通りかかった風紀委員長に声をかけられる
「あ、ハジメくん。ちょっと頼みがあるんだけどさ」
「どうしたんです? 委員長」
「実は……ちょっと飾りが足りなくなってさ、買ってきてくれる?」
「………………いいですよ」
「……今の間が気になるけど、じゃあ頼んだよ!」
そうして手を握るようにして渡されたのはお金と足りない飾りの数が書かれたメモ。買わなければならない飾りの量と外の凍えるような寒さのせいで鹿紫雲は苦虫を噛み潰したような顔をするが、仕方ない……と一つ息を吐き机に置いていたカイロを手に取りダウンを羽織る
「それじゃ、行ってくる」
「うん、道路凍ってると思うから気をつけてね」
「サンキュ」
そこにさらに耳当て、ネックウォーマー、手袋を着けて本部から出ていく。まだ廊下なのにも関わらず、外の寒さが嫌という程分かってしまう
「……カイロ持ってきて正解だったな」
手袋の上からカイロを両手で包み、少しでも暖かくする為に息を吹きかける。本部でコーヒーから出ていた白い湯気とは比べ物にならないほど息が白く染まっていた。
少しだけ口元を出したせいで冷たい風が頬を撫で、その寒さの余り身震いをする。その風から逃れるために急いでネックウォーマーを上げて外へと歩き出していく
外は来た時よりも雪が降っており、前がよく見えない状態。地面は靴の半分が沈むほど積もっており、ザクザクと雪を踏み潰す音がよく聞こえた。小さい頃ならウッキウキで雪だるまを作ったり雪合戦をしていたと思うが、今は歳による心の成長と寒さのせいでそんな気は1ミリも起きなかった
ゲヘナ学園を出て街の方にいけば、クリスマスを祝福するかのように街は緑と赤のイルミネーションで彩られ、道行く人も笑顔で歩いていく
店の前には大きなサンタクロースの風船だったり、クリスマスツリーだったりと外の世界でも見たことある飾りつけがされており、どこか懐かしく思えた。が、店で売られている物は銃ばかりなのでやっぱキヴォトスなんだなぁと鹿紫雲は思った
「えぇと……▲▲、▲▲…っと」
ポケットに入れていたメモを取り出し、そこに書かれていた店を探していく。メモの端に小さく書かれている住所的には今いる場所に近いので、そこからは適当に歩いていった
「お、あったあった」
メモに書かれていた名前が、そのまま店の前に出されている看板に大きく書かれていた店を見つける。店内は暖房が効いていて暖かく、イルミネーション以外にも色々な飾りが売られていた
「(必要なのは……コレと、コレと……よし、全部あるな)」
買い物カゴを片手にメモに書かれていた物を次々と入れていく。頼まれていた飾りの量が少し多かったが、なんとか全部あったのでそのまま会計する為にレジへと向かう
「あれ、あんた鹿紫雲ハジメさんかい?」
会計が終わるのを待っていると、レジ係の……犬さんが顔を上げて俺を見たと思うとそう言った。「えぇ」と一言肯定の言葉と共に頷くと元から笑顔だったその顔にどんどんと笑みが広がっていく
「いやぁこの前ビルが倒壊した時にあんたに助けられてね! お礼を言いたかったんだよ、ありがとう!」
「いえいえ、風紀委員として当然のことをしたまでです」
「そう言うなって! あんたのお陰で俺がここに居るも同然なんだからもっと誇りなよ!」
目的であった会計は既に終わっているが、この犬さんが笑顔で話しかけてくるので帰るに帰れない状態へとなってしまった。どこか強引な感じがするが気のせいだろうか
そこからも俺の事について色々と言われて、気づけばもう日が傾いている遅い時間。店主さんに断りを入れて買った飾りを片手に外に出てみれば、雪が薄暗くなった街にある街灯に照らされて美しい光景を生み出していた。付けていた腕時計を見ればもう18時、待たせている事に心の中で謝罪の言葉を言いながら急いで走る
「(やっべー……)」
走るとは言ったものの飾りが壊れないよう、そして転ばないように慎重に走っていた。あれだけ多かった人混みは少なくなり、雪も落ち着いたお陰で前がはっきりと見えたので、そのまま近道も利用して行った
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走ったおかげで15分程で学校の門に着いた。そこでダウンや耳当て等についていた雪を払い落として、ダウン以外を外す。防寒具が減ったせいでさっきよりも寒さを感じるが、ちょっとだけ温くなったカイロを擦りながら本部へと向かっていく
時間もかからず無事に扉前に着くと、ダウンを脱ぎ片手にかけるようにして扉を開ける
「ただい「ハジメくん、誕生日おめでとー!!」
開けた瞬間に聞こえたのは祝福の言葉とクラッカーの破裂音。そして笑顔で迎えてくれている風紀委員の皆
「……え?」
唐突な光景に困惑していると誰かに手を引かれ本部に入らされる。よく見ると奥の方には「お誕生日おめでとう」と書かれた横断幕がデカデカと掛けられており、その下にはリボンで結ばれた多くのプレゼントが置いてあった
「……委員長…? これは……」
「どう? サプライズバースデーって奴!」
「昨日から皆と計画してたんだよ」
