書いてて思ったんですけどリアリティのある世界観でロボットを動かそうと思うとかなり制約がある事を実感しました。
早く〈アズール・レイヴン〉を動かしたいです。
それではどうぞお楽しみ下さい!!
「あ〜チックショー、ポンチョじゃバレたー!!」
千束は夜の道路を全力疾走していた。ミカからの電話の直後、どういう訳かテロリスト達に自分の面が知られていたようでスポーツカーが突っ込んできたのだ。
車と接触したが幸いリコリス制服は防弾、対刃に優れたボディーアーマーだ。身体へのダメージも最小限に死んだふりをして敵の目を欺いた後、お礼に死にはしないが死ぬほど痛いゴム弾を何発かぶち込んで逃げて来た。
千束は公園の敷地に入る。
相手は銃で武装したテロリスト達だ。街中でドンパチしたんじゃ無関係な一般市民に鉛玉が飛んでいくことになる。
芝生の上を走る千束の30メートル後方をライトバンが追いかけてくる。芝生の上だろうとお構いなしにタイヤが轍(わだち)を作って彼女に迫った。
「待ちやがれリコリス!」
主犯格と思しき男がバンの引き戸式のドアを開け、そこから身を乗り出す。
男の容貌はヒョロりと長い身長に丈長のコートを被った、緑の天然パーマだかパンチパーマという髪型だった。
車のライトの光に照らされて丸見えになった千束に、男は懐から取り出したリボルバー銃を構えて照準を合わせてくる。
「あーもー、しっつこいなぁ!」
いつまでも追いかけて来るテロリストに業を煮やした千束は立ち止まって振り返る。相棒の自動拳銃を構えて男に照準を合わせた。スピードを緩めないバンが彼女に迫りお互いの銃の有効射程に入る。
男が先に発砲!
千束は銃の軌道を読み最小限の動きで避ける。頭を僅かに横にずらしただけだ。だが次の瞬間、男の放った弾丸が彼女の髪を僅かに掻き上げ後方に虚しく飛んでいった。
男の弾は外れた。
「アァ?」
目の前で起こった現象を男はすぐに理解出来なかった。明らかに必中の射程だった筈だ。車上で安定が悪いとは言え止まった的を自分が外すとは思えなかった。
紙一重の攻防を涼しい顔で捌(さば)いた千束すぐさま応射する。
発砲!
目の前の悪漢共に向かって何発も弾を打ち込みマガジンが空になる。
すぐ様装填。
続け様に発砲を繰り返しす。千束の放った無数のゴム弾がバンのドライバーと男を襲った。
ゴム弾の一つが男の頭部に突き刺さる。車上から放り出された男はタイルで舗装された遊歩道の上に投げ出され激しく転倒。何度も地面の上を転がった。
いきなりスピードを緩めれないバンは男を残して走り去っていく。
「・・・・・」
動かなくなった男に千束は油断する事なく銃を構えて近づく。
「・・・・・ひでぇじゃなえか?」
どうやら生きていたようだ。男は幽霊のようにふらりと千束に背中を向けて起き上がると振り返って顔を向けて来た。
「うおっ!」
男のショッキングな有り様に千束は隙が出来ないよう小さなリアクションで返す。
その姿は額から出血して男の顔の下半分近くを覆っていた。これでは完全に視界が死んで目が使いものにならない。
千束は男の後ろに移動し安全を確保しようとして、ふと違和感を覚えた。
なぜ、この男は正確に自分に振り返ったのか?
どうして、自分は視界の効かない敵の背中を取ろうとしているのか?
男の目は閉じられていた。
千束の思考が違和感の正体に気付いた瞬間、銃を持った彼女の両手は男に掴み上げられた。照準がズラされ大きな隙が生まれる。
肝を冷やした千束に追い討ちを掛けるよう、男は口に含んだ自分の血を彼女の顔面目掛けて吐き付ける。
血糊が両目にクリーンヒットした千束は一瞬で視界が奪われる。次に激しい衝撃が彼女の頭部を襲った。
殴られたのだ。
何とか転倒を間逃れ視界を確保しようとするが、男の拳の応周がソレを許さない。
(いけない。これマジでヤバイかも!)
