それから10年の時が過ぎた。
時は加速度的に過ぎていく。
毎日が1年のように感じたあの小学校のころが懐かしい。
あれから僕としずかちゃんの間には息子のノビスケが生まれ、奇しくもジャイアン家・スネ夫家そして出木杉家と同時期に子供が生まれた。
なんかノビスケのやつは乱暴者らしく、本当に僕の息子なんだろうかとも思うけれども、顔は僕そっくりなんだよね。
不思議に思っていると、大学2年生の時しずかちゃんを思い出した。
ああ、間違いなく僕らの子だ、と思い、あの時のことを考えてぞっとした。
幸い、しずかちゃんとは手が出るような喧嘩はしてないけど、僕が手を出したらその日が僕の命日になるだろう。
さて、そんな僕らだったが、大きな転機を迎えることになる。
そのきっかけは、まさかの出木杉だった。
出木杉「いやあ、ほんとに久しぶりだ。会えてうれしいよ、のび太君。静香さんもね」
のび太「こちらこそ。奥さんは?」
しずか「大丈夫。遊び疲れたノビスケとヒデヨちゃんを見てるわ」
のび太「それは悪いな。しずかちゃん、出木杉君の相手は僕がやるから君は奥さんを手伝ってあげなよ」
出木杉「ああ、いい。大丈夫だよ。息子たちのことは彼女に任せよう。僕らの留守中、君らに任せっぱなしだったからね」
しずか「そう。じゃあお言葉に甘えるわね」
のび太「できた奥さんだなあ」
しずか「私はできない奥さんで悪かったわね」
のび太「そ、そういう意味じゃないよ」
出木杉「はは。うん、ほんとにできた妻だよ。僕が留守でも文句ひとつ言わず家を守ってくれてる」
しずか「いい出会いがあったのね。素敵だわ、出木杉さん」
のび太「……うーむ」
出木杉「どうしたんだい、のび太君」
しずか「また出木杉さんに嫉妬してるの?」
のび太「ちがうよ! そりゃあんな美人な奥さん捕まえてうらやましいとは思うけどさ」
しずか「なんですって!?」
のび太「いえ、しずかさんも大変美人です。すみません」
出木杉「はは、君達は相変わらずおもしろいなあ。で、どうしたんだい?」
のび太「いや、僕ドラえもんに未来を見せてもらったことあるんだ。その時は確か、出木杉君は火星に出張してたはずなんだけどな」
しずか「火星? 出木杉さんは宇宙行きが決まっただけで、まだ宇宙にすら出てないのよ?」
のび太「そうなんだよね。どういうことだろう?」
出木杉「たぶん、不確定な未来が変更されたんだろう」
のび太「変更?」
出木杉「僕らの子供のころと言えば、未来は夢のような世界だっただろう? ところが、実際は公害などで進歩のスピードにはブレーキがかかってしまった」
しずか「それじゃあ、このままじゃドラちゃんの未来世界には繋がらないってこと?」
出木杉「うーん、どうだろうね。また今後進歩のスピードが増して、ドラえもんの時代に追いつくかもしれないし、あるいはドラえもんの時代が後ろにずれるとかもあるかもしれない」
のび太「ドラえもんの世界は僕の孫の孫の世代だって言ってた。それが孫の孫の孫の世代になるってこと?」
出木杉「可能性はあるね。そして、変わっていたとしても、僕らはそれに気づくことはないんだ」
しずか「なんだか怖いわ……」
出木杉「歴史に介入するってことは、本来そういうものだからね。ただ、僕は大丈夫なんじゃないかって思う」
のび太「え? なんで?」
出木杉「君から聞いたドラえもんの滞在期限の話さ。5年以上いたらダメって話、あれ誰が決めてると思う?」
のび太「それは……誰が決めてるんだろう?」
出木杉「おそらく人間には無理だ。過去の事象を全て見通す目を持ち、その全てに正しい判断ができる者、すなわち凄まじい演算能力を持ったスーパーコンピューターじゃないかと思う」
しずか「突拍子もない話だけど、出木杉さんが言うと説得力があるわね……」
出木杉「ありがとう。そして、もう一つはのび太君。君の存在だ」
のび太「え? 僕? なんで?」
出木杉「おそらく、君は歴史に影響を及ぼす数奇な運命の元にいる。どうしてドラえもんが君のところに来たのか考えたことはあったかい? 変えた方がいい運命なら他にもあったはずだろう?」
のび太「でも、僕はそんな大したものじゃないと思うけどなあ」
出木杉「そりゃあ、僕にだって未来のスーパーコンピューターの考えることは分からないよ。今度ドラえもんに会うことがあったら聞いてみるといい」
のび太「ドラえもん、答えてくれるかな」
出木杉「僕なら答えると思うな。彼だって、墓場まで持っていくつもりはないだろうしね」
しずか「出木杉さんは興味はないの?」
出木杉「もちろんあるよ。だけど、この答えを最初に聞くべきなのはのび太君だと思う」
のび太「どうして?」
出木杉「すべては君から始まった物語だからだよ。いずれ僕にも聞かせてくれると嬉しいな」
のび太「分かった」
出木杉「何より僕は心配はしてないよ。のび太君の運命を変えることは、僕の幸せにも繋がってるって確信もあるからね」
のび太「そうかなあ。……ま、とにかく今は出木杉君の宇宙行きが決まったことを祝おうか」
しずか「そうね。おめでとう、出木杉さん。夢がかなったのよね」
出木杉「いやあ、ありがとう」
そう、これは出木杉が夢をかなえて宇宙に行く直前の話。
これから出木杉は半年間を宇宙ステーションで過ごす。
本当に凄いやつだな、と思った。
そんなやつから史上最大のライバルと認められたことは、僕の誇りだ。
しずちゃんをとりもどせ(アニメ版『家庭科エプロン』)回。
藤子先生存命中は、のび太の未来にもバック・トゥ・ザ・フューチャー的な希望が描かれていたのですが、今の世の中の進行を見る限りではのび太の世代では火星旅行は無理そうです。
そのずれをどうするのか、ということを描いてみました。
未来は常に変化する物なのです。
でも、一方で必ず出現する未来もある……というお話。