リコリス・リコイル! family   作:時葉花音

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さて、今回はフルメタアナザーからゲストキャラ登場です!
お楽しみ下さい!
※ラブレターの内容が間違っていので修正しました。そもそも原作での内容が間違っていますが・・・・・。


いそぐレッスン・ザ・タイム1−5

 そういうわけで相良一行はリコリコチームのASの開発設計を担当するロッキンポ博士を落ち合う為に、ロングビーチまでやって来ていた。

「ふう、良い汗かいた!」

 ゆったりとした背もたれキャンプ用リクライニングチェアに座ると用意していたコカコーラをグビグビと煽る。もちろん瓶だ。

「しかし、こんな事をしていて良いんでしょうか? 私達任務の一貫で来てるんですよね?」

 その隣で同じようにリクライニングチェアに背中を預けたたきなが複雑そうな顔でコーラを飲んでいる。

「かまわないだろう。兵士にもたまの休息は必要だ。千束達は大人の兵士でも音を上げるような過密スケジュールで訓練をしている。ここら辺で息抜きをしておくのが丁度良い」  

 砂浜に敷かれたシートの上に座っていた宗介はなぜかゲームボーイでテトリスに興じていた。

「宗介さん何ですかその古そうなゲーム機?」

「うわ! ゲームボーイなんて私初めて見た!?」

 不思議そうに白黒の液晶画面を覗き込むたきなと、自分が生まれる前のレトロゲームに驚愕する千束。

「うむ。D.O.M.Sの年配社員の持ち物でな。何でも湾岸戦争に従軍していた時に日本の任天堂から支援物資として送られてきたものだそうだ。戦地での息抜きにずっと使っているらしくてな。折角だから貸して貰った」

「あなた昔からそのゲーム好きよね」

「うむ。中々奥深いゲームだ」

 宗介の隣に腰を下ろしたかなめが懐かしそうに夫の顔を見る。学生時代にテッサやかつての学友達と一緒に行った温泉旅行を思い出す。

「安斗もやらせて貰ったら?古いゲーム機なんて珍しいでしょ?」

「僕はこっちでいいよ」

 かなめの提案にタブレットの画面から目を外さず返答する安斗。二人揃ってピコピコしている所を見ると言動が正反対でもこういう所は似てるなぁ、と思う母であった。

「ところでクララはどこ行ったの? 途中まで一緒だったけど」

「あの娘は今ロッキンポ博士を迎えにいってる」

 千束の疑問に答える夏美。

「たしか元は恵比寿重工の研究員だったんですねよね。なぜ海外メーカーの職員なのに日本人の方なんですか?」

 今まで外国人だと思っていたたきなが意外な顔をする。

「さあ、そこは私も直接会った事がないから分からないわ。ただ、ASの本場はアメリカになるからそれが関係してるんじゃないかしら?」

「ASの本場?」

 千束が疑問符を浮かべる。

「たしか最初にASの開発がスタートしたのはアメリカでしたね。最初は殆ど使い物にならなかったけど第二世代型のASから急激な進化を遂げて東西冷戦下で運用されるようになったという」

「お! たきな詳しいねー」

「リコリスの訓練で習うでしょう。近代史の部分で」

 千束の疑問をたきな説明して補足する。一般の学生なら近代史の部分なんて点数にならないからすっ飛ばしまうが、真面目なたきなはリコリスになるならこれまでの国際情勢についても頭に入れておいた方が良いと思いこまめに勉強していたのだ。

「でも、妙なんですよね」

「何が?」

「今までの毒ガス、戦車、飛行機と順当に進化してきた兵器に比べてASは飛び抜けているように感じるんです。たしかに便利ですけど移動するなら2足歩行より無限機動で良いですし、何より通常戦なら戦車の方がASより有効なんですよね。そこがアンバランスというか・・・・・」

 たきなが顎に手を当て歴史の勉強の中で感じた疑問を呟き始めた。

 戦車はどんな悪路でも目的の射撃ポイントまで移動できる無限機動と厚い装甲。目的のポイントに空爆が出来るように航続距離を伸ばしてきた戦闘機。そして目標にまで届くように爆薬自体を積んで飛んでいくミサイル。