心の中で焦り始める千束だが相手の拳の連打は止まない。
無情にも時間だ経つに連れてテロリスト達がワラワラと集まってくる。走り去っていたバンも引き返してきて、男の一方的な殺戮ショーがライトアップされた。
「ゴム弾じゃなく実弾にしとけば良かったなぁ!」
両手でガードした千束の身体に男の重たい一撃が入る。
殴り飛ばされた彼女は地面に転がり大きく尻餅を付いてしまった。衝撃で手に持っていた銃を手放しまう。
「いっつぅ!」
拳の応周が止む。
その隙に視界を確保した彼女だが、もうそのころには敵に包囲されネズミ1匹這い出る隙間もなくなっていた。下卑たヤジと男を讃えるテロリスト達の声援が木霊する。
男がゆっくりと近付いて来て、上体を起こした千束の頭にリボルバーを突き付けた。
「お前の使命はなんだぁ?」
光の中、男の目がゆっくり見開かれていく。
千束は気付いた。コイツは今まで目を開けていなかった。それはつまり・・・・・。
「それ」
ふいに男が千束の見覚えのある物を手に取ってチラつかせた。それで彼女の思考は吹き飛んだ。
フクロウの意匠のペンダント。類稀なる神からのギフテッドを授かった者が、ある謎の支援機関に援助される時に渡される証。
「アランのリコリスか」
千束の首にも男と同じ物が掛かっていた。
「面白いなぁ、お前」
どうして、こんな奴が・・・・・。
千束がそう思ったその瞬間、暗闇から一発の銃弾が飛来した。弾が男の手からリボルバーを弾き飛ばしテロリスト達の注目を一斉に引いた。
「錦木。耳と目を閉じて口を開けろ!」
千束の耳に最近聞き覚えのある真面目くさった男の声が届いた。急いで宗介の注意勧告をに従い、千束は両手で耳を覆い目を閉じて口を思いっきり開けた。
パァンッ!!!!
耳をキィンと貫く炸裂音と激しい光がテロリスト達を襲った。宗介がスタングレネードを使ったのだ。視界が明滅し、五感のうち視覚と聴覚、平衡感覚を刈り取っていく。
「うぅ、あったまイッタァ〜・・・・・」
千束は宗介の指示通りに防御体制を取ったとはいえ、残るダメージをひきづりながら何とか立ち上がる。
「無事か?」
木の茂みから飛び出した宗介が千束駆け寄る。彼はこんな状況でも変わらずムッツリへの字口だ。
「もうちょい穏便な助け方ってないんですか〜?」
特大の脅威を救ったヒーローに向かって千束は気の抜けた声で抗議する。
「文句は後で聞いてやる」
宗介が千束を肩車して逃げようとすると、
「て、テメェはセガールか!?ぜってぇ逃がさねぇぞミスリルの死に損ない!」
男がフラつきながらも立ち上がってきた。何とか防御体制を取ったようだが、結構ダメージが入っていて千束よりフラついている。
「寝てろ」
宗介はそう言うと容赦なく男にカービンアサルトライフルを向けゴムスタン弾を打ち込む。
「グアッ」
三下悪役みたいな声を上げて男は昏倒。そのまま立ち上がってこなくなった。
「み、ミスリル・・・・・・?」
「話は後だ。この場を撤退する」
宗介は千束を肩車したまま無線機を取り出して娘の夏美を呼び出した。
「目標は確保した。回収に来てくれ」
『了解』
短い返答と共に遥か後方から黒塗りのSUVが接近してくる。
宗介はよろめくテロリスト達をアサルトライフルで蹴散らしながら包囲網の外に出る。SUVが2人の目の前で急ブレーキを掛け横っ腹を向けて停車した。
「お父さん。千束を貸して」
「頼む」
運転席から出て来た夏美がフラつく千束を抱き上げ支える。宗介は夏美と交代して運転席に乗り込んだ。
夏美と千束が後部座席に乗りこむのを確認すると宗介はレバーをバックに入れて、銃弾が飛来してきた茂みでまで滑るように車を移動させた。
「たきな急いで」
後部座席のドアを夏美が開けると男のリボルバーを狙撃したたきなが飛び込んできた。
「出して下さい!」
「よし!」
全員回収し終わると宗介はレバーをすぐさまドライブに入れて思い切りアクセルペダル踏む。
急発進した車の後部座席で三人の少女達がもみくちゃになるが宗介はそんなのをお構いなしグングン車のスピードを上げた。
後ろから銃声とテロリスト達の悲鳴が聞こえる。ラストベルトが援護射撃のトリモチ弾を打ち込んでいるようだ。
これで時間が稼げる。
「お父さん、前!」
夏美の声で前方を見る。公園の敷地内に一台の軽自動車が乗り込んできた。真っ直ぐこちらに突っ込んでくる。
夏美が後部座席の窓から身を乗り出しアサルトライフルで斉射するが車は怯むことなくこちら向かってくる。
「クソッ。リモートか!」
まったく、世の中便利になったものだ。
宗介は心中で愚痴ると、正面目掛けて突進してくるリモート車を急ハンドルを切ってかわす。スピン仕掛ける車体をなんとかコントールしギリギリでかわすと相手の車はそのまま公園の東屋に突っ込んでいった。
「巻くるぞ!」
宗介は公園の出口目掛けてハンドルを切った。
「クソォ!」
ロボ太は自室のパソコンモニターの前で怒鳴り声をあげた。綿密に計画を練って折角例のリコリスを追い詰めたのにこのままでは取り逃してしまう。まだ何か手はないか思案するが手が思いつかなかった。
ピロロッ!
