天城ブリリアントパークを読んでいたら止まらず全巻消化してしまいました。
フルメタ本編の最終巻も今まで読んでいなかったので読破していました。
結構忘れている話も多いので読み返したいと思うので、投稿頻度が落ちるかもしれません。申し訳ない。
短いですがお楽しみ下さい。
『見つけたぞ!カナメチドリ!!』
覆面の男が英語でそう叫ぶと同時に旦那さんが隠し持っていた自動拳銃を抜いて構えた。
「伏せろ!!」
旦那さんの掛け声にアタシとたきながその場にしゃがみ込んだ。何処からか自動拳銃を取り出し覆面の男に素早く照準を合わせて構える。
発砲!
「グハアッ!!」
銃弾が男の腹にめり込んだ。
「・・・・・・・」
私は苦虫を噛み潰したような気分になった。自分がやっていないとはいえ目の前で誰かが死ぬのは気分がよくない。
「・・・・・・なにも殺さなくたっていいじゃん」
思わず1人愚痴る。
「誰も死んでないぞ」
「へ?」
旦那さんの声で倒れている覆面男をよく見ると、倒れてピクピクと痙攣していた。
「これは非殺傷のゴムスタン弾だ。撃たれても死にはしない。ただ、死ぬほど痛い目には合ってもらうが・・・・」
驚いた!
私以外に似たような弾を使っている人がいるなんて。
そう思っていると、茂みに潜んでいた覆面男の仲間達が銃を撃ってくる。
アタシとたきなは伏せていたのでそのまま頭上を弾が避けていった。旦那さんはトイレの壁に身を隠す。
「そのままこっちに来い!」
アタシ達は匍匐全身でトイレの入り口までやってくると、内側の壁を背にして外の様子を伺った。
「う〜ん。10人くらいかな?」
飛んでくる弾の方角と量から大まかな人数を目測する。
「千束、どうします?」
アタシは悩んだ。リコリスの使命なんて知ったこっちゃないが、素性の知れない人間がドンパチしているのを放っておくのも価値観に反する。平和が一番だ。
「君たちは逃げろ」
「え?」
考えていると旦那さんの声で我に帰った。
彼もトイレの壁を背にして様子を伺っている。奥の方に奥さんをやり、自分の身体で隠すように守っている。
「俺が今から奴らを牽制する。隙を作るからこの場から逃げるんだ」
旦那さんは自動拳銃(おそらくグロック)をフルオートにした。
「で、でもぉ、この数を1人では厳しくないですか?」
アタシは素直に疑問をぶつけてみる
「肯定だ。だがこの程度の危険は何度もくぐり抜けている。それに・・・・・」
少し間を置いて彼は、
「俺はプロフェッショナルだ」
自信に満ちているとか、気負っているとか、そんな様子もなく当たり前のように旦那さんは言い放った。
「だから、心配せずとも君たちの安全は保証する。俺が合図をしたら後ろを振り返らず全力で走れ」
アタシはなんとなく。なんとなくだけど、この人の事が信用できると思った。危険な状況なのに見ず知らずの他人の事を案じている。少なくとも我が身かわいいだけの人間からは出てこない言葉だ。アタシは気になって質問をしてみた。
「じゃあさ、最後に聞いておきたいんだけど?」
「なんだ?」
鞄から愛用の銃を取り出す。もう次の行動は決まっていた。
「おじさんは良い者?悪者?どっち?」
「そんなの決まっている」
旦那さんがトイレの壁から身を乗り出して銃を構える。
「アイツらが悪者だ!」
そう言うとフルオート射撃を辺りにばら撒いた。一瞬、敵の攻撃がやむ。
「たきな。援護よろしく」
「え?援護って、こんな暗闇じゃ・・・・・!」
たきなが言い終わる前にアタシは茂みに突っ込む。敵を1人を発見。いっきに距離を詰めてお腹にゴム弾を打ち込む。
「はい、これで1人退場」
相手はその場に悶絶して倒れ込んだ。
アタシは公園の中を走りながら、改めて気付いた。
あの夫婦とアタシ達は素性の知れない他人ではなかった。今日初めてリコリコに初めて来てくれたお客さんだ。お客さんならリピーターになって何度も来てもらわないと。
ニヤリと笑みが溢れる。アタシは不思議な高揚感に包まれながら公園の林の中を疾駆する。
次の敵を発見した。左前方の木の影に2人の覆面が隠れている。
相手もこちらに気付いたようだ。木の影から躍り出てアサルトライフル(Ak47。安いからね)を構えて撃ってくる。
アタシはをそれを最小限の動きでかわす。銃弾が顔の横を、肩のすぐそばを通り抜けていく。
目だ。アタシの目はとても、いやすンごく良くて相手の撃ってくる弾の軌道が見える。後はそれに合わせて身体を少しずらしてやれば、むこうから勝手に弾が避けてくれるのだ。
相手の覆面達はギョッとした表情でアタシとアサルトライフルを交互に見比べる。
アタシは弾の有効射程(ゴム弾は集弾性が良くない)まで接近して相手の額に打ち込む。仲間がやられて怯んだ隙にもう1人の方もゼロ距離で打ち込んでやる。
「ほい、2名さま追加!」
これで3人。残るはあと7人だ。
辺りを見回すと敵が何人か潜んでいるのが見えた。その内の1人に接近する人影が見えた。
旦那さんだ。
そのまま真後ろにピタリとつくと両腕でガッツリとホールドして締め上げる。
(すごい!攻撃するまで敵に全然気付かれてない!!)
