リコリス・リコイル! family   作:時葉花音

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今回から本編にリンクしていきます。
これで今年の投稿は最後になると思います。
ではお楽しみ下さい。


出会うオプジット・アトラクト 1−1

 バランスだ。

 物事には調和のとれた美しい形ってのがある。

 白鳥が羽を広げた時の左右対称の翼。巨匠によって計算しつくされた構図によって描かれた絵画。名監督と名俳優のマリアージュによって作り出される傑作映画。

 どれ一つ偏ってはいけないギリギリの調整、計算によって成立する芸術品達。その美しさの正体は何だ?

 そうバランスだ。

 あのジェダイだってフォースにバランスをもたらす筈だったアナキンがシスに落ちたから滅んだのだ。オビ=ワンが言ってた。お前は選ばれし者のはずだったと。ジェダイマスターが言うんだから間違いない。

 つまり、バランスが大事なのだ。

「オイオイ、違うよな」

 なのに目の前のハッカーは何も分かっちゃいない。

 薄暗い船内の一室で俺は仲間に肩の包帯を交換してもらいながら目の前の男を一瞥した。

 ハッカーは正体を隠すためグレーの箱みたいなお面を被っている。たしかロボ太だったか。コイツの名前の由来らしい。

「いや、コイツはリコリスの中ではトップクラスの」

「捨て駒はどうでも良い」

 話を遮る。このハッカーはさっきから彼岸花がどうとか、都市迷彩服がどうとか、クソの役にも立たない話を並び立てやがった。

 もうこれ以上聞くのは時間の無駄だ。

「俺の目的をお前が理解してるか確認しても良いか?」

「日本に潜入した雇われテロリスト全員が忽然と姿を消すその理由の究明と解決・・・・・」

「分かってんじゃねえか。そのDAとやらをぶっ潰す」

 目の前のハッカーのオツムが空じゃない事は理解した。

 だが解せねえ事がある。

 俺は込み上げてくる静かな怒りに食っていたハンバーガーを思いきり机に叩きつけた。具材やケチャップが机のスマホに飛び散る。

「お前がガキ達のスマホを持ってくればDAの本拠地が分かるって言うから持ってきた」

「そこからIPアドレスを探したが、民間回線と違って時間が・・・・・」

「おい」

 俺の掛け声でソファーの後ろに立っていた仲間が机にハッカーの肩を掴み机に押し付ける。

「え、なになに?」

 ハッカーが戸惑いの声を上げるが屈強な男2人になす術もない。

「もう一ヶ月だぞ。お前の指示で俺の仲間が26人死んだ」

 オツムは空じゃないが頭の悪そうなコイツにも理解出来るように、俺は自分が払った犠牲と得た結果について単的に説明してやる。

「犠牲が出たのは計算外だけど、そっちが最速だし。こっちのリコリスも面白いだろ?」

「ダメだ」

 やっぱコイツ頭が悪いだけじゃねぇ。算数も出来ねえ馬鹿のようだ。

「こっちは指示通りに動いた。このままじゃバランスが悪い」

 俺はそんなオツムが空で頭の悪くて計算の出来ない馬鹿でも理解出来るように、最後通告をする。

「あと三日でDAの場所を探しだせ」

 俺が合図をすると仲間達がハッカーを部屋の外に叩き出した。

 バンと厚い船内扉が閉まる。

「たく、自分から営業かけて来たのに使えねえな・・・・・」

 プルルッ!

 自分のスマホがなる。着信相手を見るともう1人の協力者からだった。俺は通話ボタンを押してスマホを耳に当てた。

『もしもし。そちらの計画は順調ですか?』

 電話から女性の声が流れた。どこか気品のある冷たい声だ。

「ちょっと、難航してる。現地で雇ったハッカーがヘボでな。まだDAの場所が掴めてねぇ」

『そうですか。こちらの準備は8割方終了しています』

 女性の声に俺は満足する。こっちはさっきのハッカーと違って優秀だ。

「ASは?」

『そちらのオーバーホールは完了しています。後はアナタ達が日本国内に密輸するルートを確保しくれれば、いつでもコンテナで運び込めます』

「いいね」

 俺は思わずニヤリとした。

『しかし、早くして下さいね。私ばかりが働いていては、アナタの仰るところの「バランスが悪い」じゃありませんか?』

「返す言葉もねえ・・・・・」

 俺がハッカーに言った事を電話の女にそのまま返された。

 まったく、使えねえ奴には困ったモンだが、逆に能力がありすぎるのも困ったモンだ。先ほどの怒りが嘘のように顔に喜色を浮かべる。

「待っててくれ。すぐにASと例の装置を運び込める段取りを付ける」

『分かりました』

 俺は別れの言葉を告げる。

「じゃあな、姫様」

『・・・・・私はもう姫殿下ではありません』

 通話が切られる。どうやら不機嫌にさせてしまったらしい。今度会ったら何か面白い物でもやろうか?

