リコリス・リコイル! family   作:時葉花音

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これでこの章はおしまいです。
 今回の見所はたきなのボルシチです。
 以下、フルメタメンバーと食べた人の感想。
 カリニーン「やはり、天才か」
 由加里「大した奴だ!」
 千束「ウン・・だと・・・」
それではお楽しみ下さい!

※2026/1/6 読者様のご指摘により楠木司令のセリフを一部修正しました。


出会うオプジット・アトラクト 1−6

出会うオプジット・アトラクト1−6

 何とかテロリスト達を巻いた宗介達はリコリコに無事帰投するとクルミから事の顛末を聞く事になった。

「本当に申し訳ない」

 アイアンマンのコピー映画に出てくるクソ映画市場最も外道な博士と同じセリフを言いながら、クルミは床に正座になり頭を下げる。

「あのウォールナットの正体がクルミさんで、こんな事になったのもそれが原因と」

 怪我をした千束の腕に包帯を巻きながら、夏美が今回の経緯について整理する。

「おまけにたきながDAから飛ばされたのも全部コイツのせいよ」

 さらに追い討ちを掛ける様にミズキが補足する。

「なんだよ、助けってやったろ?」

 悪びれもしないという訳ではないが、責任を取ろうとしたのに責められる事には納得いかないと抗議するクルミ。

「機密情報の漏洩なら軍法会議に掛けられて10年以下の懲役だな」

「うっ」

 宗介の無慈悲な宣告に押し黙るクルミ。ちなみに現実はもっと厳しく軍事裁判に掛けられる事なくDAに抹殺される。

「どうする。やっちまうかー、たきな?」

 意地の悪い笑みを浮かべて問い掛ける千束。

「ちとせぇ。た、頼むよたきな。許しくれよ〜」

 居た堪れなくなってとうとう床に三つ指を付けて土下座をするクルミ。そんな彼女を無表情に見下ろすたきな。

 しかし、彼女はふいに口元を緩め微笑を作ると屈んでクルミに目線を合わせた。

「アレは私の行動の結果であって、クルミのせいじゃありません」

 たきなに取ってリコリコへの移動は不本意な物であったが、エリカを助けるために取った行動を後悔した事はない。満足とは言えないかもしれないが不満を覚える事は無かった。

「たきな〜」

「ですが、アイツは捕まえる。最後まで協力して貰いますよ」

「もちろんだ!」

 たきなの許しの声にクルミは安心して笑顔になった。彼女の温情に決意を新たにしたクルミはタブレットをみんなに見えるように自分の顔の前に掲げる。

「それで早速なんだけどアイツの名前が分かったぞ」

 液晶に先程の公園の映像が映し出される。丁度、千束が囲まれて真島に殴られていた場面だ。クルミが再生ボタンを押すと動画が流れ始めた。

『真島さーん』

 取り巻きのテロリストの1人が野次を飛ばす。はっきりと主犯格の男と思われる『真島』という名前が聞き取れた。

「真島さーん」

 悪戯が成功した子供の様にクルミはタブレットからドヤ顔を出した。

「やるじゃん、アンタ!」

 今回の対金星にミズキがさっきまで辛辣な態度はどこに行ったのやら、クルミの頭を撫でまくる。

「ヤメロうっとしい。それと」

 面倒臭そうにミズキの手を払いのけるとクルミはタブレットを操作して別の映像を呼び出す。

「おお、顔もバッチシじゃん!!」

 そこには千束に銃を突きつける真島らしき男の全身が写っていた。一番の収穫だ。これをDAに提出すればラジアータを使って居所を特定出来るだろう。

「ウッシ。犯人の面も割れた訳だし、今日は寝れるわー!さあ、帰ってたきなのごはん〜♩」

 夏美からの手当ても終わり、上機嫌になった千束はイカサマで勝った事など忘れて帰宅の途に着こうとリコリス鞄を背負った。だが、無情にも騙されたたきなはそれを許さなかった。

