[パパ、パパ、パパ!]
あれから1年。
何とか修羅場を乗り切った僕は、個展を開いていた。
別に僕はそんなものに興味はなかったが、スネ夫に「せっかくだから開いとけよ」と言われたので開いたのだった。
自分の絵に誇りを持てって?
そう言われても、そもそも僕自身、自分の絵を芸術品だなんて思ってないし。
スネ夫「うーむ、見事なまでに落書きだなあ」
のび太「うるさいぞスネ夫!」
スネ夫「でも、出木杉に見いだされた絵なんだよなあ。天才の出木杉に」
のび太「別にいいだろ。ていうか、文句言うなら個展なんか開かせるなよ」
スネ夫「いいじゃん。どうせ、こんな機会一生に一度しかないだろうしさ」
のび太「バカにするな!」
スネ夫「はぁー、しかし低俗な絵だね。やっぱり僕にはフランスの印象派の方が似合うなあ」
のび太「言ってろ、ナルシストが」
「そうだぞ、キミ!」
いつものように嫌味交じりのスネ夫の元に老人が駆け寄ってくる。
その姿を見て、僕は「ゲ」と短い声が出た。
老人「フランスの印象派の方がいいだって? 君は見る目がないねえ」
スネ夫「は、はぁ」
老人「この絵をよく見てみたまえ。シンプルなデザイン性、まさに神の仕事じゃないか。これに比べればフランスの印象派なんてゴミクズだ。便所のクソ拭き紙も同然の……」
スネ夫「ちょ、ちょ、ストップ! 何なんだあんた!?」
のび太「……パパだよ」
スネ夫「はぁ!?」
パパ「芸術を解さない愚か者め。君の眼は腐ってる。そんな節穴みたいな目は……」
警備員「すみません! 野比さん! すぐ連れていきますので!」
のび太「ああ、うん。お願いします」
パパ「おい! 何をする! 離せ! この調子こいた若造に思い知らせてやる!」
警備員に連れてかれるパパを見てため息。
スネ夫も頭が痛いが、パパはそれ以上だ。
スネ夫「お前の親父さん、久々に見たけどあんな人だったか?」
のび太「画家志望だったみたいなんだよ。僕が個展を開いたのが嬉しいみたいで、もう連日この個展に通ってる」
スネ夫「……そりゃ個展なんて憧れるだろうな」
のび太「そろそろ出禁にしようかと思ってるよ。あんな感じで来客に絡むんだ」
スネ夫「苦労してんな、お前」
スネ夫に同情されてしまった。
実際パパには参ってる。
厄介なのはアンチより熱狂的なシンパかもしれない。
警備員「野比さん! 大変です!」
のび太「どうしたの?」
警備員「先ほどの客が、お父様が外に連れ出された瞬間お倒れになりました。今救急車を手配してます」
のび太「え?」
スネ夫「のび太! ○×病院に連れていけ! 今すぐ医者を手配する!」
のび太「え? えっ?」
スネ夫「いいから急げ! 金は僕が持つ!」
のび太「あ、ありがとう!」
パパが倒れた!?
もうパパは高齢だ。
死んだっておかしくない。
パパが死ぬ?
そんなの嘘だ!
病院に付くと、家族が駆けつけてきた。
ママ、しずかちゃん、しずかちゃんの両親、ノビスケ夫妻、ノビスケの子供。
全員で医者の話を聞く。
医者は深刻な顔をした。
パパは意識がなく、危険な状態らしい。
最悪の事態も考えておいてほしい、と言われた。
全員、ICUの前でパパの無事を祈るしかなかった。
ドラえもん「……のび太君」
のび太「ドラえもんか。来てくれたんだね」
その日の深夜、皆が疲れて眠ってしまったころ。
ドラえもんが僕のところへ来てくれた。
多分、タイムテレビか何かで僕の異常を察知してくれたのだろう。
のび太「ドラえもん。正直に答えてくれ。パパは助かるのかい? それとも……」
ドラえもん「のび太君! 希望を捨てちゃだめだ! 未来は変わるんだ! それも数秒先の未来なんて僕らにだって予想はできない!」
のび太「それは、パパがそれだけ危ないってことだろ?」
ドラえもん「それは、そうだけど……」
のび太「もどかしいよ。僕の未来なら僕が努力すればいいだけだ。でも、他人の人生は……!」
ドラえもん「祈ろう。僕らにはそれしか方法はない」
ドラえもんは僕の背中をさすって慰めてくれた。
そんなドラえもんの足元を見て気づく。
必死に背伸びしていた。
いつの間にか、こんなにも背が違ってたんだな……。
そして、何故こんな発言をしたのか分からない。
だけど、僕はそれを口にしていた。
のび太「ドラえもん。過去に連れて行ってくれ」
ドラえもん「過去に? パパに会いに行くの?」
のび太「違う。おばあちゃんに、おばあちゃんに会いたいんだ」
ドラえもん「おばあちゃんに? 何をする気なんだい?」
のび太「おばあちゃんが死んだ日。おばあちゃんが何を考えてたのか知りたいんだ」
ドラえもん「それは……」
のび太「生き返らせたいわけでもない! 頼むよ! このままじゃ僕、最悪パパを出禁にしようとしたままお別れになっちゃう!」
ドラえもん「……後悔はしないね?」
のび太「……うん」
ドラえもん「わかった。行こう」
息子の個展が開かれて、パパはは自分のことのように嬉しかったようです。
そして、はしゃぎすぎてしまいました。
しかし、個展を開く金を出しておきながら、個展に絵をディスりに来るとはスネ夫も相当趣味が悪い。