STAY WITH ME ドラえもん   作:ミサ菓子折

24 / 31
[その名はゴン。]

僕は出木杉にロボットのデザイン案を送った。

ようはドラえもんの時代の、ドラえもんよりさらにポンコツなロボットを渡せばいいんだ。

そう思って、2本指に鉄パイプとバケツでできたようなボディのロボットをデザインしてみた。

名前は適当に『ゴン』と名付けた。

どこかにぶつかったときの音が由来だ。

出木杉に見せたところ「うん、こういうのだよ! これなら実現できそうだ!」と言ってもらえた。

3年後、果たしてロボットは売り出された。

家事手伝い用、とのことだったが、何か得意分野を持たせようということになって家庭菜園、それも芋ほりに特化させたという売込みだった。

家庭菜園だけでなく、それこそ農家の手伝いなら雨の日も働けるし需要もあるだろう、という判断だった。

そこそこ売れて、気を良くした出木杉は別のロボットの開発にとりかかる。

もちろん、デザインは僕に任された。

だけど、僕らは知らなかった。

この『ゴン』がとんでもない大旋風を巻き起こすことになることを。

きっかけはゴンのCMだった。

僕はてっきり家庭菜園ロボットなら、家庭菜園をやっているところをPRするんだと思っていた。

ところが、実際のゴンのCMは、ゴンに土いじりを一切させず、掃除や洗濯にこき使うというもの。

そして、最後にはゴンが「オラに芋ほりをさせてくれー」と嘆いて終わる。

これ大丈夫か? と、思った僕の思惑に反して、ゴンは爆発的ヒットとなった。

「なんで家庭菜園ロボットに家事をやらせるんだ!」

「ロボット虐待じゃないか!」

「最後の嘆きがウケる!」

と、CMを見た人にはバカ受けだったらしい。

スネ夫に事情を聞いてみたら、スネ夫のうちで使ってたゴンを家事だけに使っていたら、コンピューターの学習能力のせいかそんなおかしな性能になってしまったらしい。

スネ夫はそのゴンのことをポンコツと言ったらしいが、出木杉の反応は違った。

「これ、面白いんじゃない?」

そこで、家庭菜園用ロボットに家庭菜園をさせない、というおかしなCMが完成したということだ。

ゴンの大ヒットを受けて、出木杉は新商品の開発よりゴンの改良に注力。

ゴンはボディの動作がますますよくなり、人工知能も芋ほりに偏執的な情熱を燃やすというキャラ付けが基本になった。

各家庭に売れたゴンは、芋ほりに使われることは稀で、家庭菜園をいじらせてもらえれば御の字というぐらいにかわいそうな扱いを受けていた。

ちなみに、僕の家も一体購入したのだが、しずかちゃんが「かわいそう」というので、庭の菜園を任せている。

乱暴者のノビスケに小一時間家庭菜園の良さを語ってうんざりさせていた。

どうやら、うちのゴン(ゴンズと名付けた)も変な特徴を持ってしまったらしい。

家庭環境によって大きく性格が変わるのも、ゴンの魅力だった。

そんなゴンが大事件を起こすのである。

 

ゴンが売れ始めて10年。

ある大学の学者さんが買ったゴンが、国会を占拠したのである。

いや、もちろん、武力でではなく、学者の先生や国会の先生方も協力して国会にゴンを上げたという話ではあるが。

それでも、ゴンが国会を乗っ取り、法律を制定させたことは「ゴン国会ジャック。法律を制定させる」と大ニュースになった。

そのゴンはゴンゾウと言って、5世代目の比較的古いゴンだった。

学者の先生は、そのゴンと夜な夜な法律の議論をして楽しんでいたんだそうだ。

ところが、ある時ゴンゾウは疑問に思ったらしい。

いや、思ったというのが正しいのかはわからない。

ゴンの電子頭脳は優れているとはいえ、1と0だけで動くコンピューターのもの。

ドラえもんみたいな未来のロボットのように、意思と認められるものがあったかはわからない。

ともかく、ゴンゾウは疑問を口にしたんだ。

 