「もお、出来てますよ。そこに、ほら」

 カウンターの向こう。コンロに掛かった鍋をたきなは指差した。真島襲撃前までの惨状を知っている一同は自分は巻き込まれまいと一斉に顔を逸らす。

「え、ちょちょ待って。これナニ、何なの?」

 ただならぬ皆の様子に千束は嫌な予感がしてソーっと鍋に近づいて匂いを嗅ぐ。それはまるで湯煎されたDr.ペッパーのような香りで・・・・・。

「宗介さん秘伝のレシピの特性ボルシチです。今回は隠し味にコピ・ルアクを使っています」

「ウンシチになってんじゃねえか!?」

 千束はボルシチの魔改造っぷりに驚愕の声を上げる。よりにもよって入れた物せいで茶色い見た目が別の意味を持ち始めた。絶対に口に入れたくない。

「ねえ、嘘だよねたきな。アタシの夕飯ちゃんと別にあるよね?」

 流石に事の重大さにオロオロと命乞いをし始めた千束。そこでたきなはある取引を持ち掛けた。

「じゃあ、私がじゃんけんで勝ったら千束の夕飯はボルシチです。負けたら私が食べます」

「え、負けたらたきなが食べるの。全部?」

 まさかの自分に圧倒的な有利な条件に胸を撫で下ろす千束。実はイカサマの種がバレてるとも知らずに・・・・・。

「ええ、鍋一杯、全部食べましょう」

「いいのぉ?仕方ないなあ」

 勝ちを確信した千束は勝負に同意してしまう。

 掛かった。

 たきなは心の中でニヤリと笑うと、ポーカーフェイスを決め込んで相手を罠に誘い込む。

「じゃあ早速、最初は」

「じゃんけん!」

 たきなは千束の掛け声を遮り勝負に出た。

 結果は・・・・・・。

「アアァッ!?」

「ウシシシシシシシシシィ・・・・!!」

 たきながグー。

 千束がチョキ。

 たきなの勝利が確定して千束の地獄の夕飯が決定した瞬間だった。

 

 

 その後、千束は「嫌だー!死にたくなーい!!」と叫びながら、たきなに引きずられ店を出ていった。その流れで解散、2人と相良一家はセーフハウスに帰宅する事になったが、宗介はミカに呼び止められ1人リコリコに残る事になった。

 宗介はカウンター席に座りミカに出された冷たいほうじ茶を飲む。冷たい液体が喉から臓腑へ流れ込み、先程の戦闘で熱くなった身体を落ち着かせる。

「それで、用とは?」

 単刀直入に切り出す宗介。大体察しは付いているがミカの口から話すように促す。

「ああ、敵が今回使ってきたASの件だ」

 やっぱり、と宗介は内心思った。リコリスは基本的に市街での戦闘を想定している。局地戦で使用されるASや戦車なんかの陸戦兵器との戦闘など想定されていない。

「たきな言ったように真島達を捕まえるのは良い。だが、そうなると今後もASを相手にしなくてはならんだろう」

「まあ、そうだろうな」

 当然の成り行きに宗介は同意する。

 M11のような無人機ならまだ対処のしようがあるが、それが三機以上で来られたらM9一機と同じ戦力になる。もし、テロリストがM9はないだろうがサベージでも出してきた日には、千束やたきなの様な生身のリコリスでは手も足も出ないだろう。

「千束達が心配だ。何とかならないか?」

 つまり、これは仕事の話になる。宗介がミカから喋るように促したのはそういう訳だ。

 血が繋がってないとはいえミカにとって千束は娘だ。無防備のまま敵の前に晒すような事はさせたくないだろう。

「正直今回の一件はDAも手に余るだろう。DAはASなんて持ってないからな」

 日本で現在ASを所有している日本の組織では自衛隊の機甲連隊だ。それも対正規軍を想定した訓練しかしていない。国軍は調達する装備にしても訓練する内容にしても、政治や軍事規定による影響を受けざる終えない。今回のような神出鬼没のテロリスト相手だと思ったように立ち回れないだろう。

「静かな生活を望んでいるお前達には悪いが、宗介が手を貸してくれると助かる」

 ミカは宗介の前職を知っている。世界中で最も対テロ戦に長けた部隊にいた彼の持つ技術やツテは真島相手に大きな強みになるだろう。

 だが宗介は迷った。ミカのいう通り宗介は家族との普通の生活を望んでいる。降り掛かる火の粉は払うが今回は逃げようと思えばすぐにでも逃げれる。真島みたいな男を相手にすれば必ず厄介事になるし、今までの行動基準から言えば避けれる困難からはいち早く撤退する。

