リコリス・リコイル! family   作:時葉花音

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うーん、細かい事を書いていたら中々戦闘シーンまで行けませんでした。
それではお楽しみください!


出会うオプジット・アトラクト 1−4

 

千束が出ていったリコリコ店内。

先ほどからたきなはコンロの前でさながら黒魔術を行使する魔女のように不吉な笑みを浮かべ、グツグツと鍋をかき混ぜていた。

「ここで味噌ペーストを投入。ついでに隠し味に調布の食材屋で買ってきたコピ・ルアクを入れて・・・・・フフッ」

 ブツブツと呪詛を吐きながら食材を投入していく。なんだか宗介が教えていない食材まで入れているようで更なるパワーアップが見込める代物になろうとしていた。

 ちなみにコピ・ルアクというのはジャコウネコの腸内で発酵されたコーヒー豆の事で、体外に廃出されたコーヒー豆を拾い集めそれを念入りに洗浄と消毒した物である。とても高価な食材で一杯5000円はするという物だが、たきなが仕入れの際たまに取引している調布の食材屋から格安で購入していた。

「ちょっと宗介。止めなくていいの?マジでチトセちゃんに食べさせるつもりよアレ」

「うーむ」

 後ろで相談をする相良夫婦。身から出た錆とはいえ父親代わりだった上官の思い出の料理をそういう使い方をされるのはどうかと宗介は内心思ってた(なお自分が拷問に使っていることには無自覚)。

 ストップウォッチで正確に時間を計測しながらお玉でにかき混ぜる事数分。たきな火を止めると、ボルシチをスポイトで吸い取りシャーレの上に数滴垂らす。リトマス紙でpH(ペーハー)をチェックし規定の数値になっている事を認めると。

「完成です」

 たきなはいつぞやの上官と同じく真面目くさった表情で言うと、使った調理器具や機材を念入り洗い始めた。二次感染を避けるためにアルコールや次亜塩素酸での消毒も欠かせない。

「ふふ、千束。今日の夕飯はスペシャルメニューですよ・・・・・!」

「あああぁぁあああぁぁあああああぁぁあ!!!!!」

 たきなが着々と復讐の準備を進めていると、店の奥からクルミの慌てた悲鳴が聞こえてきた。タブレットを手に壁や地面に身体をぶつけながらホールに飛び込んでくる。

「ど、どうしたの。クルミちゃん?」

「見てくれ!!」

 心配そうに駆け寄るかなめを声をかき消す大声で、クルミは手に持ったタブレットの画像を拡大して皆んなに見せた。

「これは銃取引の時のDAのドローン映像だ!」

 クルミの説明にそこにはビルの非常口の前で突入体制で待機する4人の白い服を着たサード・リコリスが写っていた。

「狙われたのはこの4人だ!これが犯人に流出して顔がバレてたんだ!!」

 リコリスの強みは隠密性にある。ターゲットに警戒の対象と認識されることなく接近し威力を行使する事でその能力は最大限発揮される。むしろ正面からの制圧を得意とする千束の方が異常で、普通のリコリスが最初から正体がバレていればその能力はどう頑張っても発揮される事はない。

「何でそんな物が流出すんのよ?」

 ミズキが当然の疑問を口にする。DAのサーバーはラジアータの強力な防壁によって守られている。そんな所から作戦上の情報が流出するとは普通考えられない。

「あの時のハッキングか?」

「DAもまだそのハッカー見つけられてないようです」

 ミカは銃取引の時に起こった不審なトラブルについて思い出した。たきなも自分がリコリコに来る遠因なだけに事件の進展については情報を集めていた。

「アンタの仲間じゃないの。さっさと調べなさいよ?」

 クルミの生業が生業なだけにミズキがいぶかしんだ。知り合いを突き出させる事になるかもしれないと思ったが、彼女にとってはどうでも良い事だった。

「うぅ・・・・・」

 気まずそうに押し黙るクルミ。

「ナニよ?」

 ミズキの催促に言いにくそうにクルミは答えを言った。

「・・・・・・あの時のはボクだ」

「ハアッ!!」

「どういう事だ!?」

 流石の内容にミカも手をつきカウンターから身を乗り出す。

「依頼を受けてDAをハッキングした。そのクライアントに近づく為には仕方なかったんだ」

 クルミは今まで仲間達に話していなかった事実を語り出す。謎に包まれたアラン機関に接触し、好奇心を満たすためには危ない橋を渡らないといけなかった。それがまさかテロリスト達に手を貸す事になっていたとは、彼女は今の今まで気づいていなかったのだ。

