せっかくなので明日を待たずに投稿します。
よければお楽しみ下さい。
「おいおい男日照りのアタシでも流石に男子児童はねぇわ〜」
「千束は年下が趣味だったのか。ボクも気をつけよっと」
「う〜、だから違うんだってぇ」
準備中のリコリコの店内で千束は正座させられていた。首にはプラカードが吊り下げられており、
《私はいたいげな男の子に手を出したHENTAIリコリスです》
と書かれている。
クルミとミズキが面白がって書いたものだ。
店に出勤すると早速たきなによって朝のセーフハウスでの事がバラされた。なので、こうしてリコリコメンバーから説教くらうハメになった。
夏美なんて露骨に警戒した目で見てくる。朝から安斗の側を離れようとしないのだ。
「もうその辺で良いだろう。まだ開店準備も出来ていないんだ。早く仕事に戻ってくれ」
ミカが朝仕入れたスイカを切りながら三人に店内業務に戻るように催促する。
ミカは一応、事の顛末をかなめから聞いていたのでそこまで心配はしていなかった。ただ、色々口煩くなったこのご時世にそういうセンシティブな問題は起こさないでくれとは注意しておいた。
何も知らない第三者に通報されるなんて事もないとは言い切れないからだ。流石に最強のファーストリコリスが性犯罪で検挙されるなんて居た堪れない。
フキあたりがこの話を聞けば怒るどころか呆れ返るだろう。
「ボクはダウロードしたデータを調べるから仕事には出られないからな」
「アンタ、DAをハッキングしたの!?」
ミズキがクルミの手腕にドン引きする。DAをハッキングする技術もそうだが、バレたら四六時中命を狙われる事になるからだ。
「チョロいね」
クルミはあんみつを片手に押入れの中に引っ込んでいった。
「じゃあ、アタシも仕事に戻ろうっと」
プラカードを外して立ち上がり掛けた千束の前に夏美が立つ。丁度、ホールにいる安斗が死角になって見えないようにだ。
「千束。しばらく安斗に近づかないで」
絶対零度の視線が千束を射抜く。
「違うんだってナミィ〜。アタシは別にヤストの貞操を狙った訳じゃなくて、ただ起こそう思って〜」
「次の潜伏先を決めておいた方が良いかしら」
「ナミィ〜」
今日もリコリコは賑やかだ。一日の営業が始まる。
ロボ太は必死だった。
もし、後三日で何か手掛かりでも掴めないと僕はあの真島という男に殺されてしまう。
アイツらは海外を主戦場にするテロリストだ。日本国内での法律なんて知った事じゃない。ヤクザだって法律を気にして人を殺さずダンプカーを事務所に突っ込ますのに、このままでは本当に殺されかねない。
ロボ太はこうなった原因である依頼主の部下に電話を掛ける。
『ご用件は』
女性の声だ。酷く事務的な口調で対応する。
「アンタのボスの追加の依頼だけど、真島はあのリコリスに全く興味を持たないよ。多分無理だと思う!」
ロボ太は憤慨する。このままでは身の安全が保障出来ないので何とかしてもらおうと電話を掛けたのだ
『お待ちください』
ケータイが留守電になる。女性と依頼主とのやり取りが終わったのかしばらくして通話状態になった。
『頑張れ』
「は?」
短い返答にロボ太は間抜けな声を上げる。
『頑張れと仰っています。頑張って下さい』
女性がそう告げると電話が切れてしまった。スマホを握り締めながらロボ太はプルプルと怒りで肩を震わせた。
「僕はがんばってるよおおおおおおおおおお!!」
そして三日目。
「クソ!これじゃあ僕も児童盗撮犯じゃないか!?」
ロボ太はカメラのついたドローンを操作しながら毒ついた。なんとか例のリコリスを追跡して住んでいるマンションを突き止めたのだ。
ここ来るまで、募った協力者が無茶なハッキングをして警察に捕まったりしたが、後はフリーの暴力専門のなんでも屋に依頼して襲わせるだけだ。うまくいけばDAの場所だって聞き出せるかもしれない。
ロボ太は電話で指示を出すと状況を把握する為、ドローンを部屋の中が見える位置まで移動させた。
夕方の千束のセーフハウス。
今日は相良一家はかなめのビジネスや宗介の書類仕事があるので休みを貰って、夏美と安斗は両親に変わって料理をしていた。
「「「「「「ご馳走様でした!」」」」」」
全員食事が終わり食器を片付け始める。ちなみにメニューはナスのミートスパゲッティだった。近所のスーパーでナスが安売りをしていたから、かなめが大量に購入していたのだ。
今日の洗い物はたきなが担当だった。作業がしやすいように髪を後ろで纏めてポニーテールにしている。
「ジャンケンの勝率はどの手も3割なのに・・・・・」
たきなは千束とした家事分担を決める際にしたジャンケンをずっと不審に思っていた。異常な勝敗率で千束の勝率が10割だったのだ。
相良一家が引っ越してきて家事炊事を分担してくれるようになったから自分の負担が大分マシになったが、ジャンケンの結果には納得がいかない。