スマホに着信が入った。表示を見ると非通知だ。何で今のタイミングで非通知?
ロボ太は怪しいと思いながらも通話ボタンを押した。
「・・・・・もしもし」
『もしもし。あなたがロボ太様ですか?』
スマホの向こうから涼やかな気品のある声がした。女性の声だ。しかしどこか冷たさを感じる声だった。
「そ、そうだけど。一体なに。アンタ誰?」
正体不明の相手にロボ太は馬鹿正直に質問する。
『アナタを助けに来ました』
相手の女性がそう告げるとモニターに突然見知らぬウィンドウが表示された。
と思ったが違う。自分はこれをよく知っている。ゲームだ。
ガーンズバック⒋0。
ロボ太が普段からよくやっているAS(アーム・スレイヴ)を操縦して戦わせる、3Dアクションゲームだ。
AS(アーム・スレイヴ)とは人型を模した全長8〜9メートルの陸戦兵器で、最新の物は国連常任理事国の軍隊から、質を問わなければ中東のゲリラまで使用している。その巨体はマッスルパッケージと呼ばれる通電する事で収縮する特殊なプラスチックで駆動しており、有機的で人間の様な動きを可能にしていた。
「ちょっと、今ゲームなんてやってる暇無いんだけど!?」
ロボ太はASを操縦するガーンズバック4.0が大好きだったが、今はそんな場合ではない。揶揄(からか)われたと思ってロボ太は憤慨したが、そんな彼の様子を女性はおかしそうにクスクス笑った。
どうやら勘違いさせてしまったようだ。
『失礼しました。ですがこれはゲームじゃありませんよ?』
「え?」
ウィンドウがASの待機画面からカメラに切り替わる。そこにはさっきまで真島がリコリスを追い詰めた公園が映っていた。
「・・・・・?」
真っ直ぐ車を走らせる宗介は公園の出口付近の空間が歪んでいる事に気付いた。そして嗅ぎ慣れた特殊なイオン臭を鼻腔(びこう)に感じとった瞬間、急速に自分の中で警戒レベルが跳ね上がった。
「みんな、頭を下げて何かに捕まれ!!」
宗介の呼び掛けとほぼ同時に歪んだ空間から25mmライフルの弾が飛んできた。
宗介は急ハンドルを切り何とかライフル弾をかわす。
外れた弾が凄まじい轟音を立てて公園の地面を穿ち大きなクレーターを作り上げた。
「うっしょ〜」
千束がひょっとこみたいな顔で真っ青(真っ赤じゃない)になり、出来たてホヤホヤのクレーターを見る。あんなのが直撃すれば皆仲良くミンチより酷い目に合う。
ECSの不可視モードが取り払われて敵が姿を現した。
第四世代型AS、M11〈ミルハウザー〉だ。全高4.6メートル。従来のASより小型で安く、無人の機体だ。リモート操縦なので兵士の人命問題にも対応した米軍の新たな主力となりつつあるASだ。ちなみに外観は頭のないヒョロっとしカカシでダサい。いかにもヤラレメカな見た目だ
「クソ、やはりECSか」
ECS。電磁迷彩システムはレンズから照射される特殊なレーザーとホログラムを用いて視覚的、電子的に目的の対象を隠蔽する装置だ。実用化されて20年以上経つ技術だが、その優位性は今でも薄れる事なく対策を取らなければ、今のような不意の遭遇戦で手痛い目に合う事になる。
宗介はこの装置とは長いお付き合いで、作動している時に電子部品が出すイオン臭で敵の存在に気づき攻撃を回避する事ができた。
「AS持っているテロリストなんて対処できませんよ!?」
普段冷静なたきなも流石にパニックになっている。
基本リコリスは対人戦が専門だ。訓練もそれに準じた内容で一応ASの操縦資格は取得するが精々、土木作業用PS(パワースレイブ)の〈ダイダラ〉くらいしか千束もたきなも動かした事がない(ユンボとかレイバーとかウィルウェアみたいなの)。
「お父さん、どうする。こっちもAS出す?」
「いや、ASは最後の奥の手だ。今は使わん」