「アンタがテロリストに武器を流した張本人てわけ?」

 ミズキは重要な問題を確認する。事と次第によってはリコリコで匿う所の話で無くなるからだ。いくらDAを毛嫌いしている彼女でも日本の治安が終わってほしいと思っていない。もし犯行にクルミが関与しているならDAに突き出さざる終えない。

「それは違う!指定の時刻にDAのセキュリティを攻撃しただけだ・・・・・・」

 最後は消えいりそうな声になるがどうやら銃の取り引きについてはシロだった。しかしミズキは安心している暇もなかった。

「ソウデスカ!オカゲで正体不明のテロリストが、山程銃をカカエテ、たきなはクビにナリマシタ!!」

 ミズキは皮肉を込めてカタコトの日本語を話す外国のモノマネでクルミを糾弾する。今もどこかに大量の銃器を持ったテロリスト達が野放しになっているのだ。次は誰が被害に遭うか分かった物ではない。

「もういいヤメロ、ミズキ!」

 ミカがミズキを諌める。流石に言い争いをしている時間はない。

「映像はそれで全部ですか?」

「千束はどこだ?」

 たきなを質問を無視してくるみが店内を見回す。先程に焦っている様子だ。

「その、配達に行きました・・・・・」

 嫌な予感を感じながらもたきなは答えた。するとクルミは顔を青ざめさせてタブレットの画像を切り替えた。皆んなに見えうように頭の上に掲げる。 

「全部じゃないんだ」

 そこにはいつぞや紗篠原沙保里を護衛していた時の千束の顔が映った画像が映し出されたいた。一同は一斉に息を飲む。

「・・・・・いかんな、これは」

 ミカは動揺を抑えながら呟く。今は何時だ。千束が店を出て行ってどれくらいの時間が経った。推測出来る敵の規模は・・・・・・。段々と目の前の視界がボヤけてくる。

「落ち着けミカ」

 宗介がミカの肩に手を置き声掛けをする。我に返り宗介を顔を見る。ピントの合ってなかった目の焦点が戻ってきた。

「まずは錦木に連絡をしろ。状況の確認と報告をするんだ」

「あ、ああ」

 ミカは冷静さを取り戻す為、眼鏡を上げ眉間を揉む。スマホを取り出し千束の番号を呼び出した。

 電話の呼び出しコールがやけに長く間延びして聞こえる。自分では何もできない間抜けな時間が流れた。

 

 

 組事務所までの夜道を歩いていた千束は電話の呼び出し音にスマホを取り出す。

「お、先生からだ」

 もお、心配性だなぁ。そんなに娘に危ない夜道を歩かせるのは心配ですか。むしろ夜道で千束さんに会う悪者の方が危険ですよ。と思いながら通話ボタンを押した。

「もしもしもしもし?」

 呑気な声で千束が通話に応じる。だが電話の向こう側のミカは反対に切迫した様子で端的に彼女が現在置かれている状況を説明した。

『千束。敵はお前を狙ってるぞ!』

「へぇ?」

 自分の間抜けな返事と共に遠くから車の排気音が聞こえてくる。背中からライトが浴びせられ夜なのに地面に長い影が尾を引いた。千束が振り返ると後方から黄色いスポーツカーがノーブレーキでこちらに突っ込もうとしていた。

「ちょいちょいちょいちょいちょい!」

 彼女の静止の声にも全く減速する様子もなく、スポーツカーはそのまま彼女を跳ね飛ばした。重い鉄の塊が内包していたエネルギーが千束の身体を襲い地面から足を引き剥がす。宙に浮く彼女と同じように手にしていたスマホが宙に浮き、慣性の法則に従って夜空に飛んでいった。

 

 