 しかし、何故かここから離れたくないと思う自分もいるわけで、宗介は即座に決断出来ずにいた。

「とりあえず、一つ考えがある」

 だから宗介は決断を先送りにする事に決めた。自分が戦うかどうかの決断だ。

「楠木とは連絡は取れるか?」

「ちょっと待ってくれ」

 ミカはスマホを取り出し楠木を呼び出す。すぐに電話に出てくれた。

『もしもし、先生。夜遅くに珍しいですね?』

 電話から年配の女性の声がする。深夜にも関わらず疲れた様子も感じさせない固い声音だった。

「すまないな。実は例のテロリストの件で相談がある」

『先程報告があった真島とかいう男ですか?』

 楠木はミカが電話を掛けて来た理由にある推測を巡らせた。

「そうだ。それで宗介から提案があってな。直接話したいそうだ」

『・・・・・分かりかました。彼に変わって下さい』

 推測の内容が当たっていた事に得心した

 スマホを受け取ると宗介は再会の挨拶を口にした。

「久しぶりだな楠木」

『お久しぶりです相良教官。20年ぶりくらいになりますか?」

 楠木もそんな宗介に返答の挨拶をした。固い口調がどこか和らいでいる。

「いや、17年だ。まだそこまでは立ってはいない」

 フッ、と笑って楠木は話を続ける。親しみのある笑いだった。

『あの頃の私は幹部候補生のペーペーでした。アナタとアナタのお仲間達にはよくシゴかれたものです』

 宗介がDAで教官の任に就いのは以前の古い体制を一新し、新しく組織を立ち上げるという時だった。

 その頃の楠木は防衛大上がりのエリートで鼻につくプライドを振りかざすキャリアウーマンだった。新しい組織を自分が作っていくんだ。

 理想に燃えていた彼女だったが、宗介とその仲間達から突き付けられる厳しい訓練内容とハイレベルな組織の運用理論に、エリートとしてプライドは打ち砕かれる事になった。化けの皮を剥がれ彼女はそれから戦場のイロハも知らないペーペー女として必死に教官達に喰らいつく日々を送る羽目になった。

「だが俺達が骨を折った甲斐があったようだな。おめでとう。司令になったとミカから聞いた」

『ありがとうございます。それでこんな夜遅くに何の用でしょうか?こちらも暇ではありませんでので』

 もうそこには戦場の右も左も分からない女はいなかった。一つの組織を預かる女傑の声が宗介の祝いの言葉をよそに話の続きを促す。

「聞いていると思うが例のテロリストがM11を使ってきた。第四世代の小型ASとはいえECS搭載の厄介なヤツだ」

『報告書とM11の仕様書は目を通しています。確かにリコリスだと手に余る相手ですね』

 楠木も現状を理解しているのだろう。苦虫を噛み潰したような声で所感を述べる。

「そこでだ。リコリスにASの操縦訓練を付けるのはどうだ?」

 およそ宗介の提案内容には最初から察しがついていたのだろう。特に驚いた様子もみせず楠は反証の意見を述べる。

『訓練を付けるのはかまいませんが、国内だとASとその演習場は全て自衛隊の管轄になっています。今から纏まった敷地を作るつもりですか?』

 至極まともな意見だ。

 ASのような巨大陸戦兵器を運用するとなれば、万が一にも模擬弾が民間人に飛んで行くような事がないよう安全を確保しなければならない。省益の壁もあるし、自衛隊から演習場やASを融通してもらうのも難しいだろう。

 おまけに自衛隊は数年前、訓練中にASを暴走させその時に民間の土木業者に負傷者を出す事故も起こしている。そういった過去もあり、他所の組織にASを貸与する事に相当ナーバスになるのは目に見えていた。

 そこで宗介はとびきりのアイディアを思い付いた。

「なら、良い案がある。国外で訓練を受けさせれば良い」

『正気ですか、教官?』

 宗介の言葉に楠木は相手の疑念の声を上げる。

 リコリスには戸籍がない。任務内容が犯罪を未然に防ぐ為の暗殺やテロリストの掃討など、超法規的な内容ばかりなので最初からいなかった人間の方が殉職した時都合が良いのだ。なのでパスポートを取る事が出来ない。

「逆だ楠木。今回の事件を上手く使え」

『・・・・・・続けてください』

 先を促す。不敵な笑みを浮かべて宗介は女に入れ知恵をする悪い男のように自分の考えを述べた。

「DAは日本国内でのテロ対策を一手に担っている。だが今回、手に余りそうな事件が起きた。対抗策は無くこのままでは敵はやりたい放題だ。テロ屋のASが自国の民間人を蹂躙するかもしれない」

『・・・・・』

 楠木は宗介の話を黙って聞いた。

「新しい政策を通すの時に、お偉いさんする言い訳としては立派だと思わないか?」

 宗介は話を終えると楠はすぐに彼の言わんとした意図を察して満足気な声音で同意した。

『なるほど。それはじつに面白そうですね』

 つまり宗介は、今回の事件をダシに危険をチラつかせて上層部を脅せと言っている。自衛隊からASと演習場をブン盗ってくるよりかは小娘の海外旅行を認めさせる方が容易いだろう。ひいてはDAの省益拡大にも繋がる。悪くない手だった。

『分かりました、話は進めておきます。となると行き先はアソコですか?』

 かつての教官達の仕事内容を思い出して、楠は場所の検討を付けた。ASのオペレーターを育成するのに、人員も設備も潤沢に揃っている場所はあそこしかなかった。

「ああ、アメリカ、カリフォルニア。D.O.M.S.基地だ」

 

 