たきなが食器の洗剤を洗い流しているとリビングで千束のスマホが鳴った。なんだか昔の暴走族のラッパみたいなアラーム音だった。
「お、チンピラがまた来た」
千束はアラームを止めると腰に手を当てソファから立ち上がった。
「なんです?」
台所から顔を出してたきなが首を傾げる。
「お客さんだよぉ。アホな奴がカチコミに来ても良いように、勝手に入ってくると分かる仕掛けになってるの」
そう言うと千束は愛用の自動拳銃を構えた。迎撃に行くつもりのようだ。
「敵襲か?」
書類仕事を終えて一休みしていた宗介が椅子から立ち上がった。
「ああ、ソースケさんのじゃないよ。アタシのお客さんだからすぐに追っ払ってくる。ソースケさんはここで休んでて」
「いや、俺も行こう」
宗介はそう言うと自分の部屋からグロックを取り出してくる。
「えぇ、良いよ。ゆっくりしてなって〜」
「そういう訳にもいかん。世話になっている以上、家主に降り掛かる火の粉は振り払わないとな」
「OK!じゃあ、着いてきて。多分、今は無人の部屋で私達を探してウロウロしてる筈だから」
宗介の提案を受け入れた千束は梯子に向かって歩き出した。
「了解した。俺達に手を出すと高く付くという事を教えてやる」
2人は上の階に通じる梯子を足音を立てずにソッと上っていった。千束は制服なので宗介が先頭だ。梯子の下り口から顔を半分だして暗い室内を観察する。
案の定、拳銃で武装した男2人がウロチョロしていた。
「しっかりとビビらせてやろう」
そう言うと宗介はゴムスタン弾を男達の足元に数発撃ち込む。男達は突然の銃声と足元での破裂音にパニックになって部屋の中を走り回った。
「逃げろぉ!逃げろぉ!!」
今度は千束が逃げる男達を後ろから追いかけて撃ちまくった。タップリと恐怖を与えてそのまま上層階の窓からガラスを破って突き落とす。
「ギャアッ!!」
「ウワァッ!!」
幸い、落ちた先には近隣住民が出していたゴミ袋の山があって怪我をま逃れたようだ。しかし、ゴミの先出しはマナー違反のはずだが結構な数のゴミ袋が捨てられていた。
(迷惑な奴ら同士で助け合っていると言うか事か・・・・・)
宗介は妙なシンパシーを感じながら落下した男達を見降ろす。横で千束が男達に向かって無言で銃口を向ける。
それが見えた彼らは悲鳴を上げながら一目散に夜の街中に消えていった。
「また、窓注文しなきゃ」
「この為のセーフハウスですか」
いつの間にか登ってきたたきなが質問してくる。
「まあね。いつもあんな連中なら良いんだけど、昔はリリベルも来てたからね?」
「リリベル?」
たきなが首を傾げる。それに合わせて後ろで括っていたポニーテールが可愛く揺れた。
「男の子版リコリスみたいなぁ?おっかないよぉ?」
「それ普段何してるんですか?」
「さあ、良く知らない」
梯子の下り口に向かって歩き始めた千束が振り返ってキラキラした目でたきなに問い掛けてくる。
「なにぃ、たきな男の子に興味あるのぉ!?」
「ソウイウコトジャナイデス」
ニヤニヤする千束の言葉をたきなは冷たく切り捨てた。そこでたきなは先日の朝あった事を思い出す。
「そういう千束は小さい男の子に興味があるようですけど?」
「ちょ、今言う!?ソレ言う!?」
ニヤニヤしていた千束の表情が引き攣る。攻守が逆転して今度はたきなの方が意地の悪い笑みを浮かべている。
「ええ、言いますとも。しばらくコレで弄らせてもらいます」
「フキとか楠さんの前ではやめてよ!?」
「なるほど。それは思いつきませんでした。ネタを提供してくれてありがとうございます千束」
「ホントやめてよたきな!フリじゃないからね!?私の社会的立場ってやつがぁ・・・・・」
2人は言い合いをしながらセーフハウスの梯子を降りて行った。
「しかし、良くこれだけ暴れても近隣住民は出てこないな」
宗介は思った疑問を口にして近所の様子を観察した。流石の彼も昔の神代高校でのような事が非常識だという事は分かっていた。
「俺がしばらく日本を離れている間に、東京の治安が悪化したのかもれない。子供達にも気をつけるよう注意しなくては」
宗介は胸に沸いた心配事を口にしながら、1人いそいそと梯子を降りていった。
「何だ。コイツら?」
事の一部始終を見ていたロボ太は液晶に映し出された映像に呆然とする。
カーテンの向こうで何度か発砲の光が明滅すると雇っていた男達が窓を突き破ってゴミ捨て場に落下する。
ベランダに出てきたのはドローンで尾行していたリコリスと、もう1人知らない成人男性だった。頬に十字傷のある男で隙のないいで立ちをしていた。アレだけ撃ち合いをしたのに負傷した様子がない(一方的に撃たれまくっていた事をロボ太h知らない)。
「これ見せたら、真島は興味持たないか」
助かる光明が見えたと思ったその時、
「「ふん!」」
「ドアァ!!」
真島の仲間の男2人が無理やりドアを突き破って部屋に入ってきた。
(鉄の防犯扉を壊すなんてどんな身体してんだ!)