 そうしないとバランスが悪いな。そう思いながら俺は服を着て外に出る準備を始めた。

 

 

 朝の千束のセーフハウス。チュンチュンと窓の外のベランダで雀達がさえずっている。平和な朝だ

 そのセーフハウスの一室。相良一家にあてがわれた一室のベッドの上で布団に包まった安斗がモソモソと動く。最近のリコリコの手伝いで溜まっていた仕事を処理する為、宗介とかなめは夜遅くまでリビングで事務作業や会社の決済の承認をしていたのだ。

 なので安斗は親の目がないのを良い事にタブレットを使ってネット上の友達や現実で知り合った同年代の子供達とゲームをしたり動画編集をして遊んでいたのだ。結果、寝不足でこの有り様だ。

「ほーら、安斗早く起きなさい。もう朝よ」

「ん〜。後もうちょっと・・・・・」

「もう、今日はリコリコの手伝いがあるってのに」 

 息子を起こそうと子供部屋に来たかなめはベッドをゆすった。多分、昨日も夜遅くまでタブレットを弄って友達と遊んでいたに違いない。かなめはため息を吐くと、どうしたものかと思案した。

「カナメさーん!安斗君まだ起きて来ないんですかぁ?もう食器並べ終わっちゃいましたよぉ」

 ヒョコッとセーフハウスの主である千束が部屋に入ってきた。

 このセーフハウスに引っ越してから朝食を作るのはかなめの日課になりつつあった。最初は恩返しのつもりで少しだけと思っていたのだが、毎朝美味しい!美味しい!と笑顔で食べる千束の顔を見ていると

(まあいっか)

 と続けるようになっていた。

 宗介の話ではリコリスは全員引き取られてきた孤児なのだそうだ。専門の施設に入れられ戦闘訓練を受ける。夫も同じような境遇で昔から家庭の味に飢えていた。高校の頃からかなめの料理を食べる時はいつも仏頂面が緩み美味しそうに食べる。それは結婚して夫婦になっても変わらず、今も彼は妻の手料理が好物だった。

 たきなは少し昔の宗介に似ている。彼女もかなめの料理を食べている時はいつも真面目な表情が心なしか柔らかくなっているような気がする。かなめにはそんな彼女達が昔の夫に被って、出来るなら作ってあげようという気になったのだ。

「そうなのよチサトちゃん。毎朝困ったモンよね」

 話を戻して目の前のベッドでダンゴムシになった息子を見やる。

「なら、アッシに良い考えがありますぜ!」

「何それ?」

「まあ、見ててくだせぇ。ウッシッシッ!」

 千束は時代劇に出てくるコソ泥のような忍び笑いをすると、おもむろに安斗の寝るベッドに近づいて行く。

 すると彼女はそのまま布団の端を持ち上げるとベッドの中に滑り込んで行ってしまった。

「ん〜お母さん、ナニぃ〜?」

 突然の違和感に安斗は寝ぼけ眼を擦りながら布団の中を見る。

「おはようヤスト!中々朝ご飯に来なく寂しいから、千束さんが君に会いに来ちゃったぞぉ♡」

 手でハートマークを作りながらとびきりの笑顔を決める千束。

「うわあああああ!!」

 安斗は驚いてベットから飛び起きた。姉や母のおかげで美人耐性のある安斗だったが、街中で歩いていたら誰もが見返す美少女の千束が至近距離で身体を密着させてきたのには耐えられなかった。

 というかつま先に千束の胸が当たっていた。しかもいつものリコリコ制服や着物でなく、部屋着の薄い生地越しにだ。しかも朝の支度前なのでおそらくノーブラ。まだ小学生くらいの安斗には刺激が強すぎる。

「何で僕のベッドに入ってんだよ千束さん!?」

 床に尻餅を付いた安斗が顔を真っ赤にして抗議する。なぜかちょっと内股気味で安斗の方がなにか性被害にあったのような構図になっている。

「だってヤストが起きて来ないのが悪いんじゃん」

 イタズラが成功した事にご満悦の千束はベッドの上から安斗を見下ろす。

「だからって普通ベッドの中入る?」

「でも、目が覚めたでしょ?」

「当たり前だよ!!」

「・・・・・チサトちゃん。安斗以外の子にそいういうセンシティブな事はやめてね。普通の母親なら通報されてるから」

 流石に息子の情操教育に悪いのかと思ったかなめは遠回しに注意すると、大きな物音を立てたせいか。たきなが様子を見に子供部屋に訪れた。

「およ、たきな?」

「千束、アナタまさか安斗君に・・・・・」

 部屋の状況を一瞥すると、たきなは何か穢らわしい物をみるような視線を千束に送る。傍目からみると母親の目の前で小学生の男の子を襲おうとするヘンタイ女子高生にしか見えない。しかもそのヘンタイ女子高生は最強のリコリスだったりするので逃げようがないのをたきなは知っている。

「いや違うよたきな!別に私は変な事しようとした訳じゃなく、ただ起こそうと思って・・・・・」

「グスッ・・・・千束さんが『早く起きないと朝ご飯の代わりにヤストをお姉ちゃんが食べちゃうぞぉ♡』って無理やり僕の事を・・・・」

 弁解しようとする千束に安斗は先程の復讐とばかりに追い討ちを掛ける。

「千束!アナタやっぱり・・・・・!?」

 口に手を当ていっきに青ざめるたきな。まさか日本の平和を影から守る私たちリコリスのトップが小学生男子に手を出す性犯罪者だったなんて・・・・・。

「ちょい、ヤストォ!何とんでもない事言ってんだぁ!!」

「仕返しだよ。もう二度と僕のベッドに入って来ないで」

 意趣返しが成功した安斗はペロッと舌を出してあっかんべーをする。血相を変えた千束は安斗に詰め寄るが。

「きゃー、千束さんに襲われるー!」

 安斗はやる気のない棒声の大根演技だが、たきなの勘違いは加速する。

「これは店長に報告ですね。千束は安斗君に手を出す児童性愛者だと・・・・・」

「な、たきな!?」

 友人に掛けられたとんでもない疑惑に千束は目を剥く。

「私はペドフェリアじゃなぁいぃいいいいいい!!」

 そんな千束の抗議を無視して安斗とかなめは朝ご飯の席に着くべくリビングに移動するのであった。




安斗君との同居生活でおねショタがはかどる!
千束は犠牲になったのだ・・・・おねショタをみたいと思う作者の犠牲にな!!
真島のもう1人の協力者って誰なんでしょうね?

では、皆さん良いお年をm(_ _)m

※すこし加筆修正しました。(2026/1/1)
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