「グアッ!アンガァッ!!」
わざと手を緩めて悲鳴を上げさせる。それに気付いた敵達が声がした方向に向かって移動を始めた。
旦那さんは用が済むとそのまま締め上げて意識を刈り取ると男を放置。丁度、倒れた覆面男から影になって見えない木の後ろに身を隠す。
敵達が倒れた仲間を発見して様子を伺おうとすると。
「マヌケめ」
旦那さんが手際良く集合した敵達にゴムスタン弾を打ち込んでいく。いっきに5人も無力化してしまった。
「うっはー!すごいねおじさん!」
アタシは茂みの中から出る。
「君は・・・・・。逃げろと言っただろ」
「いやぁ、悪者は許せない性分なもんで〜」
「むッ・・・・・」
旦那さんはアタシの手に持った銃を見やる。
「先程から気になっていたが、なぜバイトの女子高生が銃を持っているんだ?」
「いや、むしろなんでおじさんの方が持ってるのかアタシは気になるんだけど・・・・・」
ガサガサッ!
2人の背後の茂みから残りの敵がアサルトライフルを構えて飛び出してきた。
アタシは即座に銃を構えて発砲。
旦那さんは一瞬で身を屈めアタシの銃の射線上から外れる。そのまま姿勢で同じように旦那さんはアタシの後ろの敵に目掛けて発砲した。
迫り来る弾丸を拳一つ分くらい頭をずらして最小限の動きでよけた。弾道が顔のすぐ横、髪をかすめていく。
2つの弾は流れるように敵の脳天に吸い込まれていった。
「アベシッ!」
「タワバッ!」
敵2人は世紀末的な断末魔を上げてダウンした。
一瞬の出来事。見事な体さばきだった。
「おじさん・・・・・」
「君は・・・・・」
アタシと旦那さんはお互いを見やる。こめかみに一筋の汗がたれた。
「「何モノ(モン)だ?」」
銃撃戦が終わると、アタシ達は喫茶リコリコに戻った。
事態が事態なだけにたきなと話し合って一度、先生に連絡を取って相談しようとしたら、
「千束。その男に代わってくれ」
と言われた。
旦那さんにスマホを渡す。二、三、言葉を交わすと旦那さんは納得した様子で返してきた。その後、先生から夫婦共々一度リコリコに戻ってから話をするという流れになったのだった。
ちなみに覆面男達は後からやってきた白人男性と東洋系の女性に拘束され連れていかれた。
どうするのかアタシが聞くと
「なに。命まではとりはしない。ただ社会的には死んでもらうがな」
とのことだ。
何でも家族を護衛する為に警備会社を経営しているらしく、やってきた人達もその会社のSPらしい(どんな一家だ!?)。
アタシはキツネにつままれたような心持ちで先生が淹れてくれたほうじ茶をすする(コーヒーだと夜眠れなくなる)。
「ミカ。この家族は一体何者なんだ?」
クルミが頬杖をついて質問する。あの後、いくつもの監視カメラを漁ってが米粒程の情報も出てこなかったらしい。気になって押入れから出てきたようだ。ミズキはもう帰って姿はなかった。
「うーん。まず何処から話していいものか・・・・・・」
先生が腕を組んでうなる。
「俺達は怪しい者ではない。なんの変哲もない家族だ」
旦那さんの方は相変わらずのむっつりへの字で答える。
「いやいや、覆面男達とドンパチする一般ご家庭があってたまるか!?」
アタシは思わずツッコんでしまった。
「店長。私も見ていましたが明らかに一般人ではありませんでした。無駄のない洗練された動きで相手を次々と無力化してました。私達の中でもあれ程の実力を持った人を見た事がありません」
私達とはリコリスのことだ。たしかに、ああいった絡め手をスムーズに成功させるには場数を踏まないとダメだ。それに多人数を相手にするときはこちらもチームを組むからそもそも1人で戦闘をする事がない。リコリスが覚える事がない技術だ。
「まあ、お前達には話しても問題ないだろう。かまわないかセガール?」
「問題ない。それと相良だ」
「おっと失礼した。昔の癖が抜けきってなくてな」
「セガール?」
アタシは思わず反応する。沈黙シリーズに出てきそうなくらいに戦闘は達者だったが。
「俺の名前だ。相良宗介という。英語だと訛ってソウスキ・セガールと聞こてしまうようなんだ。昔はそれでいかついはおっさんだと勘違いされる事が多かった」
「わたしは相良かなめ。この人の奥さんよ」
夫に続き隣の奥さんが自己紹介をする。