 銃を含めて全ての兵器はより遠く的に向かって弾を命中させるのが目的で、それに合わせて形を最適化してきた。しかし、ASはその兵器の進化の法則に当てはまらない。たきなはそんな漠然とした不自然さをかんじていたのだ。

「たしかに井ノ上の言っている事は間違いじゃない」

「え?」

 たきなのゲームボーイから顔を上げた宗介が答えた。

「俺も昔、上官から言われた事がある。今の兵器テクノロジーは異常だと。俺はその人から言われる日までそんな事を感じた事もなかった」

 どこか昔を懐かしむように遠くを見る宗介。

 たきなにとっては意外だった。宗介は世界的に見てもトップレベルのASオペレーターだ。彼は自分の手足のように、いやそれ以上にASを操る。そんな彼がASに対してある種疑問符を投げかけるような話題に同意するとは。

「やはり、知識というのは偉大だな。君達が羨ましい」

「相良さんは子供の頃あまり勉強してなかったんですか?」

「いや、俺は学校に行ってないんだ」

「!?」

 宗介の衝撃の過去に驚くたきなと千束。

「小さい頃からイランで義勇軍に参加していてな。とある極秘任務に着くまで学校に通った事がなかったんだ。それも結局卒業することが出来なかったが・・・・・」

彼の意外な過去に困惑する二人。

「知識や常識がない事には情報を精査する事が出来ない。俺も昔はそれで随分と苦労したものだ」

 うんうんと腕を組んで一人頷く宗介。

 リコリスである二人もある意味少年兵のような扱いなのだが、そこは現代日本で活動するのにあたり学生とまではいかないが世間から乖離しないように一般常識や教養は叩き込まれる。そんなリコリスから見てもちょっと外にある宗介に二人は驚いていた。

「本当、昔のアナタは非常識だったから、いつもポカやらかす度にフォローするのも大変だったわ」

 重くなりかけた空気を入れ換えるようにかなめが宗介の昔の話を振る。

「む。そこまで世間と外れた行動は取っていなかったと思うが・・・・・」

「どこの世界に下駄箱を爆破したりする高校生がいるのよ」

「・・・・・・」

 当時の事を指摘されて押し黙る宗介。

「そんな事してたんですかソースケさん?」

「ええ。しかも中にラブレターが入ってて、爆散した手紙を繋ぎ合わせて解読することになったのよ。たしか『相良宗介。いつも遠くからお前の事を見ているぞ。この臆病者め。貴様の心臓の鼓動を止めて楽にしてやる。放課後、体育館の裏で待っていろ。お前を殺す』だったけ」

「「えー・・・・」」

 絶対に解読が間違っていると思った千束とたきな。

「まあ、私達はそれなり楽しくやってたわ。だからあんまり気にしなくて良いのよ」

 そういってその場を締めくくるかなめ。それに答えるように宗介がどこからか横に長いスイカを取り出してきた。

「次はスイカ割りはどうだ?」

「お! 砂浜といえばやっぱそれよね!」

「アメリカのスイカって瓜みたいな形してるんですね」

 海水浴の定番に目をキラキラさせる千束の横で、初めて見る形のアメリカスイカにたきなは不思議そうな視線を向ける。

「フッ。俺と夏美はスイカ割りに関して自信があってな。先手は譲ろう」

「んっ」

 宗介の申し出に異論がないのか横で夏美が同意する。

「うっし! じゃあ私がトップバッターでいかせてもらうわ」

 そういうと千束は白い布を取り出すと目隠しをする。クララが帰ってくるまで彼らはスイカ割りをたのしんだ。

 

 

「おーい、みんなー! ロッキンポ博士を連れてきたぞー!」

 暫くすると遠くからクララが手を振りながら帰ってきた。隣にはひょろりとした日本人男性が立っていた。痩せぎすな険しい顔で、歳の頃は初老といった所だが装備されたグラサンと大量のピアスや指輪を着けジャラジャラとしていて落ち着きがない。

