初バイトを終えた次の日、僕はスネ夫に会っていた。
大学というのは奇妙な場所で、学部が違うと授業で出会うことも基本ないのだ。
これはせっかく一緒の大学に行ったのに、ちょっと残念なことだった。
まあ、出会うことはないと言っても、休み時間に待ち合せたり、キャンパス内ですれ違ったりと、出会う機会がないわけではないんだけど。
スネ夫「よ、のび太。突然呼び出して、どうしたんだ?」
のび太「バイト先決まったよ。」
スネ夫「おー、そうか。結局バイトにしたんだな。まあ、お前のうちじゃ遊んでる余裕はないもんな」
のび太「サークル活動はピンとくるのがなかったの! 別にバイトしなくても大学ぐらい行けるやい!」
スネ夫「はは、そりゃ悪かったな」
まったく、相変わらず人の家をバカにして。
それでも、昔よりはだいぶマイルドになった気もした。
大人になったってことだろう。
僕も、スネ夫も。
スネ夫「で、どこにしたんだ?」
のび太「スーパーマーケット。パパの友達がやってるとこで、いい感じだったよ」
スネ夫「お前、二番星ならもう少しマシなのあっただろ、家庭教師とかさあ」
のび太「やだよ。人に教えるなんて、僕のガラじゃない」
スネ夫「しずかちゃん似の小学生が相手でもか?」
のび太「え? えへへ、それなら前向きに考えても」
スネ夫「お巡りさん、こいつです」
のび太「って、冗談だよ! そ、そそそ、そんなけしからん仕事なんてやるわけないじゃあないか!」
スネ夫「ホントか?」
のび太「そういうスネ夫はどうなんだよ。なんかバイトしてるのか?」
スネ夫「僕? 僕はパパの秘書っていうか、会社の見習いだね」
のび太「うわ、ずる。七光りじゃないか」
スネ夫「それがそうでもないんだよ。会社ではパパって呼ぶなって言われてるし、先輩秘書さんに厳しく指導されててさ」
のび太「へえ。スネ夫も苦労してるんだなあ」
スネ夫「まあ、その代わり大学では遊んでて構わないって言われてるけどね」
のび太「遊ぶって言えば、どうなの? ロボットサークルってやつ」
スネ夫「ああ、聞いてくれるかい。今は耐荷重とボディの頑丈性の両立の問題に取り組んでで、頑丈性を上げないといけないだが、それには大会の規制が問題でね。鋼鉄製のボディかプラスチック製のボディかでもめてるんだ。もちろんどっちにも利点があるし、それぞれに欠点も……」
のび太(聞かなきゃよかった)
ついうっかりロボットサークルの話を聞いたせいで、スネ夫は小一時間話し続けた。
終わり際に上機嫌になって「また今度話してやるよ」なんて言ってたが、もうたくさんだった。
何を話してたかなんて、ちんぷんかんぷんで全く頭に入ってこなかった。
今後スネ夫の前ではロボットサークルの話はしないでおこう。
そう僕は決意した。
オタクって怖い。
スネ夫のロボットサークルってのはあれです。
深夜にTVでやってるような、ダンボールでゲートを組み上げてその高さを競ったり、組み上げたゲート内を通過できるかといったのを競ったりするという、ほんとにラジコンの延長みたいなやつで、言ってみれば鳥人間コンテストみたいなニッチな競技です。
まあ、つまり、興味ない人にとっては何が面白いのか本当に謎な競技ってことですね……。