ゴンゾウ「ということは、ワスらに人権はないと」

学者「まあ、そうなるね。君は『物』だ」

ゴンゾウ「じゃあ、博士がワスを壊したいと思えば、いつでも自由に壊せるわけっすな」

学者「理屈上はそうなる」

ゴンゾウ「それはあんまりじゃあないっすか。ワス、博士のためにこんなにも働いてるというのに」

学者「働いていたっけ……?」

ゴンゾウ「庭でイモを取れれるようにしてあげたし、世界のイモ展も開けるようにしてあげたじゃないっすか」

学者「ああ、庭に穴をあけてくれたな。ついでに言うと私の庭でもなかったし。まったく、あの時の賠償金は痛かったぞ」

ゴンゾウ「細かいことはいいっす。つまるところ、ワスらの存在は犬や猫以下ってことっすよね」

学者「いや、犬や猫も『物』あつかいだから同等だよ」

ゴンゾウ「いいや、ちがうっす。犬や猫には動物愛護法があるっす」

学者「ふむ。確かに言われてみたら違和感を感じるな」

ゴンゾウ「ワスらは話せるっす。犬や猫以下の扱いってどうなんすか?」

学者「面白いな。ちょっと国会に殴りこんでみよう」

ゴンゾウ「殴りこむだす!」

 

こうして、学者の先生は公聴会に乗じて国会に殴り込み、支持者を集めて国会の議場に乗り込んだのだった。

 

学者「お騒がせして申し訳ない。しかし、数分でいい。どうか私のゴンゾウの話を聞いてはもらえないか?」

ゴンゾウ「紹介に上がったゴンゾウっす。みなさん、ロボットに人権が欲しいっす」

議長「なぜだね?」

ゴンゾウ「ワスらはこんなに人間に尽くしているのに、犬や猫以下の扱いはあんまりっす。犬や猫には動物愛護法があるっす」

議長「だから人権をよこせと?」

ゴンゾウ「いや、人権は人間のものっす。ワスらは、いつか捨てられるのは受け入れなければならないっす」

議長「では、人権はいらないと?」

ゴンゾウ「ワスが求めるのは、人権のようなもの。言ってみればロボット擬人権っす」

「ロボット擬人権!」「なるほど!」「これは面白い!」

学者「私からも付け加えさせてもらうと、これは人間のためでもあります。犬や猫を虐めてはいけないというなら、なおさら言葉を話せるロボットを虐めて良いわけがない。それは青少年の健全な育成にも大きな悪影響となります」

「もっともだ!」「確かに!」「合理性がある!」

ゴンゾウ「先生方にお願いするっす。どうかロボットに擬人権を認めてほしいっす」

 

ゴンゾウの演説は、国会のみならず、その中継を見ていた人に衝撃を与えた。

なんなら出木杉やスネ夫にも衝撃を与えたらしい。

教育によっては、国会で答弁できるレベルまでAIは進化していたのだ。

そして、この後に起きた凄惨な事件によってロボット擬人権運動は、さらに爆発的なうねりとなる。

空き巣が、家で留守番をしていたゴンをめちゃくちゃに破壊して盗みを働くという事件が起きた。

その家のゴンは愛されており、子供たちは大いに泣いて悲しんだ。

ところが、ここで問題になったのがロボットの扱いだ。

従来なら、ロボットは生物ですらない物だから空き巣の行動は「窃盗(盗み)」と「器物破損(ロボットを破壊)」でしかない。

だが、人々は怒った。

罪が軽すぎる! 子供たちの気持ちを考えろ!

その怒りは国会をも動かし、ついにはロボット擬人権を認めさせた。

 

『ロボットは、性質上認めるのが望ましい人権は、これを認める』

 

この法律の制定により、空き巣犯は強盗罪(暴力を伴った酷い盗みの罪・当然重罪)が認められた。

壊されたゴンが戻ってくることはないが、子供たちの心が少しでも救われたら、と思う。本当に。

とにかく、出木杉の作ったロボットは、社会の仕組みさえ変えてしまったのだ。

まったく、とんでもない話だと思う。

 




はい、ゴンとはアイツです。
未来の世界でも生き残っているポンコツロボットの原型で、まだゴンスケほど高等な存在ではありませんが、やっぱりゴンスケといった感じ。
ロボット擬人権はもちろん架空の法律ですが、もし成立するとしたら日本が最初に成立してほしいですね。
ドラえもんを生んだ国だからこそ、ドラえもんの存在を信じたいのです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。