STAY WITH ME ドラえもん   作:ミサ菓子折

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[最後の青春、始まる。]

それから5年。

特に何事もなく年が過ぎた。

ノビスケも高校生になり、あまり手がかからなくなってきたころのこと。

出木杉が宇宙飛行士をやめた。

やめたと言っても、別に悪い意味ではない。

宇宙行きが終わって、もう年齢的に再び宇宙に上がることはなさそうだだからやめたというだけのことだ。

今日はそんな出木杉を招いて、僕らは久々に集まることになった。

 

出木杉「やあ、今日は集まってくれてありがとう」

ジャイアン「おう、久しぶりだな。出木杉」

スネ夫「退職おめでとう。だいぶん疲れたろ」

出木杉「はは、どうも」

のび太「まったく、しずかちゃんも来ればよかったのになあ」

スネ夫「お前、それ本気で言ってるのか?」

のび太「なんで?」

スネ夫「こんな男だらけのとこにホイホイ来るなんて人妻としてどうかと思うだろ」

のび太「え? そう?」

スネ夫「はぁーあ、、しずかちゃんも苦労するわけだ」

ジャイアン「いまだに『しずかちゃん』呼ばわりだもんな」

のび太「何でニヤニヤしてるんだ。君らだって『しずかちゃん』って呼んでるじゃないか」

スネ夫「僕らはいいの」

ジャイアン「そうそう」

のび太「何だよそれ」

出木杉「まあまあ」

スネ夫「それで出木杉。今後どうするつもりだ?」

ジャイアン「俺のところに来いよ。いい職場だぜ」

スネ夫「ジャイアンの職場って、警備会社だろ?」

ジャイアン「おう。オリンピックの支援にも積極的な超優良企業だぜ」

スネ夫「どの辺が優良だ。だいたい、何で宇宙飛行士が警備員に転職するんだ。ありえないだろ」

ジャイアン「なんだと!?」

のび太「ジャイアン、もう止めなよ。昔から勧誘癖治ってないんだから……」

スネ夫「あ? まさかのび太も勧誘されたのか?」

のび太「うん」

スネ夫「社長にイラストレーターに宇宙飛行士を雇う警備会社って何なんだよ。アホくさ」

ジャイアン「営業の基本は声掛けだぜ」

スネ夫「限度ってもんを知らないのかよ! ていうか常識から学んでこい!」

出木杉「ははは。悪いけど遠慮させてもらうよ、武君」

ジャイアン「ちえ。面白くねえなあ」

出木杉「そうだなあ。人工知能とかロボットを作ってみたいかな」

のび太「え? なんで?」

スネ夫「ああ。人工知能nobiのことかい?」

出木杉「そうそう。スネ夫君見てくれてたのかい?」

スネ夫「そりゃ、大学時代の趣味だったからね。面白いもん作ったよなあ、お前」

のび太「?」

ジャイアン「?」

出木杉「ああ、ごめん。人工知能nobiってのは、僕が宇宙ステーションで使ってた自作の秘書ソフトのAIなんだ」

のび太「へぇー、僕みたいな名前だね」

出木杉「まあ、君をモデルにしてるからね。スケジュール管理とかをさせていた」

のび太「え!? そりゃあ、さぞ優秀だったんだろうなあ」

スネ夫「ちなみに通称は人工無能nobiな」

のび太「は?」

スネ夫「管理してるはずの予定を忘れる、トチる、嘘をつく、酷いもんだったぜ」

ジャイアン「何でそんなのにスケジュール管理させるんだよ。ない方がマシだろ、そんなん」

出木杉「僕は思い出せるから別にそれでよかったんだよ」

スネ夫「宇宙ステーションの中継大爆笑だったもんな。出木杉が秘書ソフトに怒りまくってて」

出木杉「いや、あれでも役に立ったんだよ。宇宙じゃ感情を発露する場面ってなかなかないから、nobiを叱ることで精神の均衡を保てたんだ」

ジャイアン「ぎゃはははは、よかったなnobi君。出木杉の役に立てたみたいだぞ」

のび太「不愉快だ!」

出木杉「いやあ、ごめんごめん。モデルにしたと言っても、あれはあくまで別物だよ」

スネ夫「それで、どんなAIとロボットを作りたいんだ?」

 

スネ夫がそう質問すると、出木杉の顔が暗くなった。

 