未だ困惑している鹿紫雲だが、そこからもどんどんと言葉が投げかけてくる。しかも聞いた限りだと俺の誕生日のプレゼントが万魔殿、美食研究会、便利屋68から送られてきたのと、さらに他学園であるミレニアムのC&C、アビドス、トリニティの正義実現委員会からも送られてきたのだと聞いた
俺のために、そんなに関わりが無いにも関わらず誕生日プレゼントが送られてきたのを知ると心が暖かくなる。だがそんな中、少し周りを見渡しているとあることに気づく
「……あれ、そういえばヒナは?」
ヒナの姿が無い、というかアコとイオリの姿も見当たらない。不思議に思いそう問いた時、部屋の奥から声が聞こえてきた。その声は……いや、その歌は誕生日を祝うために作られた歌
周りを囲んでいた風紀委員の子達が、俺が声が聞こえた方向が見えるように下がると、火のついたロウソクが刺さったケーキを運んできているヒナと、ヒナの両端にいるアコとイオリが歩いてきているのが見えた
「誕生日おめでとうございます、ハジメさん」
「た、誕生日おめでとう……鹿紫雲先輩」
そして、鹿紫雲の近くまで歩いてきたヒナが──
「……誕生日おめでとう、ハジメ」
「……」
恥ずかしくて少し俯きながら言ったその言葉に、鹿紫雲からの返事は来なかった。不思議に思ったヒナが顔を見ようとすると、自身の前の床に水滴が落ちたのが見えた。顔を上げて鹿紫雲を見ると、目を見開いた表情のまま目尻からは涙が流れていた
「ハ、ハジメさん!?」
「鹿紫雲先輩!?」
いつも通りのおちゃらけた笑顔で感謝の言葉を言うと予想していた反応とは違ったことに、ヒナを含めたほかの風紀委員が慌てて大丈夫かと聞くが鹿紫雲は袖で涙を拭くと安心させるような声色で話す
「……いや、違うよ。こうして、誰かに祝われる事が無かったから……ちょっと、感極まっちゃって」
頬に流れた涙を拭き終わると、目尻に涙を残したままケーキを持っているヒナに視線を向ける。意図を汲み取ったヒナはケーキを少し上げると、鹿紫雲は膝を曲げてヒナと視線を交わす
「ありがとう」
ただそう一言言うと、一息でロウソクの火を消した
「その……別に送ってもらわなくても良かったのに」
「ケーキ持ってきてくれたお礼みたいなもんだよ」
風紀委員会での誕生日パーティーが終わり、日が落ちきって暗い時間帯へとなり各々が帰路へ着いた後、鹿紫雲はヒナを送るために共に歩いていた
「いやぁ、今日のサプライズには驚いたよ」
「それは良かった、楽しんでもらえて何よりよ」
「けど入ってきた瞬間にクラッカーは止めてくれないか?心臓が止まりそうだったぞ」
「ふふ、来年は気をつけるわ」
凍えると思えるほどに寒い冬の夜の道を、何気ない会話をしながら歩いていく。点々と立っている街灯が、白く染まった足元を照らしてくれていた
そうして歩きながら話してしばらく経ち、ヒナの家の前まで来る
「ありがとうね、ハジメ」
「おう、それじゃまた明「待って」
ヒナを家まで送り終えたので、そのまま自分の家へと帰ろうとしたが、ヒナから袖を捕まれ引き止められる。後ろを振り向けば、寒さからか頬が微かに赤くなっているヒナがちょいちょいと掴んでいない方の手で手招きをしていた
「……まだ私からのプレゼントがあるの。ちょっとしゃがんでくれるかしら」
言われた通りにしゃがみこむ。「もう少し」と言われたので冷たい地面に片膝を着くようにしゃがむと、頬に柔らかな感覚が伝わってくる。視界の端には目を瞑り、自身の左頬へキスをしているヒナの姿が写った
「また明日」
頬から離れ、先程よりも頬を紅く染めていたヒナはそう言うと家へと戻っていく。さっきまで二人いた場所には片膝をついたままの鹿紫雲の姿だけがあった
口元を手で隠し少しだけ眉間に皺を寄せていた鹿紫雲は…
「……勘違いするだろ」
誰に言ったわけでも無く小さくそう発すると立ち上がり、膝に着いた雪を払い落とすと、頬と耳を赤くしたまま自分の帰路へと着いた
頬に未だ残っている柔らかな感覚は、今後忘れることは無いだろう
鹿紫雲一の命日であって鹿紫雲ハジメの誕生日……フフッ
誰と絡ませたい?(書くとは行ってない)
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リオ&トキ
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ユウカ&ノア
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メル&モミジ
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シグレ&ノドカ
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ミチル&イズナ&ツクヨ
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ツバキ&ミモリ&カエデ
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スミレ
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ワ カ モ(原作開始しても絡ませるか)