「もう三日たったぞぉ」
ゆらりと真島が部屋の中に土足で入ってきて無表情で告げる。
「どうしてここが?」
ロボ太は当然の疑問を口にするが、真島はそれに応える事なく質問を繰り返す。
「そんで?」
真島の出す威圧感にロボ太はすくみ上がった。上手く言葉が出ない。
「え、ああ、いやぁ」
「そんで?」
「ちょ、ちょっと待って!」
2人の男達がズカズカと自分に迫ってくる。
「い、イヤ、何だよヤメテ!」
屈強な男達にまた両側から羽交い締めにされ身動きが取れなくなる。ロボ太の前に立った真島は瞳孔の開いた目で見下ろした。
「待ってリコリスが!」
「リコリスじゃねえよ」
弁解を口にしようとしたロボ太の前に真島がしゃがみ込んだ。額にポケットから取り出したリボルバー拳銃を突きつける。
「待って、待て。見てほしい物があるんだ」
命の危機にロボ太はさっき撮れたマンションでの映像を見せようと必死になった。しかし、羽交い締めにされた腕ではパソコンを操作する事すら出来ない。
「他の奴らは死んでんだよ」
「待ってすごい映像があるんだ!」
「バランス取らなきゃなあ!」
「イヤァッ!!」
激昂した真島の表情にまるで女のような悲鳴を上げるロボ太。そこで急に液晶パネルの表示が切り替わった。
激しい銃声の後に窓を突き破って落下する男達と、ベランダに出てくるリコリスと十字傷の男の映像がリフレイン再生される。
「・・・・・・・」
突然の事に真島は何度も再生される映像をしばらく眺め続けた。
「こ、コイツがトップのリコリスだ!DAを襲撃する前にコイツを殺しておかないとお前らは全滅させられるぞ!!」
ロボ太はここぞとばかりに説明する。これで真島の機嫌が良くならなければ本当に銃殺コースだ。
映像がベランダに立つリコリスと男の所で停止する。真島はその2人の映る映像を見やるとロボ太の頭から銃を離して立ち上がった。
「明日、ソイツを倒しに行く。すぐに作戦を考えろ」
そう言うと真島は玄関に向かって歩き始めた。ロボ太は首の皮一枚繋がった事実に胸を撫で下ろした。
「た、助かった」
ロボ太の部屋から出てマンションの廊下を歩きながら真島は思わない出会いに口下を緩めた。
「あの銃声、聞いた事がある。忘れもしない電波塔の時の。あのリコリスはもしかしたら・・・・・」
1人でに口から言葉が漏れる。
真島は自分の推測が当たっているか興味が沸いてきた。
それにもう1人の男。
先達からの噂で聞いた事がある。
かつて、まだ冷戦下の時代に存在した秘密の対テロ武装組織。そしてそこで活躍していた当時の最新鋭の兵器とASを使いこなす傭兵集団。俺達暴力を生業にする連中にとってはクソッタレな奴ら。間違いないアイツは・・・・・。
「ソウスキー・セガール。伝説の傭兵にこんな所で会えるなんて嬉しいねえ・・・・・・!」
何度も本編を見たのですが、ロボ太のパソコンが勝手に動いて千束の映像をリフレイン再生させる仕組みが全く理解出来ませんでした。
なので小説でもそこについては詳しく描写していません。
真島については最初にロボ太の映像で千束の顔を確認したのに興味を示さず、後のセーフハウスでの映像で興味を持ったのかという疑問が沸きました。
電波塔襲撃の時、目に包帯を巻いていて直接千束の姿を見ていないので、画面越しに使っていた銃の発射音で察したという解釈を採用しました。同じゴム弾を使っていたので。
これで本当に最後になります。
では良いお年を!!
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