「クッソォ、後、もうちょっとだったのにぃ!!」

  ロボ太は自室パソコンパネルの前で憤慨していた。

  あの謎の電話の女性の助けで無人ASを使って例のリコリスを後一歩の所まで追い詰める事が出来た。

  だが敵側にもハッカーがいたようで、ドローンで襲撃されASの操縦権を奪われてからロボ太は部屋の中で文字通り手も足も出ない状態になっていた。

「ドアァ!」

  そこに真島と数人の仲間達がゾロゾロと、直したばかりの安全ドアを再びぶちやぶって入ってきた。また修理費がかさむ事になる。

「み、皆さんご無事で・・・・・」

 特に悪い事をした訳ではないがロボ太は床に正座をする。真島が空いた椅子に当たり前の様に座ると後ろに仲間達が並んだ。ロボ太はテロリスト達全員の鋭い眼光にさらされ萎縮してしまう。

「よお、ハッカァ・・・・・」

「は、はいぃ!」

 気怠げな声で真島が呼びかける。まだ先程の戦闘の疲れが残って覇気がないがそれでもロボ太は真島を前にするのは怖い。

 椅子から降りた真島がロボ太の顔の高さを合わせる。

「見直したよ。俺が寝てる間にあいつら追い詰めたんだってな」

「へ?」

 今までの態度から考えられない真島の変化にロボ太が間の抜けた声を上げた。

「お前があんな隠し球用意してるなんて知らなかったよ。あのASどこで手に入れたんだ?」

「そ、それは」

 真島の問いかけにどう説明したものかロボ太が答えあぐねていると意外な所から助け舟が入った。

 真島のジャケットのポケットからスマホのコール音が鳴る。彼は黙ってスマホの通話ボタンを押すと耳に当てた。

『私が彼に与えたました、真島様』

 涼やかな声が真島の耳に入ってくる。

「なんだ、姫さんのだったのか」

 協力者の答えに彼は得心する。日本の一介のハッカーが小型とはいえ軍用ASを持っているのは流石におかしかったからだ。

『ええ。ですけどロボ太様も初めての操縦にしては達者に動かされていましたよ?』

「たしかに。ズブの素人だったらセガールとあのリコリスを追い詰めるなんて出来ねぇ」

「セガール?」

 知らない人物の名前にロボ太は首を傾げる。

「今、ヤリ合った相手さんの事だよ。これから忙しくなるぞハッカー。もっとあのリコリスとセガールについて調べろ」

「え、ええ!?」

 喜色を浮かべた凶暴な笑みから出される真島の注文に慌てふためくロボ太。

『真島様。よければロボ太様に自己紹介をさせて下さい』

「良いのか?」

 笑っていた真島が目を細める。彼女の今までの生い立ちから、素性をあまり他人に知られるのは得策ではないだろうと思っての事だ。

『彼を気に入られたのでしょう。これからも使うおつもりでは?』

「そうだ」

 短く返事をする。ロボ太はこれからの計画に参加させるのは確定だ。

『なら、構いません。仮に裏切るならそれ相応の報いを与えるだけです』

 可愛い顔をしてサラッと残酷な事を言ってきやがる。

「分かったよ。ほら」

 真島は食えない女だと思いながらロボ太にスマホを投げ渡した。慌ててキャッチしたロボ太はスマホを耳に当てる。

『先程ぶりですロボ太様。私のプレゼントは気に入って頂けましたか?』

「うん。凄かったよ・・・・・てじゃなくてアンタ誰。真島と親しそうに話してたし何者なの!?」

 女性の涼やかな声に一瞬気が抜けたロボ太だったが、気を取り直して質問する。今までの状況といい、真島と知り合いだという事といい謎だらけだ。

 そんなロボ太の疑問に答えるように、女性は電話の向こうから穏やかだがどこか冷たい、厳かで気品の籠った声で名乗った。

『私の名前はラティファ・フルーランザ。あなた達危険なテロ屋さんに力を授ける悪い魔法使いです』 




夕方のセーフハウス

千束「ヤメローシニタクナーイ‼︎」
    ↓
ウンシチ実食後、
    ↓
千束「シニタイ・・・・!」

今回の章でASが出てきた事で今後の展開をリコリス・リコイル本編からかなり軌道修正しないといけなくなりました。
なので内容をまとめたり、フルメタアナザーを読破したり、しばらく投稿をお休みする事にします。
本当、思い付きで書き始めたので見切り発車感がすごいです。
一応、クライマックスは考えているのですが、完全自転車操業状態です。大車輪です。
続けて読んでくださっている読者様には申し訳ありません。
もしかするとまとめ書きになるかもしれないのでもっと後になるかも。
なるべく早く書こうと思っているのでお待ち下さい。
ではノシ
 
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