ラスボスに使い捨てられる悪役中ボスにTS転生したけど、原作キャラを観察しに行きます! 作:恥谷きゆう
「
覚醒すると同時に、俺は俺自身のソウルライトを使っていた。
ことの顛末はだいたい把握できていた。
意識が体の奥に引っ込んだ後も、戦いの様子は見えていたからだ。
悪辣な力を使うミレディと、それに翻弄される彼女の姿。
端的に言えば、俺は怒っていた。
「推しを傷つけた報い、受けてもらう」
ブルームは既に俺の推しキャラなのだ。
彼女の記憶を追体験してその在り方を知った俺としては、彼女はフレンたちにも匹敵する推しと言ってもいいくらいだ。
いくらミレディが原作登場キャラと言えど、許せないこともある。
何よりも許せないのは――
「原作ブレイク……絶対にゆるすな……!」
なんだそのザ・ジャパニーズな日本刀は。
ソウライに和風要素はなかっただろうが!
チート持ちのラスボスだろうと好き勝手するのもいい加減にしろよ!
「カカッ! そうじゃ! ワシが叩き潰したかったのは、その忌まわしい陽光の力じゃよ!」
ミレディが高らかに笑いながら血の槍を飛ばしてくる。
サンライトを駆使してそれを迎撃しながら、俺は『死神の大鎌』を構える。
「フッ……!」
首に刃を突き立てるべく、突進。
俺の動きを見たミレディは日本刀を構えると、神速の突きを繰り出してきた。
「ッ……!」
顔面めがけて振りぬかれた刃先を、上体を逸らして辛うじて回避した。
危機一髪。あと少し反応が遅れたら顔面を貫かれていた。
流石は万能のチート能力持ち。
見慣れない得物でも、その扱いは超一流だ。
おそらくは刀の扱いに特化したソウルライトを『奪取』してきたのだろう。
「借り物でしか戦えないなんて哀れだね。自分とかないの?」
「……カカッ! 饒舌になってきたではないか!」
心底楽しそうに笑うミレディは、続けて刀を振るう。
いずれも剣筋は鋭く、防ぐのがやっとだ。
やはり、大鎌で刀の攻撃をいなすのは困難か。
一度距離を取る為に、俺は大きくバックステップを踏む。
しかし、ミレディはそれを許そうとはしなかった。
「――縮地」
彼女の体が、瞬間移動でもしたかのように俺の目の前に現れた。
「ッ!?」
「カカッ、お前さんに陽光の力を使う隙など与えんよ!」
勢いのままに繰り出された突きを辛うじて回避。
しかし、ミレディはすぐさま態勢を整えて次撃を繰り出していた。
マズいな。
俺は刀をいなしながら思考を巡らす。
前回の戦いとは打って変わって、ミレディはインファイトを続けて俺を斬り殺すつもりのようだ。
おそらくソウルライトも、斬り合いに特化したものを用意してきている。
……しかし、あの刀は本当になんだ。原作には出てきてないぞ。
「おっと、戦いの最中に考え事とは余裕じゃのう。……そんなことをしていると、後ろから刺されるぞ?」
斬撃を避けるためにバックステップを踏むと、背後に気配がした。
振り返ると、そこにはゾンビのような姿に成り果てたブルームの母の姿があった。
「……ッ!」
体が一瞬固まった。それは多分、俺の反応というよりもこのブルームの体の反応だったのだろう。
傷つけたくない。殺したくない。
そんな想いが伝わってくる。
けれど、その想いを持ち続けるのは無意味だ。
これは死者の姿を真似ただけの偽物。
その魂が蘇ることなど、決してありはしないのだから。
「――フッ!」
俺はブルームの母親を斬った。
血しぶきが舞う。
『死神の大鎌』で首を刎ねられたブルームの母は、二度と起き上がらない骸となった。
「――死者を、思い出を、弄ぶなッ!」
その勢いのままに、俺はミレディへと突進して大鎌を叩きつける。
「くっ……!」
大鎌を受け止めたミレディが後ずさる。
「……カカッ、良い一撃じゃ。しかし、良かったのか? 親殺しとはいくら野蛮な人間サマと言えど大罪に――」
「――黙れ」
俺はミレディに『死神の大鎌』を突きつける。
「死者は蘇りはしない。もし仮に蘇ったように見えたなら、それは良く似た別人。死は不可逆であり、魂はこの世に1つしか存在しないのだから」
「……なんじゃと?」
俺の言葉に、ミレディは鋭い目つきを見せる。
彼女は同族である吸血鬼の蘇生を目標として暗躍を続けていた。俺の言葉は看過できなかったのだろう。
「死神の力に触れれば分かること。死を扱うなど、この世の生物には不可能。――もちろん、吸血鬼も例外ではない」
原作において、ミレディは平行世界で同族の復活に成功したような描写がある。
けれど、俺はこう考えている。
彼女が心の奥で願っていた想い――父親との再会は叶わなかった。
復活した吸血鬼はまるでゾンビのような言葉を話さない化け物のように描かれていた。
ミレディの言葉から察するに、吸血鬼は人間と同等以上の知能を持つ種族のはず。
であれば、蘇った吸血鬼は今のブルームの母のようにゾンビのような存在だったのではないだろうか。
体が動くするだけの、魂を持たない骸。
「『ネクロマンス』の力を使った時、気づいたでしょ? 肉体は再生しても魂は再生しない。吸血鬼の復活なんて不可能。あなたの家族が蘇ることはない」
「カッ……カカッ」
ミレディの日本刀を握る手が僅かに震えている。おそらく、彼女自身も薄々気づいていたのだろう。
自分の大願が真の意味で叶うことがないことを。
「――貴様如き若造が適当を述べるでないわッ!」
今まで一度も聞いたことのない程、怒りの籠った声だった。
気迫と共にミレディが刀を振りかぶる。
それに相対する俺は、大鎌に力を籠めた。
「
大鎌の刃に陽光の力を纏わせる。
そして、迎撃。
2つの得物が交錯する。
刀は空を切り、そして大鎌は、ミレディの胸部を斬った。
「ぐっ……ああああ!」
「さっきの言葉、そのまま返す。――精細を欠いたね、最後の吸血鬼」