出木杉「……実は、何か国かに目をつけられているんだ」

ジャイアン「何で暗そうな顔してんだ。いいことじゃねえか」

出木杉「それがそうでもない。軍事用のAIやロボット開発に勧誘されてるんだ。拉致でもする気なのか、周辺に怪しい気配も感じている」

のび太「え? なんで? ポンコツAIを作ったんだろ?」

スネ夫「逆にそれで出木杉のAI開発技術が優れてるってわかってしまったってこと」

のび太「?」

スネ夫「忘れる、トチる、嘘をつく。そんなのそこらのAIにできると思うか?」

のび太「それぐらい僕なら簡単にできるけど?」

スネ夫「お前のことじゃない! バカ! 何コンピューターに張り合おうとしてるんだ!」

ジャイアン「出木杉はやりたくねえってことか?」

出木杉「技術を使うなら、僕は平和のために使いたい。宇宙開発は戦争目的で始められたけど、そうじゃない気持ちも含まれていたはずだ。僕は、それを守りたい」

のび太「…………」

ジャイアン「…………」

スネ夫「…………」

 

僕らは黙った。

出木杉の気持ちは理解できるが、それをかなえてやる具体的な方法はない。

それこそドラえもんの力でも借りなきゃ。

でも、それは出木杉の望みをかなえることになるんだろうか?

僕がそう思っていると、スネ夫が口を開いた。

 

スネ夫「みんな、協力してくれるかい?」

のび太「何を?」

スネ夫「僕の会社でAI・ロボット部門を設立しようとしてるんだ」

ジャイアン「お、いいじゃん。そこに出木杉を入れるんだな」

スネ夫「そんな単純じゃない。出木杉は優秀すぎる。ライバル会社に引き抜かれるかもしれないし、さらおうと考えるやつが出るかもしれない」

ジャイアン「そんなの出木杉次第だし、さらうのは犯罪だぜ。警察に任せとけばいいだろ」

出木杉「人質を取られたらどうするかって話だね」

ジャイアン「な!? そこまで……」

スネ夫「する可能性は十分ある。それほど出木杉の頭脳は危険なんだ」

ジャイアン「じゃあ、どうしろっていうんだ?」

スネ夫「警察は事件が起きるまで動いてくれない。だから、まずは警備員が必要だろう。それも絶対信用できるやつが10人程度」

ジャイアン「……って、俺? 俺ただの一警備員だぞ」

スネ夫「営業の基本は声掛け、だろ?」

ジャイアン「だあ、きったねえぞスネ夫! 会社辞めるだけならまだしも、会社を割って優秀な社員を引き抜けってことだろ!? 社長にぶっとばされるぞ!」

スネ夫「それでもやってもらわないと困る。出木杉を迎え入れる以上、これは絶対条件だ。もちろん、オリンピックのバックアップもなしだぞ」

ジャイアン「くそ、スネ夫のくせに無茶言いやがる……」

スネ夫「そして、出木杉。お前は……」

出木杉「わかってる。絶対に君を裏切らない、だろ? 信頼関係が成り立たなきゃ無意味だ」

スネ夫「ああ、そうだ。金でころっと転ぶようなやつなら、僕もサポートのしようがない」

のび太「うん? 僕は?」

スネ夫「のび太は……うん、しずかちゃんと一緒に応援でもしててくれ」

のび太「おい! 明らかに何も考えてなかっただろ!」

スネ夫「真剣に考えたけど、よく考えたらお前に頼めること何もなかったし……」

出木杉「いや、待ってくれ。それなら僕から頼みたい」

のび太「?」

出木杉「AIとロボットの平和活用。その方法を考えていたんだけど、家事のお手伝いロボットなんかどうかと思うんだ」

スネ夫「……ふむ、いいね」

出木杉「そのデザインをのび太君に任せたい」

のび太「僕が、君のロボットのデザインを……?」

出木杉「そう。君の描く気の抜けたようなキャラクター達。家庭用ならあれが理想だと思うんだ」

のび太「……わかった。やってみるよ!」

スネ夫「一応言っておくけど、ドラえもんなんか描くなよ。今の技術じゃ、足一本作れるかすら怪しいからな」

のび太「わ、分かってるよ!」

 

一応これは、僕らがドラえもんを作るとかそういう話ではないようだ。

本当はちょっと考えはしたんだけど、スネ夫の言う通り、ドラえもんってポンコツだけど未来のハイテク技術の塊でもあり、そんなものを作るなんて現時点ではどだい無理な話だった。

それはともかく、僕らは再び集結した。

なんだか小学校時代に戻った気がする。

状況は深刻なはずなのに、何故か僕はワクワクしていた。




実際に出木杉みたいな人物がいたとして、その人物が己の信念に従った上でちゃんと研究もさせてもらえるケースってどれだけあるんでしょうね。
出木杉は、本人の性格に加えて、たまたま小学校からの知り合いに恵まれていたおかげで望みの環境を手に入れることができました。
いや、たまたまではないかもしれません。
皆さんは気づいているでしょう。
彼らの運命の中心に、のび太という存在がいたことを。
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