すると旦那さん。宗介さんが感慨深げな表情で腕を組んだ。
「どうしたの?」
そんな彼の様子にかなめさんが小首をかしげた。
「いや、いつも偽名だったから新鮮でな。もう一度言ってくれないか」
「もう、仕方ないわね。相良、かなめよ」
「おお、もう一度」
「アナタの奥さんの、相良・か・な・め・です」
「愛しているぞ千鳥」
急にイチャつき始めた夫婦。千鳥とは奥さんの旧姓だろうか。目の前でピンク色の力場が発生する。心なしか背景の色まで桃色掛かって空間が歪んできたように感じる。
「ウォッホン!話を続けても良いかな?」
「あ、ああ。すまない」
先生の咳払いに我に帰る夫婦。ピンク色の空気は霧散して真面目な会話に戻る。
「それでだ。彼は私の前任の教官。昔、DAでリコリスの訓練教官をしていた事がある人物だ」
「「「え?」」」
アタシとたきなとクルミ。三人が同時に声をあげる。
「彼はとある事情で幼少期から海外の紛争地対で現地の民兵として活動していてな。子供でも問題なく銃を扱えるノウハウを理由に、日本政府と関係があったPMCを経由してスカウトされた」
遥か昔の時代の話にアタシとたきなは目を丸くする。店長も宗介さんの経歴については少しぼやかして説明している。おそらくゲリラだったのだろうが、アタシ達の手前宗介さんに気を使ったのだろう。
「お前達が知らないのも無理はない。宗介が教官をしていたのは今のDAの立ち上げの時だ」
先生が説明を続ける。さすがに自分がDAに来る前の事なんて知るよしがない。
「当時の教え子達はとっくに引退しているし、リコリスの訓練マニュアルや基礎を彼が作り終える頃には契約期間の満了が近付いてな。それで相良は私や他の教官に仕事を引き継いで辞めたんだ。その頃にはDAの活動も軌道に乗っていたしな」
「たしかに前から不思議だった。リコリスのような少年兵の戦闘の訓練技術なんて非合法なモノを先進国が持っているはずがない。出所はその男だったのか」
クルミは得心のいった顔でうんうんと頷いていた。
「俺も驚いている。当時、現代日本に問題なく溶け込める最新の都市迷彩を導入すると聞いていが女子高生とはな」
宗介さんはアタシ達のリコリコ制服を一瞥する。
「よく考えたものだ。俺も昔、日本への潜入任務の際には男子高校生の身分に偽装したものだ。問題なく現代社会に溶け込めて非常に効果的だった」
「いや、アナタしょっ中問題起こしてたでしょ?フォローするこっちは大変だったんだから」
得意げな表情の宗介さんに呆れ返った様子でかなめさんはツッコミを入れた。
「・・・・・そうだったか?」
「そうだった、そうだった」
うんうん頷く宗介さんがカナメさんのツッコミで脂汗をかく。どうやら身に覚えがあるようだ。
「すぐに下駄箱爆破するわ、購買で銃ぶっ放すわ。先生や関係者に頭下げるのはわたしだったんだから」
昔を思い出すように遠い目をするかなめさん。その顔に遠い昔の苦労が滲み出ていて背中が煤けたように色褪せて見えた。
「その節は申し訳なかった・・・・・」
この2人はどういう学生生活を送っていたのだろうか。疑問だ。というか、
「お二人は学生の頃からお付き合いして結婚されたんですか?」
アタシは気になった質問をしてみる。
「肯定だ。俺にとっては初めての相手だった」
短く首肯する。どこか誇らしげな表情だ。
「素敵!初恋を貫いたんですね!!」
「あはは。ちょっち恥ずかしいわね」
アタシは感動して思わず立ち上がってしまった。リコリスは基本的にその生涯を任務に費やす。殉職率が高く成人まで生き残れるのは一握りの人間だけだ。そして基本的に女ばかりの組織なので出会いがない。
そんな身としては相良夫妻のような幸せな結婚生活は叶わない事である。同じような少年兵の身の上でゴールインした宗介さんが私は羨ましかった。
「しかし困った・・・・・」
誇らしげだった宗介さんの顔に影が差す。俯いて深刻そうな表情を浮かべている。
「敵に知られてしまった以上、今の拠点を変える必要がある」
「敵?」
そういえばこの夫婦は何者かに襲われていたのだった。
「詳しい事情は話せないが、ああいう手合いが時たまこうして俺達家族を狙ってくるんだ。当たり前の平和な生活を送りたいだけなのに困っている」
「その度に引越しを繰り返してるの。今回はよくもった方よ」