戦局が変わった事で夏美は解決法を提案をしてくるが、宗介は却下する。
今回はあくまで錦木の救出が目的で敵を殲滅するような事は考えていない。一度使って敵に手の内を晒すような危険は犯したくなかった。
「マッジ、ナミAS運転出来んのー!」
回復した千束がハイテンションで質問してくる。
正規の軍人でもない彼女にとってASは映画の中に出てくるハリウッドスターが乗り込む格好良いガジェットという認識しかない。スーパーヒーロー戦隊が最後に乗って戦う合体ロボくらいの感覚だ。
「ダメだって」
「しょんな〜!」
親子の無情な決断に落胆する千束。
宗介はハンドルを切るとM11と反対方向に走り出す。後ろからライフル弾を打ちながらM11が追いかけてきた。
「安斗、見てるか。何とか出来るか?」
宗介は車を左右に振って敵の弾を交わしながら、通話状態にしたスマホに助けを求めた。
「見てるよ。すぐに始める」
リコリコ店内の座敷席で寝転がった安斗は父親の救援要請にすぐお手製いのドローン〈マーク7〉を操作した。
以前和歌山のど田舎に家族で移住していた時、M11と戦闘経験がある安斗は機体の弱点を知っていた。M11はリモート操縦なので無線の受信機が付いている。頭部にある主アンテナと背後にある副アンテナの二つ。
安斗はすぐにM11のカメラの死角にドローンを滑り込ませると頭部のブレードアンテナに電気銃〈テイザーガン〉を照準させる。
フルパワーで発射!
主アンテナが破壊された事で通信が副アンテナに切り替わる。
相手がこちらに気付いたようで頭部カメラがコチラのドローンを視認してきた。
安斗はドローンを破壊される前に敵の背後に回り込ませて自爆させた。〈マーク7〉自爆は手榴弾一個分くらいの破壊力があるので、これで敵の副アンテナは完全に破壊された。
敵のASは完全に通信を断たれた状態になり自動操縦に切り替わると、再び4人が乗った車を狙い始めた。
「クルミさん!」
「任された!」
安斗のドローンが作った隙を付いてクルミの操縦する〈マーク7〉がM11に接近する。
M11はアンテナの他に短波無線で操縦出来るようになっている。その受信距離に入るとクルミはお得意のハッキングでASの操縦権を瞬時に奪い取った。
「うっし!」
クルミはVRゴーグルを装着するとM11を操作し始めた。手元のスティックで、まずライフルの照準を宗介達が乗るSUV車からテロリスト達がたむろする広場に切り替える。
「よくもこのボクに濡れ衣を着せてくれたな!」
発射!
砂煙を撒き散らしながら広場の真ん中に大きなクレーターが出来上がる。
「ハハハハハ、逃げろ逃げろ!!」
クルミはテロリストが死なない程度に次々とライフル弾を撃ち込んでいく。
「よく逃げるテロリストは訓練されたテロリストだ!逃げないテロリストはもっと訓練されたテロリストだぁ!!」
クルミは有名な某フルメタルなセリフを叫びながら、トリガーハッピーよろしくM11の弾が空になるまで撃ちまくった。
ドォンッ!!
ドローンの無線越し大きな音が響いてM11のカメラ画面が消える。どうやらドローンを携行式のミサイルか何かで撃ち落とされたようだ。
「ど、どうしよう安斗・・・・・?」
さっきまでの全能感からいっきに何も出来なくなった落差で、クルミはVRゴーグルを外しながら脂汗をダラダラさせて聞いてくる。
「大丈夫だよ。こんだけ時間を稼げば父さんと姉ちゃんは逃げてるよ」
安斗はいつもの事のように涼しい顔でタブレットを置くと凝った肩をほぐすように伸びをしてダランと畳の上に寝転がった。
千束は普通にASとか好きそうですね。映画のガジェット的な意味で。
今回は何げにリコリスチームと夏美と安斗の初共闘でした。もっとお互いの絡みのある戦闘シーンや日常シーンを書きたいですね。