「千束!千束ぉ!!」

「なんかすごい音したよ!?」

 ミカがスマホに向かって何度も呼びかける。質量の大きな物がぶつかる謎の轟音の後、返事がなくなり千束の安否が分からなくなった。

「とりあえず組事務所まで行ってみます」

 リコリコ制服に着替えたたきなが慌てて更衣室から出てくる。

「それじゃ遅い。安斗」

 今まで様子を見守っていた宗介は座敷に寝転がってタブレットをいじっている息子に呼び掛けた。

「もうやってるよ。千束さんのスマホの位置はマップにマーキングしといたからスマホでチェックして」

「上出来だ」

 息子の手早い仕事に得心すると次の指示を出す。

「俺は車を用意して来る。夏美は父さんのロッカーにある武器を取ってこい」

「お父さん、いつもカービンとグレネードでいいのね?」

「肯定だ」

 夏美は父に確認を取ると着替えと武器調達の為に更衣室に引っ込む。

「安斗はドローンで援護してくれ。事態は一刻を争うぞ!」

 宗介は子供達に的確に指示を出していくと着物の帯を緩めた。ハラリと着物が下に落ちると中から夜戦服が出てきてすぐに戦闘体制に入った。早着替えを終えて車の準備のために裏口に向かおうとすると、

「宗介さん。私もついて行かせて下さい」

 たきなが自動拳銃にカートリッジを装填しながら宗介に頼み込んでくる。几帳面に薬室に初弾が入っているかのチェックも怠らない。

「分かった。だが井ノ上とは細かい連携の打ち合わせをしていない。予期せぬ事態もあるだろうが高度な柔軟性を持って臨機応変にいくぞ」

「了解しました!」

 本職の兵隊とのやりとりにスイッチが入るたきな。突撃やアドリブの多い千束とはまた違った、訓練され組織だった兵士だけが持つ厳かな空気に自然と背筋が伸びた。

「ぼ、ボクも協力させてくれ。これで千束に何かあったら死んでも死にきれない・・・・・!」

 今回の事態を招いた責任感からクルミも協力を申し出てくる。日頃他人様のプライバシーなど気にも掛けない彼女だが、今回はそんな余裕もない表情だ。脂汗がダラダラと流れている。

「では、安斗とドローンでサポートに回ってくれ。安斗。クルミに〈マーク7〉を貸してやれ」

「わかった」

「マーク7?」

 首を傾げるクルミに安斗が自作の改造ドローンを取り出して説明を始める。

「良いクルミさん。この〈マーク7〉には電気銃(テイザーガン)が装備されていて・・・・・」

「ふむふむ・・・・・」

 こうして2人の様子を見ていると同い年の子供同士がゲームについて話していようで微笑ましいのだが、動かすのはゲームのキャラクターでなく実弾を発射する戦闘用ドローンだ。

 宗介は裏口に向かいながらスマホを取り出し電話を掛けた。3コール以内に通話状態になる。

『どうしました軍曹?』

「ラストベルトか。コードレッドだ」

 宗介は裏口に止めてあった黒塗りのSUVの運転席に乗り込むとエンジンを作動させる。

『リコリスのセーフハウスが敵にバレましたか?』

「いや違う。狙われたのは錦木の方だ。例のテロリストに今襲われている」

 車を発進させ店の玄関まで移動させる。

『敵の規模は?』

「分からん。しかし取り引きした銃の数から一個小隊は固いだろう」

『今の装備と人員では難しいですね軍曹殿・・・・・』

 スマホの向こうで部下のラストベルトが重たい声で応じる。彼は正確には宗介の部下ではなく、かなめの経営する警備会社の社員だ。社長は元ミスリルの同僚のヤン・ウェリー。だから社員達はヤンに宗介の事はそう呼んで指示に従えと言われている。

「別に敵を殲滅しなくていい。目的はあくまで錦木の救出だ」

『了解しました。すぐに準備をします』

 店の前まで来た。通話を切る。

「2人とも乗り込め!」

 宗介は店の前に車を着けると夏美とたきなを乗り込ませた。

 夏美は更衣室で動きやすいタンクトップとハーフパンツ姿に着替えていてた。父のカービン銃とグレネードを車内に放り込む。

 宗介は無言でアクセルを踏み込むと三人を乗せた車は夜の街を突っ切っていった。




次からは戦闘シーンです。
それとたきなはどうしてもウン◯とは切っても切り離せない関係のようです。アナザーを読んでいたらコピ・ルアクのネタが出てきたので使ってみました。
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