カナメさんは肩をすくめた。
「夏美は神保町が気に入ってるし、安斗も同様に東京が気に入っている。どう説明したものか・・・・・」
「あー、特になーちゃんは大貫さんと会えなくなるからすっごい不機嫌になりそう」
「・・・・・それについては俺はなんとも言えん」
宗介さんは何故かあからさまに肩を落として暗い顔をしている。まるでこの世の終わりのような絶望的は雰囲気を漂わせ始めた。
そこでアタシはある提案をしてみる。
「あのー、もしよかったらウチに来ませんか?」
「「え?」」
相良夫妻がこちらを見る。
「ちょいと事情がありまして、このクルミさんウチの喫茶店で匿ってるんですよ」
「お、おい千束!」
クルミが突然の暴露に抗議の眼差しを向けてくるが、
「昼間、勝手に調べようとしたんだからオアイコでしょ」
「むう・・・・・」
アタシの指摘に推し黙る。
「で、でもいきなりそんなお邪魔じゃない?それに今回みたいな事があったら迷惑かけちゃうし」
申し訳なさそうな表情で聞いてくるかなめさん。
「アタシのセーフハウスに来れば良いですよ。外から分からないようカモフラージュしてますし安全です。たきなと一緒ですけど」
「そういえば、いくつか部屋が余ってましたね千束」
アタシの提案にたきなが相槌を打ってくれた。最初は怪しんでいた彼女も心境の変化があったのか乗り気のようだ。
「でも、年頃の女の子の部屋に申し訳ないわ」
それでも遠慮するかなめさん。
「なら、喫茶店のお手伝いをしてくれませんか?それで貸し借りなしです」
「喫茶店の手伝いということは普通の仕事か?」
宗介さんが相変わらずのムッツリ顔だが、食い気味に聞いてくる。心なしかウキウキした様子だ。なんだか昔飼っていた犬のリキを思い出す。
「そうですよ。興味あるんですか?」
「以前、ファミレスの仕事をクビになってしまってな。真っ当な仕事に就きたいと常々思っていた所だ」
「アナタ、すごく落ち込んでたもんね」
どうやら宗介さんはアタシの提案に前向きなようだ。そんな夫の様子を見かねたのか、かなめさんも無理に反対する気はなくなったようだ。
「じゃあ、お言葉に甘えさせて貰っていいかしら?」
「ドーンとこの千束ちゃんに甘えちゃって下さい!大船に乗ったつもりで!!」
「あはは。アナタって面白い子ね」
「えへへ」
かなめさんがアタシの頭の上にポンと手を置く。優しく髪の毛を溶かすように撫でてくれた。少しくすぐったい。
「それに優しい子。ありがとね」
アタシ達リコリスに親はいない。全員引き取られてきた孤児だ。でも、もし母親というのがいたら、こんなふうに頭を撫でて幸せな気持ちにさせてくれるのだろうか?
「う〜、ちょっと恥ずかしいかな〜」
「あら、ごめんなさい。立派なレディに失礼だったわね」
サッと手を引っ込める。
「い、いえ。ありがとうございました」
「?」
かなめさんは疑問符を浮かべる。何故か分からないが、私はすこし名残惜しい気分だった。
「それじゃあ、もう遅い時間だしお暇させてもらうわ。子供達にも説明しないといけないし」
「うむ。作戦は速やかに遂行しなくては」
時計を見ると深夜0時を過ぎていた。
2人は立ち上がると玄関まで歩いていく。
「今日はありがとう。助けてもらった上に家の面倒までみて貰っちゃって」
「感謝する。君達は恩人だ」
2人は扉を開けながら振り返りお礼を言う。
「色々と段取りがきまったら改めて連絡する。ここの喫茶店で構わないか?」
「構わんよ。盗聴対策はしっかりしてある」
先生が短く答える。
「それでは失礼する。世話になった」
「またね。バイバイ」
2人は手を振りながら帰っていった。パタンと扉が閉まる。
「それじゃあ、アタシ達も帰りますか」
そう言ってリコリコ鞄を肩に掛ける。戦闘をした後なのに少し軽く感じた。
「そうですね。それと千束。相良さん達がすぐにでも引っ越してこれるように空き部屋に積んであるDVDを片付けますよ」
「あ、そういや忘れてた!」
「まったく。明日は少し早起きしますよ」
かなめさん達も今のアタシ達のように段取りを話しながら帰っているのだろうか?
そんな事を考えながら、アタシはアタシでたきなと自分達の段取りを相談しながらセーフハウスまで帰ったのだった。
感想、ご意見待ってます!!