ラスボスに使い捨てられる悪役中ボスにTS転生したけど、原作キャラを観察しに行きます! 作:恥谷きゆう
最初の爆発によって負傷したリオに代わって、ギルが前に出る。
それを見た敵──黒牧師トレイターはすぐさま応戦を始めた。
……呑気に後ろから観察していたら、原作と違う展開が始まった件について。
なんか殺意高くないか!?
なんでローラ殺そうとしてんの!? 初手爆弾とか原作になかったぞ!?
ミレディが『時戻し』を手に入れるのを諦めたのか?
あるいはトレイターの独断専行?
ハラハラとリオたちの様子を見守る。
次の展開が分からないほど恐ろしいことはない。
一歩間違えればバッドエンドルート直行なソウライ世界であれば尚の事だ。
俺が出ていくべきか?
いやしかし、今この瞬間にミレディが襲い掛かってきても不思議じゃない。
それに、今の彼らであれば十分トレイターには勝てるはず……。
でもリオが最初にあんな重症を負うなんて聞いてないし……。
ああ、分からない! どうなってるんだこれは!
などと思考に耽っていた俺は、自分に迫る危機に気付くことができなかった。
「──『
──唐突に、目の前が真っ暗になった。
遅れて、激しい痛みと浮遊感。
背中に激しい衝撃を受けた頃、俺はようやく事態を理解することができた。
何者かに襲われ、吹き飛ばされた。
脳味噌が追い付いてくると、思い出したかのように痛みに襲われる。
激しく咳き込むと、口から大量の血が出てきた。
不審に思って自分の体を見下ろすと、下腹部あたりに大きな穴が空いていた。
一周回って冷静な頭で、俺は思考する。
ああ、以前にも似たようなパターンがあったな。
たしか、ウォールと戦っていた時だ。原作の展開を眺めていたら、背後から謎のロボットに襲われた。
──となると、また原作ブレイクか。
俺は素早く態勢を整えて周囲を見渡す。
さあ、ロボットだろうと宇宙人だろうと転生者だろうとかかってこい。
推しカプの邪魔をする奴は俺が八つ裂きにする。
使命感に燃える俺は、一時的に痛みを忘れていた。
「──対象へのダメージを確認致しました。攻撃を継続致します」
無機質な言葉を響かせ、こちらに歩いてきた人影を注視する。
見覚えのない少女だ。
金髪の、顔立ちの整った10代半ばに見える少女。
普通にしていれば男性の目を惹くような美しい見目と言えよう。
しかし、異常なまでに青白い肌と瘦せ細った体躯が可憐なイメージを損なっている。
見覚えのない顔だ。
ミレディの差し金か?
「『死を告げる霧よ』」
霧を展開させ、『死神の大鎌』を手に取る。
たとえ相手が女の子であろうと、邪魔をするなら殺すまでだ。
今更殺人を躊躇う神経はしていない。
それに、もし彼女がミレディの寄越した刺客だったなら殺さなきゃ殺される。
まずは霧によって敵の視界から外れる。
しかし、相手の動きは俺の予想よりもずっと早かった。
「──『
霧が完全に視界を遮る前に、少女が右手を上げる。
すると、掌の上に巨大な血液の塊が形成された。
それはすぐに鋭利な槍の形へと変わる。
少女の体よりも大きな血の槍は、彼女の手の動きに合わせて俺の方へと飛んできた。
「ッ……!」
先程背後から俺を貫いた攻撃か。
横に転がることで辛うじて投擲槍を回避する。
直後、俺のすぐ横で轟音が響き渡り床が激しく抉れた。
「……あの高慢ちきの他に吸血鬼がいたんだ。いつ墓から出てきたの?」
敵の素性を探るために、俺は挑発的な言葉を投げかけた。
血を操り、槍を形成する力。
ミレディの『ブラッドバースト』を見た俺には断言できる。
あれは間違いなく吸血鬼の力だ。
相手の出方を窺いつつも反撃の糸口を探る。
霧は既に視界を完全に遮っている。先程のように正確に狙いをつけることはできないはずだ。
「──『
質問への返答は、苛烈な攻撃を以って行われた。
先程と同じ声が響いたかと思うと、的確に俺を狙った槍が飛来した。
「ッ……!」
霧の中でも見えている……?
予想外の攻撃に回避が遅れた。
槍が俺の脇を掠め、肉が抉れる。
再び激痛が俺の体を襲った。
ミレディと同じ視界を強化するソウルライトか……?
いや、あのインチキコピー能力のラスボス様とは違いソウルライトは1つのはず。
多分彼女のソウルライトは血の槍を強化する何か。
であれば……血の匂い?
食事として血液を必要とする吸血鬼なら、血の匂いを感じ取る能力に優れていてもおかしくない。
それなら不意打ちの初撃で胴体を狙ったのも頷ける。
確実に当てて霧の中で優位に立ち回るためだ。
俺の霧がとことん対策されていて嫌になるな。
能力をメタるのは転生者の専売特許だろうが。
「──『
俺が思考している間に、敵はもう次の攻撃準備を終えていた。
俺は『死神の大鎌』を構え直す。攻撃が早すぎて回避はキツい。
なら、血の槍を弾き飛ばす他ない。
「クッ……!」
血の槍が大鎌に激突すると、凄まじい衝撃が伝わってきた。
衝撃で後ろに数歩下がる。
次の攻撃が来る前に、一気に攻める……!
こっちの攻撃は当たれば必殺の最強の刃だ。
身体能力を最大限に活かして突撃。
俺は大鎌を振りかぶって少女に肉薄した。
「──『
「ッ……」
想像以上に攻撃のスパンが短い……!
俺の刃が届く前に、少女の頭上には血の槍が完成されていた。
攻撃をやめて、『死神の大鎌』を盾にする。
血の槍を鎌の柄で受け止めた瞬間、俺の体は激しく吹き飛ばされた。
再び両者の距離が離れる。
……仕切り直しだな。
これは、なかなかに強敵だな。
俺は内心焦りながらも少女を突破する方法について思考を巡らし始めた。