僕の話を聞いて、パパとママは反対するかと思ったらあっさりとお祝いしてくれた。
パパ曰く「お金持ちになれる道が素敵とは限らないさ」とのことだった。
ママに至っては「あののび太が就職できるだなんて」と感激していた。
僕はちょっと傷ついた。
でも、と思う。
ドラえもんが初めてこの家にやってきた時、聞いた話じゃ僕は就職先がなくて自分で会社を立ち上げ、そして失敗したということだった。
それに比べれば、就職先があったことをママが喜ぶのも無理ないか。
僕は形だけの採用試験を受け、そのままあっさりスーパーに採用が決まった。
正社員の仕事はハードかと思ったが、何のことはない。
今までの仕事時間が伸びて、一日中勤務になったぐらいだった。
強いて言うなら、今まで駆り出されたことのない仕事を任されることが増えたことぐらいだが、これも慣れればなんてことはなかった。
そんなある日、僕はパートのおばちゃん達に呼び止められた。
パートと言っても、長い人はこの道30年以上のベテランだ。
レジ打ちなんか僕より凄まじく早い人もいる。
そんなおばちゃんたちに、僕は尊敬の念をもって接していた。
おばちゃん「野比さーん」
のび太「はい。何でしょうか?」
おばちゃん「正社員になったのよね? それじゃあこれもやってもらいましょうか」
そういって、おばちゃんは色とりどりのマジックペンに画用紙とハサミを僕に見せてきた。
のび太「えーっと、これは?」
おばちゃん「POPを作ってほしいのよ」
のび太「ポップ?」
おばちゃん「ほら、売り場で値段の表示とか、野菜やお魚の絵を見かけるでしょ? アレのことよ」
のび太「へえ、それをポップって言うんですか」
おばちゃん「お客の購買意欲を上げる効果があるって言われてるわ」
のび太「でも、僕、絵は苦手ですけど」
おばちゃん「ものは試しよ。落書き感覚でやってみて」
のび太「わかりました」
本当に軽い気持ちだった。
事務所に入って、メモに書かれた必要なPOPを作る。
POPと言えば聞こえはいいが、ようはただの落書きだ。
普通の人ならめんどくさいと思うかもしれない。
でも、僕は「仕事中に落書きしてていいんだ」という気分になり、気が付いたら5時間が経過していた。
おばちゃん「ごめんなさい、野比さん! 忙しくなって、POP作業任せたの忘れてたわ!」
のび太「え? わあ、すみません! 僕こそ落書きに夢中になって、店内の様子見てませんでした!」
おばちゃん「いいのよ。って、野比さんこれ……」
のび太「え? あ、はい。やっぱりダメですよね~、あはは」
おばちゃん「いい! とてもいいわ!」
のび太「ええっ!?」
おばちゃん「特にこのキャラクター。素敵よ」
のび太「あー……いいんです? こんなので?」
僕が書いたのは、どこかで見たようなドラえもんの道具のデザインを真似したものだった。
その後、おばちゃんは店長を呼んでくれ、店長も僕を褒めてくれた。
なんでも「デザインセンスがある」のだそうだ。
結局、僕の作ったPOPは、汚過ぎた一部の装飾文字を除き、そのまんま店内に展示された。
とはいえ、あんなもの誰も注目しないだろうと思っていたのだが、世の中意外とそうでもなかったらしい。
一部の奥様から好評がもらえたとのことで、僕はPOPを任されるようになった。
のび太「ふぅん。POPか……」
そうなってくると面白くなるもので、僕はPOPの上達を図るようになる。
結果、初めは汚かった装飾文字も、みるみるうちに上達していった。
やっぱり、この仕事を選んで正解だった。
僕はお金を稼ぐより、のびのびやれる方が一番だよ。
やっぱりのび太は「仕事をしてる」というよりも、「遊んでる」方が似合っていると思う私です。
もちろん辛い仕事もあるでしょうが、遊び感覚でやれる仕事も混ざってるというのがポイントなのです。