 おかしい。

 たしか連れてくるのはASの博士の筈だ。クララと横に並んでいるとお嬢とそのお付きの鉄砲玉にしか見えない。

「あのクララ。その博士って・・・・・」

 夏美は失礼なのを承知で困惑した声で尋ねる。

「おう、みんなは初めてだな。私のエンジニアの師匠のロッキンポこと溝呂木博士だ」

「俺はロッキンポじゃねえって言ってんだろクララ!」

 クララの紹介に声を凄めて抗議する男。

「おう、紹介にあった溝呂木克郎(みぞろぎかつろう)だ。喜べよお前ら。この最高にイカしたロッケンロールな俺様が直々に設計開発したASを持ってきてやったぜ!」

 そう言って子供がみたら泣き出しそうなヤの付くっぽい職業の人のような笑みを浮かべる。

「えー・・・・・」

 たきなは思わず空いた口が塞がらない。なんというか博士というからにはもっと落ち着いた人間が出てくると思っていたのだが、まさかのヤカラめいたおっさんとは。思春期を抜け出せないのだろうか?

「おい、クララ。あそこで間抜けヅラを晒している小娘がまさか?」

「ああ。アンタが用意した11式に乗り込むオペレーターで井ノ上たきなっていうんだ」

「マジかよ。ジーザス!」

 手で顔を覆う溝呂木。

「まったく、見た目で判断するようなロッキンポが乗り手とは。俺は悲しくなるぜ」

「一応、自分の見た目が常識から外れてるって自覚はあるんだ・・・・・」

 姉の後ろでボソッと安斗がツッコミを入れる。

「なんかもう、慣れてきました・・・・・」

 たきなにとってこのアメリカでのAS訓練は何かと裏切られての連続だった。クルツの事は良いとしても入管でパパ活女子と間違われたり、マオとクララに海兵隊式洗礼を受けたりと。せめて今回は良い方に転んで欲しいと思っていた。

「はいはーい! アタシ錦木千束って言います! その格好何ですか?パンク?」

「パンクじゃねぇ! ロックだよ!」

 千束のちょっとしたイジりにカリカリと頭を掻く溝呂木。

「こんな小娘共で大丈夫なのかクララ?」

 疑問符を浮かべる溝呂木に問題無いと返すクララ。

「まあ、ASオペレーターとしての搭乗時間は短いけど才能は確かだよ。それに千束もたきなも本来は生身での実践がメインだから今回の機体のデータ取りにはバッチリさ」

「データ取り?」

 クララの発言に疑問符を浮かべる千束。

「お前らがいくら操縦の腕をメキメキ上げてると言っても何年も乗ってるベテランパイロットに比べたら見劣りするのはどうしようもないだろ? だからその穴を埋める為にちょっと特殊なシステムを組み込んだ機体を用意して貰ったんだ」

「一応、これが嬢ちゃん達に用意した機体だ」

 そういって溝呂木は手に持っていたタブレットに千束とたきなの11式のデーターを表示して手渡す。

 受け取ると二人はタブレットに目を通していくうちにその機体の仕様に呆気に取られていく。

「え、こんな事が可能なんですか?」

「ああ、〈アズルール・レイヴン〉のアジャイルスラスターの操縦システムの発展型だと思ってくれりゃ良い」

「うーん。でもマニュアルを読んだだけじゃピンと来ねーな」

 千束が腕を組んで眉根を寄せる。そこに書かれていた内容は今まで自分が習ってきたASの操縦方法とは違うものだったからだ。

「おう、なら早速実機に触ってみるか?」

「「え?」」

 溝呂木の提案にタブレットから顔を上げる二人。

「何の為にロングビーチで合流したと思ってんだよ。ここの貿易港で機体を受け取る為だよ」

 そう言うと溝呂木はポケットに手を突っ込むと歩き出した。そして何かを思い出したように立ち止まる。

「ここまでタクシーで来たんだった。車出してくれねえか。ついでにロングビーチ港が分かんねえ」

 ロックらしい、行き当たりばったりな言葉だった。

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